社会的養護施設第三者評価結果 検索

石井記念神武の家

第三者評価結果詳細
共通評価基準(45項目)Ⅰ 養育・支援の基本方針と組織 
1 理念・基本方針
(1) 理念、基本方針が確立・周知されている。 第三者
評価結果
1 理念、基本方針が明文化され周知が図られている。 b
【コメント】
法人石井記念友愛社の理念や基本方針はパンフレットや事業計画の中に記載され、また児童憲章等の記載により児童養護施設として目指す方向性や施設の指針が明記されています。施設概要は、利用児童の推移や構成が主となり、施設そのものの紹介資料には至っていないと思われますので、今後の課題として、子どもや保護者にもわかりやすい説明を工夫されることを期待します。
2 経営状況の把握
(1) 経営環境の変化等に適切に対応している。 第三者
評価結果
2 施設経営をとりまく環境と経営状況が的確に把握・分析されている。 b
【コメント】
経営団体、施設団体の主催する研修会参加や措置機関との会議を通して求められるニーズ把握が積極的に行われています。法人により広域の地域でのニーズ把握や課題把握から事業整備計画が進められています。月々、法人本部の施設長会へ出席し、入居状況等が報告されるなど適切な対応ができているようです。
3 経営課題を明確にし、具体的な取組を進めている。 a
【コメント】
月々に法人本部の施設長会へ出席し、法人への業務報告や確認が行われており課題の共有がなされています。経営団体、施設団体の主催する研修会参加や措置機関との会議を通して、自施設に求められるニーズ把握が積極的に行われています。施設内の職員会議においても課題等が提示され周知が図られています。
3 事業計画の策定
(1) 中・長期的なビジョンと計画が明確にされている。 第三者
評価結果
4 中・長期的なビジョンを明確にした計画が策定されている。 a
【コメント】
子育て支援を担うための施設整備や人員確保の計画が中長期を視点に形作られています。経営課題や問題点が盛り込まれた全体的側面も重視しての計画となっています。開設して間もない施設なので、地域での役割確立のために更なる具体的な施設ビジョンを検討されることを期待します。
5 中・長期計画を踏まえた単年度の計画が策定されている。 a
【コメント】
開設当初の事業計画から、事業経緯に伴い事業計画が修正されています。当初計画として受け入れ目標が設定されており、事業安定への目標が設定されています。自立支援の方針を掲げ丁寧に示され、計画立案・実行のマニュアルと遜色ない内容となっています。評価の時期や評価結果からの展開について記載されると一層具体的な内容となると思われます。
(2) 事業計画が適切に策定されている。
6 事業計画の策定と実施状況の把握や評価・見直しが組織的に行われ、職員が理解している。 b
【コメント】
年度当初計画の受け入れ目標の実施のために支援目標等が施設間での協議を基に設定されています。月々開催される管理者の会議で事業状況の報告がされています。職員会議の場で重要課題の説明がされています。
7 事業計画は、子どもや保護者等に周知され、理解を促している。 c
【コメント】
現在のパンフレットには、法人の理念や施設の役割が記載されてはいますが、事業所の基本的姿勢や目標が伝わりやすいとは言えません。法人関連施設で作られている広報誌のような資料が準備されるとわかりやすくなると思われます。
4 養育・支援の質の向上への組織的・計画的な取組
(1) 質の向上に向けた取組が組織的・計画的に行われている。 第三者
評価結果
8 養育・支援の質の向上に向けた取組が組織的に行われ、機能している。 b
【コメント】
自立支援計画を定期的に作成しています。日々の支援記録は各寮からパソコンを通して記録されており、情報は施設職員全体で共有できるようになっています。その都度に施設長・主任のスーパーバイズが入る指導体制が実施されています。支援会議やケア会議を通してタイムリーに処遇に反映できるようにされています。第三者評価は開園後、今回が初めてとなります。
9 評価結果にもとづき組織として取り組むべき課題を明確にし、計画的な改善策を実施している。 a
【コメント】
日々の記録から児童の状況(課題)が整理され、支援会議やケア会議を通して全体的に情報が共有される体制となっています。年2回の評価により、都度必要に応じて支援の再計画が実施されています。
Ⅱ 施設の運営管理
1 施設長の責任とリーダーシップ
(1) 施設長の責任が明確にされている。 第三者
評価結果
10 施設長は、自らの役割と責任を職員に対して表明し理解を図っている。 b
【コメント】
