社会的養護施設第三者評価結果 検索

くずはの森

第三者評価結果詳細
共通評価基準(45項目)Ⅰ 養育・支援の基本方針と組織 
1 理念・基本方針
(1)理念、基本方針が確立・周知されている。 第三者
評価結果
1 理念、基本方針が明文化され周知が図られている。 b
【コメント】
・養護目標等を明文化するとともに、施設が目指している養育・支援の方針を「養護ガイド」に文書化し、年度当初の会議において職員全体で共有している。また、施設の目的や目標をわかりやすく示したパンフレットを保護者や関係機関に配布・周知を図っている。なお、施設の広報誌「くずはだより」の刊行が滞っているため、関係者への周知が十分なされていない状況がみられる。
2 経営状況の把握
(1) 経営環境の変化等に適切に対応している。 第三者
評価結果
2 施設経営をとりまく環境と経営状況が的確に把握・分析されている。 b
【コメント】
・要保護児童対策地域協議会への参画に加えて、地域の里親に関する情報について里親支援専門相談員を通して地域ニーズの把握に努めている。また、従来から里親のレスパイト支援等を進めている。なお、子育て支援等のニーズについて市に確認する取り組みまではなされていないため、今後進めていくことが期待される。
3 経営課題を明確にし、具体的な取組を進めている。 b
【コメント】
・施設を取り巻く経営課題については理事長が主に掌握し、施設長と情報共有を図るとともに、職員全体への周知に努めている。現在、理事長から施設長に経営課題等の引き継ぎを進めている段階となっている。今後は、それらの情報についてどのような形で職員全体に説明していくかについて、具体的な方法の整備が望まれる。
3 事業計画の策定
(1) 中・長期的なビジョンと計画が明確にされている。 第三者
評価結果
4 中・長期的なビジョンを明確にした計画が策定されている。 b
【コメント】
・家庭的養護推進計画のなかで、平成31年度までにグループホームを開設すること等を明確にしている。なお、計画を推進するために、他の領域も含めて年度毎に数値目標や達成目標等を具体的に設定していくことが期待される。
5 中・長期計画を踏まえた単年度の計画が策定されている。 b
【コメント】
・中・長期計画(家庭的養護推進計画)の内容が単年度の事業計画書や「養護ガイド」の見直しに連動するしくみにはなっていないため、今後は事業計画書の項目設定を工夫すること等により、それぞれの計画を一体化することが望まれる。また、事業計画書の様式が進捗管理や現状の共有がしづらい点についても、改善されたい。
(2) 事業計画が適切に策定されている。
6 事業計画の策定と実施状況の把握や評価・見直しが組織的に行われ、職員が理解している。 b
【コメント】
・各職員の意見等を把握したうえで今年度の重点項目を決定し、事業計画書に盛り込むことにより職員全体で共有を図っている。また、毎月の運営会議で進捗管理を行い、未達成の場合には次年度の継続課題として取り組んでいる。なお、重点項目の達成状況によっては年度途中で事業計画書を見直すことや、プロジェクトチームを編成して課題達成を図っていくことが期待される。
7 事業計画は、子どもや保護者等に周知され、理解を促している。 c
【コメント】
・事業計画書の内容を子どもや保護者に周知するには至っておらず、施設運営の透明性を高める上でも今後の取り組みが求められる。なお、その際は、子ども、保護者に参加を促す観点から、例えば子どもが決めている、「家」ごとの単年度目標等も事業計画書に盛り込み、子どもや保護者に周知・説明を行う等、工夫されたい。また、文書である等の形にこだわらず、わかりやすさを優先した説明媒体の作成・配布(説明)にも期待したい。
4 養育・支援の質の向上への組織的・計画的な取組
(1) 質の向上に向けた取組が組織的・計画的に行われている。 第三者
評価結果
8 養育・支援の質の向上に向けた取組が組織的に行われ、機能している。 b
【コメント】
・評価基準に基づき各職員が「a・b・c」の評点をつけた結果を集計・分析するしくみが定着している。ただし、結果を検討する場を設定することや、改善課題を子どもの養育・支援の質の向上に着実につなげていくしくみが整備されておらず、具体的な改善に向けた取り組みには至っていない。
9 評価結果にもとづき施設として取り組むべき課題を明確にし、計画的な改善策を実施している。 b
【コメント】
・第三者評価結果で明らかになった課題を着実に改善につなげていくための一連のしくみが構築されていない状況となっている。今後は、明らかにされた改善課題のなかから優先順位をつけて職員全体に明示するとともに、達成に向けて進捗管理していくことが期待される。
Ⅱ 施設の運営管理
1 施設長の責任とリーダーシップ
(1) 施設長の責任が明確にされている。 第三者
評価結果
10 施設長は、自らの役割と責任を職員に対して表明し理解を図っている。 b
【コメント】
・施設長は、年度初めに全職員へ「養護ガイド」を配布し、子どもへの養育・支援の方向性を直接説明するとともに、自らの役割や責任の範囲についても文書化して周知を図っている。一方、施設長の考えを改めて文書化し、施設内外に示す取り組みはなされていない。今後、広報誌等に掲載して広く表明していくことが期待される。
11 遵守すべき法令等を正しく理解するための取組を行っている。 b
【コメント】
・児童福祉法の改正等、施設運営や子どもの養育・支援に関わる法令の情報を収集し、各種会議の場で周知を図っている。また、人権擁護チェックリストに基づく振り返りの機会等を定期的に用意し、職員の理解が深まるように努めている。なお、各種法令を予めリスト化して整理する取り組みまでには至っていない。
(2) 施設長のリーダーシップが発揮されている。
12 養育・支援の質の向上に意欲をもちその取組に指導力を発揮している。 a
【コメント】
・施設長は、長く子どもの養育・支援業務を中心に担当した後、2年前から就任しており、これまでの経験や職員との関係性等を基盤として子どもの養育・支援の向上に努めている。また、外部研修へ積極的に職員を派遣して専門性向上を図っている他、年度末に理事長とともに職員の個別面談等を行いながら、職員の意見集約に取り組んでいる。
13 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している。 b
【コメント】
・毎年、職員間アンケートを実施することが定例化しており、具体的な業務改善に向けて取り組んでいる。なお、定例会議の議題設定や会議録の作成方法については統一されたしくみが導入されていないため、施設運営上の重要な案件等を検討・決定するしくみの整備・充実が期待される。
2 福祉人材の確保・育成
(1) 福祉人材の確保・育成計画、人事管理の体制が整備されている。 第三者
評価結果
14 必要な福祉人材の確保・定着等に関する具体的な計画が確立し、取組が実施されている。 b
【コメント】
