社会的養護施設第三者評価結果 検索

静岡県立吉原林間学園

【1】第三者評価機関名 (株)第三者評価機構
評価調査者研修修了番号 S2021066
SK2021133
RO3c013


【2】種別 児童心理治療施設 定員 50名
施設長氏名 望月 美穂 所在地 静岡県
URL http://www.pref.shizuoka.jp>kousei
開設年月日 1962年09月01日 経営法人・設置主体 静岡県
職員数 常勤職員 38名 非常勤職員 19名
有資格職員 心理療法担当職員 12名 児童指導員(児童福祉) 18名
医師 4名 保健師 2名
栄養士 1名 家庭支援専門職員 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 50室(男子居室30室 女子居室20室) (イ)設備等 【居室・管理棟】居室 リビング・ダイニング トイレ 浴室 事務室 診療室 処置室 相談室等
(ウ) 【学校・心理療法棟】教室 パソコン室 理科室 家庭科室 音楽室 美術室 心理検査室 行動療法室 家庭療法室 面接室 食堂等 (エ) 体育館 診療所 グラウンド プール
【3】理念・基本方針 <支援理念>
1.児童の権利擁護
 子どもの人権を守り、一人ひとりの存在を尊重し、それぞれの成長・発達を支援します。
2.家族の尊重
 ご家族のお話に耳を傾け、思いを尊重し、協働します。
3.総合環境療法による治療
 学園の物理的環境、人的環境を含めた全ての環境が子どもの成長発達・回復の助けとなる総合環境療法を実施します。
4.受容的関わり
 Listen(子どもの訴えをよく聴く)、Accept(体験に寄り添い、受け入れる)、Support(取り組みを支え、手ほどきする)という受容的関わりを基本姿勢とし、一人ひとりの自己決定と意志を尊重し、自立が図られるよう心がけます。
5.専門性の維持・向上
 常に自己研鑽に励み専門性を深めます。
6.地域への還元
 地域の社会資源となれるよう運営に努めると共に、外来相談等を通して社会的な役割を積極的に果たすように努めます。

<基本方針>
基本目標  みんなが楽しく
モットー  ・職員は威力よりも魅力
      ・子どもが安らぎ満たされワクワクする
      ・目指すのは規制よりも自制
【4】施設の特徴的な取組 当施設は、被虐待児童等の治療・支援を行う県内唯一の児童心理治療施設として、児童の支援と共に、家族支援、社会的養護を担う児童福祉施設・専門里親等支援を行っている。令和元年に移転改築されるにあたり機能が強化され、児童精神科診療所が新設された。入所児童の医療支援の強化だけでなく、外来診療により東部地域の児童精神科医療を補完している。
また、当施設は、全国的にも数少ない公立公営の施設であり、職員は児童相談所や施設への異動があることから、関係機関との連携や、対人援助専門職の人材育成という点でメリットが大きく、県全体の児童福祉サービスの向上に寄与している。
【5】第三者評価の受審状況 2023年08月01日(契約日)~ 2024年02月29日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和元年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
【事業所独自の「支援ガイドライン」が支援理念の理解を深めています】
60年という長年の経験から積み上げられた実績を「吉原林間学園支援ガイドライン」に凝縮させ、子どもたちの生活と職員、双方の安全を守ることにつなげ、治療施設としての使命を果たす職員の根幹を支えています。支援ガイドラインは学園の生活支援の理念、基本目標、3つのモットーを詳しく解説しており、特に基本目標である「みんなが楽しく」は支援のキーワードとして職員に浸透しています。また3つのモットー「職員は威力よりも魅力」「子どもが安らぎ 満たされ ワクワクする」「目指すのは規制よりも自制」は、管理や抑制によってもたらされる平穏よりも、子どもが自らの人生を楽しむ主体となって生きられるよう、新任職員を導いています

【率先垂範とする施設長のリーダーシップがワンチームを形成しています】
通常おこなわれる総務課長の人事面談とは別に、職員と個人面談の機会をもち、職場での困り事や悩みに耳を傾けています。いつでも相談に応じる態勢で働きやすい職場づくりを推進するとともに、毎日宿直日誌に目を通し、申送りやケース検討会に出席して治療・支援の状況を把握しています。更に議場では必要な助言や課題の改善を示唆し、手本となる取組を話にのせ、職員の意欲向上につなげています。また長年児童福祉に携わってきた経験を活かし、職員のスキルアップを図るために自ら講師となって面接スキルに関する所内研修を実施するといった人材育成にも取組み、職員の専門性向上の一翼を担っています

【逐語の記録と報連相を起点として、組織的な質の向上が図られています】
宿直日誌には、子どもの言動と、対する職員の関わり、さらにそこからの子どもの反応が忠実に記録されています。午後1時から始まる申送りには、その日出勤する職員をはじめ施設長、治療指導課長、診療課職員、教員が集まり、子どもの表れの理解が報告され、対応について協議が毎日積まれています。子どもに合ったよりよい支援を多職種で協議する日々の繰り返しは、職員の気づきや見立てる力、指導する力を高めていることは明白です。また職員がひとりで問題を抱え込まないよう組織として対応している事も優れた点であり、相互で助言し合うことを通じて、職員一人ひとりの自己肯定感の高まりに実っていることも受け止められます

【小規模ユニット制が子どもとの距離を縮め、信頼関係に結ばれています】
掃除や洗濯物を畳むといった家事を一緒におこない、何気ない会話をもちながらファミリールームで過ごすことは子どものエネルギーチャージとなり、モチベーションが上がる貴重な時間となっています。ユニット制となり、生活の場において子どもと過ごす時間の増大とともに、居室で相談を聴く機会も増えています。例えば、夜中に起き出してしまい朝まで眠らない子どもには、その子どもに合ったリラグゼ―ションを探り、安心して眠るための工夫を編み出すほか、「生活が楽しくないと頑張れない」と溢す子どもとは「楽しくなるためにはどうしたらいいか」を話し合うプロセスが信頼関係を培っています


◇改善を求められる点
【現状に見合った支援ガイドラインの見直しが期待されます】
平成27年に発行された支援ガイドラインは、大舎制の頃のものとなっています。令和元年に現在地へ移転後は小規模ユニット制になり、子どもを取り巻く環境も変化して新たな課題に直面しています。現状に見合った見直しが図られることを期待いたします
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  第三者評価を受けるための準備作業や、子どもへのアンケート、訪問調査を通して、学園の運営のあり方や治療・支援の取組を振り返ることができ、不足している点や気づいていなかったことを知る有意義な機会となりました。
 前回の受審は、大舎制から小規模ユニット制に移行後まもなくであり、運営体制を整える途上にありました。その後、第三者評価で御指摘を受けた点や取組が不十分だったことを意識して、改善に取組んできました。今回の受審では、新しい体制と、積み上げてきた治療・支援について、外部の視点から客観的に評価していただき、未だに不十分な面はあるものの、改善できている面もあることが明確になり、励みになりました。
 御指摘いただいた、支援ガイドラインの見直しや地域交流等の課題については、改善に向けて取組んでいきたいと思います。
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