社会的養護施設第三者評価結果 検索

愛の聖母園

第三者評価結果詳細
共通評価基準(45項目)Ⅰ 養育・支援の基本方針と組織 
1 理念・基本方針
(1) 理念、基本方針が確立・周知されている。 第三者
評価結果
1 理念、基本方針が明文化され周知が図られている。 a
【コメント】
・理念・基本方針については、園の処遇指針、毎年度の事業計画書に明文化されており、ホームページや広報誌、リーフレット等には理念に加え、施設の設置目的・使命や目指す方向、考え方が示されています。
・理念・基本方針は、年度当初の理事長訓話や新任職員研修時、職員会議で輪読をするなど、職員への周知が図られています。処遇指針の中の養育に関する部分については、理念・基本方針にもとづく考え方を職員全体で協議、確認しながら作成するなど、周知を図る工夫をしています。
・毎年発行する広報誌「愛の聖母園事業報告」では、理念や園の特色のある取り組み内容を紹介しており、保護者、学校、地域の関係機関などへ配布され、周知が図られています。
・理念・基本方針について、子どもに対しては、入所時から丁寧に説明し、小・中・高校生の階層ごとの子ども集会などを通じて周知が図られています。また、保護者等へは、面会等の機会をとらえ、事業報告書、生活のしおり等を使って説明しています。運営方針等に関しては、スマートフォンのアプリを利用して、園の運営や日常の養育に係る必要な連絡を分かりやすく伝えるように工夫しています。
2 経営状況の把握
(1) 経営環境の変化等に適切に対応している。 第三者
評価結果
2 施設経営をとりまく環境と経営状況が的確に把握・分析されている。 b
【コメント】
・園長、専門職等の職員は、行政・児童相談所との連絡会議、児童養護施設協議会関連の施設長会議をはじめとする会議・研修に参加し、福祉施策、福祉事業全体の動向、内容等の把握に努めています。
・施設の位置する地域及び小・中学校校区において、職員が小・中学校の家庭教育学級、PTA活動等に積極的に参加し、役員を引き受けるなど中心的な活動を担っており、児童養護施設が長年培った知識と経験をもとに地域の福祉課題等の把握に努め、課題解決への取組に還元しています。
・施設内の講堂やグラウンドを施設の位置する西谷山地域及び校区の会議・活動の場として提供したり、地域コミュニティ協議会、校区社会福祉協議会などの地域活動に職員が参加するなど、地域の一員として地域の福祉ニーズ把握や課題解決に取り組んでいます。
3 経営課題を明確にし、具体的な取組を進めている。 b
【コメント】
・施設入所を必要とする子どもの数の推移、利用率、養育・支援に係るコスト分析等については、四者会議や予算委員会で適宜協議し、職員会議等で説明、分析し、具体的な課題や問題点を明らかにしています。
・経営状況や運営上の改善を要する課題については、法人の理事会等で説明し、役員間での共有がなされています。
・養育・支援に要するコスト分析を行い、組織体制や施設整備方針などについて検討することが望まれます。また、長期的な視野で職員体制や人材育成に関する経営課題を明確にし、役員間、職員間で情報を共有することが望まれます。
3 事業計画の策定
(1) 中・長期的なビジョンと計画が明確にされている。 第三者
評価結果
4 中・長期的なビジョンを明確にした計画が策定されている。 b
【コメント】
・法人の理念、基本方針の実現に向けて、長期計画・家庭的養護推進計画を策定しており、目標を明確にしています。
・計画にもとづいて、小規模グループケア、地域小規模児童養護施設の設置など小舎制を着実に実現するとともに、施設の高機能化として、専門職を配置して専門的ケアを実施するなど、具体的な実践が行われています。
・愛の聖母園は、県内でもいち早く改革を進めているところですが、今後の課題や問題解決に取り組むためには、中・長期計画の見直し、策定が望まれます。
・策定にあたっては、組織体制や施設整備、職員体制、人材育成等に関して現状分析を行い、課題や問題点を明らかにするとともに、目標達成のための具体的な取組内容とする必要があると思われます。また、財務面の裏付けとなる中・長期収支計画を策定されることも望まれます。
5 中・長期計画を踏まえた単年度の計画が策定されている。 b
【コメント】
・当園では、単年度事業計画として、毎年度運営方針の見直しを行い、方針を反映した処遇指針と毎年度の行事計画を合わせ、職員に事業計画として認識され実行しています。
・養育・支援の充実・向上に向けては、中・長期計画の見直し・策定とそれを反映した数値目標の設定などを行い、具体的な内容の単年度事業計画を策定することが求められます。
さらに年度末には実施状況の評価・分析を行い、結果を文書化し、翌年度の事業計画に反映する仕組みの構築が望まれます。
(2) 事業計画が適切に策定されている。
6 事業計画の策定と実施状況の把握や評価・見直しが組織的に行われ、職員が理解している。 b
【コメント】
・事業計画については、四者会議及びホームリーダー会議で合議のもとに現状分析、課題検討が行われています。また、行事計画や職員の職務分担や役割の作成時には、全職員が参画して検討・作成されています。
・全職員が意見を述べ課題を共有して理解を深める取組を取っており、パソコンネットワークシステムの活用により情報共有が図られています。
・実施する計画は、職員会議等で丁寧に説明し周知に努めていることが伺えますが、毎年度事業報告と連動した事業計画にすることが望まれます。
7 事業計画は、子どもや保護者等に周知され、理解を促している。 b
【コメント】
・養育・支援や居住環境の整備など子どもの生活に密接にかかわる事項については、小・中・高校生それぞれの子ども集会を通じて担当職員から分かりやすく説明し、周知を図っています。
・保護者等に対しては、PTAや運動会、入学式・卒業式などの学校行事や来園の機会をとらえて随時説明し理解を得ています。
・年1回発行する広報誌「愛の聖母園事業報告」では、理念や施設内での取組事項に加え、子どものエッセーなどを掲載し、保護者や地域、行政の関係者へ、園の方針、取組についての周知に努めています。
4 養育・支援の質の向上への組織的・計画的な取組
(1) 質の向上に向けた取組が組織的・計画的に行われている。 第三者
評価結果
8 養育・支援の質の向上に向けた取組が組織的に行われ、機能している。 a
【コメント】
・定期的な第三者評価受審と毎年度の自己評価に真摯に取り組んでいることが、各種資料で確認できます。評価にもとづく改善への取組として、養育・支援の標準的実施方法である処遇指針の改正に適切に反映されています。
・養育・支援の質の向上に向けた取組として、個別対応職員や専門職員である基幹的職員、心理療法担当職員、家庭支援専門相談員、里親支援専門相談員、職業指導員がそれぞれの小舎の課題解決に積極的に関わっています。多面的に子どもの養育・支援に配慮しており、課題解決に向けた組織的な取組として実践され、効果を挙げていることが伺えます。
・自己評価は毎年度、全職員が携わることにより、養育・支援の質の向上に対する職員の意識を高めることにつながっています。とりまとめられた評価結果は、四者会議、グループリーダー会議、職員会議で配布・報告され、職員に周知されています。
9 評価結果にもとづき組織として取り組むべき課題を明確にし、計画的な改善策を実施している。 a
【コメント】
・自己評価は、毎年度全職員が参加して実施し、とりまとめた結果は文書化し課題を明確にしたうえで職員会議に報告され、職員間で情報の共有がなされています。
・小舎制における養育・支援に係る個別事案に対しては、専門職員が積極的に関与することにより、組織として課題解決に取り組む姿勢がみられます。
・自己評価で分析した課題等については、職員の参画のもとでさらなる改善課題の分析を行い、改善策を検討し、今後策定される中・長期計画へ反映されることが期待されます。
Ⅱ 施設の運営管理
1 施設長の責任とリーダーシップ
(1) 施設長の責任が明確にされている。 第三者
評価結果
10 施設長は、自らの役割と責任を職員に対して表明し理解を図っている。 b
【コメント】
・理事長、園長は、広報誌「愛の聖母園事業報告」において意見表明を行っています。園長の施設の経営における責任者としての役割と責任については、職務分掌等が文書化されています。また、年度当初の職員会議や研修等の場で意見を表明し、職員への周知が図られています。