・施設が必要とする人員配置を明確にし、加算職員についてもできる限り配置するように取り組む他、必要な人材確保に向けた採用活動に努めている。ただし、定数以上の人材採用を目指している一方、確保が難しい状況がここ数年続いており、経営課題の一つとなっている。
15 総合的な人事管理が行われている。 b
【コメント】
・人事考課制度は導入されていないが、年度初めに職員一人ひとりが目標を設定し、年間を通して達成を目指す取り組みを始めている。今後は、働き続ける意欲を向上するために各職員がステップアップできるしくみの構築や、各職員が自分の将来の姿を思い描くことのできる取り組みが期待される。
(2) 職員の就業状況に配慮がなされている。
16 職員の就業状況や意向を把握し、働きやすい職場づくりに取り組んでいる。 a
【コメント】
・働きやすい職場作りや職員全体のチームワーク向上を図る観点から、職員間アンケートの結果を受けて平成28年度に職員レクリエーションを導入し、職員の自由な旅行企画等を金銭面でバックアップする取り組みが行われている。
(3) 職員の質の向上に向けた体制が確立されている。
17 職員一人ひとりの育成に向けた取組を行っている。 b
【コメント】
・年度当初に職員一人ひとりが目標を設定して年度末に確認するしくみが導入されている。今後はこのしくみをさらに効果的なものとするために、中間面接を設定する等、年度内に目標の達成状況や目標そのものを見直す機会を用意していくことが期待される。
18 職員の教育・研修に関する基本方針や計画が策定され、教育・研修が実施されている。 b
【コメント】
・外部研修に職員を派遣していることに加えて、毎月第3金曜日に園内研修の実施を定めて研修成果を共有したり、研修担当職員が設定したテーマについて学ぶ機会としている。今後は研修テーマについて、毎年時期を定めて必ず行う定例のものや、外部講師等を招いて実施するもの等を明確にしたうえでの計画的な実施に取り組まれたい。
19 職員一人ひとりの教育・研修の機会が確保されている。 a
【コメント】
・外部研修の受講を促進するために、年度初めの段階で各職員の職歴や職種に配慮しながら研修参加予定表を作成するとともに、最低でも年1回以上は外部研修を受講できるように勤務調整を図り、研修の機会を確保している。
(4) 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成が適切に行われている。
20 実習生等の養育・支援に関わる専門職の教育・育成について体制を整備し、積極的な取組をしている。 b
【コメント】
・実習生指導マニュアルやオリエンテーション資料等を用意して、一連の受け入れ体制を整えている。なお、これまでの実習受け入れは保育士のみであったが、社会福祉士の実習受け入れが可能となるように職員が指導者講習を受講する等、受け入れに向けた準備に着手している段階となっている。
3 運営の透明性の確保
(1) 運営の透明性を確保するための取組が行われている。 第三者
評価結果
21 運営の透明性を確保するための情報公開が行われている。 b
【コメント】
・施設のホームページ上で現況報告書や決算報告書、第三者評価結果等を紹介し、広く一般社会に向けて運営の透明性を高めている。なお、施設の広報誌「くずはだより」について定期刊行が滞っているため、今後着実に刊行できる体制を整えるとともに、頻度や情報提供すべき内容等を検討したうえで年間計画を立て、着実に実施していくことが期待される。
22 公正かつ透明性の高い適正な経営・運営のための取組が行われている。 b
【コメント】
・適正な施設運営となるために社会保険労務士と契約し、必要に応じて相談できる体制としている他、県の指導監査で指摘された事項について改善する取り組みがなされている。なお、定期的な外部監査の活用はなされていない。
4 地域との交流、地域貢献
(1) 地域との関係が適切に確保されている。 第三者
評価結果
23 子どもと地域との交流を広げるための取組を行っている。 b
【コメント】
・清掃活動や防災訓練、お祭り等の地域の活動に子どもや職員が参加して近隣地域と交流している。また、交友関係を深めることができるように、学校の友達が遊びに来ることについて特に制限を設けていない。なお、ホームページや広報誌等に地域との関わり方について明示し、地域や関係団体等に向けて情報提供する取り組みが望まれる。
24 ボランティア等の受入れに対する基本姿勢を明確にし体制を確立している。 b
【コメント】
・ボランティア受け入れマニュアルを整備するとともに、ホームページ上で学習ボランティアとピアノ・遊びボランティアの募集に関する情報を発信している。今後は、ボランティア受け入れの基本姿勢等についてもホームページに明示して広く周知を図っていくことが期待される。
(2) 関係機関との連携が確保されている。
25 施設として必要な社会資源を明確にし、関係機関等との連携が適切に行われている。 b
【コメント】
・児童相談所はもとより、要保護児童対策地域協議会や小中学校等と定期的な情報交換を行いながら、具体的な連携を図っている。なお、アフターケアや職業体験等の支援団体とのネットワークを構築する取り組みにまでは至っていないため、新たに開拓していくことが望まれる。
(3) 地域の福祉向上のための取組を行っている。
26 施設が有する機能を地域に還元している。 b
【コメント】
・地域住民と交流する機会として、施設の多目的ホール等のスペースを活用し、手打ちうどんと餅つきの集いを毎年開催することが定着しており、地域の子どもとその保護者等を招待している。一方、施設の専門性を広く地域に還元する取り組みが課題となっているため、具体化していくことが期待される。
27 地域の福祉ニーズにもとづく公益的な事業・活動が行われている。 b
【コメント】
・地域の福祉ニーズへの対応として、近隣のファミリーホームからの相談に応じることや、里親のレスパイト、相談援助等を適宜実施している。今後は事業計画書に地域貢献事業を明確に位置付けること等により、公益的な事業・活動を一層推進していくことが望まれる。
Ⅲ 適切な養育・支援の実施
1 子ども本位の養育・支援
(1) 子どもを尊重する姿勢が明示されている。 第三者
評価結果
28 子どもを尊重した養育・支援の実施について共通の理解をもつための取組を行っている。 b
【コメント】
・倫理綱領や援助方針等を養護ガイドのなかに明示し、職員全体で共有化を図っている。なお、各職員の養育感の統一を図るために、新たな取り組みとして養育・支援のさらなる標準化を目指して「くずはの森取り決め事項」という基準書の作成に着手している。
29 子どものプライバシー保護等の権利擁護に配慮した養育・支援の実施が行われている。 b
【コメント】
・入所時に「個人情報の取得及び利用に関する同意について」という文書を説明後、子どもと保護者の署名を得るしくみを導入している他、子どもの居室はおおむね個室を用意し、プライバシーが確保できる環境を提供している。なお、職員の養育・支援方法について「くずはの森取り決め事項」を取りまとめる際には、プライバシー保護の観点を意識的に盛り込んでいくことが望まれる。
