社会的養護施設第三者評価結果 検索

風越乳児院

第三者評価結果詳細
共通評価基準(45項目)Ⅰ 養育・支援の基本方針と組織 
1 理念・基本方針
(1) 理念、基本方針が確立・周知されている。

第三者
評価結果
1 理念、基本方針が明文化され周知が図られている。 a
【コメント】
 子どもの人権を擁護し、子どもの最善の利益を追求しようとする理念を掲げ、職員はそれを常に読み合わせ、心に留めて支援にあたっている。保護者に対しても、子どもの入所時に理念や基本方針について説明し、年に2回の保護者会においても理念に触れる話をしている。
2 経営状況の把握
(1) 経営環境の変化等に適切に対応している。 第三者
評価結果
2 施設経営をとりまく環境と経営状況が的確に把握・分析されている。 a
【コメント】
 施設長が関係団体の関東ブロックの委員を務め、全国レベルの情報を他に先んじて入手している。県内の児童相談所や児童養護施設とも連携関係にあり、相互に情報交換を行って施設運営に役立てている。全国的に里親制度の推進が図られる中、当施設においても、今年度3名の子どもが里親制度等(1名は特別養子縁組)の運用により移行措置の対象となった。
3 経営課題を明確にし、具体的な取組を進めている。 a
【コメント】
 「家庭復帰の支援と復帰後の家庭支援」、「里親委託率の向上と里親支援」、「虚弱児や発達障害傾向のある子どもへの支援」の3点を大きな経営課題として捉えている。これらの課題は、乳児院が抱える永遠のテーマの一部でもあり、中・長期的な視点で捉える必要があることから、地道な対応・対策が取られている。行政機関(市や児童相談所)とのさらなる連携の強化、保護者会の充実と母親への教育・研修の実施、様々な障害特性に対応できる専門性の高い職員の育成等々、改善に向けての確実な取り組みが進んでいる。
3 事業計画の策定
(1) 中・長期的なビジョンと計画が明確にされている。 第三者
評価結果
4 中・長期的なビジョンを明確にした計画が策定されている。 b
【コメント】
 「中長期計画」として平成25年度から34年度までの10ヶ年の計画が策定されている。平成29年度までの中期5ヶ年については具体的な内容を伴っており、可能なものには数値目標が設定されている。しかし、平成30年度以降の5年間に関しては具体性を持った計画が策定されていない。県の指針が示されないこともあるが、適切な見直しを実施した上での具体的な中期計画の策定を期待したい。
5 中・長期計画を踏まえた単年度の計画が策定されている。 b
【コメント】
 具体的な内容を伴った中期計画が平成29年度で終了しており、今年度の事業計画策定の拠り所となる中期計画が存在していない。依って、前年度の事業計画の反省(事業報告書)に立って、当期の事業計画を策定している。
(2) 事業計画が適切に策定されている。
6 事業計画の策定と実施状況の把握や評価・見直しが組織的に行われ、職員が理解している。 b
【コメント】
 職員の参集の下、前年度の事業計画を振り返り、今年度の事業計画を策定している。今年度の重点課題(目標)として、「養育の充実」、「人材の育成・専門性の向上」、「施設の有効活用」、「地域支援の推進」、「経営基盤強化」の5点を挙げているが、数値目標の設定はない。期中での進捗評価や年度末の最終評価(事業報告書)を有効に実施するためにも、可能な課題に関しては、数値目標を設定して取り組むことが望まれる。また、重点課題に取り上げて取り組んだ結果を、事業報告書の中で詳細に言及することが望ましい。
7 事業計画は、保護者等に周知され、理解を促している。 a
【コメント】
 事業計画の内容を、年に2回開催される保護者会で詳しく説明している。不定期の発行ではあるが、施設の取り組みや連絡事項を伝える「赤ちゃんだより」を保護者に送り、担当の職員が毎月手書きの手紙を保護者に送付している。この手紙には、近況を伝える子どもの写真が添えられている。
4 養育・支援の質の向上への組織的・計画的な取組
(1) 質の向上に向けた取組が組織的・計画的に行われている。 第三者
評価結果
8 養育・支援の質の向上に向けた取組が組織的に行われ、機能している。 a
【コメント】
 3年に1度、第三者評価を受審し、その結果を施設運営に反映させようとしている。その他にも、外部の意見や要望を施設運営に反映させようとの姿勢が見られる。職員の意見はもとより、保護者の意見や実習に訪れる実習生からの意見も謙虚に受け止めている。
9 評価結果にもとづき組織として取り組むべき課題を明確にし、計画的な改善策を実施している。 a
【コメント】
