社会的養護施設第三者評価結果 検索

旭が丘学園

第三者評価結果詳細
共通評価基準(45項目)Ⅰ 養育・支援の基本方針と組織 
1 理念・基本方針
(1) 理念、基本方針が確立・周知されている。 第三者
評価結果
1 理念、基本方針が明文化され周知が図られている。 c
【コメント】
 理念、基本方針は、「事業計画書」に記載があるが、読み解きが困難な難しい体裁と内容となっており、理念、基本方針が明文化されているとは言えない。今後、「子どもの最善の利益のために」養育・支援する姿勢を明確にした理念・基本方針を箇条書きに明文化し、容易に職員等に理解と周知ができるよう定めることが不可欠かつ急務である。
 なお、事業理念の一つに「地域に根ざしたふれあいと交流の推進」を明記しておくことが適当であり、「養護の目標」がここで言う基本方針ではないことに留意する必要がある。
2 経営状況の把握
(1) 経営環境の変化等に適切に対応している。 第三者
評価結果
2 施設経営をとりまく環境と経営状況が的確に把握・分析されている。 b
【コメント】
 毎年度に在籍児童や入所児童の推移及び養育・支援のコスト分析や施設入所を必要とする子どもの推移、利用率等を把握している。また、県の家庭養護推進計画に対応する課題を具体的に把握している。
 今後、社会的養護の経営をとりまく環境や動向について具体的に把握・分析するとともに、子どもに関するデータを積極的に収集・分析することが望まれる。
3 経営課題を明確にし、具体的な取組を進めている。 c
【コメント】
 理事長・園長兼務と副園長の暫定代行、ユニットの閉鎖や中堅職員の離職等経営課題や問題点があるにも関わらず、改善に向けた有効な取組が停滞しているように思われる。
 今後、組織体制、人材育成、養育・支援のあり方等について、理念・基本方針を明確にした上での経営課題の解決・改善に向けた取組が早急に望まれる。
3 事業計画の策定
(1) 中・長期的なビジョンと計画が明確にされている。 第三者
評価結果
4 中・長期的なビジョンを明確にした計画が策定されている。 c
【コメント】
 県の「家庭的養護推進計画」に対応した10年間の施設運営計画を策定しているが、内容的には現在までの施設整備の現状を単に追認したものである。また、現時点で小規模グループケア2箇所が稼働しておらず(閉鎖中)見通しも立っていない状況がある。
 したがって、今後は中・長期計画において、理念や基本方針の実現に向けた目標(ビジョン)を明確にして、施設整備計画に止まらない総合的かつ具体的な中・長期計画(収支計画を含む)を策定することが望まれる。
5 中・長期計画を踏まえた単年度の計画が策定されている。 c
【コメント】
 単年度計画(=「事業計画書」)は、考え方、方針、経過報告、課題、評価、実施方法等々を含む包括的記載となっており、当年度事業計画の理解が非常に困難な文書となっている。今後、文書を整理し、具体的事業計画だけを抜き出すなどして、中・長期計画を踏まえた「事業計画」を新たに策定することが求められる。
(2) 事業計画が適切に策定されている。
6 事業計画の策定と実施状況の把握や評価・見直しが組織的に行われ、職員が理解している。 c
【コメント】
 現在の「事業計画書」は、園長が毎年度に修正・変更・追加等してきたものであり、職員等の参画や意見の集約・反映のもとで策定されたものとは言えない。
 今後は、職員等の参画や意見の集約・反映のもと、新たに策定された「事業計画」により養育・支援の評価や見直しを実施することが求められる。
7 事業計画は、子どもや保護者等に周知され、理解を促している。 c
【コメント】
「入所のしおり」には事業計画に言及した記述が見えるが、新しく策定される「事業計画」においては、子どもや保護者等に丁寧に周知(配布、掲示、説明等)されることが求められる。
4 養育・支援の質の向上への組織的・計画的な取組
(1) 質の向上に向けた取組が組織的・計画的に行われている。 第三者