施設長は事業計画や職員会議を通して、職員へ施設の経営・管理の方針等を説明し、周知を図っています。施設長の役割と責任について、施設内の広報誌等で表明されることを今後に期待します。また、不在時の権限委任などの確認が不足しています。
11 遵守すべき法令等を正しく理解するための取組を行っている。 b
【コメント】
取引業者は本部により管理されており、会計担当者への指導の下適切に運営されています。研修等への参加は計画的に実施されています。法令等の周知については、必要に応じて職員会議の場で配布されています。
(2) 施設長のリーダーシップが発揮されている。
12 養育・支援の質の向上に意欲をもちその取組に指導力を発揮している。 a
【コメント】
日々の記録を各寮単位でパソコンに記録し、施設職員全体で情報を共有され、施設長及び主任の指導が実施されています。支援会議やケア会議を通して処遇に反映されています。職員の研修参加も年度当初より計画され受講後に復命書等を使って報告されています。
13 経営の改善や業務の実効性を高める取組に指導力を発揮している。 a
【コメント】
法人全体での経営分析に基づいて人員計画が作成されています。事業計画でも前年度の実績、実情が整理され、年度初めに臨時職員会議において職員への周知が図られています。
2 福祉人材の確保・育成
(1) 福祉人材の確保・育成計画、人事管理の体制が整備されている。 第三者
評価結果
14 必要な福祉人材の確保・定着等に関する具体的な計画が確立し、取組が実施されている。 b
【コメント】
基準に基づいて職員が確保されています。高機能化を目指して人材確保の計画が想定されていますが、現時点では確保されていません。実習生の受け入れも実施されています。
15 総合的な人事管理が行われている。 a
【コメント】
法人本部による統一的な基準の中で人事基準が定められています。法人の理念に基づいて、「神武の家期待する職員像」が第3版まで作成され継承されています。統一した自己評価書を使用して面談等が行われ評価分析が行われています。
(2) 職員の就業状況に配慮がなされている。
16 職員の就業状況や意向を把握し、働きやすい職場づくりに取り組んでいる。 a
【コメント】
施設長、主任による定期的な面接により職員の状況、動向の確認が行われています。職員間の意思疎通もケア会議等を通じて実施されています。健康診断の実施により健康の確認がされています。
(3) 職員の質の向上に向けた体制が確立されている。
17 職員一人ひとりの育成に向けた取組を行っている。 a
【コメント】
職員個々の目標づくりとしては、法人全体で統一された自己評価表があり、それぞれの職員毎に作成されています。施設長、主任により状況に応じて随時の面接を実施されています。
18 職員の教育・研修に関する基本方針や計画が策定され、教育・研修が実施されている。 b
【コメント】
法人の理念に基づいて、「神武の家期待する職員像」が第3版まで作成されています。年間の研修は計画的に受講できるようにされています。
19 職員一人ひとりの教育・研修等の機会が確保されている。 a
【コメント】
年間の研修予定を作成し復命書による報告書提出を行い指導が行われています。期待する職員像においても専門性の習得について明示され、指導する際の基本とされています。
(4) 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成が適切に行われている。
20 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成について体制を整備し、積極的な取組をしている。 b
【コメント】
実習生受け入れマニュアルの作成により、受け入れ、育成の基本的姿勢や学生支援の整備がされています。施設特性に応じた専門の講義も予定してあります。マニュアルには専門職の指導に関する記載が不足していると思われます。
3 運営の透明性の確保
(1) 運営の透明性を確保するための取組が行われている。 第三者
評価結果
21 運営の透明性を確保するための情報公開が行われている。 c
【コメント】
法人本部のホームページにより、法人の理念や運営方針の記載が明記されています。パンフレット以外の広報誌などはなく、地域との交流のためにも印刷物が不足していると思われます。施設内に設置される意見箱への苦情はないと自己評価でも報告されており、苦情の投函も無いとのことですが、日々の活動の中での気づきやヒヤリハットに関する記録は残されています。今後は施設を理解してもらうために情報公開の手段等の検討に期待します。
22 公正かつ透明性の高い適正な経営・運営のための取組が行われている。 a
