社会的養護施設第三者評価結果 検索

浜松乳児院

【1】第三者評価機関名 (株)中部評価センター
評価調査者研修修了番号 SK2021148
SK2021155



【2】種別 乳児院 定員 15名
施設長氏名 水谷 暢子 所在地 静岡県
URL http://tootsu.jp/
開設年月日 1974年05月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人遠淡海会
職員数 常勤職員 18名 非常勤職員 8名
有資格職員 社会福祉士 2名 医師 2名
看護師 2名 保育士 14名
理学療法士 2名 公認心理師・認定心理士 2名
施設設備の概要 (ア)居室数 2室 (イ)設備等 サンルーム兼ほふく室、面会室、食事室
(ウ) 浴室、調理室、遊戯室 (エ) 親子生活訓練室、心理療法室、相談室
【3】理念・基本方針 ★理念
【法人の基本理念】
 周りから及ぼす日々の自然の教えは、教えるとか指導するとか以上に大きな影響を与えます。施設の日常においては、周りの土地、建物、設備及び人等の総てが施設の良き雰囲気作りの要素としてふさわしくあるよう、施設全体の環境整備に努めます。
 特に、施設の雰囲気作りに及ぼす「人」の影響の大きいことを考え、職員各々がその成長を心掛け、もって良き雰囲気の醸成に努めます。

★基本方針
◇安心できる良い環境づくり◇
 ~かけがえのない大切な生命(いのち)の輝きを温かく見守る養育~
1.一人ひとりのこどもの最善の利益を追求する。
2.こどもの権利を護り、快い体験をたくさん引き出す家庭的養育により、将来の人格形成の基礎となる基本的信頼感を獲得させる。
3.安心、安全感のある応答的環境の保障により、共感、思いやり、自尊感情を育む。
4.個(性)を尊重し、たくましく、社会性を伸ばし自立への支援をする。
5.認め合い・分かち合い・支え合いにより、世代を超えたより良い絆を大切にした家庭再生のための養育支援を行う。
【4】施設の特徴的な取組  近年、被虐待児や未熟児、発達的課題を持ったこどもも多く、これらのこどもたちは定期受診やリハビリテーションに通院している。院内でも、小児精神科医や理学療法士の助言を仰ぎ、日常生活の中で治療的な取り組みやベビーマッサージ、ブレインジムを実施している。さらに理学療法士によるリハビリテーションを毎週1回実施している。また、感覚統合的な運動要素を盛り込み、各年齢・発達行動特性に沿った運動遊びを月2回程度実施している。
 乳児院の多機能化事業の一つである育児指導機能強化事業を令和2年度より開始し、『かもっこ』と名付け、地域の子育て家庭の相談に応じるとともに、「おでかけ広場」としてベビーマッサージと親子運動遊びの出張プログラムをそれぞれ月2回、さらに這い這いやよちよち歩きを始めるようになった時期のこどもを対象にした「カムカムらんど」を月1回開催し幼稚園入園前の乳幼児の遊びの場と発達等相談の場を提供しているがいずれも盛況である。
 児童相談所との連携では、浜松市は「はままつ『育ち・育ての連続性をつなぐ』支援事業」、静岡県は発達支援事業を実施しているが、テリングライフストーリーワークの一環として担当者からの想いを綴るという新たな展開も増えている。当院の養育目標立案・評価のPDCAサイクルでは、こども一人ひとりへの支援の充実のため、重点目標の取り入れとその評価に全職員がかかわる機会を設けているが、これによりこども像の共有が図られている。
 静岡県内をはじめ全国の保育施設での不適切保育の報道を受け、当院では、自らの足元を見つめこどもに対する関わりについての話し合いの場を設けている。
【5】第三者評価の受審状況 2023年05月26日(契約日)~ 2024年05月08日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和2年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
◆理念に託す管理者(院長)の思い
 玄関を入ると、大きな紙に「令和5年度の基本理念」が記載されて掲示されている。「子どもの最善の利益は、支援する職員の力だけでなく、子どもを取り巻く周辺環境や雰囲気によって成し遂げられる」との基本理念は創業時から変わっていないが、説明文にその折々の世情や福祉動向が盛り込まれている。管理者の強い思いが込められたこの掲示物は毎年更新されている。

◆透明性の高い事業運営
 法人のホームページでは、理念や方針、法人の概要、事業案内等、法人の体裁をくまなく開示している。苦情解決の体制や苦情内容等は事業報告書や広報誌に掲載されている。事業報告書や広報誌は、ともに法人のホームページ上で公開されており、誰でも苦情等の情報を確認することが可能である。事業所のホームページでは、「乳児院とは」のコーナーで制度を分かりやすく説明し、「一日の生活」や「年間行事」、「行事の様子」のコーナーでは、正しい理解が得られるように写真を多く掲載している。事業所の現金出納に関しても内部牽制が働く仕組みとなっており、事業運営全般にわたって透明性は高い。 

◆多職種参画の自立支援計画
 自立支援計画の作成や見直しにあたり、担当職員のほか個別対応職員、看護師、栄養士、家庭支援専門相談員、心理療法担当職員、理学療法士等の各専門職が、それぞれの立場で身体・生活状況を把握し、養育・支援方法を話し合っている。それを基に、さらに児童相談所の担当者の意見も参考にして、6ヶ月ごとに自立支援計画を作成している。多職種職員の参画により、理念に謳う「子どもの最善の利益を追求するための周辺環境」が整っていく。

◇改善を求められる点
◆中・長期計画の策定
 明文化された中・長期計画はないが、理事会等では、今後の乳児院の多機能化が議論されている。在宅支援や病児・病後児の医療的支援、家庭復帰以後のアフターケア、里親支援等々である。職員配置の問題もあって期間は限定的であるが、既に里親に対するレスパイト・ケアは実施されている。3年先、5年先の事業展開を見極めることは難しいが、可能な範囲で事業の方向性を見定め、中・長期計画として文書化することが望ましい。中・長期計画は、単年度の事業計画を作成する際の後ろ盾ともなる。

◆災害時の地域との連携体制の構築
 災害時の対応に関しては、「防災管理規程」や「消防計画」等の規程・マニュアル、災害時のBCP(事業継続計画)が整備されている。また、各種防災資機材の整備もしている。各マニュアル等は、毎年度職員に説明しており、毎月、防災訓練や資機材の点検を実施している。行政への通報訓練を除き、自治会等地域と連携した訓練までは行っていない。特に夜間の災害時には、地域の協力が不可欠となる。地域との連携体制を整えることが望ましい。また、作成したBCPに基づいた訓練の実施と、訓練で見出された課題への取組みについても、今後検討されたい。

【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  今回第三者評価受審をした年度は、静岡県内において通園バス園児置き去り事件や不適切養育の摘発で、こども家庭庁発足年度ながら、こどもを巡る「安心・安全」対策を問い直す年度でした。安全装置などのハード面の取り入れも十分大切ですが、「福祉は人なり」でソフト面での養育者の深い配慮なくして、「いのち」も「育ち」も補償はないことを再認識させられました。乳児院が「こどものいのちを護る最後の砦」であることを踏まえ、様々な観点からの評価について熟慮しながら、見つめ直していきたいと思います。
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