(2) 養育・支援の実施に関する説明と同意(自己決定)が適切に行われている。
30 子どもや保護者等に対して養育・支援の利用に必要な情報を積極的に提供している。 b
【コメント】
・入所にあたり、施設独自に作成した権利ノート「くずはの森の生活」の内容を子どもへ説明している。また、保護者に対しパンフレット等を用いて施設の養育・支援内容に関する説明を行っているが、口頭での説明が中心となっているため、保護者向けに特化した説明文書等を作成して、理解浸透を図られたい。なお、作成の際は、子どもと離れて暮らす保護者の心情を慮り、「くずはの森」で自分の子どもがどのような生活を送るのか、子どもの権利が守られ続けるためにどのようなしくみ、取り組みが整備されているのか等、保護者の不安感を少しでも軽減し、安心と施設への信頼につなげる観点も意識されたい。
31 養育・支援の開始・過程において子どもや保護者等にわかりやすく説明している。 b
【コメント】
・施設での子どもの様子を保護者に伝達する方法として、電話や毎月の家庭通信の送付に加えて、毎年ゴールデンウイークの時期に保護者会を多目的ホールで開催し、プロジェクターで子どもの生活場面等を上映して理解が深まるように取り組んでいる。一方、保護者会に出席しない保護者を含め、日頃コミュニケーションを図ることが難しい保護者への説明方法を工夫していくことが望まれる。
32 措置変更や地域・家庭への移行等にあたり養育・支援の継続性に配慮した対応を行っている。 b
【コメント】
・家庭引き取りとなる場合等には、要保護児童対策地域協議会や関係者会議等の機会を通して施設での子どもの状況等について直接引き継ぎを行っている。現在、引き継ぎ文書の標準化に向けた取り組みを進める等、整備を図っている。
(3) 子どもの満足の向上に努めている。 第三者
評価結果
33 子どもの満足の向上を目的とする仕組みを整備し、取組を行っている。 b
【コメント】
・これまで施設では、子ども全体の意向を把握するしくみが用意されていなかったため、今年度から「くずはの森のせいかつについて」というアンケートを新たに作成し、年4回の実施を目指している。具体的には、職員の対応や困っていること、食事について等、6項目程の質問項目に基づき子ども一人ひとりの意向を把握して全職員で共有するしくみとなっている。今後、この取り組みの定着を図るとともに、改善策の実施方法や子どもへのフィードバック方法等を引き続き整備していくことが望まれる。
(4) 子どもが意見等を述べやすい体制が確保されている。
34 苦情解決の仕組みが確立しており、周知・機能している。 a
【コメント】
・苦情解決のしくみが整備されており、施設内の所定の場所に苦情箱を設置し、その近くに苦情のしくみをわかりやすく示した説明文書を掲示することで子どもの理解が進み、有効に機能するように取り組んでいる。寄せられた苦情・要望等については、「苦情受付一覧」として取りまとめて掲示板に貼り出し、外部からの訪問者等に公表するしくみが定着している。
35 子どもが相談や意見を述べやすい環境を整備し、子ども等に周知している。 a
【コメント】
・入所時に配布する「くずはの森の生活」のなかで、児童相談所等に子どもが直接電話相談できるように、担当者につないでもらうための具体的な台詞を明示している。また、何か困ったり悩んだりした場合には子ども自身が話しやすい人に相談できることを説明するとともに、苦情箱の写真を掲載し、寄せられた意見は施設長に直接届くことを伝え、「ふれあいメール」という名称の記入用紙を備え付けて提出を促している。実際に年間を通して子どもからさまざまな投函があり、機能している。
36 子どもからの相談や意見に対して、組織的かつ迅速に対応している。 a
【コメント】
・苦情箱に寄せられた内容について職員間で検討・決定された事項を所定の様式に基づいて文書化して整理するとともに、その内容を2名の第三者委員に示し、閲覧の上、署名を得るしくみとする等、透明性を高めるしくみが導入されている。
(5) 安心・安全な養育・支援の実施のための組織的な取組が行われている。 第三者
評価結果
37 安心・安全な養育・支援の実施を目的とするリスクマネジメント体制が構築されている。 b
【コメント】
・緊急時の対応方法を「養護ガイド」に明示することや、臨海行事の前に地域の消防署の協力を得て救急法の学習会を行うこと等により、子どもの安全確保に向けて取り組んでいる。一方、ヒヤリハット報告書等で明らかになったリスクを集中して検討するための組織体制を整備するまでに至っていない。施設は、リスクの把握・分析は権利擁護を推進する上で重要であると捉えているため、今後、子どもの権利との関連性が高い事故項目については定義をより明確に整え、子どもにもわかりやすい内容で周知し意識喚起を図られたい。加えて、日誌の活用等によるヒヤリハットの挙げやすさへの工夫を行い、権利擁護の視点を意識したリスクの認識と、それに対する職員の日常的な意識化にも取り組まれたい。
38 感染症の予防や発生時における子どもの安全確保のための体制を整備し、取組を行っている。 b
【コメント】
・感染症マニュアルを作成して各職員への理解・浸透を図るとともに、感染症がまん延する時期には、職員会議で予防対策等について共有化を図っている。なお、感染症予防に関する内部研修を定期的に開催することや、感染症マニュアルの見直し時期や方法を明確に定める等、さらなる整備が望まれる。
39 災害時における子どもの安全確保のための取組を組織的に行っている。 b
【コメント】
・土砂や水害対策等の災害対策については、施設として定期的な避難訓練の実施や備蓄品の確保だけでなく、消防署や市との協議を図り具体的な対応方法を明確にしている。なお、BCP(事業継続計画)が未作成となっているため、地域の関係団体等と協議を重ねながら役割分担等を決めるとともに、総合訓練等を実施していくことが期待される。
2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の標準的な実施方法が確立している。 第三者
評価結果
40 養育・支援について標準的な実施方法が文書化され養育・支援が実施されている。 b
【コメント】
・子どもへの養育・支援の指針として「養護ガイド」が位置づけられており、養育のモデルや子どもの権利擁護に関すること等が文書化されている。また、「養護ガイド」の内容に基づいた取り組みとなっているかについて、家会議や援助会議等で確認している。現在、新たに「くずはの森取り決め事項」という基準書のとりまとめに着手し、職員全体の養育感の標準化に向けた取り組みを進めている。
41 標準的な実施方法について見直しをする仕組みが確立している。 b
【コメント】