評価結果
8 養育・支援の質の向上に向けた取組が組織的に行われ、機能している。 b
【コメント】
 平成25年度、平成28年度、そして今回と第三者評価を定期的に受審している。また、評価方法としては十分ではないが、「全国児童養護施設協議会」の自己評価表による取組を実施している。
 今後、取組の前提としての「事業計画」の策定と対応する「事業報告書」の整備を図り、人材育成と研修の充実に努め、意識してP(計画策定)→D(実行)→C(評価)→A(見直し)の質の向上に向けた組織的な取組を実施することが求められる。
9 評価結果にもとづき組織として取り組むべき課題を明確にし、計画的な改善策を実施している。 c
【コメント】
 PDCAサイクルにもとづく養育・支援の質の向上に関する取組は、意識も低く実施されていない現状であり、今後抜本的な改善策を講ずる必要が急務である。
Ⅱ 施設の運営管理
1 施設長の責任とリーダーシップ
(1) 施設長の責任が明確にされている。 第三者
評価結果
10 施設長は、自らの役割と責任を職員に対して表明し理解を図っている。 b
【コメント】
 園長が事業運営の全般について、長期にわたり施設長としての手腕を発揮して来たことが認められる。しかし、園の経営・管理や方針の打ち出し方は、命令的であったことは否定できない。
 現在、園長は理事長を兼務し、副園長が園長を暫定代行しているが、今後の組織運営のあり方について適切な判断を下し、改めて自らの役割と責任について職員に対して表明し理解を図ることが期待される。
11 遵守すべき法令等を正しく理解するための取組を行っている。 b
【コメント】
 園長は、児童福祉法、児童憲章、権利条約の重要性を理解すると共に「全国児童養護施設協議会」等の主催する会議等に参加し、関係法令や各種の児童に関する国・県の方針にも通じている。
 今後、理念・基本方針を明文化し、「期待する職員像」を明確にして、遵守すべき法令等を職員に対して周知・遵守するための取組を積極的に行うことが望まれる。
(2) 施設長のリーダーシップが発揮されている。
12 養育・支援の質の向上に意欲をもちその取組に指導力を発揮している。 b
【コメント】
 園長は、「全国児童養護施設協議会」の自己評価や第三者評価に定期的、継続的に取り組み、一定の評価・分析を行っている。しかし、養育・支援の質に関する改善課題を抱えており、園内に具体的な体制を構築し、改善の取組に指導力を発揮しているとは言えない。
 今後は、養育・支援の質の向上に意欲をもち、その取組を明示して自らの指導力を適切に発揮することが望まれる。
13 経営の改善や業務の実効性を高める取組に指導力を発揮している。 b
【コメント】
 園長は、約30年間にわたり園長や理事長に就任し、先頭に立って事業運営を行ってきたところであり、自他ともに経営の改善や業務の実効性の向上に向けて尽力してきたことが認められる。
 今後は、理念や基本方針を明確にして、園内に具体的な体制を構築し、職員と共に取り組んで行くことが望まれる。
2 福祉人材の確保・育成
(1) 福祉人材の確保・育成計画、人事管理の体制が整備されている。 第三者
評価結果
14 必要な福祉人材の確保・定着等に関する具体的な計画が確立し、取組が実施されている。 b
【コメント】
 加算対象の専門職員を配置する計画を有し、人員配置をしてきている。しかし、目下のところ人手不足が顕著であり、特に主任・中堅クラスの職員の離職が続いており、福祉人材の確保に困難を抱えている。
 今後、効果的な福祉人材確保(採用活動等)を更に強化すると共に、現職員の定着と資質の向上に向けた取組が望まれる。
15 総合的な人事管理が行われている。 b
【コメント】
 「全国児童養護施設協議会」の要綱を掲げ「期待する職員像等」を明確にしている。
また、把握した職員の意向・意見や評価・分析等にもとづき職員処遇改善の必要性等を評価・分析しているが十分ではない。
