【1】第三者評価機関名 | (社福)大阪府社会福祉協議会 |
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評価調査者研修修了番号 | SK15190 1301C018 |
【2】種別 | 児童心理治療施設 | 定員 | 50名 | |
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施設長氏名 | 髙山 嘉史 | 所在地 | 大阪府 | |
URL | https://www.osakasuijyorinpokan.com/ | |||
開設年月日 | 2006年04月01日 | 経営法人・設置主体 | 大阪水上隣保館 | |
職員数 | 常勤職員 | 31名 | 非常勤職員 | 9名 |
専門職員 | 社会福祉士 | 4名 | 保育士 | 6名 |
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社会福祉主事 | 15名 | 臨床心理士 | 5名 | |
中学校教諭 | 1名 | 看護師 | 1名 |
施設設備の概要 | (ア)居室数 | 32室 | (イ)設備等 | |
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(ウ) | (エ) | |||
【3】理念・基本方針 | ひとりひとりの子どもの存在を尊重し、それぞれが目標に向けて成長発達するべく援助をし、子どもの心理治療を行う専門施設。人間関係構築力の回復を目指して生活指導を中心に心理・医療・学校教育が一体となって総合的で専門的な支援体制の確立を目指す。 | |||
【4】施設の特徴的な取組 | 1.ホーム制の採用 50名の定員を5つの生活体(本体×4、小規模グループケア)に分類。本体部門は10~12名の集団での生活を実施。特に食事や入浴、洗濯等も居住する生活空間でおこなわれるといった、より家庭的な環境での養育を実施。家庭復帰の際にも自立の際にも必要な、具体的な生活内容を垣間見、そのスキルを身につける機会は圧倒的に多い。職員との関係づけを、具体な(生活)活動を通しておこなえることもメリットとして大きい。 一方、職員がチームで子どもたちを処遇する体制は二つのホームを宿直室をはさんでつなげて、ホーム間で子どもの行き来はできないが、職員は張り付いたホームを超えてもう一方のホームに応援に行ける動きができることによって可能としている。 また生活集団の少人数化は、家庭的とまではいかずとも、一定期間共に過ごす中で相手や自分を知り、相手や周囲を慮っていくことについてトレーニングするには適当な人数。職員配置上は合理性を欠くため、1日を通しての職員配置数は手厚い(16:30~21:00に計10名)。なお、処遇困難な子どもが増加する中、更なる生活集団の少人数化や、居室の個室化が望まれる。 2.児童養護施設、乳児院との合築 総合児童棟には、児童養護施設(遙学園)と乳児院を併設。特に児童養護施設との併存はメリットが大きい。 ①児童心理治療施設単独の児童集団では実施が難しいグループワーク(クラブ活動)や行事に取り組める。クラブではエイサー。行事は運動会、クリスマス会、夏祭り等。子どもにとっては健康な子ども集団と交われること、一方職員側は職員間の連携が取りやすい故子どもを支援しやすいこと等のメリットがある。 ②相互に措置変更を実施する際、どちらに移るにせよ環境変化が最小限で済むため、子どもにかかる負担感は圧倒的に軽い。住まう建物は変わらず、学校を含む生活地域も変化しない。また、間接処遇も含め見守る職員集団にも顔なじみが多い。人事異動した職員と再び関わりが始まることさえある。またこういったことは、保護者にとっても負担が軽く受け入れられやすい。そして、職員間の情報引き継ぎを(もちろん個人情報保護規程には気を付けなければならないが)質量ともに豊富におこなえることが、子どもを支援する上では大きな強みである開設以来11年間で〔遙からの措置変更8名、遙への措置変更9名〕の実績。 ③児童養護施設と乳児院が併設され、職員の異動を行ったり、研修を共同して開催したりしている。