・「養護ガイド」に示されている方針を「くずはの森取り決め事項」として具体化する作業を進める中で、これまでマニュアル化されていない領域や職員間で情報共有すべき事項が明確になってきている。今後は、各種マニュアルを体系化して管理できるように整えていくことが望まれる。
(2) 適切なアセスメントにより自立支援計画が策定されている。
42 アセスメントにもとづく個別的な自立支援計画を適切に策定している。 b
【コメント】
・自立支援計画書を作成する際には、8領域、136項目の評価課題が明示された「生活指導の指標」に基づいて担当職員が子どものアセスメントを行うことにより、具体的なニーズ把握に努める一方、職員によって指標の選択やニーズの捉え方に相違が生じやすい現状を課題と感じており、評価課題の検証や評価方法の検討等によるアセスメント(評価)シートの作成を今年度事業計画の継続課題と位置付けている。今後、アセスメントシートの整備に伴い、アセスメントの視点を磨き、どの職員も一定以上のアセスメント力を身につけることができるための学びの機会についても、併せて設けていくことが期待される。
43 定期的に自立支援計画の評価・見直しを行っている。 b
【コメント】
・作成された自立支援計画書は、「自立支援計画の作成と評価」という文書に基づき年間評価および、必要に応じて中間評価を実施しているが、年度途中の見直しは、子どもの状況に応じて随時行われ、明確な基準は定められていない。また、高校生以上には「社会自立に向けた支援計画書」を作成しており、リービングケアの一環として支援方針や自立に向けた目標等を子どもと話し合い、共有を図っている。今後、年齢の低い子どもの理解、共有をすすめていくために、昨年度完成した「ライフストーリーワークブック」の中に自立支援計画を汲み入れることも考えている。一方、現在の自立支援計画書は、アセスメントで抽出された課題と援助方針の内容の連動性や、項目名と記載内容の合致等の課題が散見され、施設も課題と捉えている。客観的な支援の根拠となり得るものとするために、書式や記入方法の見直し等を検討されたい。
(3) 養育・支援の実施の記録が適切に行われている。
44 子どもに関する養育・支援の実施状況の記録が適切に行われ、職員間で共有化さている。 a
【コメント】
・文書管理システムを導入し、各職員が子どもへの支援内容をデータ入力して蓄積するとともに、施設内LANを経由して事務所やそれぞれの家のパソコン端末で情報共有できる環境を整えている。また、日頃の申し送り・引き継ぎに加えて、家会議やチーフ会議、援助会議等により全職員で情報共有を図っている。
45 子どもに関する記録の管理体制が確立している。 a
【コメント】
・入所時に取り交わしている「個人情報の取得及び利用に関する同意について」や「個人情報取り扱い規定」に基づき、子どもに関する記録の適切な使用と管理に取り組んでいる。データ情報については個人IDを設定すること等により外部への漏えい防止を図っている。紙媒体の文書についても場所を特定して鍵のかかるキャビネットに保管する等、管理体制を整えている。

内容評価基準(41項目)A-1 子ども本位の養育・支援
(1) 子どもの尊重と最善の利益の考慮 第三者
評価結果
A1 社会的養護が子どもの最善の利益を目指して行われることを職員が共通して理解し、日々の養育・支援において実践している。 b
【コメント】
・養育に関する指針として毎年更新している「養護ガイド」には、倫理綱領、児童福祉法の理念、養護目標、援助方針等を盛り込み、子どもが主体として有する権利、子どもの最善の利益等について明記して、全職員へ配布、読み合せを行い、共有を図っている。日常的な子どもの状況やかかわり等については、家会議、チーフ会議、援助会議等、各会議の場で職員間で共有、検討するとともに、施設長、基幹的職員が中心となって助言等を行っている。なお、日々の支援場面と照らし合わせて「子どもの最善の利益」とは何かを考える際の指標ともなる、施設としての「養育観」については、現在、体系化、明文化が進められている。
A2 子どもの発達段階に応じて、子ども自身の出生や生い立ち、家族の状況について、子どもに適切に知らせている。 b
【コメント】
・開示に制限がある場合を除き、子どもの心情や今後の生活展望への影響等を考慮し、可能な限り早い段階で伝えることを施設の基本姿勢としている。また、昨年度、重点課題のひとつとして「生い立ちの整理」に取り組み、実践の基となる「ライフストーリーワークブック」を完成させている。これについては今年度も重点課題として継続させおり、開示する内容、環境等への留意を行いながら、少しずつ子どもとの作成を進めている状況にある。
(2) 権利についての説明
A3 子どもに対し、権利について正しく理解できるよう、わかりやすく説明している。 b
【コメント】
・施設独自の権利ノートとして「くずはの森の生活」を作成し、入所時に子どもへ配布して、説明を行っている。その中では、施設での生活において、自分の意見や考えを言えること、秘密は守られること、信仰は自由であること等、保障される権利の内容とともに、苦情相談がある場合の手段について、施設内外いずれも具体的に明記している。現在、子どもを集めて権利について説明する機会は設けていないが、生活場面での日常の出来事を通じて、職員が個別にかかわり、自分の権利、他者の権利等について発達段階に応じたわかりやすい伝え方で対応を図っている。
(3) 他者の尊重
A4 様々な生活体験や多くの人たちとのふれあいを通して、他者への心づかいや他者の立場に配慮する心が育まれるよう支援している。 b
【コメント】
・施設では子ども、職員ともに基本的には「家」の移動はせず、身近な大人との継続性のある関係構築を通して、大人への不信・不安が消え、子どもの心に安心感や信頼が芽生えていくことを目指している。全ての子どもと個別の時間を作るしくみはないものの、就寝前の時間や、ちょっとした買い物等外出の時間を子どもと個別にふれあう機会とする他、子どもの様子や子ども同士の関係性に変化の兆しがみられた場合には、職員が意図的に時間を作って、一人ひとり気持ちを聞いて受け止めるとともに、他者に抱いた感情の整理の仕方を教えたり、職員たちが一人ひとりを大切に思っている気持ちを伝える等、「受容」と「共感」をベースに、丁寧かつきめ細やかなかかわりに努めている。
(4) 被措置児童等虐待対応
A5 いかなる場合においても体罰や子どもの人格を辱めるような行為を行わないよう徹底している。 a
【コメント】
・就業規則において、施設内虐待の禁止を明示しており、子どもへの対応が適切であったか等、過去の事例照会も行い、適宜協議、確認している。今年度は、被措置児童に対する虐待防止のマニュアルが新たに整備されたことにより、防止ならびに発生時の対応等がより具体化され、徹底がすすめられている。
A6 子どもに対する不適切なかかわりの防止と早期発見に取り組んでいる。 b
【コメント】