【コメント】
予算執行は会計担当職員により実施されその職務分掌は規定され、事業計画書等により周知されています。法人による内部監査が年に1回は準備されています。また、今年度より税理士の月1回の訪問と指導記録が整備されています。
4 地域との交流、地域貢献
(1) 地域との関係が適切に確保されている。 第三者
評価結果
23 子どもと地域との交流を広げるための取組を行っている。 a
【コメント】
事業計画においても、地域との連携、住民との連携について文書化されています。地域行事への参加は職員の支援の下に積極的に実施されています。学校の友人等が施設へ来やすい環境づくりも学習場所の提供などを通して支援されています。
24 ボランティア等の受入れに対する基本姿勢を明確にし体制を確立している。 b
【コメント】
ボランティアの受け入れマニュアルが整備されています。事前の面接を実施して子どもの状況の説明等を行うことで子どもを守る意識付けができています。
(2) 関係機関との連携が確保されている。
25 施設として必要な社会資源を明確にし、関係機関等との連携が適切に行われている。 b
【コメント】
周辺地域にある資源の理解はありますが、場所の明示も含めて資料がありません。養育支援のための措置機関や学校等との定期的な会議やケース会議が開催されています。
(3) 地域の福祉向上のための取組を行っている。
26 地域の福祉ニーズ等を把握するための取組が行われている。 b
【コメント】
要保護児童地域対策協議会の代表者会議等に出席して情報共有に努めています。定期的な事業所間の学習会へも参加されています。公民館への加入や地区子供会行事へも参加されています。
27 地域の福祉ニーズ等にもとづく公益的な事業・活動が行われている。 b
【コメント】
相談事業として電話相談を受けています。周辺自治体とショートステイ・トワイライトステイの契約を実施しています。子育て相談を受け児童相談所を紹介することも実施されています。現在、地域内の防災拠点にまでは至ってないようです。
Ⅲ 適切な養育・支援の実施
1 子ども本位の養育・支援
(1) 子どもを尊重する姿勢が明示されている。 第三者
評価結果
28 子どもを尊重した養育・支援の実施について共通の理解をもつための取組を行っている。 a
【コメント】
子どもを尊重する姿勢については、理念や基本方針が明示され、倫理綱領にも規程されています。職員は、朝礼時に前日の処遇の振り返りや協議を行い、共通理解のために、引継ぎノートや施設内LANを活用し、園長からのスーパーバイズを受けることができるようにされています。
29 子どものプライバシー保護に配慮した養育・支援が行われている。 c
【コメント】
各寮ごとに子どもの年齢や生活状況に沿って、個室(中高生)が準備され、二人部屋の子どもには机や布団の配置が工夫され整理されています。入浴も幼児や支援が必要な子ども以外は一人で入浴しており、浴室やトイレも清潔に保たれています。夜間巡回も数回行われ子どもたちが安心して過ごせるよう配慮されていますが、プライバシー保護について、組織的なマニュアルを整備されることを望みます。
(2) 養育・支援の実施に関する説明と同意(自己決定)が適切に行われている。
30 子どもや保護者等に対して養育・支援の利用に必要な情報を積極的に提供している。 a
【コメント】
養育・支援の情報提供について、施設を紹介する資料は、保護者用、小学生用、中高生用と準備されており、施設内環境設備を写真を用いて、わかりやすく説明されています。また、施設見学や慣らし保育等も数回実施され、安心して生活できるよう積極的に取り組まれています。
31 養育・支援の開始・過程において子どもや保護者等にわかりやすく説明している。 b
【コメント】
子どもや保護者から同意を得て入所していますが、入所理由の主訴ばかりでは厳しい面もあり、子どもとの面接を行った上で、状態の把握に努め、主に口頭による説明がされています。保護者による電話や手紙等はあるものの、要望はあまりないことが、ケース記録により確認できます。今後の支援について、保護者や児童相談所、各関係機関との密な連携を期待します。
32 養育・支援の内容や措置変更、地域・家庭への移行等にあたり養育・支援の継続性に配慮した対応を行っている。 a
【コメント】
家庭復帰したり、施設を退所した卒園生に、連絡を取り合い相談に応じる取り組みがされています。また、外部の小学生や保護者からの電話相談にも丁寧に対応し記録もされています。基本方針でもある、自立に向けた支援を今後も継続していかれることを期待します。