 今後は、施設の理念・基本方針にもとづく「期待する職員像等」を自ら定めると共に「キャリアパス」を策定し、職員等に周知することが望まれる。
(2) 職員の就業状況に配慮がなされている。
16 職員の就業状況や意向を把握し、働きやすい職場づくりに取り組んでいる。 b
【コメント】
 平成30年度に、職員の勤務体制について重大なシフトの変更を実施したが、現在は是正された勤務シフトにより養護・支援が行われている。職員の有給休暇の取得についても労務管理に関する責任を果たしている。
 今後は、定期的に職員との個別面談の機会を設け、ワーク・ライフ・バランスに配慮した取組を行うことが望まれる。
(3) 職員の質の向上に向けた体制が確立されている。
17 職員一人ひとりの育成に向けた取組を行っている。 c
【コメント】
 職員一人ひとりの「目標管理」については、前回の第三者評価でも改善を指摘された点である。
 今後、施設として「期待する職員像」を明確にし、職員一人ひとりの目標管理についての仕組みを構築して取り組むことが急務である。
18 職員の教育・研修に関する基本方針や計画が策定され、教育・研修が実施されている。 b
【コメント】
 職場研修の理念と方針が示された「研修計画及び予定表」が策定されており、毎年度研修課題に基づく研修計画が実行されている。職場外、職場内研修、OJT研修が細かく分かれ、新任・中堅・幹部職員毎または専門職毎に適切に行われている。
 今後は、中・長期計画を踏まえた事業計画に位置づけて実施して行くことが望まれる。
19 職員一人ひとりの教育・研修等の機会が確保されている。 b
【コメント】
 新年度の具体的研修計画に基づき、OJT(職場内研修)、OFF-JT(職場外研修)、SDS(自己啓発研修)に一人ひとりが参加し、取り組んでいる。また、階層別研修、職種別研修、テーマ別研修等の機会を確保し、職員の職務や必要とする知識・技術水準に応じた教育・研修を実施している。
 今後は、スーパービジョンの体制を確立して取り組んでいくことが望まれる。
(4) 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成が適切に行われている。
20 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成について体制を整備し、積極的な取組をしている。 b
【コメント】
 在仙の各大学から年間で多いときは50名位(平成30年度は33名)の実習生が10日間の日程で来ている。研修は、マニュアルに基づき、専門職種の特性に配慮したプログラムを用意して行われ、指導者研修を受講した担当の児童指導員と保育士によって実施されている。
 今後は、福祉人材の確保・育成に係る基本方針に、実習生の研修育成に関する基本姿勢を明文化し、取り組むことが望まれる。
3 運営の透明性の確保
(1) 運営の透明性を確保するための取組が行われている。 第三者
評価結果
21 運営の透明性を確保するための情報公開が行われている。 b
【コメント】
 ホームページには決算情報、定款、役員体制を明示し、文集「みんな」には年間活動や子どもの作文と共に、決算情報を掲載している。
 今後、理念や基本方針、事業計画書を整備してホームページ等に公開し、運営の透明性の確保に向けた情報公開が望まれる。
22 公正かつ透明性の高い適正な経営・運営のための取組が行われている。 a
【コメント】
 事務・経理に関する業務ルールや職務分掌と権限・責任が事業計画書に明文化されており、職員にも周知している。監事による内部監査が定期的に行われ、施設経営や運営の適正性を確保している。
4 地域との交流、地域貢献
(1) 地域との関係が適切に確保されている。 第三者
評価結果
23 子どもと地域との交流を広げるための取組を行っている。 a
【コメント】