・就業規則管理規定において、職員による不適切なかかわりがあった場合には懲戒の対象となることを明記している。また、毎週の家会議、援助会議等の場で、職員の子どもへのかかわりや言動で気になる事項があれば、施設長、基幹的職員等を中心に助言・指導、注意喚起を図っている。さらに、今年度より、年4回子どもに対し、ここでの生活や職員の対応等に関するアンケートを開始した他、苦情箱に投函される子どもからの「ふれあいメール」に職員のかかわりに関する内容がある場合には、迅速に事実確認を行い、結果を会議で周知する等、予防と早期発見に努めている。今後は、子どもが自身の安全を守っていく学びの機会の創出が期待される。
A7 被措置児童等虐待の届出・通告に対する対応を整備し、迅速かつ誠実に対応している。 b
【コメント】
・子どもから苦情箱に挙げられた「ふれあいメール」の内容は、第三者委員にも内容の閲覧を行っており、透明性の高いしくみが整えられている。子どもに対しては入所時に配布する権利ノート「くずはの森の生活」の最後に職員による虐待が許されないこととともに、相談窓口の名称、連絡先を複数明記して、周知を行っている。なお、今年度、被措置児童の虐待防止に関するマニュアルが整備され、組織的な対応のさらなる徹底が図られてきている。
(5) 思想や信教の自由の保障
A8 子どもや保護者等の思想や信教の自由を保障している。 a
【コメント】
・施設は、宗教に則った生活習慣、行事等は設けておらず、思想、信教の自由を保障している。権利ノート「くずはの森の生活」においても、「信仰の自由」を提示し、その中で自身の権利と同様に、他者にも信仰の自由があることを伝えている。なお、クリスマス会については、宗教行事ではなく、子どもにとって娯楽性の高い季節行事として捉えており、個々の希望に応じ、参加・不参加は子ども自身の意思で決めることとしている。
(6) こどもの意向や主体性への配慮
A9 子どものそれまでの生活とのつながりを重視し、そこから分離されることに伴う不安を理解し受けとめ、不安の解消を図っている。 a
【コメント】
・「養護ガイド」に入所の手順が示され、留意事項についても併せて記載されている。入所が決まると主任、FSW(家庭支援専門相談員)が主となって入所前後の対応等について協議を行い、職員へ周知がなされている。分離体験に伴う不安感の軽減のため、これまでの生活、食べ物やキャラクター等の嗜好、生活習慣等、可能な限り多くの情報を事前に得て、入所後の支援や生活環境づくりに反映させている。また、入所する子どもにとって、「家」の子ども達との関係性も安心できる生活を送る上で大きな要素であるとの見地から、事前に職員より、「家」の子ども達には入所があることを丁寧に伝え、子ども同士が、スムーズに受け入れ、受け入れられる関係の中で新たな生活がスタートできるよう配慮している。
A10 職員と子どもが共生の意識を持ち、子どもの意向を尊重しながら生活全般について共に考え、生活改善に向けて積極的に取り組んでいる。 b
【コメント】
・施設には、4つの「家」があり、そのうち2つは小規模グループケアの6名、他が6~8名と小規模な生活単位で構成されている。「自主性・自立(自律)性を育てる」という援助方針のもと、子どもが「選ぶ自由」を理解し、決断する力を育て、自己責任を学ぶことを重視し、自由度の高い生活の構築を図っており、各「家」ならびに個々に応じた柔軟なルールづくりが行われている。今年度より年4回子どものアンケートとその結果に基づく「家」ごとの話し合いが新たに始まり、子どもが自分たちの「家」と生活について主体的に話し合うしくみが整備されたことで、「自立」において大切な要素となる「関係性とコミュニケーションの経験」を重ねる機会が拡充されてきている。
(7) 主体性、自律性を尊重した日常生活
A11 日々の暮らしや、余暇の過ごし方など健全な生活のあり方について、子ども自身が主体的に考え生活できるよう支援している。 a
【コメント】
・各「家」にはリビングに共有のテレビの他、パソコンが1台設置され、一定のルールに則り子どもが使用できる環境を整えている。また、それと同様に、使い方のルールはあるものの、年齢に応じてスマートフォンやタブレットの購入が可能である等、子どもの趣味や興味・関心、生活文化に応じた生活の提供を目指している。安全性の確保を前提に、「やりたい」という子どもから積極的な意思表明があれば、可能な限り実現できるよう調整を図り、子どもの選択肢や経験の幅を広げていく努力を行っている。また、学校等の友人を「家」に招いてともに遊ぶことが可能であり、交友関係においても子どもを一人の人間として、主体性を尊重した対応を図っている。
A12 子どもの発達段階に応じて、金銭の管理や使い方など経済観念が身につくよう支援している。 b
【コメント】
・金銭の管理については、個々の子どもの能力と意向に応じて管理方法を定めている。高校生以上では自立支援計画の中に、金銭管理に関する具体的な数字を入れる欄があり、リービングケアの一環として、毎月のアルバイト代の管理や、親子訓練室を使った一人暮らし疑似体験での食材購入代金の計算等を行い、リアリティの高い、実践的な管理能力の向上・獲得を図っている。また、「マイナスを作らない」という前提をはじめ、お金を使うことによるメリット・デメリットを事前にわかりやすく子どもに説明し、理解した上で自己決定するプロセスを踏むことにより、自己責任への認識を子どもの中に育み、自立に向けた意識と力の向上へとつなげている。現在、作成途中の基準書の完成により、施設としての標準的な対応がより明確になることが期待される。
(8) 継続性とアフターケア
A13 家庭復帰にあたって、子どもが家庭で安定した生活が送ることができるよう復帰後の支援を行っている。 b
【コメント】
・家庭復帰する場合には、退所後、支援の主軸となる関係機関等に対し要保護児童対策地域協議会やケース会議等を可能な限り開催して、顔を合わせて引き継ぎを行い、連携を図っている。今年度は、引き継ぎのための「申し送り書」フォーマットを新たに整備して、継続性のある支援がこれまで以上に正確かつ適正に行われるよう、有効な活用を予定している。退所後の様子は、アフターケア記録として文書管理システムに入力するとともに、毎週の会議で報告がなされ、職員間で共有している。
A14 できる限り公平な社会へのスタートが切れるように、措置継続や措置延長を積極的に利用して継続して支援している。 b
【コメント】
・本人の意向を含め個々の状況に応じて、子ども自身が安心・安全に暮らし続けることのできる生活場所として施設が適切と判断した場合には、措置継続、措置延長等の対応を心がけている。一方、入所している小・中・高校生の生活リズムとのかい離等、他の子どもたちの生活への影響も勘案し、総合的に判断をすることが必要な場合もある。
A15 子どもが安定した社会生活を送ることができるようリービングケアと退所後の支援に積極的に取り組んでいる。 b
【コメント】