・有事(事故、災害等)における対応も含め、不在時の権限委任等について、管理規程、事務分掌等での明文化が望まれます。
11 遵守すべき法令等を正しく理解するための取組を行っている。 a
【コメント】
・園長は、児童養護施設長会議や行政との連絡会議、研修等に参加し、児童相談所等の関係機関と連携を図り、関係法令や諸規定の遵守について理解を深めることに努めています。
・園長は、年度当初の職員会議で法令遵守等に係る訓示や、職場内研修、各種会議等で権利擁護や虐待防止・身体拘束等の適正化などの取組を進めており、職員に対する周知徹底を図っています。
(2) 施設長のリーダーシップが発揮されている。
12 養育・支援の質の向上に意欲をもちその取組に指導力を発揮している。 a
【コメント】
・園長は、養育・支援の質の向上について、小舎制養育研究会に所属し、小舎制での養育について取組んでいます。
・分園型小規模グループケア、地域小規模児童養護施設の職員は勤務場所が分散しているため、職員間の連携がとりわけ重要と考えられます。専門職員が積極的に関わり課題解決に取組み、養育・支援の質の向上が図られるよう努めています。
・園長は、養育・支援の質に関する課題把握のために、定期的に職員や子どもとの面談を実施しており、個別・具体的な問題解決に取り組んでいます。
・園長は、四者会議やホームリーダー会議等で職員との対話を重ね、さらに強力なリーダーシップを発揮されることを期待します。
13 経営の改善や業務の実効性を高める取組に指導力を発揮している。 b
【コメント】
・園長は、理念・基本方針の実現に向けて、四者会議で、業務の実効性の向上に向けた協議・検討を行っています。
・分園型小規模グループケアでは、家庭的な雰囲気の中で職員が子どもと起居を共にし、子どもの情緒の安定を図っており、同様に地域小規模児童養護施設では、3~4名の職員を配置して独立した運営を実践しています。
・子どもの情緒の安定、自立支援の観点から、入所から退所まで、できる限り環境を変えずに生活できるようホームの移動がないように考えられています。また、職員は子どもを継続的に支援できるように配置され、専門職員が積極的にフォローアップを行えるように配慮されています。
・支援に必要な人員配置や、職員の働きやすい環境整備等に取り組むと同時に、経営状況やコストバランスの分析にもとづく施設の将来像を視野に入れた体制整備に指導力を発揮されることを期待します。
2 福祉人材の確保・育成
(1) 福祉人材の確保・育成計画、人事管理の体制が整備されている。 第三者
評価結果
14 必要な福祉人材の確保・定着等に関する具体的な計画が確立し、取組が実施されている。 b
【コメント】
・小規模化、地域分散化は長期計画に沿って進められており、小規模グループホーム4棟、地域小規模児童養護施設2棟が設置され、それぞれ担当職員が配置されています。
・各種加算対象となる専門職員がそれぞれのホームの課題解決に積極的に関与しており、養育・支援の質の向上に大いに寄与していると思われます。
・福祉系大学、短大、専門学校等と連携してインターンシップ実習生を積極的に受け入れ、養成校へのアプローチを行い、リクルートに力を入れています。また、当園でボランティア活動を行っている学生に対し、トレーニングを実施し、当施設の良さをアピールするなど、人材確保につながるよう取り組んでいます。
15 総合的な人事管理が行われている。 b
【コメント】
・理念・基本方針、処遇指針に期待される職員像が明確にされていますが、人事基準が定められておらず、職員の専門性や職務遂行能力、職務に関する成果や貢献度等を評価する明確な仕組みはありません。
・キャリアパス導入に向け、令和3年度にオンラインによる法人全体研修を全職員が受講し、制度の内容の周知を図り、導入に向けた取組を進めています。
・職員が自らの将来を描くことができ、モチベーションを高めるためにも、職員の給与や昇格に関する基準の整備や、能力開発の目標管理などの仕組みづくりが望まれます。
(2) 職員の就業状況に配慮がなされている。
16 職員の就業状況や意向を把握し、働きやすい職場づくりに取り組んでいる。 b
【コメント】
・新任職員等に対して先輩職員が指導、育成する役割を担うなど、業務上の悩みや問題が生じた時に相談しやすい職場環境が伝統的に培われており、お互いに連携して養育、支援に取り組んでいます。
・養育についての抱え込みなどが生じないように、専門職員がフォローして課題解決に取り組む組織的な対応を実践していることが伺えます。
・職員のメンタルヘルスに関して、精神科医に相談できる体制を整え、相談窓口を設置しています。
・園長は、職員と定期的に個別面談を行い、業務上の不安、悩み、意識の把握等に努めています。
・福利厚生に関して、法人加入による職員の入院保険に関する制度を導入しています。
・職員は、子どもと起居を共にする住み込みなど、勤務形態が不規則にならざるを得ないため、時間外労働の削減などワーク・ライフ・バランスに配慮し、働きやすい職場環境づくりに向けて、さらなる組織的な取組を期待します。
(3) 職員の質の向上に向けた体制が確立されている。
17 職員一人ひとりの育成に向けた取組を行っている。 b
【コメント】
・期待する職員像は理念、基本方針、処遇指針から読み取ることができ、職員は小舎制の養育・支援に対して目標をもって取り組んでいることが、記録等により確認できます。
・法人では、キャリアパスの導入に向けた研修を実施するなど、総合的な人事管理システムの導入についての検討を始めています。
・質の高い養育・支援の実現、継続のためにも、職員及び各部門の目標管理は必要と思われ、効果的な仕組みの構築が期待されます。
18 職員の教育・研修に関する基本方針や計画が策定され、教育・研修が実施されている。 b
【コメント】
理念・基本方針・処遇指針に期待する職員像が明示されており、職員に必要とされる技術や考え方は示されています。
・毎年度作成する研修計画にもとづき教育・研修が実施されており、当園と同様に小舎制を導入している他法人の施設との人材交流により、改善策の検討も行われています。
19 職員一人ひとりの教育・研修等の機会が確保されている。 b
【コメント】
・新任職員には、先輩職員による個別的なOJTが行われています。養育・支援の知識・理論、現場での実践による感覚の共有を大事にしており、勤務経験の浅い職員は困った時にベテラン職員に教わることができるなど、良い職場風土が築かれている様子がみられます。
・新任職員は、養育理念や支援に関する当園の沿革や実践の経緯等についてベテラン職員から学ぶなど、職員間で相互研鑽する研修機会が新たに導入されています。
・養育・支援に関わるニーズが複合化し、支援の困難性が増しており、職員には専門性が一層求められることから、ベテラン職員や専門職員からスーパービジョンを行う体制があります。
・職員一人ひとりの知識、技術水準、専門資格の取得状況の把握をもとに、階層別、職種別、テーマ別研修等の機会を確保できる研修体制の構築が期待されます。
(4) 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成が適切に行われている。
20 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成について体制を整備し、積極的な取組をしている。 a
【コメント】
・実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成に関する基本姿勢は、処遇指針に明文化されており、「実習生受入マニュアル」が整備されています。
・専門職実習として、社会福祉士、保育士、介護福祉士、心理療法専門職のプログラムが用意されており、実習生指導担当職員を中心に実習生を受け入れ、養成校と連携して積極的に実習指導に取り組んでいます。実習担当者、各ホームの担当者は、効果的な学習が行われるように工夫していることが伺えます。
・指導者研修に関して、養成校との連携のうえ、実習プログラムの検討、実習生へのオリエンテーション、事前指導を実施するなど、実習指導担当職員は積極的に関与しています。
・社会福祉士実習指導者の後継者養成に向けて、園の研修の一環と捉え、園が受講料を負担のうえ、職員が社会福祉士実習指導者研修を受講しています。
