社会的養護施設第三者評価結果 検索

歌棄洗心学園

第三者評価結果詳細
共通評価基準(45項目)Ⅰ 養育・支援の基本方針と組織 
1 理念・基本方針
(1) 理念、基本方針が確立・周知されている。 第三者
評価結果
1 理念、基本方針が明文化され周知が図られている。 b
【コメント】
法人の理念・基本方針があり、その文言の意味に含まれて児童養護施設も運営されている。施設としての理念・基本方針は必ずしも明確ではないが、事業計画前文に運営目標として記載されている。他に指導目標・指導方針・重点目標が掲げられている。施設としての理念・基本方針を明確にして、職員の理解をはかり、子ども・保護者・地域等への周知に努めることが期待される。
2 経営状況の把握
(1) 経営環境の変化等に適切に対応している。 第三者
評価結果
2 施設経営をとりまく環境と経営状況が的確に把握・分析されている。 a
【コメント】
児童養護施設の全国的な情報は、北海道児童養護施設協議会からの提供資料や厚労省ホームページを検索して得ている。身近な環境把握としては、主任児童委員を施設長が歴任していることや地域柄、職員を通じて子どもの身近な情報を得ている。コスト分析に関しては、子どもに必要な経費は順次計上しており、最近では防災時の携帯リュックサックを購入している。入所している子どもは、幼児から大学生まで幅広い。社会的養護施設としての役割を促進し、より家庭的児童養護に近づけるよう、専門性の確立が必要だと分析している。
3 経営課題を明確にし、具体的な取組を進めている。 b
【コメント】
経営的な課題は、法人監事や公認会計士の助言を受けており、理事会に報告している。本園改修時の借入金返済が残っており、本園ユニットケア改修や分園ケアの増設などといった多額の予算建ては困難な状況にある。施設運営のソフト面では、職員の育成と新規雇用を継続的な課題としている。元実習生や新卒者を雇用契約にまで結びつけていおり、次回の課題解決方法も見えてきた。地縁により1名と、求人サイトを通じて2名の職員を2023(令和5)年度より確保している。新規雇用や定着率を上げるために、給与等の労働条件の見直しと給与改定や時短労働についても検討している。既存の職員の育成には、研修計画やOJTを取り入れているので、この点を中長期的なビジョンとして明確にすることに期待したい。
3 事業計画の策定
(1) 中・長期的なビジョンと計画が明確にされている。 第三者
評価結果
4 中・長期的なビジョンを明確にした計画が策定されている。 b
【コメント】
後志振興局へ「小規模かつ地域分散化、高機能化及び多機能化・機能転換に向けた整備計画」を2018年に提出している。借入金の返済を優先させており、中長期的な収支を見通すところまでは行っていない。このため、本園内ユニットケア改修や分園ケア増設の具体的な計画までには至っていない。しかし、社会的養護の役割を担う児童養護施設として、より家庭的児童養護に近づけるよう、専門性の確立が必要だとの認識はもっている。専門性を高めるために、職員育成に関しては具体的な計画が期待される。
5 中・長期計画を踏まえた単年度の計画が策定されている。 c
【コメント】
「小規模かつ地域分散化、高機能化及び多機能化・機能転換に向けた整備計画」以外の中長期計画にあたるものがないため、反映すべき事柄がなく単年度の計画は毎年度の更新となっている。単年度計画においても前年度より創意工夫した点があると思われるので、職員の参画がある単年度計画の立案は、前年度より創意工夫した点が次年度に評価できる項目立てが望まれる。
(2) 事業計画が適切に策定されている。
6 事業計画の策定と実施状況の把握や評価・見直しが組織的に行われ、職員が理解している。 b
【コメント】
単年度の事業計画にある年間行事や、日課に伴う指導に関しては計画の目標数値などの設定がなく、進捗・見直し等が定かではない。「日課に伴う指導の内容」が単年度計画の主なものであるとして、その内容の各項目(起床・洗面・掃除・登校指導・自由時間・お手伝い・クラブ活動・掃除・学習・反省会・就寝・入浴)の支援の達成具合を会議で振り返っている。但し、指導の目標や方針に適っているのかを議論して、具体的に次年度へつなげたことを単年度計画では読み取れなかった。子どもは毎年、成長する。職員の支援にも変化はあったはずである。職員の計画の振り返りで、過年度に活かされた結果を積み上げた計画評価を職員自身が理解することにも期待したい。
7 事業計画は、子どもや保護者等に周知され、理解を促している。 b
【コメント】
広報誌「潮風」には、事業計画として子どもに直結する行事を中心に内容を織り込んでいる。保護者には広報誌が郵送されているが、周知媒体としてホームページの開設までは至っていない。広報誌のみでは事業計画の周知には不十分である。一般市民へ児童養護施設の理解を得るためにも、地域等への周知が求められる。2024(令和6)年4月に法人・事業所のホームページがリニューアルする予定であるため、今後に期待したい。
4 養育・支援の質の向上への組織的・計画的な取組
(1) 質の向上に向けた取組が組織的・計画的に行われている。 第三者
評価結果
8 養育・支援の質の向上に向けた取組が組織的に行われ、機能している。 b
【コメント】
第三者評価基準を用いた自己評価は、チーム編成して実施されている。クール毎の評価結果報告は職員会議やパソコンの閲覧ファイルで共有されている。しかし、具体的な改善策に結びついたPDCAとなって現れていない。苦情箱には、前回より引き続き、意見・要望が投書されており、子どもの健全性を引き出す支援が窺われる。本項目は、第三者評価の活用を主にみるので第三者評価結果の足跡を認められる職員の「気づき」に期待したい。
9 評価結果にもとづき組織として取り組むべき課題を明確にし、計画的な改善策を実施している。 b
【コメント】
副施設長の配置が指導課長と兼務の2名となっている。3クールまでの評価結果は評価結果は、閲覧フォルダで全職員が共有して課題を認識はしている。しかし、職員全体で組織的に動けるような継続した課題を計画にあげていないので成果が見えない。子どもの支援の質に結びつくような職場内研修等を期待したい。
Ⅱ 施設の運営管理
1 施設長の責任とリーダーシップ
(1) 施設長の責任が明確にされている。 第三者
評価結果
10 施設長は、自らの役割と責任を職員に対して表明し理解を図っている。 b
【コメント】
施設長不在時は、2名の副施設長が配置され権限委任などが明確化されている。施設長は、年度初めに施設の運営方針を事業計画書により職員へ説明をしている。保護者へは園内の情報をまとめて広報誌などで発信している。今後は、職員が機動的に動けるように、組織力の向上や計画立案などにも期待したい。
11 遵守すべき法令等を正しく理解するための取組を行っている。 b
【コメント】