・自立の時期が近づくと、親子訓練室を使用して、一人暮らしを想定した生活を送る自活訓練を個々の状況に合わせ、計画的に実施している。自立後の生活についてはFSWを主として担当者を定めており、退所後も相談できる場所として施設を紹介する他、他の相談先となる関係機関にも同行して顔つなぎをする等の支援を行っている。個別に作成するアフターケア計画に則り、退所後も概ね2年を目安に訪問、連絡等の継続的なかかわりを行い、生活の安定、定着に努めている。今後は、継続的にかかわる各関係機関が子どもの自立生活をサポートするネットワークとしての機能をより高めるために、役割分担を文書に残す等、相互共有のしくみの工夫等も検討されたい。また、経年とともに対象者が増え、記録も蓄積されていくことが予測されるので、必要な情報を迅速に取り出せる記録整備も求められる。なお、退所者の集いや参加行事の設定は現段階では行っていない。
A-2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の基本 第三者
評価結果
A16 子どもを理解し、子どもが表出する感情や言動をしっかり受け止めている。 b
【コメント】
・子どもの感情や言動等の背景、根底に何があるのかを捉える視点を職員間で共有していけるように、「家会議」での担当者間の話し合い、援助会議での他の「家」の職員や他職種を交えた話し合い、基幹的職員の助言、児童精神科医によるスーパービジョン等を行っている。また、子どもの現状ニーズにマッチしたテーマの外部研修へ参加し、会議内での報告という形で研修内容を職員全体で共有することにより、支援の質の底上げにも努めている。さらに、今年度より年4回子どもへのアンケートと「家」での話し合いをスタートして、子ども一人ひとりの心の動きをより細かに汲み取る機会を拡充する等、理解の深化に取り組んでいる。
A17 基本的欲求の充足が、子どもと共に日常生活を構築することを通してなされるよう養育・支援している。 b
【コメント】
・施設は、基本的欲求の充足を自立支援の根幹であると考え、子どもの生活における集団と個人、それぞれの時間を切り分け、充足感が満たせるように努めている。「家」単位で小口現金を置き、一定額内であれば、「家」ごとの裁量で柔軟に活用できるしくみを設けている。子ども全員と個別にふれあう時間の確保まではないが、定まった大人との継続的な関係の中で信頼を深めていくことを重視している。また、生活における選択肢を可能な限り増やし、生活上の諸ルールについても、特に年齢の高い子どもとは個別に話して取り決める等、自由度の高い生活の提供を目指している。今回の利用者調査の結果では「施設の決まりや約束ごとをわかりやすく教えてくれるか」の設問で、回答した子どもの多くから肯定的な答えが聞かれている。
A18 子どもの力を信じて見守るという姿勢を大切にし、子どもが自ら判断し行動することを保障している。 a
【コメント】
・将来の自立生活を見据え、自主性・自立性を育む上で、施設で生活する時期のうちに、成功体験とともに失敗体験を重ねることも必要であると施設は考えている。子どもの自発的な行動は可能な限り認め、子どもが自身で決断できる環境を整える等、職員は側面的にサポートしている。また、その行動過程や結果において努力や頑張りをほめ、つまずくことがあれば子どもとともに振り返り、次のステップとして成功への道筋につなげるよう努めている。こうした体験の積み重ねから、子どもの中で自己責任への意識や自己肯定感が育まれていくことを目指しており、利用者調査結果においても、「施設の大人は良いところをほめてくれるか」との設問に対し、回答した子どもの多くが肯定的に回答している。
A19 発達段階に応じた学びや遊びの場を保障している。 b
【コメント】
・日常的な遊び以外については、レクリエーション費用を予算化して対応している他、塾や学校等との関係の中で発生するコミュニティへの参加等についても可能な範囲で子どもの要望の実現を図っている。万一、困難な場合には、安全面、経済面等、具体的な理由を子どもに説明して理解を得るよう働きかけている。なお、遊びに関するボランティアの協力については地理的な条件等もあり潤沢な状況とは言えず、また子どものニーズとのマッチング上の課題もあり、現在、調整中となっている。
A20 秩序ある生活を通して、基本的生活習慣を確立するとともに、社会常識及び社会規範、様々な生活技術が習得できるよう養育・支援している。 b
【コメント】
・「養護ガイド」の中で、養育者は大人のモデルとしての振る舞いが求められることを明示し、職員間の共有を図っている。ルールについても社会規範と照らし合わせ、状況や希望等と勘案して個別かつ柔軟な対応を図っている。生活習慣等を習得していくためのツールについては、個々の特性に応じて、わかりやすさや受け入れやすさ等に着目した表示方法を工夫しているが、家庭的環境であることを優先させ、画一的な生活ルールも含め掲示物等の「ワク」を感じさせる環境づくりは行わない方針としている。利用者調査結果では、「大人たちは、あなたがいやがるよび方をしたり、命令したり、乱暴な言葉を使ったりしないで接してくれるか」という設問で、回答した子どもの多くから肯定的な回答が得られている。
(2) 食生活
A21 食事は、団らんの場でもあり、おいしく楽しみながら食事ができるよう工夫している。 b
【コメント】
・施設では、食生活は身体を作るだけでなく、豊かな心を育てる基盤であると捉え、継続的に食育に取り組んでいる。以前は厨房で調理員が調理したものを運び、配膳する形で食事を提供していたが、現在は担当職員が「家」のキッチンに立ち、子どもの近くで調理する機会をできる限り多く取り入れ、家庭に近い雰囲気づくりに努めている。また、今年度、週末は子どもの希望をもとに献立を決め、食材の買い物から調理までの一連の工程を子どもとともに行う取り組みを始めている。今回の職員自己評価でも「できている」と評価した職員の割合が多く、職員の意識やモチベーションの高さがうかがえる。なお、テーブルは、日常生活の中では食事に限らず多目的に使われるので、例えばランチョンマットの活用等により、今は食事をする場所である、ということへの意識化を促す等、より家庭的な食環境としてのあり方を検討されたい。
A22 子どもの嗜好や健康状態に配慮した食事を提供している。 a
【コメント】
・毎月給食会議が開催され、献立をはじめ、子どもの食に関する事項が話し合われている。今年度より始まった年4回の子どもへのアンケートでは、食事の量や味付け、食べたいメニュー等に関する設問も設けており、それをもとに「家」ごとに子どもと話し合いを持つ等して、個別、あるいは家としての、子どもの嗜好や意向の把握に努め、献立等への反映を図っている。アレルギーについては、医療的な根拠に基づき、代替食等で対応し、安全性を高めている。今回の職員自己評価でも「できている」と評価した職員の割合が多い状況がうかがえる。
A23 子どもの発達段階に応じて食習慣を身につけることができるよう食育を推進している。 b
【コメント】