 第三者評価や自己評価、外部からの意見を参考として様々な改善活動につなげている。自己評価や職員の意見から、個人情報の取り扱いを見直し、原則個人情報の施設外持ち出しは禁止事項であるが、「個人情報持ち出し表」に記載して持ち出すことを認めることとした。保護者からの意見によって、秘匿性を担保するために「意見箱」の設置場所を変更した。
Ⅱ 施設の運営管理
1 施設長の責任とリーダーシップ
(1) 施設長の責任が明確にされている。 第三者
評価結果
10 施設長は、自らの役割と責任を職員に対して表明し理解を図っている。 a
【コメント】
 施設長は、事業計画の基本方針の中で自らの所信を表明している。役割や責任の所在は、事業計画の中の「風越乳児院職員体制」や「運営組織」、「職員業務分担表」、「施設管理責任分担」等によって明確になっている。施設長の権限に関しては、「経理規程」及びその「細則」に明記されている。施設長不在時の職務権限代行執行者は、「運営組織」の序列に従い、第1順位が副院長、第2順位が主任となる。
11 遵守すべき法令等を正しく理解するための取組を行っている。 a
【コメント】
 施設長自らが、施設運営や子どもの人権に関係する研修等に積極的に参加し、習得した知識や情報を研修報告として職員に伝達している。その他、社会人として遵守しなければならない各種の法令にも目を向けている。例示すれば、「道路交通法」に関しては、運転免許証の定期チェックを行い、自動車損害保険の任意加入部分の適切性を確認している。それらの取り組みによって、施設長のみならず職員間にも高いコンプライアンス意識が醸成されている。
(2) 施設長のリーダーシップが発揮されている。
12 養育・支援の質の向上に意欲をもちその取組に指導力を発揮している。 a
【コメント】
 施設長自らの主観ではなく、職員の総意として、客観的に「養育・支援の質の向上」を評価しようとしている。そのために施設内に「子どもの適切な関わり方検討委員会」を立ち上げ、職員が疑問に感じたことに対し職員会議を使ってフィードバックしている。子どもに対する人権擁護の意識を高めるため、施設長のみならず全ての職員に対して研修参加を推進している。
13 経営の改善や業務の実効性を高める取組に指導力を発揮している。 a
【コメント】
 職員面談を通して職員の意見を聞き取り、業務改善や効率化につながる施策を打っている。職員会議の効果的運用を図り、会議時間の短縮に成功した。休みの日の責任体制を明確にするため、休みの日においても必ず1名以上の主任の出勤を勤務シフトに盛り込むこととした。子どもの健康・保健管理や医療的ケアは、3名の看護師資格を持つ職員の専任とした。これらによって、業務の実効性が高まっただけでなく、働きやすい職場づくりの一施策ともなっている。
2 福祉人材の確保・育成
(1) 福祉人材の確保・育成計画、人事管理の体制が整備されている。 第三者
評価結果
14 必要な福祉人材の確保・定着等に関する具体的な計画が確立し、取組が実施されている。 b
【コメント】
 中・長期計画の有効な見直しが実施されておらず、平成30年度以降の具体的な計画が見えないことから、将来的な必要人材に関する計画が立てづらくなっている。施設長は、国が求める施設の多機能化や高機能化、多様化、小規模化に対応するためには、母親支援や里親支援に対応できる職員の増員と資質の向上、看護師や心理士等の医療職の増員(採用)が欠かせないと考えている。今後策定される中・長期計画の中に、将来を見据えた人員計画を盛り込むことが望まれる。
15 総合的な人事管理が行われている。 a
【コメント】
 キャリアパスを構築し、地方公務員(市職員)に準じた給与体系を実現している。経験値の高い中途採用職員が不当に低く処遇されることなく、相応の処遇が受けられる仕組みもある。成果主義を取らない形で、人事考課制度が運用されている。自己評価と上司査定を行い、そのギャップ分析と面談による人事考課制度であり、処遇面より人材育成面に重きを置いた制度運用となっている。
(2) 職員の就業状況に配慮がなされている。
16 職員の就業状況や意向を把握し、働きやすい職場づくりに取り組んでいる。 a
【コメント】
 職員の有給休暇は「休暇承認票」で管理されており、管理者や副院長を含め、職位職階による有給休暇の取得に関する偏りは見られない。時間外労働に関しては「時間外勤務命令表」で管理され、サービス残業は確認されない。子育て中の職員には短時間勤務を認めており、ワーク・ライフ・バランスにも配慮している。小規模な組織単位であることから相談窓口の設置こそないが、個別面談や職員親睦会が有効に機能しており、職員にとっての働きやすい職場となっている。
(3) 職員の質の向上に向けた体制が確立されている。