施設長は、社会的養護を伴う児童福祉施設長研修会等に出席している。児童養護施設に必要な法令遵守に関する知識の習得と職員への周知に務めている。年度計画の説明時には、各種マニュアルと共に「施設職員のための被措置児童等虐待対応マニュアル」を配付して職員への理解を図っている。尚、法人内には高齢者介護や障がい福祉サービスの事業所もあることから、公益通報相談窓口を法人共通の窓口として進めることを期待したい。
(2) 施設長のリーダーシップが発揮されている。
12 養育・支援の質の向上に意欲をもちその取組に指導力を発揮している。 b
【コメント】
養育・支援の向上のために、職員研修のあり方を考えている。同時に、子どもの退所後を考えて、進学先や奨学金の情報提供を行い、子どもと職員双方が希望を持てる施設を目指している。近年、子どものアルバイト先がコンビニやガソリンスタンド、宿泊施設、夏場であれば水産加工場など増えている。ケース会議において、必要な改善策を議論する職場風土に導いている。但し、現在も、職員個々の力量に任される点が見られる。どの職員もフットワークよく動ける組織力の向上を図ることにも期待したい。
13 経営の改善や業務の実効性を高める取組に指導力を発揮している。 b
【コメント】
経営改善は施設単体というより法人全体での取り組みにもなる。施設に車両は欠かせないので職員の意見を聞いて車両は大型四駆等を揃えている。自立支援事業での職員を兼務から専任に変更するなど、実効性のある人員配置となる分析をしている。質の高い養育・支援を実現するためには、共通評価基準1番で明確化した児童養護施設での理念・基本方針の文言を職員と共に確認するリーダーシップにも期待したい。
2 福祉人材の確保・育成
(1) 福祉人材の確保・育成計画、人事管理の体制が整備されている。 第三者
評価結果
14 必要な福祉人材の確保・定着等に関する具体的な計画が確立し、取組が実施されている。 b
【コメント】
人材の確保には、職場説明会の他、インターネットの活用や関係機関へ求人票を直接郵送するなど、通年を通して実施している。配置基準を更に超えた職員配置により、子どもの支援業務を円滑にできるようにしている。人材の定着に関しては、給与・労働条件の見直しが不可欠と考え、給与増改定や労働時間短縮を行っている。更なる人材の確保のためには、ホームページを拡充させ、施設の特色等を効果的にPRすることは欠かせない。2024(令和5)年4月に法人・事業所のホームページがリニューアルする予定なので、今後に期待したい。
15 総合的な人事管理が行われている。 b
【コメント】
法人にキャリアパスがあり、就業規則の服務心得の中に「期待する職員像」が記載されている。人事異動は、法人内ではサービス種が違うため行っていない。人事評価は導入して間もないため、運用は今後の軌道経過による。人事考課における面談は、職員の意向や意見を聞く機会なので、今後に期待したい。
(2) 職員の就業状況に配慮がなされている。
16 職員の就業状況や意向を把握し、働きやすい職場づくりに取り組んでいる。 b
【コメント】
勤務表は、職員の希望する休暇申請が書き込まれており、有給休暇が取得しやすいように配慮されている。同時に、時間外勤務についても、子どもの支援に影響がでないように管理されている。ストレスチェックを毎年度実施して、看護師によるカウンセリングが行われているが、実施者都合でできない場合がある。しかし、職員のストレス把握に努め、人材の定着にもなる働きやすい環境づくりに努めている。継続的な環境づくりのためには、具体的な改善案を計画に記載しておくことが期待される。
(3) 職員の質の向上に向けた体制が確立されている。
17 職員一人ひとりの育成に向けた取組を行っている。 b
【コメント】
児童養護施設協議会のチェックリストを利用して、職員の目標や自らの課題等を面談して聞いている。しかし、人事評価を前提とした面談同様に、全職員との個別面談には至っていない。就業規則に「期待する職員像」があり、児童養護施設としてのの目標・方針と職員個々の育成にむけた目標管理が進むことを期待したい。
18 職員の教育・研修に関する基本方針や計画が策定され、教育・研修が実施されている。 b
【コメント】
研修委員が、「歌棄洗心学園研修事業実施要綱」に基づき、年間の教育・研修計画を策定している。限られた予算・時間のため、後進育成が可能な職員に対して研修を優先派遣している。多くの職員が研修に参加できるよう、北海道養護施設協議会等の階層別研修、職種別研修、テーマ別研修等、年度当初に予定された外部研修から割り振りしている。施設独自の中長期計画がないため、「小規模かつ地域分散化、高機能化及び多機能化・機能転換に向けた整備計画」にある人材育成計画が中長期的な人材育成計画となる。現状の中長期計画の人材育成の記載が具体的ではないので、単年度の事業計画の中へ掲載していく方策がある。施設の年度目標や重点課題に対して必要な専門技術を強化する研修内容を列挙して見直していくことを期待したい。
19 職員一人ひとりの教育・研修等の機会が確保されている。 b
【コメント】
職員一人ひとりの教育・研修等の機会の確保としては、新型コロナウイルスの影響で普及したリモート研修に負うことが大きかった。階層別や職種別、テーマ別の外部研修に参加した後は、報告研修会が実施されている。研修受講一覧表があり、係長・主任と相談しながら、男子棟・女子棟、小中高生、ケース担当者等の職員に応じた研修受講を考慮している。スーパービジョンの体制とまではいかなくとも、職員は支援過程で悩みや迷いがあったら同僚・先輩職員に相談している。具体的な支援に活かすためにも、職員一人ひとりの研修内容の理解度により、実効性のあるOJTを期待したい。
(4) 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成が適切に行われている。
20 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成について体制を整備し、積極的な取組をしている。 b
【コメント】
実習生受入れは、社会福祉士の実習も含め、年間30名程度受け入れている。学校と連携して子どもが在籍している大学から実習生を受け入れた例もある。宿泊が必要な実習生も受入れている。職員へは年間の実習予定プログラムを配布し、職員全体で受入れる体制を整えている。「実習生の心構え」をマニュアルとし、実習生へは子どもの身体接触やドアノックなどに気を付けるよう指導している。しかし、支援に関しては「職員の対応をみて学んでほしい」というところから、実習生の観察力と担当職員の対応力に委ねられている。このため、実習生に対しても標準的実施方法で対応できるよう、マニュアルの充実などが期待される。
3 運営の透明性の確保
(1) 運営の透明性を確保するための取組が行われている。 第三者
評価結果
21 運営の透明性を確保するための情報公開が行われている。 b