(3) 子どもの満足の向上に努めている。 第三者
評価結果
33 子どもの満足の向上を目的とする仕組みを整備し、取組を行っている。 a
【コメント】
各寮ごとに子ども会(じんむの会)の取り組みがあり、子どもが中心となり、子どもの意向に沿って、ルールやレクリエーションが話し合われます。子ども会には職員も立ち会い、アドバイスをし子どもの活動の記録が残されています。
(4) 子どもが意見等を述べやすい体制が確保されている。
34 苦情解決の仕組みが確立しており、周知・機能している。 b
【コメント】
苦情解決の体制として、玄関とふれあいルームの2か所に意見箱が設置してあり、毎日確認が行われています。子どもからの意見等には、個別面接で対応しており、意見用紙は保管されています。保護者からは、直接電話はあるが、苦情の申し出はない状況のようです。苦情解決の仕組みは確立できていますが、第三者委員2名の方の存在を伝える工夫をし、体制を活用されることを望みます。
35 子どもが相談や意見を述べやすい環境を整備し、子ども等に周知している。 a
【コメント】
職員は、日常生活の中で子どもとの会話を重視する配慮をしており、子ども同士でも学校での出来事で気がついた事などを、職員に伝え、支え合う環境が整っています。子どもが相談したり、意見が述べやすいように、入所時や安心委員会など年に2~3回は権利ノートの読み合わせを実施しており、子どもに周知されています。
36 子どもからの相談や意見に対して、組織的かつ迅速に対応している。 c
【コメント】
子どもからの相談や意見に対して、日常的に傾聴されており、個別や各寮ごとに対応し、職員全体が周知できるよう努められています。アンケート実施については、施設移行の子どもに対して「満足度調査」を実施して支援に反映されているようです。じんむの会では節目毎に、子どもたちの困りごとを聞き記録されていますが、マニュアルが未整備のようです。今後の取り組みに期待します。
(5) 安心・安全な養育・支援の実施のための組織的な取組が行われている。 第三者
評価結果
37 安心・安全な養育・支援の実施を目的とするリスクマネジメント体制が構築されている。 b
【コメント】
リスクマネジメントに関しては、「入所虐待対応要領」「入所児童への虐待防止のための要領」として文書が作成してあり、時系列に記録されています。ヒヤリハット報告書、事故報告書等も改善策を検討されていますが、安全確保のための定期的な見直しが行われていないようです。日常生活においての安全確保を考慮され、今後も見直しや検討を望みます。
38 感染症の予防や発生時における子どもの安全確保のための体制を整備し、取組を行っている。 a
【コメント】
感染症の対策としては、手洗いの徹底、自分のタオル使用、ペーパータオルの設置、ソリューションウォーターの配置などきめ細かく配慮されています。また、予防接種等は、接種時期を失っている子どもにも、母子手帳や過去の接種済みの確認をして丁寧に対応されています。万一の場合に備えて、隔離する部屋も整備されています。
39 災害時における子どもの安全確保のための取組を組織的に行っている。 c
【コメント】
火災や災害等を想定した訓練は定期的に行われ、学校等からの引き渡し訓練、新燃岳の噴火想定の総合避難訓練にも参加されています。災害対応マニュアル、消防計画報告書等について書面での確認はされていますが、ソフト面やハード面の整備が、検討、準備段階にあるようです。県や市町村におけるBCPガイドライン等を活用され、今後も子どもの安全確保のための取り組みや工夫を期待します。
2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の標準的な実施方法が確立している。 第三者
評価結果
40 養育・支援について標準的な実施方法が文書化され養育・支援が実施されている。 a
【コメント】
養育・支援の標準的な実施方法については、職員によって、養育・支援の水準や内容の差異がないように、日々協議されています。処遇記録については、施設内LANにより職員全体で共有され、その都度スーパーバイズが行われていることが評価されます。
41 標準的な実施方法について見直しをする仕組みが確立している。 a
【コメント】
自立支援計画の見直しは、年度末に実施され、必要な場合は、支援会議の時にプラン変更しており、改訂記録は原本に記載されています。ユニット会議も園長を交えて協議しており、支援に反映されています。
(2) 適切なアセスメントにより自立支援計画が策定されている。
42 アセスメントにもとづく個別的な自立支援計画を適切に策定している。 a
【コメント】