・臨床心理士・心理学部実習では、相談場面実習だけでなく、スーパービジョンも含めた取組を実践しています。
・保育士養成に関しては、養成校に対し講師を派遣しています。
3 運営の透明性の確保
(1) 運営の透明性を確保するための取組が行われている。 第三者
評価結果
21 運営の透明性を確保するための情報公開が行われている。 b
【コメント】
・施設の理念や基本方針、養育・支援の内容、事業報告、財務状況報告については、ホームページや広報誌等で各施設の取組も含め公開されています。
・事業報告、決算情報や第三者評価の受審結果は、全国社会福祉協議会のHPを通じて適切に公開されています。
・苦情相談の体制について、ホームページや広報誌「愛の聖母園事業報告」で公開され、子ども、保護者等に配布される「生活のしおり」を通じて周知されています。
・苦情相談を受け付ける課題解決委員会の第三者委員を子どもたちに紹介し、一緒に食事をしたり、対話の場を設けるなど、交流の機会を設けています。
・課題解決委員会の協議内容、苦情処理結果等について、ホームページや広報媒体を工夫することにより公開性が高まると思われます。
22 公正かつ透明性の高い適正な経営・運営のための取組が行われている。 a
【コメント】
・施設における事務、経理、取引等に関するルール、職務分掌と権限、責任については、諸規程により明確にされており、職員にも周知されています。
・内部監査を定期的に実施するとともに、外部の専門家として公認会計士の指導、助言を得ながら、財務状況の確認、経営改善へ取り組むなど適正な処理に努めています。
4 地域との交流、地域貢献
(1) 地域との関係が適切に確保されている。 第三者
評価結果
23 子どもと地域との交流を広げるための取組を行っている。 a
【コメント】
・地域との連携についての基本的な考え方は、処遇指針で詳細に明文化しています。子どもの地域との交流を広げるため、町内会や子ども会、地域内の各種連絡協議会、校区社会福祉協議会などに職員が参加し、積極的に役職を引き受けるなど、地域の一員として活動しています。
・地域小規模児童養護施設においては、職員が地域行事や奉仕活動に毎回参加し、地区の役員を引き受けるなど、より深く地域の活動に関与し活動しています。
・近隣は宅地化が進んでおり、地域の子どもたちが安心して遊べるよう、園庭を園児を中心とする地域の子どもたちに開放しており、コロナ禍前には一緒に遊んでいたことを確認しました。
・町内会長連絡協議会の研修会場として園の講堂が使用され、地域の会議、活動の場として施設の一部やグラウンドを提供するなど、施設や子どもへの理解を深めるための取組を積極的に行っています。
24 ボランティア等の受入れに対する基本姿勢を明確にし体制を確立している。 a
【コメント】
・ボランティアの受け入れについての基本姿勢は、処遇指針に明示され、登録手続き等に関し記載されたボランティア受入マニュアルが整備されています。
・ボランティアによる活動は、奉仕作業、学習支援、情操交流があり、情操・教育方面ではボランティアの参加によるピアノレッスンやハンドベル、三味線などの習い事が行われています。なかでも「鹿児島国際大学ふれあいサークル」による公文式学習は、週3回、数名の学生により、子どもそれぞれの能力に合わせた個別学習が行われています。
・学習機会に恵まれなかった子どもが、学校の授業を理解できるようになるなど、学習能力が向上しており、また、学生とふれあうことによる人との関わりが社会性の発達に大きな効果を及ぼしていると思われます。
・ボランティア学生には、子どもの発達障害や子どもの虐待等についてのトレーニングを積極的に実施しています。大学生ボランティアの一部は当園を含む福祉関連職場に就職しており、福祉人材育成にも寄与しています。
(2) 関係機関との連携が確保されている。
25 施設として必要な社会資源を明確にし、関係機関等との連携が適切に行われている。 a
【コメント】
・施設として必要な社会資源との連携について、処遇指針に具体的に明示しています。
・児童相談所との定期的な連絡会に参加するとともに、子どもや保護者等の情報は児童相談所と相互に提供するなど緊密な連携がとられています。
・病院・保健所・療育施設等の関係機関との連携を適切に行っています。
・園は小学校の各専門部に所属し、職員は可能な範囲でクラス会役員を引き受けるなど、家庭教育学級や学校内の諸活動において中心的役割を担っています。常に生活指導部の三役を務めるなど、小学校全体の健全育成活動へ積極的に継続して取り組んでいます。
・中学校では、児童の健全育成の観点から、男性職員が生活指導部に所属し、さらにPTAの役員を引き受け、学校や地域との連携の橋渡し役となる活動や「地域サポート会議」に所属し、地域の福祉ニーズの把握と課題解決に向けて協働して取り組んでいます。
・地域行事や奉仕活動に積極的に参加するとともに、コロナ禍前は地域住民を施設の行事であるガーデンパーティーに招待したり、施設の講堂を地域全体の活動の場に提供するなど地域との連携が密に行われています。
・退所が近い子どもの自立支援計画には、退所後の生活の見立てが記載されているとともに、園内に設置された自立支援ホームで、社会人としての実体験訓練が行なわれています。
(3) 地域の福祉向上のための取組を行っている。
26 地域の福祉ニーズ等を把握するための取組が行われている。 b
【コメント】
・中学校区単位の地域青少年育成事業の一環として、平成15年度から鹿児島市の指定を受け、「谷山中明るく楽しいサポートチーム」の運営を開始しています。校区運営審議会、民生・児童委員、南警察署、校区内小・中学校6校などで構成されていますが、職員が代表して参加し会長職を引き受け、定例会議、研修会の実施、中学校での朝の挨拶運動や校区夜間パトロールの実施など運営の中心的役割を果たし、地域の青少年健全育成に寄与しています。
27 地域の福祉ニーズ等にもとづく公益的な事業・活動が行われている。 a
【コメント】
・思春期に入る時期の子どもの情緒の安定、児童の健全育成の重要性を鑑み、職員は小・中学校における生活指導部での活動やPTA活動へ積極的に関与し、学校や地域との連携の橋渡し役に努めています。
・地区コミュニティ協議会に参加・協力し、校区内で実施されるさまざまなイベントの企画・立案や運営に携わり、児童養護施設として長年培った知識と経験を校区住民に還元するよう努めています。また、地域と密接に交流を深めることにより、地域ニーズの把握と課題解決に積極的に取り組むなど地域貢献を果たしています。
・中学校生活指導部会議及び小・中学校担当教員の職員研修に園長が参加し、意見交換等を行っており、児童福祉等に関する相互理解につながっています。
・園の立地する校区町内会長会議や校区社会福祉協議会等で開催される、地域住民の生活に役立つ福祉講演会や研修会等に協力することにより、地域住民の福祉や施設に対する理解促進に努めています。
Ⅲ 適切な養育・支援の実施
1 子ども本位の養育・支援
(1) 子どもを尊重する姿勢が明示されている。 第三者
評価結果
28 子どもを尊重した養育・支援の実施について共通の理解をもつための取組を行っている。 a
【コメント】
・理念、基本方針、運営方針には、子どもを尊重した養育・支援の実施についての基本姿勢及び職員の心構えが明示され、処遇指針には実践にあたっての標準的な実施方法などが詳細に記載されており、定期的に見直しています。
・職員は、年度当初の理事長訓示や権利擁護、虐待防止等の研修を全員受講しています。
・全職員が毎年度権利擁護・虐待防止チェックリストを行うことにより、権利擁護に対する職員の意識の徹底を図っています。
29 子どものプライバシー保護に配慮した養育・支援が行われている。 a
【コメント】
・子どものプライバシー保護については、処遇指針で基本姿勢を明示しており、職員は権利擁護の外部研修への参加、園内研修の全員受講などにより、理解しています。処遇指針では、部屋に入る時はノックし、子どもの手紙は開封しないなど、職員に対する具体的な対応を示しています。
・子ども同士が施設内でのお互いのプライバシーを守れるよう、子ども集会を通じて周知徹底を図っています。