【コメント】
予算・決算などは、法人のホームページに掲載されているが、単体の事業所の掲載ページがないシンプルな作りとなっている。このため、地域における法人の役割や各事業所の特色が惜しくも知らしめられていない。法人本部の方針として情報公開に乏しいのは残念であった。施設の理念や基本方針、運営や活動に関する情報を、適切に公開することは、社会福祉法人として求められている。入所している子どもは北海道内の広域にわたることから、情報を広く発信できるホームページの公開が待たれている。2024(令和6)年4月に法人ホームぺージがリニューアルする予定なので、今後に期待したい。
22 公正かつ透明性の高い適正な経営・運営のための取組が行われている。 b
【コメント】
法人監事による四半期毎の内部監査にて指導助言を受けている。また、契約公認会計士事務所からは四半期毎に監査と指導助言を受け、健全な経営に努めている。社会福祉法人制度改革により、組織のガバナンス強化や、運営の透明性の確保が求められている。今後は、法人及び各事業所のホームページの拡充に期待したい。
4 地域との交流、地域貢献
(1) 地域との関係が適切に確保されている。 第三者
評価結果
23 子どもと地域との交流を広げるための取組を行っている。 a
【コメント】
毎年度の事業計画・前文には、「地域住民、教育機関、行政機関と相互理解を深めつつ、連携を計り従来以上の利用並び地域開放に努める」と明文化されている。コロナ禍で自粛していた地域の祭りが一部再開され、2023(令和5)年度は高校生のみ参加できた。2022(令和4)年度から「清掃活動」への参加を再開している。地域の子どもにも園庭や体育館を開放し、入所している子どもと一緒に遊べるようにしている。子どものアルバイト先である新聞販売店やガソリンスタンド・食堂などとは日常的な連携を図っている。例えば、アルバイトのシフトは、子どもの休みが出ると他の子どもが替りに出勤するといった調整も行っている。子どもの友人の保護者と連絡を取り、子ども同士の交流機会を設けている。少年団活動指導者などと連絡を取り連携を図っている。
24 ボランティア等の受入れに対する基本姿勢を明確にし体制を確立している。 c
【コメント】
2026(令和8)年3月31日までの行動計画にインターンシップの受入れ対策の目標がある。コロナ禍以降、ボランティアの受け入れは停滞しているが、以前に実施していた地元企業が主催する小学生中心の料理教室の受入れを再開する予定がある。その間、受入れ実績がなかったため、ボランティア受入れのマニュアルについても整備が進まなかった。受入れ再開に際し、ボランティア受入れ時によるトラブル発生に備えるためにも、受入れの基本姿勢の明文化とマニュアルの整備が望まれる。
(2) 関係機関との連携が確保されている。
25 施設として必要な社会資源を明確にし、関係機関等との連携が適切に行われている。 b
【コメント】
男女各棟の職員室には、関係機関等一覧表が掲示されている。子どもを措置した児童相談所や小・中学校とは年2回、高等学校とは年1回の連絡会議を開催し情報を共有している。子どもの成長・発達に応じて関係機関とのカンファレンスを行っている。アフターケアとして、卒園した子どもの居住地へ月に1回、職員が訪問して様子を見ている。訪問先は、旭川・登別・釧路・札幌、と広域にわたる。職員が永久に訪問することはできないこと、常に側にいられないこと等から、子どもの所在する地域のフォーマル・インフォーマルを問わず、社会資源を把握してつないでおくことにも期待したい。
(3) 地域の福祉向上のための取組を行っている。
26 地域の福祉ニーズ等を把握するための取組が行われている。 b
【コメント】
少子化により、地域に子どもがいることは活性化のもとでもある。町内会活動に職員が子どもと一緒に参加して地域ニーズを感じている。また、施設長は民生委員・主任児童員を務め、民生委員協議会に出席して地域ニーズの把握に努めている。今後は、法人全体で情報を共有することで、各施設の専門性や特性に応じた福祉ニーズの把握に期待したい。
27 地域の福祉ニーズ等にもとづく公益的な事業・活動が行われている。 b
【コメント】
施設の立地は海岸に近く、津波災害時の避難場所に指定され、近隣住民と一緒に施設屋上へ避難訓練を行っている。法人・全事業所としては、町内美化活動を課し、清掃、町内会花壇苗植え、除草等を行うことになっている。地域の福祉ニーズに基づく活動は、社会福祉法人に求められている。地域で歴史のある社会福祉法人の強みを活かした福祉ニーズに応じた具体的な活動・事業の発展に期待したい。
Ⅲ 適切な養育・支援の実施
1 子ども本位の養育・支援
(1) 子どもを尊重する姿勢が明示されている。 第三者
評価結果
28 子どもを尊重した養育・支援の実施について共通の理解をもつための取組を行っている。 b
【コメント】
年に一度、全国児童養護施設協議会の「人権擁護のためのチェックリスト」を全職員が実施している。入所する子どもは児童相談所から「子どもの権利ノート」を渡され説明を受けているが、施設では継続的な活用の働きかけをしていない。前回の受審より求められていた歌棄洗心学園独自の理念・基本方針は必ずしも明確ではないが、事業計画前文に運営目標として記載されている。子どもの尊重については、会議で職員に対応方法についての説明があり共有するようにしている。しかし、子どもを尊重した支援マニュアルの整備までには至っていない。職員間の連携や上司へ相談できる気風はある。しかし、具体的に児童養護施設の倫理綱領の共有に関することは実施されていない。学園の職員が共通して子どもを尊重した養育・支援を実施できるように、支援の現場で役立つ活きたマニュアルの整備や倫理要領の読み合わせ等が期待される。
29 子どものプライバシー保護に配慮した養育・支援が行われている。 c
【コメント】
子どもを守るための危機管理上、居室のドアには窓ガラスがあり居室内を確認できる作りになっている。プライベート空間の確保とプライバシー保護に対し事故防止が表裏一体となっており、職員もその対応に苦慮している。2人部屋4人部屋では、子どもが協力し合い、退室している間に着替えるなど工夫している。入浴についても子どもの意向を尊重し、独りで入浴したい子どもへの配慮をしている。しかし自分から声をあげられない子どもへの配慮については課題を感じている。子どもたちへは日常会話の中でプライバシー保護について周知をしているが、保護者へは周知していない。プライバシー保護は子どもの人権尊重の基本でもある。事故防止や安全確保に終始しては退所後、側に職員がいない時に子ども本人が困る。退所後の自立を見据えた視点での子どもへの支援が重要である。これらを総合的に見直し、プライバシーに関する規程・マニュアルを身近なところから作成していこうという職員の意欲に期待し、その整備が望まれる。
(2) 養育・支援の実施に関する説明と同意(自己決定)が適切に行われている。