アセスメントについては、児童相談所からの援助指針票に基づき実施して、児童相談所との協議の上で自立支援計画が立案されています。また、自立支援計画は、年度末の評価によって、各担当者と全体会議で検討が行われます。今後も、児童相談所、各関係機関との密な連携を期待します。
43 定期的に自立支援計画の評価・見直しを行っている。 b
【コメント】
自立支援計画の見直しは、年1回と必要時に応じて行われており、施設内LANを通して子どもの処遇について、職員の周知、共有がされていますが、PDCAサイクルによる見直しや改善の確立がされていないようです。今後の取り組みに期待します。
(3) 養育・支援の実施の記録が適切に行われている。
44 子どもに関する養育・支援の実施状況の記録が適切に行われ、職員間で共有化されている。 b
【コメント】
養育・支援の実施記録については、毎日の朝礼時の報告で対策を協議し、職員共有で記録もされていますが、各寮ごとに勤務体制が違うため、引継ぎノートや日誌としての記録が統一されていないようです。記録内容や書き方に差異が生じないよう、記録要領の作成を工夫され、業務日誌に反映されることを期待します。
45 子どもに関する記録の管理体制が確立している。 b
【コメント】
子どもに関する記録の管理は、文書規程が定められており、法人による、職員の自己評価表において、個人情報、守秘義務等について、厳しく体制が整えられています。保護者からの情報の提供(開示請求)に関しての対応マニュアルが未整備のようです。児童相談所への報告等連携が必要であり、組織的な取り組みを望みます。
内容評価基準(25項目)
A-1 子どもの権利擁護、最善の利益に向けた養育・支援
(1) 子どもの権利擁護 第三者
評価結果
A1 子どもの権利擁護に関する取組が徹底されている。 a
【コメント】
「適切に行われている。」と言う職員の自負のもと、子どもの権利擁護支援について、日常的に支援会議でアセスメント、モニタリングを怠らないようにされているようです。人権擁護と言う大きな括りの中においても職員が外部研修に参加して知識と理解を深める取り組みをされています。今後は、規程・マニュアルの更なる充実と具体的な「権利侵害防止と早期発見のための取り組み」を視覚化するなど職員間での徹底した理解への工夫を期待をします。
(2) 権利について理解を促す取組
A2 子どもに対し、自他の権利について正しい理解を促す取組を実施している。 b
【コメント】
権利については、入所時には担当職員が面談を通して子どもらに理解を促しています。その後の生活の中では、権利ノートの活用や日々の支援の中で個別に行い、幼児や低学年の子どもには、わかりやすい言葉を使って説明をしています。本年度は園全体の取り組みとして生きる力教育プログラムを実施し、一人一人がかけがえのない存在であることを伝え続けていく活動を始めています。生きる力教育プログラムに取り組むことが職員間においても子どもの権利に関する学習機会につながり、効果が期待できます。
(3) 生い立ちを振り返る取組
A3 子どもの発達状況に応じ、職員と一緒に生い立ちを振り返る取組を行っている。 b
【コメント】
個人の写真は施設内のパソコンの共有ホルダーの中に一人ずつ仕分けして保存してあります。乳児院からの措置変更児童の乳児期のアルバムについては、子どもがいつでも見たい時に見られるように職員が対応をしています。誕生日には個別に母子手帳を見せて出生時の様子を伝えたりするなどの工夫をしています。今後は誕生日以外にも個別に時間を設けて、生い立ちを振り返る作業を職員と一緒にできるようになることが望ましいと思われます。
(4) 被措置児童等虐待の防止等
A4 子どもに対する不適切なかかわりの防止と早期発見に取り組んでいる。 b
【コメント】
被措置児童等虐待対応ガイドライン(平成28年宮崎県版)がマニュアルとして用意されています。施設内の死角、危険個所などの施設構造上の問題は見られませんでした。職員間では、不適切な関りについての意識は高く、日常的な場面で起きる関わり方の差異についても報告書をあげて、施設長を交えた検証を行い、再発防止につとめているようです。子どもが自分を守るための学習や不適切な関りについて訴えることへの支援について、今年から取り組まれている生きる力教育プログラムだけではなく、低学年の子どもにもわかりやすい方法を施設独自のスタイルで工夫されることを期待します。
(5) 子どもの意向や主体性への配慮
A5 職員と子どもが共生の意識を持ち、生活全般について共に考え、快適な生活に向けて子ども自身が主体的に取り組んでいる。 a
【コメント】