 事業計画書には事業目的として地域に根ざしたふれあいと交流の推進を図ることが記載されている。園は毎年、自治会の班長の役割を担い、日常的に雪かきや道路清掃など地域への支援を行い、夏祭りには大勢の住民が来訪し、交流を深め信頼関係を築いている。また、港まつりや植樹会、子どもの成長を祈願する神社の伝統行事にも参加し、子どもたちの手作りのカレンダーは広く住民に周知され、地域に溶け込んでいる。
24 ボランティア等の受入れに対する基本姿勢を明確にし体制を確立している。 b
【コメント】
 地域社会と施設をつなぐ上でボランティアの受け入れは重要と考え、布団作りや清掃などのボランティアや音楽、芝居などの慰問も多い。一方、ボランティア受入れマニュアルはあるがかなり古く、見直しが不十分であり、機能を果たしていない。
 今後、基本姿勢や受入れ方針を明文化するとともに、ボランティアへの研修、職員・子どもへの事前説明など受入れ体制の整備が望まれる。
(2) 関係機関との連携が確保されている。
25 施設として必要な社会資源を明確にし、関係機関等との連携が適切に行われている。 a
【コメント】
 地域の関係機関や団体などの社会資源のリストやパンフレットを整備し、職員間で共有が図られている。また、高校、小・中学校とは日常的に、情報交換を行うとともに児童相談所と連携し、地域の「児童虐待及び配偶者等の暴力被害防止連絡協議会」に定期的に参加し、子どもに対する養育・支援の課題共有に努めている。
(3) 地域の福祉向上のための取組を行っている。
26 地域の福祉ニーズ等を把握するための取組が行われている。 a
【コメント】
 グランドゴルフの園庭開放、コンサート、夏祭り等の地域交流を通じて地域の福祉ニーズや生活課題の把握に努めている。また、高齢化が進む地域に目を向け、道路清掃や雪かきなどを行い、行政区の班長を毎年担うなどして、積極的に福祉ニーズ等の把握に努めている。
27 地域の福祉ニーズ等にもとづく公益的な事業・活動が行われている。 b
【コメント】
 地域社会において、東日本大震災の際は、被災地にある施設として、重要な役割を果たし、災害時の避難所として市と協定を結んでいる。また、併設の「児童家庭支援センター」と連携し、子育て支援や権利擁護等の講演会を行うなど、地域社会における公益的な事業・活動に積極的な役割を果たしている。
Ⅲ 適切な養育・支援の実施
1 子ども本位の養育・支援
(1) 子どもを尊重する姿勢が明示されている。 第三者
評価結果
28 子どもを尊重した養育・支援の実施について共通の理解をもつための取組を行っている。 b
【コメント】
 「全国児童養護施設協議会」の倫理綱領を行動規範とし、不適切ケアチェックリストによる自己点検を行い、子どもの最善の利益に配慮する姿勢を明示している。しかし、理念や基本方針が文書化されておらず、標準的な実施方法への反映が不透明である。
 今後、新任職員だけでなく全職員に対し、より一層子どもの尊重や基本的人権の配慮についての周知徹底が望まれる。
29 子どものプライバシー保護に配慮した養育・支援が行われている。 b
【コメント】
 「子どものプライバシーに関する園内規定」があり、通信、外部者関係、物品管理、物理的環境関係について記載があるが、養育・支援の子どもの生活場面ごとのプライバシー保護マニュアルは明文化されていない。
 今後、施設の限界はあるが、環境・設備面での配慮や工夫をするとともに、プライバシーを尊重する視点に立ったマニュアルの整備と職員・子ども・保護者等への周知が望まれる。
(2) 養育・支援の実施に関する説明と同意(自己決定)が適切に行われている。
30 子どもや保護者等に対して養育・支援の利用に必要な情報を積極的に提供している。 b
【コメント】
 パンフレット(要覧)や「入所のしおり」に養育・支援の内容や行事計画、園の沿革などが紹介してあり、入所時に丁寧に説明を行っている。「入所のしおり」は子ども目線の言葉使いやカラーのイラスト、ルビなどで誰でも分かり易い内容となっている。