30 子どもや保護者等に対して養育・支援の利用に必要な情報を積極的に提供している。 b
【コメント】
「歌棄洗心学園」のリーフレットは児童相談所と実習生の学校に配布している。リーフレットの内容見直しは年度始めに行っている。今回は施設を通過する路線バスの減便を掲載した。「潮風(学園だより)」は年間4回発行し、保護者へ送付の他、児童相談所に置いている。ホームページは施設掲載ページが完成している。しかし、法人の他の事業と同時掲載のため、未公開のままになっている。2024(令和6)年4月以降には公開の見通しが立っている。施設から離れて訪問が頻繁にできない保護者や、実習生・実習生保護者にも児童養護施設として発信できることから、公開が期待される。
31 養育・支援の開始・過程において子どもや保護者等にわかりやすく説明している。 b
【コメント】
「歌棄洗心学園の一日」は学園の生活やルールについて書かれており、入所時に内容を説明している。小学生向けはひらがなを使用し、中高生向けのものも作成している。しかし、小学生向けの内容については、難しい文章表現や言葉が使用されているため、今後は平易な表現への変更を検討している。利用説明の同意を得るまでの過程の記録や様式はないが、指導記録に記載されている。今後は説明を受ける子どもや保護者の理解度に合わせた「歌棄洗心学園の一日」の作成が期待される。
32 養育・支援の内容や措置変更、地域・家庭への移行等にあたり養育・支援の継続性に配慮した対応を行っている。 b
【コメント】
子どもの退所後は、行政のケースワーカーや児童相談所が相談窓口になることがある。施設に相談等があった際は、子どもの当時の担当者か引き継いだ職員が受け付けている。施設外の自立支援コーディネーターが来所して、高校2~3年生へ卒業後の生活の説明を行い、相談窓口のリーフレットを渡している。家庭に戻る子どもと保護者は、相談窓口についての書面は渡していない。しかし、口頭では困りごとがあったら施設へ電話をするようには必ず伝えている。家庭復帰後の子どもと保護者には、生活環境の変化とストレスが想定される。このため、退所後の支援の継続性として、相談窓口を書面で渡すこと等が期待される。 
(3) 子どもの満足の向上に努めている。 第三者
評価結果
33 子どもの満足の向上を目的とする仕組みを整備し、取組を行っている。 a
【コメント】
「子ども会(潮風会)」は月に一度行われている。行事や生活用品、ゲームソフト、漫画本などについての希望や意見を聞いている。集団で意見の言えない子どもには、個別面談や意見箱でも取り上げている。子どもの欲しいものは、職員で検討して施設で提供できるものと個人で購入するものの選択を子どもへ提案している。衣服は年に2~3度、子どもと一緒に購入に出かけている。普段の生活の中でも希望や要望を受けており、その一つとして最近ではスケートへ出かけている。公共交通機関の便が乏しいため、アルバイトや下校後の塾への外出などの要望にも職員が引率し車を出している。子どもの生活での変化を捉えて、要望を汲み取り会議で検討して対応している。
(4) 子どもが意見等を述べやすい体制が確保されている。
34 苦情解決の仕組みが確立しており、周知・機能している。 c
【コメント】
苦情解決については第三者委員会の設置がなされている。施設内の掲示板に苦情解決についての掲示があり、低学年用にはルビが振られている。第三者委員は男性2名で、年に一度の来所のため、子どもは第三者委員としての認識を持っていない。電話は高校2年生から所持が許可され、所持していない子どもは第三者委員へ直接連絡することはできない。子どもへ第三者委員の理解を促すための工夫や女性の第三者委員の就任、第三者委員直送の苦情箱の設置などを期待したい。苦情の申出から発表までの手順を明確にして、苦情内容の公表が望まれる。
35 子どもが相談や意見を述べやすい環境を整備し、子ども等に周知している。 b
【コメント】
保護者からの苦情が、児童相談所を通して施設に連絡が入った場合は、施設から口頭や手紙で回答している。年に4回「潮風(学園だより)」に、苦情について掲載し保護者へ送付している。しかし、周知の程度が不明なため、保護者が注目しやすい工夫を検討している。子どもへは看護師、心理士、園長を含め、どの職員へも相談できることや、秘密保持についても日常的に伝えている。子どもは相談相手を使い分けたり、意見箱も活用している。相談しやすいスペースは管理棟にあり、他の子へ気づかれないような配慮もしている。自分から話すのが苦手な子どもには下校後5~10分間時間をとって、職員が話を聴いている。子どもの行動に異変があれば職員から話かけ、マンツーマン対応を行っている。権利ノートの内容と重複しないように、という配慮から入所時のしおり「歌棄洗心学園の一日」には苦情や秘密保持についての記載がない。しかし、権利ノートとは別個に学園として苦情に関する情報提供の必要があり、子どもや保護者が相談したい時に利用できるような記載が期待される。
36 子どもからの相談や意見に対して、組織的かつ迅速に対応している。 b
【コメント】
月に2回意見箱を開封、内容について役職会議で公表、ケース会議で対応策を検討し、結果を子どもへ伝えている。結果は、月初開封分は翌月の月初、月中旬のものは翌月の月初、長くて約1ケ月かかる。急ぎの相談を直接言ってくる子どもへは随時対応している。常に子どもから出される意見については迅速な対応をするために日々の聴き取りや、話しかけを行っている。日常的な子どもの要望に迅速に対応するためには、どの職員でも対応できるように相談・意見の対応フロー図を作成することが期待される。
(5) 安心・安全な養育・支援の実施のための組織的な取組が行われている。 第三者
評価結果
37 安心・安全な養育・支援の実施を目的とするリスクマネジメント体制が構築されている。 b
【コメント】
高校生のアルバイトや登下校はスクールバスの利用や職員が送迎しており、下校後の外出も職員が引率しているため、外出の移動においてはリスクは少ない。園内での事故に対しては危機管理マニュアルがある。事故発生時は児童相談所と保護者に報告し、児童相談所の判断でヒヤリハットか事故扱いかを決定している。事故やヒヤリハットの職員間の共有は朝礼や共有ファイルで確認、業務日誌で行っている。園庭の遊具を含め施設内の危険個所は点検表を使用し確認している。女子棟・男子棟のケース会議でヒヤリハットの事例と対策を協議している。年度始めに前年度の事故やヒヤリハットの振り返りを基に、本年度の危険防止について周知している。子どもが保護者の強引な引き取りにより、外泊から戻ってこなかった事例があり、児童相談所との連携や派出所にも地域見回りでの声掛けの協力を得ている。これまでは、職員の経験値から危険を回避するための対策を取ってきた経緯がある。今後は全職員が適切に対応できるよう、ヒヤリハットの収集から要因分析と対応策が期待される。