・子どもの生活の場である居室・勉強部屋は、原則中学生以上は個室、幼児を除く小学生は仕切り等の設置によりプライバシーが守られ、各人に個人用ロッカーを準備するなど快適な環境が提供されています。
・職員は「異性児童との関わりについて」のガイドブックをマニュアルとしており、子どもには、「異性児童との関わりについて」や「子どもの権利ノート」、「ご存じですか?児童養護施設での暮らし」などを用いて、子ども会や日常の生活の中で周知しています。
・子ども、保護者等には、入所の際に入所のしおりを配布し説明しています。
(2) 養育・支援の実施に関する説明と同意(自己決定)が適切に行われている。
30 子どもや保護者等に対して養育・支援の利用に必要な情報を積極的に提供している。 a
【コメント】
・入所予定の子どもや保護者等はいつでも見学できるよう体制が整えられており、施設概要のリーフレットや施設独自の「生活のしおり」及び「子供の権利ノート」などの資料により個別に丁寧に説明しています。
・保護者等に対して配布される広報誌「愛の聖母園事業計画」には、施設の理念をはじめ、施設内の行事や子どものエッセーなどを掲載し、施設内での生活の様子が分かりやすく紹介されています。広報誌は保護者等に郵送で届けられ、また施設の入口に置かれ誰でも入手できるよう配慮されています。
31 養育・支援の開始・過程において子どもや保護者等にわかりやすく説明している。 a
【コメント】
・新しく入所する子どもや一時保護の子どもについては、インテーク(受入)期間を設けアセスメントを行うことを重要視しており、多目的棟の自立支援室において落ち着いた環境で子どもや保護者等に分かりやすく説明を行い、自己決定を尊重しています。
・アセスメント・インテーク期間では、児童に丁寧な説明を行うとともに、行動観察を複数の職員で行い、入所に際しての不安解消に努め、入所後の園での生活が円滑に行われるような配慮がなされています。
・入所時には、養育・支援の内容や施設の概要を紹介するリーフレットや「生活のしおり」を用いて丁寧に説明を行い、子どもの気持ちに寄り添いながら、自己決定の支援を行っています。
・自立支援計画の策定・見直しの際に、フェイスシートを用い、直接処遇職員が子どもと一緒に現在の生活環境や将来目標などを考え、自己決定のための支援を行っています。
・心を磨き、自分を知るなどの学びをする「錬成会」が各グループ別(小・中・高校生)に設置されており、教会や研修センター等に出かけ、グループによる話し合い、共同制作等により、自発性、創造性、想像性の開発、協調性を養うなどの研修を行っています。
32 養育・支援の内容や措置変更、地域・家庭への移行等にあたり養育・支援の継続性に配慮した対応を行っている。 a
【コメント】
・職員は、日常生活の子どもとの会話で考えていることや思いを受け止めるよう心がけ、普段から家庭との連携を密にとるように努め、担当の直接処遇職員を中心に自立支援計画書を作成します。
・施設入所の際のインテーク・アセスメントの際には、当初から家庭支援専門相談員が必ず同席し、家庭復帰の支援を念頭にアセスメントを行っています。
・職員は、施設を退所した後も、子どもが気軽に相談しやすいように子どもとの絆を日頃から築いており、退所後も支援していく姿勢を子ども、保護者等にも周知しています。
・退所して社会で自立した子どもの自宅などを退所後半年以内に訪れ、職場の様子や住居の様子を見聞きし、アフターケアを行うこととしています。
・退所後は、家庭復帰した子どもは家庭支援専門相談員、就職で卒園した子どもは職業指導員、里親委託した子どもは里親支援専門相談員が中心となり、ホーム担当職員と連携し、アフターフォロ-に取り組んでいます。
・退所、卒園後もカウンセリング等の継続が必要な子どもについては、子どもの状況に応じて、月に1回から数ヶ月に1回のカウンセリング等を行いながら、卒園後の心の安定を図るように努めています。
・ケアリーバー(社会的養護経験者)対応も園としては大事にしており、卒園生が県外から帰省した時や相談に来所した時に、いつでも宿泊できるように自立支援室を活用しています。
(3) 子どもの満足の向上に努めている。 第三者
評価結果
33 子どもの満足の向上を目的とする仕組みを整備し、取組を行っている。 b
【コメント】
・小規模グループケア、地域小規模児童養護施設では、いずれも温かな家庭的雰囲気の中で養育・支援が行われており、職員は日常生活において子どものそれぞれの人格を尊重し、子どもたちは日頃から自分の意見を言える雰囲気があります。
・ホーム単位では常に子どもと真摯に向き合っており、子どもの困っていること、家族に対しての思い、悩みや園生活に対する満足の度合いは、個々に話して把握するよう努めていますが、反面、無理して聞かない姿勢も保ち、子どもの気持ちを大切にしています。
・園長は、子どもへ個別面談を行っており、子どもの悩みや満足を把握するよう取り組んでいます。
・子どもの意向・意見は、入所時からの「記録票」、「子どもの状態像の把握」などの記録、自立支援計画作成の際の「児童聞き取りフェイスシート」をもとに、把握されています。
(4) 子どもが意見等を述べやすい体制が確保されている。
34 苦情解決の仕組みが確立しており、周知・機能している。 a
【コメント】
・課題(苦情)解決に関する規程マニュアルにもとづき、課題解決責任者(園長)、受付担当者(副主任2名)が配置され、第三者委員会が設置されています。
・全職員は、養育・支援の実施等から生じた苦情に適切に対応することが責務であることを充分認識していると感じられ、苦情解決の体制は整備されています。
・苦情解決の仕組みを知らせる掲示物が施設内に掲示され、リーフレット「生活のしおり」を子どもや保護者に配布し説明がなされています。保護者等に配布される広報誌「愛の聖母園事業報告」には、意見申し出についての仕組み、案内も掲載されています。
35 子どもが相談や意見を述べやすい環境を整備し、子ども等に周知している。 a
【コメント】
・子どもが意見・考えを述べることができる仕組み等について、入所時に「子どもの権利ノート」、「生活のしおり」により丁寧に説明し、園内に掲示し、「心の耳ポスト」などについて周知を図っています。
・課題解決委員会でのシステムフローに沿って、子ども、保護者に制度が周知される仕組みがあります。開催される委員会では、第三者委員を子どもたちに紹介し、第三者委員は子どもたちと一緒に食事をとり対話するなど、交流できる機会が設けられています。
・園長が子どもの面談を随時行い、また子どものための「心の耳ポスト」は苦情を出しやすい場所に設置してあります。定期的に開催する子ども会での意見を担当職員が把握して、迅速かつ丁寧に対応するよう努めていることが伺えます。
36 子どもからの相談や意見に対して、組織的かつ迅速に対応している。 a
【コメント】
・日常生活の中での意見・要望は、各棟の直接処遇担当職員が日頃からさまざまな相談を受けて職員で共有しており、心理療法担当職員や各種の専門職員も積極的に課題解決に関与しているため、早期解決につながっているようです。
・小・中・高校の年齢層ごとの子ども集会での意見・要望の聞き取りや、園長による子どもとの個別面談、子どものための意見箱「心の耳ポスト」などにより、子どもの意見を積極的に把握する取組を行っています。
・児童相談所が年1回来所して行う養護状況調査において、子どもの意向や園生活に関する聞き取り調査結果については、改善点がないか必ず確認を行い、情報は全職員が共有しています。
(5) 安心・安全な養育・支援の実施のための組織的な取組が行われている。 第三者
評価結果
37 安心・安全な養育・支援の実施を目的とするリスクマネジメント体制が構築されている。 b
【コメント】
・事故発生時の対応と安全確保については、「危機管理マニュアル」が策定され職員に周知されています。
・施設内設備は、セキュリティ対策がとられています。日頃から地域と積極的に交流し、児童相談所や地域の警察との情報交換を行っています。令和3年度は、遊具の点検を業者に依頼するとともに、安全対策について学習しています。
・職員は、日常生活の中で各棟のリスク管理に十分配慮していることが感じ取れ、幼児から高校生までの各年齢層での事故はほとんど起こっていません。
・施設内外の危険箇所を年2回、職員で巡回、チェックし、職員が情報を共有しています。また、職員が本園周辺を巡回してから勤務に就くなど安全確保に留意しています。