 今後は、理念や基本方針の説明をはじめとして社会的養護の理念が十分に周知できる情報提供が求められ、園紹介のパンフレット(要覧)は子どもにも分かり易い工夫が望まれる。
31 養育・支援の開始・過程において子どもや保護者等にわかりやすく説明している。 a
【コメント】
 養育・支援の開始時に当たっては、自己決定の尊重や権利擁護の視点に基づいて行っている。「重要事項説明書」や「入所のしおり」で説明し、生活、健康面での同意など、子どもの障害特性や生育環境に配慮し、ゆっくり、分かり易く説明している。
32 養育・支援の内容や措置変更、地域・家庭への移行等にあたり養育・支援の継続性に配慮した対応を行っている。 b
【コメント】
 措置変更、地域・家庭への移行にあたり、養育・支援の継続性を損なわないよう関係機関と連携し支援している。里親への措置変更はマッチングの積み重ねにより、安定・安心した生活へ向けて支援している。退所後のアフターケアについても併設の「児童家庭支援センター」と連携し、相談に応じている。
 今後は、養育・支援の継続性に配慮した手順と引継ぎ文書マニュアルの整備が望まれる。
(3) 子どもの満足の向上に努めている。 第三者
評価結果
33 子どもの満足の向上を目的とする仕組みを整備し、取組を行っている。 b
【コメント】
 新年度に子どもの代表者会議を行い、遊具などの要望に対応している。しかし、養育・支援を含む生活全般や生活環境などの満足度を評価する定期的な調査が行われていない。
 今後、園として子どもの満足の向上に向けた仕組みの構築に、職員や子ども参画のもとで組織的に取り組むことが望まれる。
(4) 子どもが意見等を述べやすい体制が確保されている。
34 苦情解決の仕組みが確立しており、周知・機能している。 b
【コメント】
 「苦情解決要綱」を定め、苦情解決責任者、苦情受付担当者、第三者委員を設置している。苦情窓口は「重要事項説明書」や学習室に掲示して明示し、保護者や子どもに周知している。意見箱も設置し、年間の苦情件数は数件だが、苦情の公表は申し出た子どもや保護者の意向に配慮して行っている。
 現在、苦情受付担当者は職員全員が月毎に交代しているが、今後は、苦情解決の仕組みが適切に機能するよう、年間を通して責任を担う苦情受付担当者の配置が望まれる。
35 子どもが相談や意見を述べやすい環境を整備し、子ども等に周知している。 b
【コメント】
 子どもが、相談や意見を述べたい時は担当職員だけではなくどの職員でも相談できることを「入所のしおり」などで周知し、相談しやすい関係作りに努めている。また、安心して話せる相談室や面接室を整備している。
 しかし、相談が少なく、子どもが意見を出しづらい生活環境・条件の存在が考えられ、今後は相談や意見を述べる際に秘密が守られ、不利な扱いが無いことの明示と周知が望まれる。
36 子どもからの相談や意見に対して、組織的かつ迅速に対応している。 b
【コメント】
 子どもからの相談や意見は積極的に受け止め、子どもたちと話し合い、夏休みの時間ルール変更や遊具の要望に対応している。
 しかし、意見、要望などの相談に対応する上でのマニュアルの整備が不十分であり、今後、苦情解決の仕組みと同様、子どもからの相談や意見への対応方法や記録、説明、公開などのマニュアルの整備が望まれる。
(5) 安心・安全な養育・支援の実施のための組織的な取組が行われている。 第三者
評価結果
37 安心・安全な養育・支援の実施を目的とするリスクマネジメント体制が構築されている。 b
【コメント】
 リスクマネジメント責任者である副園長を中心に体制を整備し、「危機管理マニュアル」で手順を明確にして職員に周知している。発生時の事件・事故対応としては、児童間暴力や対人暴力、活動中の事故、遊具や交通事故等があり、定期的に遊具や危険物の点検を行い、安全確保と事故防止に努めている。しかし、ヒヤリハットや事故を収集した事例はない。