38 感染症の予防や発生時における子どもの安全確保のための体制を整備し、取組を行っている。 b
【コメント】
感染症の発生時には感染症対策委員会で作成されたマニュアルに沿って対応をしている。コロナ禍ではマニュアルは随時更新され、職員が間違えのないように対応していた。伝達研修で職員間での情報共有もしている。感染症対策がとられた隔離部屋を準備し、子どもへの周知もしている。「危機管理マニュアル」の感染症の対応マニュアルは年度末に見直し看護師を交え検討が行われる。年度初めに全職員へ配布・周知している。コロナ禍での対応では、子どもの不安感が強く、情緒安定と感染予防が一致しない部分と個別的なケアができないジレンマがあった。体調がよくなってきても、隔離部屋から出られない子どもには電話の子機を与え気持ちを落ち着かせた。感染予防の実践研修は看護師から会議後に実施される。会議に出席できない非常勤職員へは口頭で伝えられているが、実践研修は行っていない。今後は実践研修が未実施の職員への対応を改善する意向があるので今後に期待したい。
39 災害時における子どもの安全確保のための取組を組織的に行っている。 b
【コメント】
子どもとは避難訓練時や日常的に災害について話しており、停電時にはプレイルームへ集まることが身についてる。緊急時の備蓄品は一覧表で管理している。地域住民の津波一時避難施設になっており、緊急時の食料品、備品の対策は町で行う計画になっている。年に一度住民と子どもが合同で避難訓練を行っている。避難訓練の問題点の把握など振り返りは、今後文書化して次回への参考とする予定である。停電時の予備発電機はあるが、実稼働したことがなく、有事に備え投光器と共に、確認する必要がある。災害時の行動基準(初動時の対応や出勤基準)は策定されておらず、今後、災害マニュアルとともに整備が期待される。
2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の標準的な実施方法が確立している。 第三者
評価結果
40 養育・支援について標準的な実施方法が文書化され養育・支援が実施されている。 b
【コメント】
養育・支援について標準的な実施方法としては、「危機管理マニュアル」や「非常災害対策マニュアル」「被措置児童等虐待対応マニュアル」がある。日常的には、「歌棄洗心学園の一日」を基本としている。施設として職員がこれらに基づいた子ども一人ひとりの支援については、会議等で検討されている。養育・支援は標準化できる内容と個別的に実践できる内容の組合せであることに立ち戻り、全職員が基本とする支援マニュアルの整備が期待される。職員には、自分たちの共通理解のためにもマニュアル整備を検討する意向があるので、今後に期待したい。
41 標準的な実施方法について見直しをする仕組みが確立している。 b
【コメント】
標準的実施方法の見直しは、年度始めや変化があった時に見直ししている。マニュアルは改正されていないものもあり、随時、定期な見直しと改正に加え、各マニュアルの策定年月日、更新時期の記入が期待される。
(2) 適切なアセスメントにより自立支援計画が策定されている。
42 アセスメントにもとづく個別的な自立支援計画を適切に策定している。 b
【コメント】
アセスメントには職員・学校の担任教員・心理士の他、医師の意見が入ることもある。子どもとの個別面談で意向を把握し計画に反映させ、子どもへ確認している。計画では、生活レベルでスモールステップで達成できる内容を心掛けている。しかし、計画の中には、同じ目標が続いている子どもはいる。アセスメントから計画立案までの過程が曖昧で職員の裁量に任されている。計画策定における研修やマニュアルは特にない。今後は、アセスメント手法を職員で話し合って確立することで計画立案を標準化させるとと共に、子どもの長所を計画に活かすことなどに期待したい。
43 定期的に自立支援計画の評価・見直しを行っている。 b
【コメント】
自立支援計画の見直しは年に2回、定期に行われている。見直しにあたっては、ケース会議を行い、立案から決裁までの流れは決まっている。アセスメント手法が確立した後の見直しにあたっては、子どもの長所を活かすことにも期待したい。また、自立支援計画の緊急時の見直しは整備されていないことから、今後に期待したい。
(3) 養育・支援の実施の記録が適切に行われている。
44 子どもに関する養育・支援の実施状況の記録が適切に行われ、職員間で共有化されている。 b
【コメント】
記録はパソコン内のフォルダに保管され、職種により共有する範囲が定められている。養護日誌は担当保育士が記録している。担当保育士が不在でも子どもの生活に支障がないように、口頭やメモで引き継がれているが、日誌は空欄とならないことが期待される。前回の受審より、子どもの長所を自立支援計画の策定に反映させることを意識しての記録に努めている。また、記録要領の改正の動きはあったが完成していない。今後の進捗に期待したい。
45 子どもに関する記録の管理体制が確立している。 b
【コメント】
「危機管理マニュアル」は個人情報提供先への施設としての姿勢や、USBメモリの持ち出し禁止が記載されている。個人情報にかかわる書類は書庫に施錠の上、保管されている。法人の「個人情報保護規程」から施設独自の「個人情報取扱業務概要説明書」が策定されているが、職員への説明や研修などは行われていない。職員に開示請求の経験はなく、開示請求についてのルールや規定の整備が期待される。
内容評価基準(24項目)
A-1 子どもの権利擁護、最善の利益に向けた養育・支援
(1) 子どもの権利擁護 第三者
評価結果
A1 子どもの権利擁護に関する取組が徹底されている。 b
【コメント】
月に一度の子ども面談で職員は、話の中に権利・義務について織り交ぜるようにしている。各デイルームでの要望を子ども会で話し合い、職員会議に図られ、結果を子どもに説明している。CAP(子ども支援・暴力防止プログラム)は子ども向けと職員向けの両方を学んでいる。法人に障がい者施設があることから、児童養護施設として、「被措置児童虐待(施設内虐待)ゼロへの誓い」に署名・押印して理事長に提出している。年度初めには、事業計画の説明時に「危機管理マニュアル」の他「被措置児童等虐待対応マニュアル」も解説されている。子どもの権利擁護に関する取組が実施されてはいるが、より質を高める取組が求められる。
(2) 権利について理解を促す取組
A2 子どもに対し、自他の権利について正しい理解を促す取組を実施している。 b
【コメント】
幼児を含む中学生以下の入所児童全員が民間団体のCAP(子ども支援・暴力防止プログラム)による学習会を毎年度、継続受講している。他者を傷つけることや陥れることは決して許されることではないこと、同時に自身のことも大事にするように日々、職員は伝えている。「子どもの権利ノート」と同じ内容のものをデイルームに置いて、閲覧可能にしている。「権利ノート」を用いて子どもと話す機会は多くはない。権利は、日常生活の具体的な場面を通して気づくことが職員と子どもの双方に必要である。子どもの年齢等に応じた説明をタイミングよく職員から行えることが期待される。子ども同士が学び合いう機会を提供することで、自己や他者の権利が深まることを期待したい。