・栄養管理に基づき、栄養士が献立を作成しており、季節の食材を取り入れるとともに、年中行事に合わせてさまざまな料理を盛り込む等、子どもへ食文化の継承を図っている。また、食材を買いに行く機会に食に関する話題を共有する他、調理や配膳の手伝いに子どもが参加すること等を通して、必要な食の知識や調理技術、食習慣等を段階的に獲得していけることを目指している。偏食については、無理強いしないことを基本姿勢としているが、食べ残しに対しては、根気強く子どもへ意識と行動の変容を働きかけている。なお、「食の提供と食育」は重点課題として毎年継続的に取り組んでいるが、31年度、グループホームの開設を計画していることを踏まえ、単年度計画だけではなく、中期的な展望のもと、施設の目指す食事のあり方を具体的に掲げ、その実現に向け段階的に食育へ取り組むことも検討されたい。
(3) 衣生活
A24 衣類が十分に確保され、子どもが衣習慣を習得し、衣服を通じて適切に自己表現できるように支援している。 a
【コメント】
・年間で被服費を用意しており、職員が子どもと一緒に、嗜好に沿った衣類を購入に出かけている他、年齢の高い子どもは、友人たちと買い物に出かける等、可能な限り自由な選択のできる状況を設けている。洗濯は毎日行い、それがあたりまえの日常として子どもの目に触れることが、「大切にされている」という子どもの自己肯定感とともに、自立への意識へとつながると、洗濯も専門的な支援のひとつとして施設は捉えている。
(4) 住生活
A25 居室等施設全体がきれいに整美されている。 b
【コメント】
・施設は全体的に木を基調として、家庭的であたたかみのある雰囲気が感じられるような造りとなっている。環境整備については、各「家」で子どもの意見を反映させながら、それぞれ個性のある環境づくりが行われている。トイレ、洗面所、浴室等の共有スペースは職員によって毎日清掃、整頓が行われ、子どもが日常的に気持ち良く使える状況を生み出すことで、生活習慣の安定、定着を心がけている。また、共有家具の入れ替え等は、単に壊れたから、汚れたから買い換える、のではなく、そこに至る経緯を踏まえ、子どもの育ちにおける影響等も考えあわせ、子どもへ優先して提供するべき事柄は何なのか、を検討する等、子どもの自立性や責任の観点から慎重な対応を図っている。
A26 子ども一人ひとりの居場所が確保され、安全、安心を感じる場所となるようにしている。 a
【コメント】
・4つの「家」のうち2つは小規模グループケアで定員6名となっており、他の「家」も現在6~7名での構成となっている。そのため、ほぼ全員が個室で生活しており、安心、安全が守られる生活環境が提供されている。居室内の環境整備においては、子どもの主体性・自主性、またプライバシーを尊重する観点から職員の介入をどう判断するかが難しく、職員間で話し合い、その過程で意識を擦り合わせて、チームとして一定の方向へと方針を定めていく方法で支援をすすめてきている。
(5) 健康と安全
A27 発達段階に応じ、身体の健康(清潔、病気、事故等)について自己管理ができるよう支援している。 b
【コメント】
・これまでの生活の経緯から、健康・衛生が保障された成育環境が十分整えられてこなかった場合もあり、日々の営みの中で、まず、子どもに、それらに対する習慣化、意識化を図ることを目的に支援にあたっている。また、中高生の割合が高いことから、将来の生活を見通して、自立(自律)的に健康・衛生管理能力を身につけられるよう、個々の状況に応じて、職員が知識・技術を伝えている。「家」ごとの職員チームの連携が良いため、相互にフォローしながら健康等の管理がなされている現状ではあるが、今後は、一定程度の基本・共通事項は可視化し、それを基盤に個別化を図ることで支援の質を保っていくことが望まれる。標準化を図る必要性から、現在、文書化がすすんでいる基準書の完成と活用が期待される。
A28 医療機関と連携して一人ひとりの子どもに対する心身の健康を管理するとともに、必要がある場合は適切に対応している。 b
【コメント】
・定期的な通院、処方を要する場合には、子どもの同意を得て通院同行し、医師との情報共有を図っている。日常的な服薬については、職員が預かり、子どもの生活場所からは見えない一定の箇所でカレンダー式のツールを用いて管理を行い、原則として、薬を手渡したその場で職員が子どもの服薬を視認することをマニュアルの中で定めている。臨床心理士による薬をテーマとした園内研修を開き、職員の、薬に対する知識や意識の向上が図るとともに、正しい知識に基づいて子ども自身にも薬の知識を伝えている。なお、薬を含め健康に関する事柄は、生命とも直結する重要事項であるため、作成途中の基準書の完成により、施設の基本事項がより細かく可視化され、共有が強化されることが期待される。
(6) 性に関する教育
A29 子どもの年齢・発達段階に応じて、他者の性を尊重する心を育てるよう、性についての正しい知識を得る機会を設けている。 b
【コメント】
・施設では継続的な重点課題として取り組んできており、今年度を含め、近年は外部研修で職員が個々に学ぶ機会を多く作る他、園内研修で同性、異性との適切な距離感、思春期等のニーズに応じた適切なかかわり等を職員共有する等、職員の知識の平準化を図っている。現在は、確立したプログラムはなく、計画的な実施には至っていない。文書化が進んでいる施設の基準書の方向性とも合わせて、施設の規模、形態や特徴等に応じた、効果的なプログラムのあり方、進め方の検討が望まれる。また、その前提として、取り組みが進まない理由の分析を改めて行うとともに、他者との境界線等、プライバシーや自他の権利を考える機会と絡めて子どもの学びへつなげる等の工夫も検討されたい。
(7) 自己領域の確保
A30 でき得る限り他児との共有の物をなくし、個人所有とするようにしている。 a
【コメント】
・ほぼ全ての子どもに個室を確保しており、相互の居室の出入りは禁止し、プライバシーが守られた安心・安全な場所として保障している。個人の所有物は、自立支援の観点から、原則、居室内の家具等でそれぞれが管理しており、必要に応じて鍵のかかるロッカーで職員が一部管理を行う等、柔軟な対応を図っている。施設では、子どもが共有するのは最低限の物に限り、個々の所有物は予算の中で、個別の嗜好等に応じて購入することとしている。
A31 成長の記録(アルバム等)が整理され、成長の過程を振り返ることができるようにしている。 b
【コメント】
・子ども一人ひとりにアルバムを用意しており、行事等の写真は意識して記録として残すよう心がけ、アルバムで整理している。保管は本人に任せているが、個々の状況に合わせて保管方法を変えている。施設では、重点課題として「生い立ちの整理」へ継続的に取り組んできた経緯があり、昨年度は「ライフストーリーワークブック」の書式が定まり、今年度にかけて徐々に、子どもと一緒に作成が進められている状況にある。
(8) 行動上の問題及び問題状況への対応
A32 子どもの暴力・不適応行動などの行動上の問題に対して、適切に対応している。 b