 今後、ヒヤリハット・事故について、意識して収集・分析及び再発防止策への取組を行うことが急務である。
38 感染症の予防や発生時における子どもの安全確保のための体制を整備し、取組を行っている。 a
【コメント】
 「食中毒・感染症マニュアル」と、発生時の対応のフローチャートが整備されており、職員に研修を行い、周知している。対策は看護師が中心となって取組み、感染症発生時等の子どもの安全確保について体制を整備している。
39 災害時における子どもの安全確保のための取組を組織的に行っている。 b
【コメント】
 「非常災害対策計画」及び「消防計画」が整備され、災害発生時の組織体制、津波、地震、土砂・風水害対応マニュアルがあり、職員に周知している。夜間想定を含む避難訓練を月1回実施し、消防署と連携した避難訓練も年2回実施している。園は、市指定の災害時の避難所でもあり、地域と合同の避難訓練を年1回実施するなど東日本大震災の経験を活かした取組を行っている。子どもの居室には、外出時及び園での避難マニュアルを掲示し、子どもの安全確保に努めている。
 今後は、発災時においても養護・支援を継続するための「事業継続計画」(BCP)を策定し、必要な対策・訓練を行うことが望まれる。
2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の標準的な実施方法が確立している。 第三者
評価結果
40 養育・支援について標準的な実施方法が文書化され養育・支援が実施されている。 c
【コメント】
 事業計画書の中に養護指導管理、保健衛生管理、災害対策管理について記載があり、これらの活動経過記録や方針及び実施方法などが種々示されている。しかし、施設の理念・方針が明文化されていないことに起因して、各実施方法には肝心の養護・支援の具体的な留意点が明確とはなっていない。
 今後は、職員の支援の水準や内容の差異を少なくし、一定の水準を保つために、各養育・支援についての標準的な実施方法の確立が急務である。
41 標準的な実施方法について見直しをする仕組みが確立している。 c
【コメント】
 標準的な実施方法を確立するとともに、職員が参加した見直しの検討会議を行い、PDCAサイクルを実践して、養育・支援の質の向上に繋げていくことが急務である。
(2) 適切なアセスメントにより自立支援計画が策定されている。
42 アセスメントにもとづく個別的な自立支援計画を適切に策定している。 b
【コメント】
 自立支援計画は、アセスメント結果を全職員と検討し、担当職員が作成、主任と副園長が精査、園長が責任者となって作成される。アセスメントは児童相談所と連携し、情報収集している。
 今後は、アセスメント及び自立支援計画策定に係る標準的な手法を確立し、文書化することで、より子どもたちの意向が反映される支援計画を策定することが望まれる。
43 定期的に自立支援計画の評価・見直しを行っている。 b
【コメント】
 自立支援計画の見直しは、定期的に行っている。計画変更が必要な時には、期間に関わらず見直しを行っている。しかし、自立支援計画の見直しに係る標準的な実施方法が文書化されておらず、担当職員により評価のばらつきがみられる。
 今後は、評価方法を確立し、標準的な実施方法を文書化することで、支援の質の向上を図ることが急務である。
(3) 養育・支援の実施の記録が適切に行われている。
44 子どもに関する養育・支援の実施状況の記録が適切に行われ、職員間で共有化されている。 a
【コメント】
 子どもの生活や支援状況は、児童指導員が記載する業務日誌に、詳細に記録されている。朝のミーティング時に全職員で申し送りや検討、また必要時には「養護部会」にて十分な検討を行い、職員間で情報共有できるようにしている。また、パソコンや回覧などを利用し、職員間で情報が共有できる仕組みが整備されている。
45 子どもに関する記録の管理体制が確立している。 a
【コメント】