17 職員一人ひとりの育成に向けた取組を行っている。 a
【コメント】
 事業計画の中に、「人材の育成・専門性の向上」の項目を設け、「施設が求める職員像」の概略を記載している。そこへ到達するための道筋として、「業務目標・成果シート」を使用した目標管理制度を運用している。「業務目標・成果シート」は、標準的な第三者評価基準を意識した様式となっており、制度としての妥当性の高さを示している。
18 職員の教育・研修に関する基本方針や計画が策定され、教育・研修が実施されている。 b
【コメント】
 職員研修の基本方針は、事業計画の「人材の育成・専門性の向上」の中で明確にしている。知識と技術の専門性の向上を目的として、新任、中堅、ベテラン職員のそれぞれに階層別の研修を計画・実施し、人材育成を図っている。研修履修後には「出張復命書兼報告書」の提出を求め、研修で学んだ知識や技術、また、意識の変革等を確認している。しかし、研修が「出張復命書兼報告書」で完結しており、研修効果を測定したり研修自体の必要性を評価・検証する仕組みがない。PDCAサイクルに沿った「チェック」機能を構築されたい。
19 職員一人ひとりの教育・研修等の機会が確保されている。 a
【コメント】
 数多くの研修が計画され、職員の研修参加の機会は多い。平成30年度実績として、外部研修には35講座に述べ64名が参加している。内部研修に関して、支援の標準化を図ることを目的とした研修は、複数回の開催日時を予定してすべての職員が受講できるよう工夫している。外部の専門家を招聘して行われる研修には、それぞれの専門分野を担当する職員が参加している。職員をスーパーバイザーとするスーパービジョン体制も整っている。
(4) 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成が適切に行われている。
20 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成について体制を整備し、積極的な取組をしている。 b
【コメント】
 「実習生受入規程」があり、保育実習生を主体に積極的な受け入れを行っている。実習全般を統括する担当者を定め、現場で実習生を指導する職員(保育士、栄養士、看護師、家庭支援専門相談員等)への事前研修の実施もある。平成30年度実績で、保育実習生の受け入れは18名、延べ181人日である。課題は、実習終了時の反省会の記録を残していないことであり、職員研修と同様に、ここでもPDCAサイクルのチェック機能が欠落している。
3 運営の透明性の確保
(1) 運営の透明性を確保するための取組が行われている。 第三者
評価結果
21 運営の透明性を確保するための情報公開が行われている。 b
【コメント】
 法人のホームページで、理念や基本方針、事業の概要、沿革等を公開している。苦情情報(意見、要望、苦情等)に関しては、その詳細を事業報告書の中で明らかにしている。平成30年度の受付実績は、要望6件、苦情7件であったが、第三者委員にまで至る内容の苦情はなかった。法人のホームページ上で、事業計画や事業報告等を確認することができなかった。事業運営の透明性、健全性を担保する意味合いからも、より多くの情報を公開することを期待したい。
22 公正かつ透明性の高い適正な経営・運営のための取組が行われている。 b
【コメント】
 「経理規程」等の定めにより、施設の事務、経理、契約、取引等は適切に執行されている。「経理規程」や「職員業務分担表」によって、内部牽制の仕組みも構築されている。法人監事による内部監査、県や市による行政監査においても、特段の改善指摘は受けていない。より事業運営の透明性、健全性を内外に示すためにも、外部の専門家による外部監査の実施が望まれる。外部監査は費用面でも大きな負担を強いることとなるため、中・長期計画(収支計画)に盛り込むことが望ましい。
4 地域との交流、地域貢献
(1) 地域との関係が適切に確保されている。 第三者
評価結果
23 子どもと地域との交流を広げるための取組を行っている。 a
【コメント】
 事業計画の基本方針の中で「地域支援の推進」を重点課題として取り上げ、さらに養育方針の中で「地域支援・地域交流」として具体的な取り組みを羅列している。文化祭や祭りなどの地域行事に積極的に参加し、招待を受けた人形劇や音楽鑑賞会等にも参加している。昨年度は、地域交流支援事業として「遊びの教室(赤ちゃんと遊ぼう)」を年間15回開催し、合計218名の子どもと保護者が集まった。
24 ボランティア等の受入れに対する基本姿勢を明確にし体制を確立している。 b
【コメント】