(3) 生い立ちを振り返る取組
A3 子どもの発達状況に応じ、職員と一緒に生い立ちを振り返る取組を行っている。 b
【コメント】
施設や学校の行事の写真・動画は、定期的に子どもに選ばせて渡している。思春期に入ると自分の写真を嫌がる子どもが多くなり、アルバム作成は難しくなる。生い立ちや家族のことを伝える際は、保護者の意向を把握し、児童相談所とも相談して会議にかけている。中高生から入所する子どもは、施設生活の年数が少なく、職員は生い立ちといっても本人が話さなければ知り得ないことが多い。子どものアイデンティティ確立には、どこかの時点で自らの生い立ちを振り返って考える必要がある。この時、身近な職員が聞いて受け止めることの意味は大きい。子どもの話を聞いて肯定的な振り返りになるように期待したい。
(4) 被措置児童等虐待の防止等
A4 子どもに対する不適切なかかわりの防止と早期発見に取り組んでいる。 b
【コメント】
毎年4月に全職員が「被措置児童虐待ゼロへの誓い」を提出し、子どもにはCAP(子ども支援・暴力防止プログラム)を継続して学んでいる。子どもからのサインを見逃さないようにし、児童相談所など苦情や相談できる機関があることを伝えている。「施設職員のための被措置児童等虐待対応マニュアル」に虐待が起こった場合の対応の流れを記載している。居住棟の掲示板には、イラスト入りの虐待防止の図が掲示されている。施設内虐待の防止は、全国的にも最重要課題である。職員に対しては、対応マニュアルの活用を強化し、子どもに対しても、「潮風会(子ども会)」を利用して、具体的な事例を通し制度を説明する等、更に理解を促すことに期待したい。
(5) 支援の継続性とアフターケア
A5 子どものそれまでの生活とのつながりを重視し、不安の軽減を図りながら移行期の支援を行っている。 b
【コメント】
施設間の措置変更の場合は、入所前に子どもと担当職員が面会をしている。入所前に児童相談所から施設についての説明があり、居室の子どもには入所2~3日前に紹介して、入所日には食堂で自己紹介をしている。家庭復帰等の退所時には、施設での様子や、看護師と連携し通院の記録、服薬状況をまとめた書面を渡している。家庭復帰後も、保護者や子どもが不安にならないように、居住地の要保護児童対策地域協議会へ連絡している。尚、近年は家庭復帰後も、保護者や子どもに対する支援が継続して求められている。アフターケア担当職員や、家庭支援専門相談員の役割を、より明確にした支援が期待される。
A6 子どもが安定した社会生活を送ることができるようリービングケアと退所後の支援に積極的に取り組んでいる。 b
【コメント】
リービングケア担当の職員が配置され、高校2年生頃から公共交通機関の利用や金融機関でのお金の出し入れ等の練習をしている。アルバイトを通し社会性や礼儀・マナーを身に付けさせている。アフターケア担当職員を2名配置して月1回、釧路・旭川など遠隔地であっても定期訪問し支援している。措置延長後は、自立支援コーディネーターに引継いでいる。退所後の早期離職など、アフターケアから見えてくる課題がある。近年、退所後の支援は、施設に業務として求められている。リービングケアとアフターケアを連動させて、子どもにとって何が必要かを課題抽出し、職員が行うことができるようにすることが期待される。そのためにもリービングケアとアフターケアのマニュアルを随時、作成することが期待される。
A-2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の基本 第三者
評価結果
A7 子どもを理解し、子どもが表出する感情や言動をしっかり受け止めている。 b
【コメント】
子どもが学校から帰る14時から21時位までは、職員の人数を多くし子どもを受け止める時間を多くしている。子ども間にトラブルがあった時は、その場に緊急に職員が集まってことを収めている。その後、ケースを共有し対応を協議して個々の子どもの理解に努めている。配慮が必要な子どもには、個別の時間を設けて職員が対応している。子どもの情報は、会議で担当職員がフェイスシートを作成して、給食・事務も含めた全職員に周知して個々の理解に努めている。子どもが表出する感情や言動を受け止めることは、支援の基本である。今後も子どもに対する理解が、支援方法の見直しや支援のスキルアップにつながるように期待したい。同時に、子どもを受容できる職員のメンタヘルスへの取組にも期待したい。 
A8 基本的欲求の充足が、子どもと共に日常生活をいとなむことを通してなされるよう養育・支援している。 b
【コメント】
生活ルールは、男女の棟や学齢で違いを設けている。牛乳は無理に飲まなくてもよいが小学生は飲むことが推奨されている等である。また、携帯電話は高2から所有できるが料金の支払い等、保護者の支援がない子どもはアルバイトしなければならない等の様々な決まり事がある。ひと昔ならテレビ録画のルールがあったが、今は、無料視聴放題の動画サイトがあるので、このルールもなくなったように、その時節に応じてルールは子どもとの話し合いで変更される。生活のきまりに関しては、定例の個別面談や「潮風会(子ども会)」、デイルーム単位での話し合いがり、対応している。但し、利用者調査からは様々な意見が子どもから出ている。日々連続する些細な生活ルールは、個々の状況に応じて柔軟に対応できる体制が望ましい。今後も、子どもと一緒に生活ルールを考えて見直せる生活を期待したい。
A9 子どもの力を信じて見守るという姿勢を大切にし、子ども自身が自らの生活を主体的に考え、営むことができるよう支援している。 b
【コメント】
施設は、子どもに失敗体験をさせないために、どのように対応するかという視点で支援する傾向が強く、過保護で慎重になることが多い。しかし、子どもが物事をできたときは賞賛し、成功体験をたくさん積ませるよう心がけている。例えば、シンクの掃除にはクレンザーを使うので仕上げが白く残ることもあるが、磨いた子どもには「ピカピカになったね」と褒めて見守っている。施設の大きな行事については、子どもと職員が一丸となって作り上げてきた実績がある。施設で生活しているうちにたくさんの小さな失敗を重ね、そこから成功の術を学ぶことは大きい。子どもの自立につながるように見守ることができる職員の技量アップにも期待したい。
A10 発達の状況に応じた学びや遊びの場を保障している。 b
【コメント】