・ヒヤリハット・事故報告書や事例等の収集・分析を行うことは、職員間の情報共有、要因分析とその改善策、再発防止策を講じるために非常に効果的なリスクマネジメントの手法です。
・現在、大きな事件、事故は発生していませんが、ヒヤリハットを丁寧に拾い、職員の「気付き」を促し、また、他施設の事例等の収集、分析を行い、事件・事故の未然防止を検討することも子どもの安全確保に有効と思われます。
38 感染症の予防や発生時における子どもの安全確保のための体制を整備し、取組を行っている。 a
【コメント】
・感染症対策については、マニュアルが作成され、感染症対策責任者の保育士はWEB研修を受講し、感染症の予防や安全確保に対する注意喚起を行っています。
・新型コロナウィルス感染症が蔓延していることから、感染対策、保護者等対策などを盛り込んでマニュアルを見直し、幼児・学童児などに対するワクチン接種に早くから取り組むなど、諸対策を進めた結果、園内感染は防げています。
・流行性の高いインフルエンザ、ノロウィルスなど感染症は初期対応が重要なことから、職員誰でもが即座に対応できるように感染症対策フローチャート等を作成し、職員研修会等で定期的に即時対応訓練を開催するなどの取組も望まれます。
39 災害時における子どもの安全確保のための取組を組織的に行っている。 b
【コメント】
・危機管理マニュアルが作成され、非常災害時の対応については、火災・地震及び令和3年度に新たに作成した大雨台風等の各種災害に関するマニュアルがあります。災害時の対応は防災管理組織図で体制が定められています。
・毎月実施する防災訓練では、総合避難訓練や夜間想定訓練、防災設備点検などが実施されています。
・非常時に備えて物品倉庫を建て替え、非常食や必要備品を備蓄し、リストが作成されています。管理者も決められ、3日分の食料備蓄が行われています。
・安否確認の方法を定めるなど、順次対応策を拡充していますが、災害発生時においても運営を継続できるように、事業継続計画(BCP)を定め、総合防災訓練の機会を利用して、必要な対策・訓練を行い、職員へのさらなる周知を図ることを期待します。
2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の標準的な実施方法が確立している。 第三者
評価結果
40 養育・支援について標準的な実施方法が文書化され養育・支援が実施されている。 a
【コメント】
・養育・支援について、標準的実施方法として処遇指針が作成され、施設運営上の基本的考え方、子どもの衣食住など日常生活、学校・地域との連携、危機管理に至るまで文書化されています。指針には、子どもの権利擁護、プライバシーに関わる姿勢等が明示されています。
・処遇指針は、全職員が所持しており、新任職員に対するOJT、職員会議、職場研修等で広く日常的に活用され、職員に周知されています。
・子どもの自立支援計画書の策定、見直しなどは、処遇会議で処遇指針を活用して行われ、標準的な実施方法にもとづく実施に役立てられています。
41 標準的な実施方法について見直しをする仕組みが確立している。 a
【コメント】
・処遇指針は、全職員で取り組み検討した自己評価による改善点が毎年度反映され、見直されています。
・処遇指針にある標準的な実施方法は、自立支援計画の作成・変更に伴い、子どもの養育・支援に係る改善点を拾い出し、職員、子どもからの意見や提案を反映しています。処遇指針の検討・見直しは、四者会議やホームリーダー会議等での検討を経て、職員会議で全職員の意見を反映させるよう努めています。
(2) 適切なアセスメントにより自立支援計画が策定されている。
42 アセスメントにもとづく個別的な自立支援計画を適切に策定している。 a
【コメント】
・子どもの最善の利益の確保、アイデンティティの確立、自己肯定感を育む支援の観点から、園では真実告知やライフストーリーワーク等の新たな技術を導入しています。
・自立支援計画の策定にあたっては、子どもの入所時からの家庭環境や、状態像の把握などが記録されている「行動観察記録票」を参考に、策定前にフェイスシートを利用して子どもの意向を把握しています。担当職員は、日常生活の子どもとの会話の中で、子どもの考えていることや思いを聞き、受けとめながら、現在の心境や目標、頑張りたいことなどを聞き取っています
・聞き取りに際しては、話しやすい雰囲気で子どもの意見が出やすいように工夫し、改善点や頑張りたい目標を一緒に考えるなど、自己決定を支援し個別の支援計画に反映させています。
・自立支援計画の策定は、アセスメント要領にもとづき、心理療法担当職員を含む児童指導員、保育士が担当責任者として、ニーズと具体的な養育・支援の内容等が記載された個別計画を子ども一人ひとりについて作成しています。
・保護者の意向、学校の意見なども取り入れた自立支援計画書は、心理療法担当職員や家庭支援専門相談員、里親支援専門相談員、職業指導員の各専門職員が自立支援会議において意見を出し合い、作成されています。
43 定期的に自立支援計画の評価・見直しを行っている。 a
【コメント】
・自立支援計画にもとづく養育・支援の確認及び見直しについては、「自立支援計画策定マニュアル」「アセスメント要領」、「自立支援計画策定の手順」により、見直し時期や、手順などが組織的に定められ実施されています。
・年2回の自立支援会議では、直接処遇担当職員が中心となり、心理療法担当職員など専門職員、精神科医の参加による指導・助言を受けながら、自立支援計画見直しに組織的に取り組む仕組みが機能しています。
・自立支援会議に全職員が参加しており、見直しによって変更した自立支援計画の内容は、周知されています。
・緊急の案件については、随時自立支援計画書の変更がなされます。直接処遇担当職員に対して、心理療法担当職員など専門職員が助言・指導を行い、個別案件に関する処遇検討を行っています。
(3) 養育・支援の実施の記録が適切に行われている。
44 子どもに関する養育・支援の実施状況の記録が適切に行われ、職員間で共有化されている。 a
【コメント】
・子どもの身体状況や生活状況等は、家族構成や家庭環境、入所時からの子どもの状態像について施設の定めた様式の「行動観察記録票」により記録され、把握されています。
・子ども一人ひとりの自立支援計画は、記録する職員の記録内容等に差異が生じないよう、新任職員へは年度当初に研修を行うとともに、専門職員や先輩職員から丁寧に助言・指導する伝統的な雰囲気があります。
・施設は、小規模グループホーム4棟、地域小規模児童養護施設2棟の6つに分かれているため、心理療法担当職員や家庭支援専門相談員、里親支援専門相談員、職業指導員が各棟の課題解決に積極的に関与し、必要な情報が届けられる仕組みになっています。
・職員会議、ホームリーダー会議が定期的に開催され、専門職員があらゆる場面で関与し、各棟、各職種にわたる横断的な取組がなされています。
・パソコンネットワークシステムの共有ファイルの利用や記録ファイルの回覧等の実施により、施設内では情報を共有する仕組みが機能しています。
45 子どもに関する記録の管理体制が確立している。 a
【コメント】
・個人情報の保護・情報開示等の取り扱いについては、個人情報に関する規定及び管理規程で定められており、ホームページでも説明されています。
・個人情報取り扱いについては、子どもや保護者等に対して説明のうえ文書による意思確認を行っています。子どもの写真や氏名、文書等の掲載について同意書を得ています。
・記録管理は、園長と主任クラス2名を責任者として、情報が外部に流出しないよう管理されています。記録や写真等の管理について、個人情報保護に係る職員研修の実施が望まれます。
・子どもの自己肯定に役立つとされる生い立ちを記録したアルバムの作成に関して、情報は適切に保管されています。卒園時に「ライフストーリーワーク」としてDVDなどに収め、本人に渡しています。
内容評価基準(24項目)
A-1 子どもの権利擁護、最善の利益に向けた養育・支援
(1) 子どもの権利擁護 第三者
評価結果
A1 子どもの権利擁護に関する取組が徹底されている。 a
【コメント】
・園の理念や基本方針に子どもの権利擁護について明示され、具体的な基本姿勢が処遇指針に示されています。処遇指針は、全職員に配布され指針にもとづいた養育・支援が実践されています。