 一定の制約はあるが、可能な範囲でボランティアを受け入れている。毎月1回、里親会がベッドの消毒や花壇の手入れ、雑巾縫いに訪れている。年間4回、飯田ローターアクトクラブも同様の活動である。毎年1回、日赤奉仕団が施設の窓ふきや側溝の掃除に来院する。小・中学生の子育て体験学習を受け入れ、昨年度は9校11名の実績がある。夏休みには、サマーチャレンジとして中・高校生7名を受け入れた。それらは受け入れマニュアルに沿って実施されているが、マニュアルに作成日の記載がなかった。最新版管理上の課題を有す。
(2) 関係機関との連携が確保されている。
25 施設として必要な社会資源を明確にし、関係機関等との連携が適切に行われている。 a
【コメント】
 地域の社会資源のリスト、電話帳(短縮ダイヤル)を使った「連絡先一覧」を備えている。その他にも、医療機関や事務関係機関のリストが作ってある。市の子育て支援課や児童相談所とも、緊密な連携を図っている。
(3) 地域の福祉向上のための取組を行っている。
26 地域の福祉ニーズ等を把握するための取組が行われている。 a
【コメント】
 昨年度実績で年間15回、地域交流支援事業として「遊びの教室(赤ちゃんと遊ぼう)」を開催し、地域から子育て中の親子218名が来院した。その折に保護者アンケートを配付して回収し、地域の福祉ニーズの把握に努めている。市の子育て支援課や児童相談所からも、地域の福祉ニーズに関する情報が寄せられる。
27 地域の福祉ニーズ等にもとづく公益的な事業・活動が行われている。 a
【コメント】
 地域の子育て中の母親に依頼したアンケートから、また利用中の子どもの保護者の意見から、ショートステイや災害時の一時的な避難場所として登録し、近隣市町村の要請にも応えている。ショートステイ事業は、地元飯田市をはじめ9市町村と契約している。外部の講師を招聘して専門的な講演会を開いたり、施設の職員が講師となって、養育や看護、栄養等の講演をすることもある。
Ⅲ 適切な養育・支援の実施
1 子ども本位の養育・支援
(1) 子どもを尊重する姿勢が明示されている。 第三者
評価結果
28 子どもを尊重した養育・支援の実施について共通の理解をもつための取組を行っている。 a
【コメント】
 子どもへの聞き取りが難しい分、職員に確認を行っている。具体的には基幹的職員、グループリーダー、副リーダーで結成された適正な関わり方検討委員会にて年2回アンケートを実施し、アンケートの中でも自由記述形式で適切な関わりについて聞き取りをしている。内容としても自己チェックだけでなく、「不快に思うような支援はなかったか」というような相互確認の項目も含まれており、有効性を感じることができた。
29 子どものプライバシー保護に配慮した養育・支援が行われている。 a
【コメント】
 子どものプライバシーの保護に関しては、マニュアル・規程を整備しており、一人ひとりの子どもにとって生活の場にふさわしい環境も十分に提供されている。職員に対しても内部研修にて周知されている。外部の目がある時には、子どものおむつ替えの際には別室に移動したり、ついたてを立てたりして外部の目を遮る配慮をしている。
(2) 養育・支援の実施に関する説明と同意(自己決定)が適切に行われている。
30 保護者等に対して養育・支援の利用に必要な情報を積極的に提供している。 a
【コメント】
 理念や基本方針は、事業計画やホームページに記載されている。ホームページは施設の特徴が分かり易く記載され、事前見学の要望も受け入れている。入所時にも保護者に対して丁寧に説明し、情報提供ができている。事業の性格上、事業の内容の全てを公表することはできないが、保護者等に対しても可能な限り口頭で説明し、毎年変わらない内容はホームページで確認することができる。
31 養育・支援の開始・過程において保護者等にわかりやすく説明している。 a
【コメント】
 入所時の各種同意は、書面において確実に行われている。養育の過程では子どもの日々の生活記録が細かくとられ、健康状態も細部にわたって把握している。面会や帰省の際には十分な情報提供が行われ、保護者との関係性が良好であることが書面や記録からも伝わってくる。
32 養育・支援の内容や措置変更、地域・家庭への移行等にあたり養育・支援の継続性に配慮した対応を行っている。 a
【コメント】
 支援内容が大きく変更になる時には、FSW(家庭支援専門相談員)と基幹的職員が中心となり、児童相談所と連携をとって対応している。退所時には、子どもの特徴や発達上の留意点などを、保護者にも分かり易いように文書にまとめて渡している。退所後もアフターケアを行い、養育・支援の継続に努めている。措置変更時にも引き継ぎ書類を作成し、身長・体重や健康面だけでなく、子どもの発達や発達の課題、養育上の留意点等をしっかりと伝えている。