児童心理治療施設の治療的なかかわりのみならず、生活施設のダイナミックなグループワークや乳児院の人生早期のかかわり、医療的な配慮、などを見知ったり体験したりできることで職員の処遇観を広げることができ、人材育成に寄与している。 3.教育機関との柔軟な連携 児童心理治療施設では本校登校を体験しにくいことがウィークポイントとしてあるが、当施設は本校(当施設の地域校)との関係性が強く、相当積極的に施設内分教室から本校へ子どもを移行している。籍を分教室に置きながら登校できる『支援登校』制度も設けており、学期途中から本校を開始するなど柔軟に本校を体験することが可能となっている。子どもたちの多くは入所直前に地元校で少なからず不適応を起こしており、インケア中に一般校に適応できるかどうかは、家庭復帰や児童養護施設への措置変更を目指すにあたっての重要な指標の一つである。故、この体制は当施設の大きな強みである。また何よりも、子どもの成長という面からも高い効果がある。子どもによっては、脆弱性をはらみながらも本校の集団に身を置き、クラス活動やクラブ活動に参加し、成長を遂げることが往々にしてある。時に学校側から、本校から分教室への移行を提案される子どももいたが、不適応行動も抱えてもらいながら本校に登校できることは大きな強みである。 この施設と学校の強力な関係性については、遙学園がこの地域に長く根づいてきた歴史に起因する部分は大きい。更に、近年は毎年およそ小学生50名余、中学生30名余といった大量の子どもたちを本校に通わせる中、学校の処遇力が鍛えられてきた面は大きい。その中で、それぞれに学校担当職員、施設担当教員を配置し交流し、かつ現場レベルでも情報共有に尽力してきていることが当然背景にある。また2006年度児童心理治療施設開設後は、当施設と施設内分教室との情報共有を通じた交流は質量とも豊富で、互いの理解が促進されている。分教室経験教員が本校に戻ることで、本校における施設理解への波及効果が確実に窺える。ちなみに小中分教室とも毎年、4名のうち2名ほどの職員が本校と入れ替わる。 分教室は本体施設との綿密な情報交換の機会を設けて運営しており、子どもに起こった問題を共有しながら連携して対応している。そのような協同体制を基礎に教室は、子どもたちが前向きに取り組める場所になっており開設以来11年不登校は一切ない。 |
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【5】第三者評価の受審状況 | 2017年06月19日(契約日)~ 2018年02月27日(評価結果確定日) | |||
受審回数 | 1回 | 前回の受審時期 | 平成26年度 | |
【6】総評 | ◇施設の概要 ひびき(以下「当施設」という。)は、平成18年4月に情緒障害児短期治療施設「ひびき(定員50名)」として現在の所在地(大阪府三島郡島本町)に、児童養護施設「遥学園」および「大阪水上隣保館乳児院」との合築で開設、平成29年4月に法改正に伴って種別が児童心理治療施設に改称されました。大阪府と京都府の境の山の斜面を活用した立地で、緑豊かな自然環境に恵まれています。当施設を運営する社会福祉法人大阪水上隣保館(昭和27年認可)は、創設者が昭和6年に大阪市港区で水上生活者の子弟への救済事業を開始して以来、80余年の永きに渡り福祉事業を実施、現在は上記3施設以外に、保育所、特別養護老人ホーム、保育福祉専門学校等、多岐にわたる社会福祉施設や社会福祉事業等を運営しています。当施設は、法人の理念であるキリスト教の「隣人愛」の精神に基づく「援助を求める人いるならば、ためらわず手を差し伸べる」を基に、生活する一人ひとりの子どもの存在を尊重し、可能性を信じ、それぞれが目標に向かって成長発達できるよう支援を行っています。施設敷地内の別棟には、地域の小・中学校の分教室である「みゅーず」が設置され、必要に応じて本校との交流が行われています。施設全体が治療の場であり、施設で行っている全ての活動が治療であるという「総合環境療法」の考え方に基づいて、生活支援・心理支援・医療支援・教育支援が一体となった総合的かつ専門的治療・支援が実施されています。 ◇特に評価の高い点 治療・支援に係るマニュアルを含む「援助の手引き」の策定 毎年度初めに全職員に配布される「援助の手引き」には、施設の運営方針、組織体制、子どもの治療・支援に係る諸マニュアルや申し合わせ事項等が含まれており、業務全般を網羅した内容になっています。特に治療・支援マニュアルである「日課指導の業務内容と留意点」は平日、日祝、夏期休暇、冬期休暇に分かれ、児童の動きと対応する職員の動き、留意事項を詳細に記載した内容で、精度の高いマニュアルになっています。年度末には内容を更新して新年度版としています。 施設敷地内分教室通学と本校進学の選択制 児童心理治療施設の特色である総合環境療法の重要な柱の一つが、教育部門との連携ですが、当施設は施設敷地内に設置されている分教室への通学に限定することなく、子どもの発達状況等を考慮して、地域の本校への通学を実施しています。施設が閉鎖的にならず開かれた施設として、また、子どもが様々な社会的体験を得る意味も大きいと思われ、高く評価出来ます。 自主的な通所対応 当施設は、入所部のみの児童心理治療施設で通所部を開設していません。しかしながら、施設の持つ診療所機能を活用して必要な子どもに対して退所後の通所治療を行っている点は、子どものアフターケアや施設が地域において貢献できるものを志向する意味で有効であると思われ、高く評価出来ます。 ◇改善が求められる点 施設機能の地域への還元の取り組みの推進 前回の第三者評価でも指摘されていますが、地域の福祉ニーズに基づいた事業・活動は、法人あるいは法人内の他施設の事業・活動への協力というレベルに留まっており、児童心理治療施設としての特性を生かした事業・活動は僅少です。中長期事業計画に事業・活動として取り組む方向性が示されていますので、さらに具体化し実行することが望まれます。 自立支援計画策定等の過程への子ども参加(意向と同意の表明)の仕組みの構築 自立支援計画策定・見直しは、定められた時期や手順に従って適切に行われていますが、提示された手順には子ども等の意向確認と同意の仕組みが確認できません。子どもの権利である「意見表明権」を保障する観点またインフォームドコンセントの観点からも、策定・見直しの過程に子どもの参加(意向確認と同意の表明)を保障する仕組みの構築が求められます。 職員一人ひとりの育成に向けた取り組み 充実した内容の職員の教育・研修の体制は確認しましたが、「職員一人ひとり」という観点が不十分です。職員との定期的な個別面談等を実施し、職員一人ひとりの目標の設定、進捗状況や達成度の確認、新たな目標の設定というPDCAサイクルによる職員育成の仕組みの構築が求められます。 総合防災対策の構築と避難訓練の実施 火災避難訓練は毎月実施されていますが、それに留まらず、将来に発生が予想される大規模災害(地震および土砂災害等)に備えて、近接する施設(乳児院、児童養護施設、特別養護老人ホーム)との合同で、山の斜面地に建っているという施設の立地条件を考慮した総合的な防災計画の策定及び避難訓練、特に夜間想定の避難訓練の実施が求められます。 |
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【7】第三者評価結果に対する施設のコメント | 評価機関の評価をいただき、その内容について、早速、職員会、運営委員会で共有いたしました。 指摘いただいた分で、管理規定やマニュアルの文言の訂正はすぐに行いました。援助計画への子どもの参加や職員一人ひとりの育成に向けた取り組みについては、事業計画において大枠の研修計画や、自治会の運営方針を示しましたので、今後具体的に進めていこうと思っております。 地域支援の取り組みについては、児童心理治療施設としての取り組みを運営委員会で議題にしながら検討していきます。 評価をいただきました、「援助の手引き」については、細かい文言の見直しや、新たな計画の策定など、今のニーズに合わせた改変を怠らず行っていこうと考えております。 子どもたちが答えてくれた利用者アンケートについては、職員会でも子ども達の表現しているものと、職員の受け止め方について、意見を出し合いました。このアンケートについては、常に職員も念頭に置きながら、子どもたちとの関係を考えていこうと思っております。 |