【コメント】
・実際に、課題が生じた場合には、職員は「受容」と「共感」のもと、子ども自身の中に問題を見い出すのではなく、その背景・要因をみつめ、子どもとの対話等でともに探りながら解決の糸口を考えていくことを基本姿勢としており、職員間での子どもへの共通理解のもと、支援方針の統一を図っている。施設では、今年度より子どもの健康的な感情表現の促進を目的として「セカンドステップ」の導入に取り組み始めており、現時点では、まず、職員が外部研修を受講し、今後、それを共有、基盤を整えた後に、継続的な教育プログラムとして実施していくことを予定している。
A33 施設内の子ども間の暴力、いじめ、差別などが生じないよう施設全体で取り組んでいる。 a
【コメント】
・養護者である職員が大人のモデルとなって模範を示すことを心がけており、そうした大人との良好な関係のもとで行われる子どもへの受容的なかかわりによって、子どもの自己肯定感を高めるとともに、子どもにとってロールモデルとなれることを目指している。そのためにも、子ども、職員、相互の関係性の把握を前提に、職員の異動は基本的には考えず、継続性のある関係構築を図っている。また、子どもの生活時間に合わせ、断続勤務による職員体制を整備して、子どもの安心感を高めている。
A34 虐待を受けた子ども等、保護者等からの強引な引取りの可能性がある場合、子どもの安全が確保されるよう努めている。 a
【コメント】
・児童相談所との連携を緊密にとり、保護者等への対応について確認をし合っている。また、電話対応指示書を作成し、不審な問い合わせ等の電話が入った際の対応の徹底に努め、子どもの安全確保を図っている。場合によっては、警察との協力体制を整え、リスクを未然に防ぐことに尽力している。
(9) 心理的ケア
A35 心理的ケアが必要な子どもに対して心理的な支援を行っている。 a
【コメント】
・常勤の臨床心理士の配置があり、生活場面とは切り離した、別フロアのセラピールームで個別にプレイセラピーを実施している。子どもが安心して話すことのできる環境整備が大切であるとの考えから、子どもと臨床心理士との関係性に他の職員は介在せず、両者の信頼関係のもとで行うことのできる環境を提供している。また、臨床心理士は、専門的な見地から会議等で助言を行う等しており、職員が子どもを多角的に理解していく上で大きな助けとなっている。
(10) 学習・進学支援、進路支援等
A36 学習環境の整備を行い、学力等に応じた学習支援を行っている。 b
【コメント】
・入所に至るまでの生活環境の中で、学習習慣が定着している場合は必ずしも多くはなく、個々の状況を把握した上で、主に学習習慣と基礎学力の獲得から支援を段階的に行っている。集中できる学習環境として、個室である居室をはじめ、相談室等、その子どもの特性に適した選択肢を提供している。学習の遅れが学習への意欲や自信を低下させている場合もあり、達成可能なスモールステップを設定しながら、落ち着いた生活の中で成功や達成の体験を積み重ね、徐々に自信を回復することで意欲を引き出す支援を心がけている。学校とも連絡帳や電話、訪問等で情報共有と協力関係を図り、子どもの現状に適した学習環境の調整を行っている。中高生の希望者には通塾も可能で、家庭教師の来訪もある一方、ボランティアについては、子どものニーズとのマッチング等の事情もあり、現在はいない状況となっている。
A37 「最善の利益」にかなった進路の自己決定ができるよう支援している。 a
【コメント】
・高校生以上には「社会自立に向けたアセスメント指標」と「支援計画書」を用いて、自立に向け、より具体的な準備のための計画を、子どもと対話をしながら作成している。進路選択については、経済面の条件等を考慮しながらも、基本的には子ども本人の意向を尊重して、保護者、学校の理解へとつなげるよう努めている。特に経済面の条件が厳しい場合が多いことから、奨学金の他、高校通学中からアルバイトで資金準備をする等、計画的な自立の準備を職員がサポートしている。親子訓練室で疑似体験を行う他、毎月の生活費用の使い方をシミュレーションする等、生活能力向上のための支援をさまざまに行っている。
A38 職場実習や職場体験、アルバイト等の機会を通して、社会経験の拡大に取り組んでいる。 b
【コメント】
・高校生からはアルバイトの実施を積極的に考え、自立に向けた貯蓄を行うとともに、金銭感覚、社会性を養う機会としている。ただし、立地条件の課題もあり、職場実習や職業体験の機会の拡大や、ネットワーク構築への積極的な取り組みには至っていない。
(11) 施設と家族との信頼関係づくり
A39 施設は家族との信頼関係づくりに取り組み、家族からの相談に応じる体制を確立している。 a
【コメント】
・毎年、5月を目安に「保護者会」を開き、子どもの生活の様子を映像や説明で丁寧に伝えるとともに、施設の基本的姿勢への理解を促す機会としている。交流の窓口としてFSWを位置づけ、入所時に保護者へ紹介しており、入所後の面会等の交流は可能な限り実施し、都度子どもの気持ちや状況確認も行い、安全、安心な実施を心がけている。また、毎月「家庭通信」として手書きで身長、体重や子どもの様子を知らせ、時には写真も同封して、子どもと保護者のつながりの継続をサポートしている。また、学校の予定・行事等も併せて知らせ、個別の状況によっては積極的な参加を促している。交流が難しい場合等は、子どもの意向を尊重しながら短期里親の協力を得る等、家庭的な生活を体験する機会を設けている。
(12) 親子関係の再構築支援
A40 親子関係の再構築等のために家族への支援に積極的に取り組んでいる。 b
【コメント】
・家庭に戻ることが現実的になると、児童相談所の再統合プログラムに沿って家族交流を行っている。交流のステップ等は児童相談所に確認しながら、可能な限り積極的に実施しているが、今年度よりFSWが1名増え2名体制となったことから、今後はより積極的かつ計画的に家族への支援を行っていくことを予定している。
(13) スーパービジョン体制
A41 スーパービジョンの体制を確立し、職員の専門性や施設の組織力の向上に取り組んでいる。 b
【コメント】
・児童精神科医が年4回程度来訪し、事例検討をはじめ、専門的な見地からスーパービジョンを実施している。また、施設内でのスーパービジョン体制としては、施設長、基幹的職員を中心に、他の専門職の参加も得ながら家会議、チーフ会議、援助会議で子どもに関する事項を共有、検討する場において、確認や助言等を行い、職員の専門性や支援の質の向上に努めている。小規模な生活単位で日常の支援が行われているため、「家」ごと、あるいは職員個人が課題を抱え込みやすい環境があることから、「家」が相互の状況把握をしやすいように、また職員が相談しやすい環境、関係であるように常に留意して、風通しの良い職場環境と職員間の円滑なコミュニケーションを心がけている。
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