(3) 子どもの満足の向上に努めている。
33 子どもの満足の向上を目的とする仕組みを整備し、取組を行っている。 a
【コメント】
 職員会議、グループ会議、ケースカンファレンス、意見箱での聞き取りを実施している。保護者に対しての満足度調査が実施されておらず、通常であれば、この項目だけでは満足度向上への取り組みが十分であるとはいえないが、個別のケース会議を毎週行っている点と、保護者との関係が非常に良好で親密な関係が構築されており、要望の聞き取りが十分にできていると判断できる。非常にに希なケースであるが、この項目だけでも養育相談、要望聞き取り、苦情解決から十分な情報収集、分析、改善が達成できている。
(4) 保護者等が意見等を述べやすい体制が確保されている。
34 苦情解決の仕組みが確立しており、周知・機能している。 b
【コメント】
 苦情解決責任者、第三者委員を明示しており、意見箱も設置している。苦情解決の仕組みが確立されており、事業計画において結果報告もなされている。ただし、ホームページにおいて会計報告は掲載されているものの、事業計画や苦情解決結果報告が掲載されていない。この2つに関しては、会計報告のように義務ではないものの、サービス向上の観点からは公表されることが望ましい。事業計画に苦情解決結果が記載されているため、ホームページに事業計画を掲載することで改善できる。
35 保護者等が相談や意見を述べやすい環境を整備し、保護者等に周知している。 a
【コメント】
 保護者と個別に話ができる環境を整えている。子どもが帰省する際、保護者との連携を図るために連絡帳を用意している。面会・帰省の際に意見聴取に努め、内容を「意見要望伺」に記録して迅速に職員周知している。職員室前でなく、面会室に意見箱を設置し、無記名で投函できるような工夫をしており、多くの意見が集まっている。内容としても、苦情に限らず要望、意見、面談記録、電話記録等々、広い内容を収集しているため、申し出側も言い出しやすい体制がとられている。
36 保護者等からの相談や意見に対して、組織的かつ迅速に対応している。 a
【コメント】
 意見箱だけでなく、電話での相談、面会や帰省の際に十分な意見交換を行っている。出てきた意見は「意見要望伺」に記録し、迅速に職員周知され、改善されている。最終的には事業報告書に意見をまとめ、いつどのような意見や苦情、相談が出てどのように対応したが一目で分かるようにされている。
(5) 安心・安全な養育・支援の実施のための組織的な取組が行われている。
37 安心・安全な養育・支援の実施を目的とするリスクマネジメント体制が構築されている。 a
【コメント】
 担当を配置して、リスクマネジメント体制が整備されている。月1回、ヒヤリハットの報告と検証を行って改善に努めている。ヒヤリハットの内容が、どの職員も具体的に理解できるよう写真や図解で示し、分かり易い内容になっている。散歩コースや施設周りなどの写真付きのハザードマップも、具体的な注意点が記載されたマニュアルも、どちらも職員が理解しやすい形で作成されている。また、子どもの年齢・発達に沿った「事故防止チェックリスト」の見直しを、年2回行っている。
38 感染症の予防や発生時における子どもの安全確保のための体制を整備し、取組を行っている。 a
【コメント】
 「感染症予防マニュアル」と「感染症対応マニュアル」を整備している。それに従って、看護師が中心となって発生時の対応を全職員に指導している。また、年1回内部研修を行っている。嘱託医に意見を聞き、感染症発生時の早期対応に努めている。当該施設は小規模・ユニット化されており、潜伏期間を考えると全体への感染となってしまうため、発生してから動くのではなく予防(発生させない)に努めている。
39 災害時における子どもの安全確保のための取組を組織的に行っている。 b
【コメント】
 定期的に防災訓練を行い、年1回の非常持出品、備蓄品、防災用品の点検を行っている。ヘルメットや非常持出袋も見えるところに常備されている。地域のハザードマップも整備され、一時的に避難するには十分な対策がなされている。ただし、BCP(事業継続計画)が作成されておらず、電気やガス、水道が止まったらどこからどのように供給するのか等、長期的な事業継続に係る内容となると不足部分がある。BCP(事業継続計画)の作成により、更なるサービスの質の向上が見込める。
2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の標準的な実施方法が確立している。 第三者
評価結果
40 養育・支援について標準的な実施方法が文書化され養育・支援が実施されている。 a
【コメント】