民間の学習塾が閉鎖となり地域的に使える社会資源が少なくなったが、可能な限り活用できるように努めている。近隣に幼稚園はないが、園内保育により就学前の素地を培っている。子どもに、より専門的な療育を受けさせるために、隣町まで「放課後等デイサービス」に通所させている。職員管理の下に、限定的ではあるがインターネットをリモート学習等に使用している。地方においては、ネット環境を利用した学習効果は大きい。2020(令和2)年度より検討委員会が設置され、インターネットの功罪両面を協議している。今後の更なる展開に期待したい。
A11 生活のいとなみを通して、基本的生活習慣を確立するとともに、社会常識及び社会規範、様々な生活技術が習得できるよう養育・支援している。 b
【コメント】
基本的なリービングケアとしてATMの使用や公共料金等の支払に関しては、担当職員が指導を行っている。子どもが都市間高速バスで移動し、地下鉄に乗り継ぐときに駅が分からないということがあり、実際に体験させてみる重要性を改めて認識した。今後は卒園間際だけではなく、小学生、中学生、高校生それぞれの成長過程で修得すべき事項をリスト化しているところである。尚、具体的なリスト化と一緒に考えて欲しいのは、社会規範として他者との距離の取り方がある。入所した年齢やそれまでの家庭生活により様々な対人パターンが子どもにはある。必要以上に他者と距離を詰め過ぎ・逆に離れすぎ、会話の過剰・寡黙などである。退所した子どもに1か月に1回の訪問支援を施設は行っている。その際に聞いた自立しての成功と失敗の逸話は、次に卒園する子どもの糧となる。今後のリービングケア・リストの作成に期待したい。
(2) 食生活
A12 おいしく楽しみながら食事ができるように工夫している。 b
【コメント】
2023(令和5)年度より栄養士が二人体制となり、お誕生月献立アンケート実施など、子どもの要望を随所に取り入れるよう対応を強化してる。食事風景は、食堂に集合してテーブルに男女学齢で分かれ、一つのテーブルに職員が1名立って、ご飯のお代わりを盛っている。下膳は子どもが順番に並んで食器を重ねている。残食の程度を見ながら食事メニューを微調整している。居室棟のディルームには、冷蔵庫や電磁調理器等があり、バレンタイン等の行事には作るお菓子の個数や渡す相手等を職員と相談している。前回は、コロナ禍で直接、子どもの様子が見れなかった。食堂には、外国籍と思われる調理員が雇用されており、子どもにとって身近なインターナショナルな体験(〇〇国のお料理)のひとつになり得る。昼食にサンドイッチ、お好み焼き、焼きマシュマロ、日曜の朝にコーンフレークの要望も実施している。コロナ過も明けたことから、計画的な調理実習にも期待したい。
(3) 衣生活
A13 衣類が十分に確保され、子どもが衣習慣を習得し、衣服を通じて適切に自己表現できるように支援している。 b
【コメント】
近隣に衣料品店がないため、4年生以上は買い物に車で出掛けており、特に女子は大型バスに乗って出かけるのが楽しみである。現在、ネット通販は利用しなくなった。男子はスポーツウェアの黒・グレーを中心に選んでおり、女子と違って衣服で自己表現しようとする男子はいない。中学生以上は自分で洗濯機を使用するが、寝具等は職員の業務となるため、お洗濯のパートさんを雇用している。パートさんは金土日がお休みなので、職員の業務負担が週末には元に戻ることになる。訪問時はデイルームで職員が枕を修繕していたが、日常的にお針仕事は子どもの目に付くところで行うようにしている。いつも繕い物があるとは限らないが、小学生男子が「ミサンガ」の製作を一緒にして、指先の巧緻性向上や集中力にもなっている。衣類整理は週に1回、職員が付いて習慣づくように支援している。年齢や個別性もあるが、更に子どもなりに個々が自立してできる支援が期待される。
(4) 住生活
A14 居室等施設全体がきれいに整美され、安全、安心を感じる場所となるように子ども一人ひとりの居場所を確保している。 b
【コメント】
2023(令和5)年度にエアコンを設置し、猛暑日であっても施設内が28度以下に保てるようになった。清掃当番表が居室等に貼られ、共用部分も含めて職員も一緒に行いながら居室棟の美化に努めている。玄関の他にも床暖の設置があり冬季の住環境として優れている。強制換気システムが施設全体に施されている。居室壁柱などの破損個所は、粘着テープ剤で応急処置が施されている。リビングは学齢・男女で雰囲気が違っている。お当番表などの掲示は紙なので、角が取れたり破けたりしている。什器・設備の修繕は施設が行うとしても、張り紙の交換・補修は子どもでもできるのではないか。ユニットケアが男女各1つある。居室ドアの窓ガラスは危機管理のためカーテン等の目隠しは行っていない。現時点では、子どものプライベート空間確保より危機管理を優先せざるを得ないとの職員の見解である。危機管理をゆるめてプライバシー空間確保に気持ちが動く支援の余裕と子どもの落ち着きに期待したい。
(5) 健康と安全
A15 医療機関と連携して一人ひとりの子どもに対する心身の健康を管理するとともに、必要がある場合は適切に対応している。 b
【コメント】
看護師の配置があり、日常的に職員と連携して子どもの心身の状況把握に努めている。通院や服薬の情報は、看護師から通院日翌朝の打ち合わせ時に報告がある。ミーティング不参加の職員は、出勤時に看護師の報告を確認することになっている。通院は、担当医の診察曜日に応じて子どもを組み分けて職員が引率している。看護師が受講した研修報告は職員会議で伝えられる。2023(令和5)年は全国的な猛暑だった。クーラーは設置したが、今後に備えて、熱中症や熱性けいれん等の対処方法について、職員の知識と対応力を深める予定である。この予定を単年度計画に記載して漏れがないようにすることが期待される。ノロウイルス等の実地訓練は行っている。使用する消毒薬は作り置きができないことから通常は医務室にある。万一、吐しゃ物の処理に間に合わない時のために、緊急に汚染箇所を覆う新聞紙等の準備を考えている。実際の処理業務の流れの見直し等に期待したい。
(6) 性に関する教育
A16 子どもの年齢・発達の状況に応じて、他者の性を尊重する心を育てるよう、性についての正しい知識を得る機会を設けている。 b
【コメント】
小学生から性教育を始めている。パーソナル・スペースとしての距離感や良いタッチ・悪いタッチ・体のプライべート・パーツを教えている。居室棟には、イラスト付きで「布団に他の子どもと一緒に入ってはいけません。」と掲示している。CAPプログラム(子どもの人権教育プログラム)を継続して子どもと職員が学んでいる。2019年から活動している性教育委員会の看護師・心理士・ユニット別の担当職員が小学生に伝えている。今後、中高生に教育を広めることから他の職員にも伝えられるように教材等のツールの整備を期待したい。また、「危機管理マニュアル」に、子どもと職員の信頼関係の構築や性教育プログラムの充実が性的問題行動の事故防止策として言及されている。利用者調査に頻出する「男女交際」についての話し合いは、好機である。より具体的な実践に期待したい。