寮内の日課やルールについては子どもたちが自主的に話し合い、共通認識を持つようにされています。寮レクや休日の過ごし方などについてもまず子どもの意向を聞き、全員の希望にできる限り対応できる形で職員が立案しています。小遣いは出納帳をつけ、個別に職員と金額や使い方を相談しています。少人数制のため、日課や行事について融通がきき、職員も臨機応変に柔軟な対応をされているので、施設生活と言うより、大家族の家庭生活と言う印象を持てるような雰囲気と運用になっています。
(6) 支援の継続性とアフターケア
A6 子どものそれまでの生活とのつながりを重視し、不安の軽減を図りながら移行期の支援を行っている。 a
【コメント】
乳児院からの措置変更については十分な慣らし保育をして受け入れるようにしています。新しい子どもが入所した日には夕食後に各寮で子ども中心の簡単な茶話会を行うなどして打ちとけやすくなるような配慮を行っています。小規模施設で、開設4年目に入ったばかりでもあり、更に兄弟姉妹の入所者もあることから、これまであまり多くの子どもの入れ替わりはなく、新規で入所してくる子どもの不安や退所に向けたケアについては、職員にも傾聴する余裕があるようです。
A7 子どもが安定した社会生活を送ることができるようリービングケアと退所後の支援に積極的に取り組んでいる。 a
【コメント】
今年の春に初めての卒園生(退所者)を送り出しました。職業指導員が配置されていませんが、職員がそれぞれの立場から連絡を取り合って、情報を共有し状況の確認に努める体制ができています。卒園時、保証人がいなかったため社協の身元保証人確保事業を利用するなど社会資源の利用も行っています。当卒園生は、母の日に全職員に向けて贈り物をされたり、妹の運動会の日に顔を見せるなど、施設との良い関係を維持継続できています。職員には、今後はOB会についても計画をしていきたいと言う抱負があり、積極的な取り組みが見られます。
A-2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の基本 第三者
評価結果
A8 子どもを理解し、子どもが表出する感情や言動をしっかり受け止めている。 b
【コメント】
「子どもの理解」については、常に職員間で課題を話し合う機会を持ち、施設長、主任を交えた検討を重ねています。自立支援計画、支援会議、ユニットケア会議録などを確認すると、日々の業務の中で、職員が子どもに寄り添い、理解をしていこうと言う姿勢が伺えます。ただ、職員の側からの視点が中心になっているので、子どもへのアンケート(幼児や低学年には内容を工夫して)を行って、子どもとの信頼関係の構築のために参考にされることを期待します。
A9 基本的欲求の充足が、子どもと共に日常生活を構築することを通してなされるよう養育・支援している。 a
【コメント】
石井記念友愛社の法人基本理念に沿って、入所児童の自律支援を核とし、常に児童の最善の利益とは何かを問いながら養育支援にあたっておられます。職員のほとんどが住み込みで業務にあたっており、基本的欲求の充足のために、一人一人の子どもとの信頼関係を重要視されています。その信頼関係の中で、担当職員がある程度の裁量権をもって、柔軟に子どもの養育支援に対応できるようになっていることは、子どもへも安心感を与え、施設内の雰囲気をより家庭的なものにしています。
A10 子どもの力を信じて見守るという姿勢を大切にし、子どもが自ら判断し行動することを保障している。 a
【コメント】
小規模グループケアでもあり、新設時からの職員が変わらずに養育にあたれることでの信頼関係や子どもの側からの安心感は見られますが、職員からは、予測できる失敗を見守りつつ、子どもが主体的に問題解決をしていくことを支援することやその都度に必要に応じたフォローを行うことが難しく、つい過干渉気味になってしまうという報告を受けました。評価実施時の施設内見学の場面でも職員間で子どもの育ちを見守る姿勢について、リアルタイムに検討をされていたので、日常的に職員が子どもの力を信じ見守る姿勢を持とうとする努力が伺え評価できます。
A11 発達の状況に応じた学びや遊びの場を保障している。 a
【コメント】
開設4年目であり、玩具・遊具については十分な量とは言えないとのことでしたが、家庭的な空間にふさわしいものだと思われます。職員には、子どもの発達に応じた遊びや学びのニーズに向き合い、応えようとする姿勢があり、特に、自然環境に恵まれた場所なので、戸外での遊びが中心になっていて、子ども達の活発な遊びの様子が伺えました。ゲームについては、職員と子どもが個別にルールを取り決めており、子ども自身でも抑制ができるような取り組みをされています。隣接する敷地に保育所があり、幼児の遊びや交流を快く受け入れてもらっています。