 「乳児院養育指針」を参考に、標準的な実施方法を職員間で確認している。「日課表」や保護者に関する資料でも、支援すべき内容が文書化されており、新人研修や月2回の職員会でも個別に確認している。散歩コースや外回りの危険箇所が書かれたハザードマップもある。通常の保育は、ベテラン職員の経験による部分が大きい。更なるサービスの質の向上にむけ、普段の外遊びでの立ち位置や、見守りの方向など保育や支援に関する標準的な方法を、ベテラン職員が新任者にも分かるように指導している。
41 標準的な実施方法について見直しをする仕組みが確立している。 a
【コメント】
 アセスメントには児童相談所の意見や保護者などの意見が含まれており、アセスメントを基に自立支援計画を立てている。自立支援計画、個別支援計画は定期的に見直しを行っている。個別支援計画は、自立支援を基に個別の月次目標として、一覧の形で全体周知されている。
(2) 適切なアセスメントにより自立支援計画が策定されている。
42 アセスメントにもとづく個別的な自立支援計画を適切に策定している。 a
【コメント】
 基幹的職員が中心となって、担当職員によるケース会議で意見を聞き、各職種による意見も含んだ自立支援計画を策定している。アセスメントには児童相談所や保護者の意見も反映されており、ニーズの把握もされている。自立支援計画に沿った養育・支援ができているかは、毎月の個別支援計画の検討・策定をする中で確認している。
43 定期的に自立支援計画の評価・見直しを行っている。 a
【コメント】
 自立支援計画は、半期に一度、児童相談所の担当者も交えて評価・見直しを行っている。家庭環境に変化があったときなど、緊急に変更する場合は、その時点で変更している。自立支援計画は個別支援計画に落とし込まれ、毎月の会議にて全体周知されている。
(3) 養育・支援の実施の記録が適切に行われている。
44 子どもに関する養育・支援の実施状況の記録が適切に行われ、職員間で共有化されている。 a
【コメント】
 睡眠や体温、健康状態などは、パソコンではなく全て手書きの書面である。日々の生活状況を統一した様式で詳細に記録しており、「業務日誌」には、健康状態が即座に把握できる記載がある。今後、業務日誌ソフトの導入や情報共有のICT化(クラウドの導入)ができると、いつ、誰が、どのような対応をしたか、どんな意見が出たか等が即座に検索できるため、職員の負担が軽減されるだけでなく、業務効率も格段に上がり、さらなるサービスの質の向上が見込める。
45 子どもに関する記録の管理体制が確立している。 b
【コメント】
 「文書規程」や「個人情報保護規程」が整備されており、個人情報の取り扱いに関する保護者の同意書を取っている。ただ、規程内容としては「適正な取り扱いをする」等の曖昧な抽象的な表現が散見される。通常の業務の中でどのような扱いが適切で、どのような扱いが不適切なのか、USBやSDの取り扱い、パソコン毎、情報共有システム毎のパスワード設定等、規程をもっと具体的にし、職員が実際の業務において理解できる内容にする必要性がある。
内容評価基準(23項目)
A-1 子どもの権利擁護、最善の利益に向けた養育・支援
(1) 子どもの権利擁護 第三者
評価結果
A1 子どもの権利擁護に関する取組が徹底されている。 a
【コメント】
 「倫理綱領」が示され、「プライバシー保護規程」も整備されている。「子どもの適切な関わり方検討委員会」が、職員にアンケートを実施している。その中に、他の職員の不快な支援についての聞き取りの項目が設定されている。普段の支援の中で何が権利侵害(人権侵害)にあたり、どう対応すべきなのかを具体的に手引きに落とし込み、周知できると、更なる質の向上が見込める。
(2) 被措置児童等虐待の防止等
A2 子どもに対する不適切なかかわりの防止と早期発見に取り組んでいる。 b
【コメント】
 不適切な関わりを防止するための規程には、抽象的な内容しか明記されていない。職員アンケートを行っても、職員が不適切な関わりを不適切と認識していなければ、アンケートに挙がってくることはない。虐待の定義、不適切な関わりの定義を明確化する必要がある。また、不適切な関わりの種類や程度によって、どの程度の懲戒・処分とするかの具体的な定めも必要となる。さらに、不適切な関わりが起きた際に、誰が、どこに、どのように通報すべきか、対応方法の明示も求められる。
A-2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の基本 第三者
評価結果
A3 子どものこころによりそいながら、子どもとの愛着関係を育んでいる。 a
【コメント】