(7) 行動上の問題及び問題状況への対応
A17 子どもの暴力・不適応行動などの行動上の問題に対して、適切に対応している。 b
【コメント】
学校との関係は、連絡協議会を年2回設け、ケースカンファレンスの実施もあり、問題が起きた時は即日に協力している。気にかかる子どもがある時期は、担当者と他の職員が1:2対応するようにしている。児童相談所や医療機関との連携があり、基本は「危機対応マニュアル」にて対処している。しかし、実際に施設内で対応する職員が疲弊していく場合もある。職員のチェックリスト表を集計している看護師によりカウンセリングがケアの一端を担っている。一方、図らずも支援している子どもから受けたダメージの心理的ケアは不十分と職員は感じている。職員間で相互に支援できる体制と不適応行動に至る子どもの理解が期待される。
A18 施設内の子ども間の暴力、いじめ、差別などが生じないよう施設全体で取り組んでいる。 b
【コメント】
子どもインタビュー(利用者調査)では、複数から、喧嘩等が起こりそうな時は職員に知らせていることを聞いた。子どもからの知らせ「事前察知」を活かして職員間で連携をとり、より注意深い支援をしている。いじめや差別等については、学校と連携しながら状況を共有している。ディルームの壁には、スズランテープで2列に分けて下げられた「よいことば」「わるいことば」の例が黄色と青で色分けして下がっている。多少破れていることから経年劣化を感じるが、子ども間でのやり取りで職員が具体的に「ことば」を示して教えていた。他者に対する配慮や人権意識とは、ディルーム等の生活の場面で職員が子どもへ広げていくことが子どもにとってわかりやすい。せっかく作成して掲示してある指導ツールである。今一度、職員間で以前の実施例も思い出して継続することが期待される。
(8) 心理的ケア
A19 心理的ケアが必要な子どもに対して心理的な支援を行っている。 b
【コメント】
施設には心理職の配置があり、常勤で支援の現場にも入っている。児童相談所に提出する心理的ケアのプログラムの他に、現実的には心理的ケア対象ではない子どもに対しても心理的な支援を行っている。業務として精神科受診の同行や医師の診断・助言を職員に解説している。心理士としてスーパービジョンは、大学時代の講師や同窓生と学びを得ている。現場に心理士が入っている強みとして、職員へ子どもとの会話で使える言葉などを助言している。心理士の外部研修の伝達はしているが、内部研修は未実施である。他の評価基準項目でも心理的な要因が多く絡んでいる。心理的支援の重要性から職員研修や意識的なピュア・スーパービジョンの実施が期待される。
(9) 学習・進学支援、進路支援等
A20 学習環境の整備を行い、学力等に応じた学習支援を行っている。 a
【コメント】
子どもの学習権を最大限に保障するように支援している。過去には、スタイリスト希望の子どもには、中卒より高卒の学力が必要だと説き、進学させた。2018年から施設を提供しての民間塾が閉鎖になったが、公設民営塾は継続して運営している。子どもの一人ひとりに応じた基礎学力の向上に努め、職員は日々の宿題を教えながら、テスト時には一人ひとりに目標を持たせて意欲を引き出すよう支援している。忘れ物等は、子ども本人への確認を行いつつ、学校とも連携して対応している。小中学校では年に2回、高校は毎月にクラス教員と学年教員と子どもの学習面と施設の生活面での情報を交換している。
A21 「最善の利益」にかなった進路の自己決定ができるよう支援している。 b
【コメント】
進路の選択には、奨学金制度や民間企業の支援プログラム・生活支援情報を伝えている。通信制高校に通う子どもには、自立援助ホームでの支援を依頼している。地元高校に通学する子どもが多く、進路ガイダンスにより職種・資格・就職先などが紹介されている。高校卒業後は、措置延長の継続や自立支援事業を活用し、自立までの間は職員が1か月に1度、訪問して様子を見に行っている。学校を中退したり、不登校となった子どもへの支援のなかで、就労(支援)しながら施設入所を継続することをもって社会経験を積めるよう支援したかったが、就労する場が地域的に乏しく困難であった。施設としても手元に子どもをおいて支援したいところである。地域柄、今後も起こりうるケースであり、道内に限らず他府県の事例等を参照することも期待したい。
A22 職場実習や職場体験、アルバイト等の機会を通して、社会経験の拡大に取り組んでいる。 b
【コメント】
高校生は許可があるとアルバイトが可能なので、社会経験と今後の自立のための貯金をしている。学校での職場体験・実習が充実している。施設近隣には会社や商店などが多く、口コミで子どもへのバイト紹介が増えて希望する職場の選択肢が多くなった。遠隔地のアルバイト先には職員が送迎している。アルバイトができない子どもには、長期の休みを利用して職場体験をさせている。子どもは職場や実習の場で、社会のルールを実体験していく。地域柄、地元の会社・商店は施設の子どものバイトの受け入れ先として声を掛けてくれている。実習を通して、金銭管理を職員は教えているが、社会の仕組みやルールなど、自分の行為に対する責任についても話合うことが期待される。
(10) 施設と家族との信頼関係づくり
A23 施設は家族との信頼関係づくりに取り組み、家族からの相談に応じる体制を確立している。 b
【コメント】
施設は家族との信頼関係づくりに、広報誌「潮風」や子どもの成績表、行事予定表などを郵送している。その他には成績の良かった試験や賞状、学芸会・運動会のDVDを送っている。子どもとの関係が途絶えないように、電話を定期に入れている。何年も電話が繋がらないことがあったが、数年後に受話器を取ってくれたことがあった。子どもを施設に預けた後ろめたさに取れなかったと告白された。面会や一時帰省には、最寄りの交通機関まで職員が送迎する際に、家庭の状況を聞けたり、相談を受ける機会にもなっている。家庭支援専門相談員の配置はあるが、日常的には子どもの担当職員が動くことが多い。今後は、施設のファミリーソーシャルワーク機能の充実にも期待したい。
(11) 親子関係の再構築支援
A24 親子関係の再構築等のために家族への支援に積極的に取り組んでいる。 b
【コメント】
保護者は施設から遠い居住者が多い。このため来園時には、親子訓練室の他、面会室、心理療法室も使用している。家庭復帰支援記録には対象となる子どもとその家族の様子が記録されている。子どもが家庭に戻れるかどうかは保護者の居住地の児童相談所が詳細の情報を持っている。施設は子どもの状況を持ち、相互に照らし合わせて家庭復帰の時期を見定めている。家庭に戻った子どもの中には、再度、施設へ措置されるケースも少なくない。家庭復帰した家族の支援も視野に入れた包括的な支援体制が求められる。そのためには、家庭支援専門相談員を中心として児童相談所のある地域の社会資源を巻き込んだチーム支援が期待される。
前ページに戻る