A12 生活のいとなみを通して、基本的生活習慣を確立するとともに、社会常識及び社会規範、様々な生活技術が習得できるよう養育・支援している。 b
【コメント】
グループケアなので、一人一人に職員が付き添う時間が多く、日常の中で細やかな対応をしています。また、職員の側も自分たちの生活習慣がそのまま子どもに反映されることを自覚し、意識した生活習慣を作っておられます。電話の対応は園内で内線を使って日常的に指導し、ネット、SNSについては自立支援ホームが実施した出前講座を利用されています。地域社会への積極的参加については、近隣は高齢化率も高く子どもの少ない地区なので、職員が積極的に子どもと共に地域に出てボランティア等での関係を作ろうとされていますが、子どもの特性や地元出身の職員が少ない為、まだ工夫の余地があるようです。
(2) 食生活
A13 おいしく楽しみながら食事ができるように工夫している。 a
【コメント】
調理師等が毎月の給食委員会で子どもからのリクエストに応える仕組みになっています。食事は、各寮の食堂にみんなが揃って、職員と会話を楽しみながらのひと時になっています。幼児の食堂の丸椅子が小さい子ども用ではなかったので、少し危なっかしい感じがしました。朝礼では前日の食事の感想を聴き取るようにしています。日曜日の朝食は寮ごとに、子どもがメニューを決め、買い物にも自分たちで行き調理をしています。菜園で収穫した野菜を使って子どもたちが調理をすることもあります。外食マナー体験は年に3回実施しており、子ども達も楽しみにしています。
(3) 衣生活
A14 衣類が十分に確保され、子どもが衣習慣を習得し、衣服を通じて適切に自己表現できるように支援している。 a
【コメント】
前年度までは衣類購入する時期が年に2回と決められていましたが、今年度より、その子どもが必要なものを必要な時期に必要な分だけあらかじめ立てられた予算の範囲内で購入できるように改善されました。子どもは、担当職員と個別に衣類購入に出かけ好みのものを相談しながら購入できるようにしています。中学2年生以上の高学年は、洗濯を自分で行えるように、職員が指導をしています。
(4) 住生活
A15 居室等施設全体がきれいに整美され、安全、安心を感じる場所となるように子ども一人ひとりの居場所を確保している。 b
【コメント】
毎日職員が清掃を行いその姿を子どもに見せ、時間がある時や週末には子どもと一緒に居室やタンスの整理整頓を行なうようにしています。幼児から、お手伝いという形で意欲的に整頓や掃除を行なえる環境を作っています。施設が新しく、備品等も整えてあり、中学生以上は個室も十分に用意してあります。食堂やリビングも家庭的な雰囲気が整えてあります。少人数での生活なので、馴染んでしまうと気兼ねがなく、リビングに接する居室のドアを開け放したままにしている、ドアの目隠しをせずに過ごしているなど、プライバシーポリシーへの配慮が欠ける面もありますので、今後は工夫も必要かと思われます。
(5) 健康と安全
A16 医療機関と連携して一人ひとりの子どもに対する心身の健康を管理するとともに、必要がある場合は適切に対応している。 b
【コメント】
毎年感染症に関する実践学習会を実施し、職員や子どもの周知を図っています。幼児は定期的に(月に1回)嘱託医に受診をしています。服薬中の児童については服薬の確認、また薬効のモニタリングも行うようにしています。専従の医療職(看護師等)の配置がないので、職員間での医療や健康に関する学習、知識の習得は欠かせないようです。特に持病を抱える子どもの心身の健康については窓口を一本化して情報を共有するような工夫を期待します。
(6) 性に関する教育
A17 子どもの年齢・発達の状況に応じて、他者の性を尊重する心を育てるよう、性についての正しい知識を得る機会を設けている。 b
【コメント】
養育処遇場面において、男女の性差を常識的に配慮して対応をされています。子どもの発達に応じた正しい性の理解を促す取り組みとしては、今年度から実施されている「生きる力プログラム」によって成果が上がってくるものと思われます。まずは、性をめぐる諸課題への支援のあり方等を職員間で良く検討をされ、外部の専門職からの学習会を行い記録に残すなどの実践を組織的に取り組まれることを期待します。
(7) 行動上の問題及び問題状況への対応
A18 子どもの暴力・不適応行動などの行動上の問題に対して、適切に対応している。 a
【コメント】