 小規模グループケアの家庭的な雰囲気の中で手厚い人員配置を実現し、個別の関わりを大切にしている。昼食時には、食卓に着いた子どもたちの間に入り、食事の介助をしながら子どもの要求にも即座に対応していた。子どもが常に心地よい環境下で安心して生活できていることが伝わってくる。
A4 子どもの生活体験に配慮し、豊かな生活を保障している。 a
【コメント】
 昼寝の時間をずらすなど、子ども一人ひとりの発達に合わせた日々の生活設定がされており、建物・建具自体も家庭的で落ち着ける環境設定である。棚の一番下段に個々のおもちゃの引き出しを備えるなど、個別化され思い思いに遊べる工夫がある。職員と子どもとの会話や、子どもの表情や表現からも、普段から十分なやりとりと良好な関係ができていることが分かる。
A5 子どもの発達を支援する環境を整えている。 a
【コメント】
 グループ会議や職員会議、個別のケースカンファレンス等、子どもの発達状態を共有し、具体的な支援を統一することで個々の発達に合った支援を実現している。しかし、職員からは「会議に時間がかかり、子どもにかける時間が減っているという葛藤がある」との意見が挙がっている。IT化やICT化が実現すれば、短時間で情報共有が可能になり、日々の会議時間のほとんどを無くすことができる。職員の負担軽減だけでなく、子どもに関わる時間も増えて更なる質の向上が見込める。
(2) 食生活
A6 乳幼児に対して適切な授乳を行っている。 a
【コメント】
 安心した落ち着いた環境の中で、子ども一人ひとりのペースに合わせた授乳が行われている。養育担当職員を中心に適宜見直しを行い、無理なく進めることができている。
A7 離乳食を進めるに際して十分な配慮を行っている。 a
【コメント】
 養育担当職員と栄養士が連携を取りながら、離乳食への移行を子ども一人ひとりに合わせて進めている。必要があれば、保護者への説明も行っている。子どもたちが食事を摂る現場を見学したが、職員が適度に子どもたちの間に入り、家庭的で楽しく食事ができるような雰囲気作りがなされていた。
A8 食事がおいしく楽しく食べられるよう工夫している。 a
【コメント】
 指導食(子ども一食分を一緒に食べて食べ方を見せる)を導入し、毎日一緒に食べる機会を作っている。行事食、食事会、誕生会等を取り入れ、年2回の嗜好調査によって個々の嗜好を把握した上で献立を作成している。誕生日の食事は、普段の嗜好をよく知っている担当職員が、本人の嗜好を考慮したメニューにしている。
A9 栄養管理に十分な注意を払っている。 a
【コメント】
 3ヶ月に1回の身体測定値から、子どもの栄養状態に合わせた献立を作成している。食育では指導食だけでなく、野菜を職員と一緒に育て収穫し、食材として調理して食べたり、たこ焼きやお好み焼きを一緒に作ったりして、食に関心や興味を持てるよう工夫している。
(3) 日常生活等の支援
A10 気候や場面、発達に応じた清潔な衣類を用意し、適切な衣類管理を行っている。 a
【コメント】
 子ども一人ひとりの衣類が個別に管理され、気候に適応した服装になっている。衣類は清潔に保たれ、体型に合ったものが選択されている。
A11 乳幼児が快適に十分な睡眠をとれるよう取り組んでいる。 a
【コメント】
 十分な睡眠時間を確保するために、子どもが眠るまで静かな音楽をかけたり、本を読み聞かせたりしている。温度、湿度などの室内環境も定期的に確認し、快適な睡眠がとれるよう取り組んでいる。新生児には15分、それ以外は30分視診を行い、睡眠状況を確認している。SIDS(乳幼児突然死症候群)の危険性の高い新生児には、寝具に検知器も設置されていた。
A12 快適な入浴・沐浴ができるようにしている。 a
【コメント】
 グループごとの入浴を行い、職員も一緒に入浴することによって、子どもの身体に傷がないかも入浴の際にチェックできている。子どもが興味を持ちそうな入浴用の玩具も準備され、楽しく入浴できる工夫がある。
A13 乳幼児が排泄への意識を持てるように工夫している。 a
【コメント】
 一般家庭と同じように、大人用トイレでトイレットレーニングを行っている。補助便座や踏み台を用意し、子どもの成長に合わせた工夫をしている。トイレを装飾して、排泄に興味を持てる環境作りをしている。子ども一人ひとりの排泄を丁寧に観察し、毎日の排泄の有無や回数を確認し、記録を残して子どもの成長にあったトイレットトレーニングを行っている。
A14 発達段階に応じて乳幼児が楽しく遊べるように工夫している。 a
【コメント】