・年2回、全職員が「人権擁護のチェックリスト」をもとに、課題分析を行い、職員会議で共有しています。また、ホーム会議や処遇会議の中で課題や対策を検討し、権利侵害の防止と早期発見への取り組みを行っています。
・年1回、外部講師による権利擁護に関する研修を実施しています。昨年度は、鹿児島市と提携して、職員、里親を対象に自殺防止についての研修を実施しています。併せて職員会議やホーム会議、処遇会議で権利擁護に関する研修を定期的に実施しています。
・子ども集会、子どもミサへの参加は、強制せずに子どもの思想・信教の自由を尊重しています。
(2) 権利について理解を促す取組
A2 子どもに対し、自他の権利について正しい理解を促す取組を実施している。 a
【コメント】
・年齢毎に区分した子ども会の中で、生活のなかで保障されるさまざまな権利について「権利ノート」の内容を踏まえて年齢に応じてわかりやすく説明されています。
・日々の養育の中で「自分で言われて嫌なことは言わない」「自分がされて嫌なことはしない」「お互いを認め合うこと」「守られる権利がある」ことを子どもたちに伝えています。
・行事等の機会をとらえて、お互いに思いやりの心をもって弱い立場にある子どもに対して接するように伝えています。
(3) 生い立ちを振り返る取組
A3 子どもの発達状況に応じ、職員と一緒に生い立ちを振り返る取組を行っている。 a
【コメント】
・子どもへの真実告知のタイミングについては、子どもの年齢や成長段階を考慮しながらケース検討会議及び自立支援会議等で話し合って決めています。子どもから申し出があった場合もケース会議で伝え方や伝える人、内容の検討を行い、子どもは真実告知を誰から受けたいかなどを選択ができ、子どもの知りたい権利を尊重して告知を行っています。
・真実告知後のフォローについては、担当職員が必ずそばに付き添い、子どもの状態を一定期間確認するなどし、十分に配慮されています。
・成長の記録として写真のほか、子ども全員のライフストーリーワークを作成しています。
・卒業のお祝い会で、卒業する子どもの成長記録であるライフストリーワークを上映し、職員や子どもたちと一緒に成長を祝う機会を作っています。退所時には、DVDにして本人に渡しています。
(4) 被措置児童等虐待の防止等
A4 子どもに対する不適切なかかわりの防止と早期発見に取り組んでいる。 b
【コメント】
・園長が、子どもたちと必要に応じて面談を行い、子どもの権利擁護ノートを使用しながら、「嫌なことがなかったか」等の聞き取りを行うとともに、不適切なかかわりの防止と守られていることを伝え、不適切な関わりがあった場合には子どもが自ら訴えることができるように取り組んでいます。
・各ホームの職員が、子どもとの対話を通して表情や様子を確認しながら不適切な関わりの早期発見が出来るように努めています。
・被措置児童等虐待対応ガイドラインについて、毎年3回チェックリストを活用して確認しデータを分析して習熟度を把握する仕組みが構築され、職員が子どもの権利擁護を意識し透明性のある養育環境づくりに取り組んでいます。
・「就業規則、「処遇指針」に体罰や不適切なかかわり等の禁止が明文化されていますが、発生した場合の対応として、厳正に処分を行うなどの内容について就業規則等に定めておくことが望まれます。
(5) 支援の継続性とアフターケア
A5 子どものそれまでの生活とのつながりを重視し、不安の軽減を図りながら移行期の支援を行っている。 a
【コメント】
・生活環境が変わることで今までの生活との連続性が失われないように、すぐに入所するのではなく家庭支援室で1~2週間ほど過ごすことにより、子どもの不安を軽減し、新しい環境に慣れるように丁寧な動機付けを行った後、ホームへ入所するように配慮しています。
・兄弟姉妹で入所する場合には、分離することなく同じホームでの生活ができるように配慮しています。
・子どもが不安なく安定した生活を送ることができるよう、各ホームに入所している子どもたちの年齢や性別の構成を勘案して受け入れを行うようにしています。
・施設変更した子どもたちについては、3年間にわたりアフターケアを行っています。退所した要保護児童については、家庭訪問を実施しフォローしています。
A6 子どもが安定した社会生活を送ることができるようリービングケアと退所後の支援に積極的に取り組んでいる。 a
【コメント】
・自立支援計画にもとづき退所後の自立に向けて、ステップルームを活用し賃貸借契約を締結して、1ヶ月間一人暮らしの社会生活を想定した丁寧なリービングケアを行っています。
・退所後の相談窓口として主に、職業指導員が担当として支援していくことを子どもに伝えており、その他にも児童指導員や担当職員による退所後のアフターフォロー体制を整えています。
・必要に応じて就労先や居住先への連絡、トラブル発生時の連絡にも対応しており、県外在住の子どもについても、必要があれば県外に出向き、次のステップへの支援を行うなど、細やかな取り組みが実施されています。
・卒園者がお盆や正月に帰って来られるように、ステップルームや家庭支援室を宿泊先として提供し、退所者と職員や入所している子どもたちと交流する機会を設けています。また、施設からも積極的に連絡を行い、「いつでも帰ってこられる安心感」が持てるように支援されています。
A-2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の基本 第三者
評価結果
A7 子どもを理解し、子どもが表出する感情や言動をしっかり受け止めている。 a
【コメント】
・入所時に子どもの成育歴を含めたケース概要について職員間で共有し、子どもが表出する感情や言動についても、子どもを理解したうえで、受容的、支持的態度で寄り添い、子どもと共に課題へ向き合うように取り組んでいます。
・養育・支援については、ケースカンファレンスやケース検討会議で検討し、処遇経過記録に記載し、自立支援計画に反映されています。
・行動上の問題があった場合は、状況に応じて個別に家庭支援室で担当職員が子どもに寄り添い生活し、十分に対話を重ねながら、一緒に課題解決に向き合える体制を整えています。また、担当職員だけでなく、心理療法担当職員もサポートを行っています。
・園長が子どもたちとの面談を行い、子どもの様子や意見、要望等の聞き取りを行っています。利用者アンケートからも、子どもたちに職員への信頼が芽生えていることが感じ取れました。
A8 基本的欲求の充足が、子どもと共に日常生活をいとなむことを通してなされるよう養育・支援している。 a
【コメント】
・小舎制の養育の特徴を最大限に生かしながら、個々の子どもの状況に応じて柔軟に対応した養育・支援が行えるよう、職員が一定の裁量権をもち日常生活を通じて、子どもの基本的欲求が満たされるような支援に取り組んでいます。
・各ホームには住み込みの職員が配置され、一緒に生活することで信頼構関係が構築されており、職員と子どもが個別的に触れ合う時間を十分に確保しています。
・幼児期には、愛着形成を優先して一緒にお風呂に入ったり、職員が添い寝し、夜目覚めた時に大人の存在が感じられ安心できるような環境を整えるよう配慮されています。
A9 子どもの力を信じて見守るという姿勢を大切にし、子ども自身が自らの生活を主体的に考え、営むことができるよう支援している。 a
【コメント】
・園では、基本的には、帰園時間は決めていますが外出制限は行っていません。子どもたちの日常の生活において、職員が子どもの力を信じて見守る姿勢を大切にして、子どもが主体的に生活を営むことができるように支援しています。
・職員は、子どもたちに必要以上の指示や制止はせずに、子どもがやらなければならないことや自分でできることは子ども自身が行うように見守りながら、常に子どもの状況を把握し、賞賛や励まし、注意の声かけを適切に行っています。
・子どもたちだけで、夏のキャンプについて話し合いを重ねながら企画から実施まで行い、その中での、つまずきや失敗の体験を大切にして、主体的に問題を解決できるように職員は必要に応じてフォローしながら、子どもたちの自己肯定感を高めていく取り組みを行っています。
A10 発達の状況に応じた学びや遊びの場を保障している。 a
【コメント】
・子どもの年齢や発達の状況、課題に応じた養育・支援を行っており、発達段階に応じて療育等が必要な子どもについては、児童相談所と協議し積極的に通所療育等を行っています。