養育場面で職員との信頼関係が結ばれていることや小規模グループケアによって子ども一人一人に即時に個別対応を行えるため、子どもの暴言、暴力が起きる場面はほとんどないようです。子ども同士のトラブルについては、即時聞き取りをし心情は受容するが、暴言暴力は間違った行動であることを毅然と伝え、怒りの感情をどう処理すれば良いのかの振り返りを職員が統一した見解で子どもへ対応することになっています。支援経過記録等による職員の情報共有もできています。
A19 施設内の子ども間の暴力、いじめ、差別などが生じないよう施設全体で取り組んでいる。 a
【コメント】
「〇〇さんから無視された、文句を言われた・・・。」等の子どもからの訴えには、どんなささいなことにも耳を傾け、その都度、職員朝礼や会議等で報告し情報の共有化を図っています。それによって全職員が見守りを強化し、必要があれば適切に個別指導を行うようにしています。ケアニーズの違いによって、子ども間で不公平感が出ないようにレクや行事等でも配慮をしています。支援記録を各棟の職員用パソコンをつないで共有できるため、担当者以外の全職員が都度書き込みもでき、子どものSOSにすぐに対応できる体制を整えています。
(8) 心理的ケア
A20 心理的ケアが必要な子どもに対して心理的な支援を行っている。 c
【コメント】
心理士が配置されていないため専門的な心理的ケアは実施されていません。処遇に困難を感じた際には外部の心理士を招き、ケース検討会でアドバイスをもらったことがあります。職員は自立支援計画の中で必要な心理支援プログラムについては、法人本部の心理士や外部の心理士へ助言をもらうようにしていますが十分ではないようです。勤務形態にこだわらず専門職の配置ができることを期待します。
(9) 学習・進学支援、進路支援等
A21 学習環境の整備を行い、学力等に応じた学習支援を行っている。 b
【コメント】
小中学生の宿題は必ずそばに職員が付き、指導と確認をしています。学力の問題については、更に個別的に学習支援を行うことやボランティア、塾の利用等の必要性を感じておられます。進路支援については早目に各機関(児相、教育委員会、学校、医療、保護者等・・)と連携し子どもにとって最善な進路を選択できるようにしていますが、地域性もあって高校進学に際しての選択肢が少なく、進学後は通学の支援にも課題がありますので、解決に向けて計画的に対処されることを期待します。
A22 「最善の利益」にかなった進路の自己決定ができるよう支援している。 b
【コメント】
開設から4年目で、学校の中退、退学、措置延長となる対象児童がありません。不登校(中学校)の児童については、学校側との連携を図りながら支え、高校進学をし、現在は就学継続できている事例があります。また、当園としては初めて、今年の春、1名が高校卒業と就職をし退所をしたので、今後もアフターケアをしながら、施設共々経験を積んでいきたいと意欲的に取り組まれています。
A23 職場実習や職場体験、アルバイト等の機会を通して、社会経験の拡大に取り組んでいる。 c
【コメント】
昨年度末に卒園した高校3年生はアルバイトを2年弱継続しましたが、時には職員が送迎をしたり、バイト先での様子を聴き取るなどして、就労に向けての心構え、社会人としての責任などを子どもに伝える機会として有効でした。現在は対象年齢に達した子どもがいません。今後も対象となる子どもがあれば、積極的に取り組んでいきたいと意欲があります。
(10) 施設と家族との信頼関係づくり
A24 施設は家族との信頼関係づくりに取り組み、家族からの相談に応じる体制を確立している。 a
【コメント】
家庭支援専門相談員が配置され、施設の担当職員等と密な連携を図りながら、外部との窓口として、子どもの家庭との連絡相談、児童相談所や各行政機関とのやりとりに専従しています。また、児童養護施設での支援経験を活かし、地域の要保護児童対策地域協議会への参加も行って、地域の児童福祉に寄与しています。
(11) 親子関係の再構築支援
A25 親子関係の再構築等のために家族への支援に積極的に取り組んでいる。 a
【コメント】
家庭支援専門相談員を中心に、児童相談所に面会に出向いたり、外泊が困難な家庭は施設内に用意した「ふれあいルーム」への来泊を促すなど、それぞれのケースに応じて保護者の意向を汲みながら、親子関係の再構築等のために積極的に取り組まれています。評価実施時にも家庭に外泊に出る子どもと両親に温かな励ましの言葉かけをされて送り出しをされる様子を目にしました。支援の経過、課題については、支援記録など職員が情報を共有できる環境でアセスメントやモニタリングが行われています。
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