 子どもの発達段階に合った玩具を選定し、遊ぶときの部屋の大きさ、人数、月齢、環境に配慮している。職員は子ども一人ひとりに気を配り、子どもの安心・安全を確保し、子どもが楽しく遊べるよう見守っている。子どものお気に入りの玩具が、個別化された玩具棚の引き出しに収納されている。いつでも、遊びたい玩具を自由に選ぶことができ、思い通りに遊べることで自分の物としての実感を持つことができる。
(4) 健康
A15 一人ひとりの乳幼児の健康を管理し、異常がある場合には適切に対応している。 a
【コメント】
 「医療緊急マニュアル」、「アレルギー対応マニュアル」があり、緊急事態に適切に対応できるよう取り組んでいる。異常が見られたときは看護師が中心となり、嘱託医と連携して早期に対応している。新生児には、呼吸器モニターや鼓動センサーマットを活用することにより、異常事態を素早く知ることができる。個々の体温や健康状態についても、細かく記録されている。
A16 病・虚弱児等の健康管理について、日常生活上で適切な対応策をとっている。 a
【コメント】
 看護師が、子どもの様子や状態、病気の症状等を把握し、異常があれば「医療緊急マニュアル」に沿って対処している。看護師と嘱託医が連携し、病・虚弱児の子どもの健康管理に努めている。
(5) 心理的ケア
A17 乳幼児と保護者等に必要な心理的支援を行っている。 b
【コメント】
 心理的支援の必要な子どもに関しては、職員が関係する外部研修を積極的に受け、児童相談所の児童福祉司と連携して対応している。保護者に関しては、「家庭復帰を判断するためのアセスメントリスト」等を参考にし、児童相談所と連携しながら進めている。ただし、当該施設には心理士の配置がない。児童相談所の児童福祉司はあくまで児童相談所の職員であり、心理的ケアに関する施設としての方針や、自立支援計画作成時の心理士意見などが、施設内で心理的ケアを提供する際には不可欠となる。
(6) 親子関係の再構築支援等
A18 施設は家族との信頼関係づくりに取り組み、家族からの相談に応じる体制を確立している。 a
【コメント】
 保護者からの要望を受けることが多いFSW(家庭支援専門相談員)が、それらの一つひとつに丁寧に回答し、信頼関係作りに努めている。保護者からの「相談経過記録」をスタッフルームに置き、職員が閲覧して統一した対応ができるようにしている。児童相談所の児童福祉司と連携し、家庭状況の把握に努めている。
A19 親子関係再構築等のため、家族への支援に積極的に取り組んでいる。 a
【コメント】
 家庭復帰に向けてアセスメントを行い、自立支援計画に反映させている。自立支援計画の中で面会、帰省などの交流についても明記し、親子関係再構築に努めている。家庭環境も変化するため、アセスメントや自立支援計画の定期的な見直しも行っている。
(7) 養育・支援の継続性とアフターケア
A20 退所後、子どもが安定した生活を送ることができるよう取り組んでいる。 a
【コメント】
 退所後も安定した生活を送ることができるよう。子どもの特徴や支援上の注意点、施設での日課などを記した退所時申し送りの書面を渡しており、不明なこと、不安なことがあればすぐに相談するよう明記されている。また、実際のアフターケアとして、長い場合には家庭支援専門相談員(里親家庭なら里親支援専門相談員)や担当職員が1年程の期間、毎月家庭訪問などのケアを行っている。
(8) 継続的な里親支援の体制整備
A21 継続的な里親支援の体制を整備している。 b
【コメント】
 里親へのマッチングを丁寧に行い、十分な交流を行っている。里親委託後も家庭訪問や他施設共同のフォローアップセミナー等、適切なアフターフォローを行っている。実際の活動としては適切であるが、中・長期計画自体が数年間作成されていない。以前の中・長期作成時には、里親支援専門相談員の配置やフォスタリングの発想自体もない時代であったため、計画の中に里親支援に関する記述はない。時代の変化に合わせた計画作成が望まれる。
(9) 一時保護委託への対応
A22 一時保護委託を受ける体制が整備され、積極的に受け入れを行っている。 a
【コメント】
 自己評価では、マニュアルがないという理由で「b」評価が付けられていたが、マニュアルは整備されていた。一週間は観察養育を行い、保護児の成長・行動、体調などを把握できるように細かな観察記録、アセスメント等が作成されている。それらの書面は多職種で確認し、有効性、妥当性の確認を行っている。
A23 緊急一時保護委託を受ける体制が整備され、積極的に受け入れを行っている。 a
【コメント】
 自己評価では、「一時保護委託」と同様に、マニュアルがないという理由で「b」評価が付けられていたが、マニュアルは整備されており、緊急一時保護においても、児童相談所から最低限の情報は入れてもらえるよう連携ができている。受け入れに関する書面も十分に整備されている。
前ページに戻る