・日常生活や各運営委員会の中で、子どもたちの学びや遊びに関する要望を把握し、可能な限り要望に応えています。新型コロナウイルスの感染が拡大した際は、子どもたちのニーズに応え、各ホームにゲーム本体、ソフト・タブレット等を購入しています。子どもの要望に応えられない場合は、納得できるよう丁寧な説明をするように努めています。
・各ホームには、幼児用の玩具や年齢に応じた書籍やDⅤD、パソコン、ピアノ等が備えられています。
・子どもたちが、公立図書館に行って本が借りられるように、必要な地域資源の情報を提供して実際に活用されています。
・学びの機会を確保するために、学生ボランティアによる公文式学習を取り入れ、子どもが希望すれば学習塾へ通えるように支援しています。また、子どもの状況に応じて数か所の幼稚園に通園しています。
A11 生活のいとなみを通して、基本的生活習慣を確立するとともに、社会常識及び社会規範、様々な生活技術が習得できるよう養育・支援している。 a
【コメント】
・各ホームには住み込みの職員が配置され、子どもと共に日常生活を営むことを通じて、基本的生活習慣や社会常識・社会規範について日常的に伝えており、子どもが社会生活を営む上で必要な知識や技術を身につけられるように支援しています。
・子どもたちの年齢や状況に応じ、入浴やシャワーなどの清潔保持や病気等の身体の健康の自己管理ができるように支援されています。服薬については施設が管理しています。
・ホームのリビングにはパソコンがあり、子どもたちが自由にインターネットに触れる機会が確保されています。また、年齢に応じてスマートフォンを持てるようにしていますが、職員と子どもたちが話し合って自分たちが守るルールを決めています。また、「しなければならない事」「してはならない事」を話し合い、生活していく上で守るべき決まりや約束を一緒に考え作っています。
(2) 食生活
A12 おいしく楽しみながら食事ができるように工夫している。 a
【コメント】
・食生活については、処遇指針の中に、具体的に自主献立、弁当作り、厨房での調理実習、外食体験、給食会議、セルフクッキングについて、詳細に示されています。
・個人の茶碗や箸が準備され、食器を大切に使うことも伝えています。また、卒園生が来た時のために食器も残してあり、卒園生に対する配慮もなされています。
・リビングは、子どもたちの作品や賞状、写真、生花等が飾られ、テーブルにはクロスを敷いたり、花を飾ったりして明るい清潔な環境の中で、職員、子どもたちのコミュニケーションの場となるように、ホームごとに工夫されています。
・部活動で帰りが遅くなる中学、高校生には、帰宅してから揚げ物を行うなど適温で食事が提供され、職員も同席して孤食とならないように細やかな配慮がされています。
・月1回の自主クッキングでは、子どもたちが予算を考慮して食材を購入し調理、片付けまでを行っています。弁当が必要な高校生は自分で弁当を詰めており、休日にクッキー作りに取り組んだりして、楽しみながら基礎的な調理技術を習得できるように支援されています。
・年1回以上、嗜好調査を実施し子どもの嗜好を把握し、献立に反映するように取り組んでいます。献立表の余白部分に食事に関するマナーや食材に関すること、季節の食事等に関する情報が掲載されており、子どもたちは楽しみながら食に関する知識を学んでいます。
・アレルギーのある子どもや病気の時には、別メニューにするなど十分配慮されています。
(3) 衣生活
A13 衣類が十分に確保され、子どもが衣習慣を習得し、衣服を通じて適切に自己表現できるように支援している。 a
【コメント】
・衣類については、処遇指針に基本的な考え方やホームでの展開として、私服や衣類購入、制服についての項目が具体的に示されています。
・衣類は清潔で、サイズや季節にあった衣服を着用し、汚れたらすぐに着替えることができる適切な枚数が確保されています。また、TPOに合わせた適切な服装ができるように支援しています。
・子どもの生活能力に応じて洗濯、アイロンかけの声かけを行い、「させられた感」を感じず、自主的に取組めるように配慮しています。
・衣服を通じて子どもの個性や自己表現ができるように支援し、衣服費の決められた年間予算から、子どもたちが希望すれば一定の金額を決めて渡し、子ども自身が衣類を選択し購入できるように支援しています。
・施設の立地条件が良く、近くに衣類専門店があり、発達状況に応じて職員が子どもと一緒に買い物に行き、子どもが選択し購入できるように支援しています。中・高校生は、友達と一緒に買い物に出かけて、好みの衣類を購入しています。
・衣類は個々のロッカーや衣装ケースに管理しており、気候や学校の衣替えに応じて整理するように支援しています。
(4) 住生活
A14 居室等施設全体がきれいに整美され、安全、安心を感じる場所となるように子ども一人ひとりの居場所を確保している。 a
【コメント】
・住環境について、処遇指針に基本的な考えや具体的実践内容として、ホーム構成とホームの運営方針、ホームの決定、移動について示されています
・小規模グループでの養育環境で、中学生以上は個室または相部屋でも個人の空間を確保できています。個人の空間は、自分の自由にできる環境であり、賞状やポスター、写真、好きなフィギュア等が飾られ、子どもたちの個性に応じた空間となっています。
・シャンプーやリンス等は、ホームの物とは別に子どもが好きなものが使用できています。
・各ホームとも、玄関には花が飾られ家庭的な雰囲気となっており、食堂やリビング等の共有スペースは清掃が行きとどき整美されています。
・設備や家具什器はきれいに保たれており、修理が必要な個所は速やかに修理を行っています。
・子どもたちは、掃除当番を決め日常的な掃除を行うことで、掃除の習慣を身につけることができるように支援しています。夏、冬の年2回の大掃除はきれいになったことの喜びを一緒に感じられるように、また、学期ごとに新たな生活をスタートできるように取り組んでいます。
(5) 健康と安全
A15 医療機関と連携して一人ひとりの子どもに対する心身の健康を管理するとともに、必要がある場合は適切に対応している。 a
【コメント】
・新型コロナウイルス感染症の対策として、朝夕2回の検温と体調確認を行っています。コロナ禍で、子ども自身も体調の変化に気づけるようになり、健康管理への意識が身についてきています。
・子どもの平常の健康状態や発育・発達状態をホーム日誌やケース記録に記載して常に把握し、年2回内科・小児科の嘱託医の健康診断を受け、個人ごとに医療日誌に記録し、健康管理に努めています。
・健康上特別な配慮を要する子どもについては、医療機関と連携を図り事前に医師と打ち合わせを行うなど、必要な治療や内服について子どもが正しく自分の病気を理解できるように支援しています。
・今年度、処遇指針に療育・服薬状況の確認の項目を追加し、服薬状況等の一覧表を作成し、管理を確実に行うようにしています。服薬忘れがないように服薬確認を行い、薬の管理は内容によっては事務室で管理しています。
・保護者の同意を得て、幼児には決められた予防接種を受けさせ、風疹やインフルエンザの予防接種を行った場合などは健康記録に記載しています。
・職員間で医療や健康に関して学習する機会を設けているほか、園内研修で精神科の医師より投薬の意義と薬効等についての講義を受けたり、児童相談所の医師からも講義を受けるなどし、医療や健康に関する知識を深める取組を行っています。また、課題解決委員会の第三者委員の先生も嘱託医として関わっており、職員が医療的なことへの対応について相談できる窓口を複数備えています。
(6) 性に関する教育
A16 子どもの年齢・発達の状況に応じて、他者の性を尊重する心を育てるよう、性についての正しい知識を得る機会を設けている。 b
【コメント】
・処遇指針の性教育について、今年度改訂を行い基本的考え方や年齢別の性教育について示しています。
・学校での性教育も参考にしながら、子どもの状況に応じて個別に疑問や不安に答え、年1回開催する練成会の心の教育の中で「命の尊さ」について学習する機会を設けています。
・「異性児童との関わりについてのマニュアル」があり、園内研修や新任研修で読み合わせを行うなど、施設全体で共通理解できるように取り組んでいます。
・今年度、職員に対してNPO法人レインボーブリッジの外部講師による、LGBT研修を実施し、多様な性のあり方について理解を深める取組を行っています。
・職員や子どもに対して研修会を開催していますが、性をめぐる諸課題への支援や、年齢、発達段階に応じたカリキュラムの作成により、子どもたちが性について正しい知識、関心が持てるように、より具体的な取り組みが望まれます。
(7) 行動上の問題及び問題状況への対応
A17 子どもの暴力・不適応行動などの行動上の問題に対して、適切に対応している。 a
【コメント】
・行動上の問題を生じやすい子どもの特性等について、個別行動観察記録、自立支援計画により、職員間で情報を共有化し連携して対応できるようにしています。
・子どもの行動上の問題が起きたときは、すぐに処遇会議を行い子どもの思いや考えを聞き、クールダウンできるよう支援しながら、問題の要因を十分に分析し対応方法を検討して、施設全体で対応に取り組んでいます。
・パニックなどで自傷や他害の危険性が高い場合は、医師と連携しながら衝動性を抑えるような関わり方のアドバイスを受け、子どもの心身を傷つけないような対応をするとともに、周囲の子どもたちの安全の確保にも留意されています。
・行動上の問題がある子どもに対して、心理療法担当職員が心理室でSST(ソーシャルスキルトレーニング)を実施するなどの配慮がされており、場合によっては家族支援室を活用して、子どもと職員が問題と向き合う時間を作るようにしています。
・職員が支援について一人で抱え込むことがないよう支援体制が構築され、施設全体で職員のバーンアウト防止にも努めています。
A18 施設内の子ども間の暴力、いじめ、差別などが生じないよう施設全体で取り組んでいる。 a
【コメント】
・生活グループの構成は、兄弟姉妹間が分離されないようにするとともに、子ども同士の関係性や年齢、障害等などにも配慮して、子ども間の暴力やいじめ、差別が生じないように、他人に対する思いやりの気持ちや接し方、人権に対する意識を徹底するように園全体で取り組んでいます。
・子どもの遊びや活動に職員が積極的に関与し、子ども同士の関係性を把握して、いじめ等不適切な関係が起こらないような環境づくりに努めています。
・園長が子どもたちとの面談の中で、守られていることを伝えたうえで、施設内でのいじめや暴力を受けた経験はないかなどの聞き取りをし、「されて嫌なこと」「言われて嫌なこと」をしないことを約束ごととして伝えています。
・暴力やいじめに対する対応が施設だけでは困難と判断した場合は、児童相談所や学校、警察等他機関の協力を得ながら対応する体制が整っています。
(8) 心理的ケア
A19 心理的ケアが必要な子どもに対して心理的な支援を行っている。 a
【コメント】
・プレイルームが設置され、子どもが落ち着いて心理的ケアを受けられる環境が確保されています。心理療法担当職員1名が配置され、心理的ケアを必要とする子どもについて、嘱託医も自立支援計画策定に関わり、心理療法担当職員へアドバイスを行いながら、自立支援計画にもとづく心理支援プログラムを策定し子どもを支援しています。
・心理療法担当職員が、卒園生の心理面接を行うなどアフターケアにも取り組んでいます。
・疾患を抱えている保護者への支援や、療育の必要な子どもの療育への同行や入所時のアセスメントにも協力し、心理的支援が施設全体に有効に組み込まれて、職員間の連携強化も図られています。
・職員が、大学教授である心理専門家からスーパービジョンを受けられる体制も整えられています。児童相談所の心理担当者と連携し、対象となる子どもの保護者等に定期的に助言や支援も行っています。
(9) 学習・進学支援、進路支援等
A20 学習環境の整備を行い、学力等に応じた学習支援を行っている。 a
【コメント】
・個別スペースや学習室が準備され、子どもが落ち着いて学習できるような環境となっています。学習習慣が身につくように、発達段階に応じた学習支援が処遇指針に示されています。
・学校教師と十分に連携を取り、子どもの学力を把握し学力に応じて、学生ボランティアの協力を得て、公文式学習をはじめ、個別学習指導に継続的に取り組んでいます。また、子どもの希望により中学1年生から地域の学習塾を活用し、現在5名が通塾しています。
・学力が低い子どもには、学力診断テストをもとに能力に応じた公文式教材を使用し、学習ボランティアの協力を得ながら基礎学力の向上を支援しています。
・昨年度は高校3年生を短大に進学させるために、高校の教員の協力を得て、英語の学習指導を毎週行ってもらうなど、一人ひとりの子どもに対応した学習支援や受験支援に取り組んでいます。
A21 「最善の利益」にかなった進路の自己決定ができるよう支援している。 a
【コメント】
・処遇指針に学習・進路指導について自己決定を促すことが示されており、担当職員を中心に子どもと話し合いをしたり、職業指導員が計画的に面談をするなど、子どもが進路について自己決定できるような支援に取り組んでいます。
・学校や保護者の意見を聞いて自立支援計画に記載し、各機関と連携を図って支援しています。高校2年時に学校でSDSキャリア自己診断テストや適正検査が実施され、就労や進学支援の資料として活用されています。施設では職業指導員が、その結果を活用し子どもの意向を確認しながら職業選択への助言を行っています。
・進路決定のための経済的な援助のために、児童養護施設退所者等自立支援資金貸付事業やさまざまな奨学金制度等の情報提供を行っています。
・来年高校を卒業して就職が内定している子どもについて、しばらくは不安定な生活が予想されるため、措置延長して支援を継続することも検討しています。
A22 職場実習や職場体験、アルバイト等の機会を通して、社会経験の拡大に取り組んでいる。 b
【コメント】
・職場実習や職場体験は学校で実施しているため、経験を通して社会の仕組みやルールについて理解できるよう、自分の行為の責任などについて話し合っています。
・社会の仕組みやルールを実感する機会としてアルバイトを推奨し、希望する高校生は日曜日にアルバイトをしています。
・子どもの自立に向けての不安に対しては、自立支援会議で就労支援について検討し、自立支援計画や職業指導員日誌に取り組んだ内容が具体的に記載されています。
(10) 施設と家族との信頼関係づくり
A23 施設は家族との信頼関係づくりに取り組み、家族からの相談に応じる体制を確立している。 a
【コメント】
・施設には、ホーム担当職員や家庭支援専門相談員などが対応する相談窓口を複数設け、家族が選択して相談しやすい体制としていることや、支援方針について家族に丁寧に説明し、信頼関係を構築できるように努めています。
・家庭支援専門相談員の役割が明確にされ、家族関係調整や相談受付が重要な機能として位置づけられています。家庭支援専門相談員と保護者の連携を図り、継続的な関係作りに積極的に取り組み、児童相談所の家庭復帰支援班と連携し支援しています。
・家庭支援専門相談員は、各ホームの職員と連携しながら、介入の判断基準を定めた介入一覧を作成しています。ケース別に相談・対応内容を記録して全職員で情報を共有し、施設全体で家族関係の調整や相談に取り組んでいます。
・家庭調整が必要な子どもについては、面会、外出、一時帰宅を段階的に取り入れ、外出、外泊記録を作成し、保護者に子どもの日々の様子を記載してもらい確認しています。
・保護者に学校や施設の行事予定や情報を随時知らせ、必要に応じて行事への参加や協力を得るようにしています。また、遠方の保護者に対しては、家庭支援室の提供も行っています。
(11) 親子関係の再構築支援
A24 親子関係の再構築等のために家族への支援に積極的に取り組んでいる。 a
【コメント】
・家庭支援専門相談員が、自立支援会議及び家族調整会議において各ホームの職員にヒアリングし、ケースの見立て、改善する課題を絞り込み、再構築のための支援方針が明確にされ、施設全体で共有する取り組みを行っています。
・親子関係の再構築のために、県外在住の保護者が居住する地域に出向くなど連携を図っています。
・家庭訓練室を活用して、疾患を持っている保護者も宿泊体験が行えるように支援されています。
・親子関係の再構築に向けた家族支援については、児童相談所の担当者へ外泊の状況を伝えるなど、密接に連携を図り家族支援に取組んでいます。
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