 「個人情報保護規程」が適切に策定され、年度初めの全体研修時に、園長より説明し、周知している。個人のケース記録は耐火金庫に保管されており、入所時にその取扱いについて、子どもや保護者に説明している。記録管理の責任者は園長である。
内容評価基準(25項目)
A-1 子どもの権利擁護、最善の利益に向けた養育・支援
(1) 子どもの権利擁護 第三者
評価結果
A1 子どもの権利擁護に関する取組が徹底されている。 a
【コメント】
 「児童養護施設における人権侵害の禁止・防止・対応のための要項」をマニュアルとして整備し、定期的に研修を行い職員に周知徹底を図っている。子どもたちから目を離さない、1対1の対応は避け、2人での対応を心掛ける等、権利侵害防止や早期発見の取組が徹底されている。
(2) 権利について理解を促す取組
A2 子どもに対し、自他の権利について正しい理解を促す取組を実施している。 b
【コメント】
 子どもには保証される権利があることについて記載のある「権利ノート」は、児童相談所から渡され説明を受けるが、入所時に「旭が丘学園入所のしおり」でよりわかりやすく説明している。部屋割りは異年齢の子どもで構成されており、お互いに助け合い協力するよう、支援している。
 今後、子どもたちが権利を学ぶ機会を定期的に設けることで、より権利擁護への理解を深め、職員も同時に振り返ることが望まれる。
(3) 生い立ちを振り返る取組
A3 子どもの発達状況に応じ、職員と一緒に生い立ちを振り返る取組を行っている。 a
【コメント】
 生い立ちについては児童相談所と連携し、子どもの成長に留意しながら対応している。日ごろから写真を撮り、アルバムにして退所時にプレゼントしている。また、入所中は毎年文集「みんな」を製作している。文集には1年間の思い出の写真も納められ、いつでも見られ、職員と一緒に振り返ることができる。
(4) 被措置児童等虐待の防止等
A4 子どもに対する不適切なかかわりの防止と早期発見に取り組んでいる。 b
【コメント】
 年度初めの全体研修で、園長より権利擁護の説明や、虐待防止に係る説明がある。徹底して体罰や不適切なかかわりがないよう、毎朝のミーティング時に申し合わせしている。年に一度権利擁護に関わる自己チェックを行い、振り返りをしている。副園長や主任が日々の職員の相談に乗るなど、相談体制は機能しており、相談しやすい職場風土となっている。CAP研修を子どもたちと受け、適切な距離感を知り、子どもたちも思いを伝えることができるようになった。
 被措置児童等虐待が疑われる子どもの支援手順は、現在の「危機管理マニュアル」に記載がないため、マニュアルに追加し、より組織的に取り組むことが望まれる。
(5) 子どもの意向や主体性への配慮
A5 職員と子どもが共生の意識を持ち、生活全般について共に考え、快適な生活に向けて子ども自身が主体的に取り組んでいる。 b
【コメント】
 年度初めに、居室ごとに予算の使い方を考え、どういう部屋にしたいか、レクレーションや誕生会など、目標をもって生活できるよう支援している。困ったときは話しやすい職員に相談するなど、それぞれの子どもに合わせた支援を行うよう努めている。
 今後は、満足度調査などを行い、より子どもたちが主体的に生活に係ることができる仕組みを構築することが望まれる。
(6) 支援の継続性とアフターケア
A6 子どものそれまでの生活とのつながりを重視し、不安の軽減を図りながら移行期の支援を行っている。 a
【コメント】
 児童相談所と連携しながら、個々の事情に合わせ、入所時退所時の支援を行っている。入所前の状況を全職員に周知し、子どもの不安を受け入れ、受け止めるよう心掛けている。外泊や外出なども、個々の状況に合わせ、柔軟に対応している。不安や困難なことはいつでも相談できることを、日頃より子どもたちに話している。
A7 子どもが安定した社会生活を送ることができるようリービングケアと退所後の支援に積極的に取り組んでいる。 b
【コメント】
 併設の「児童家庭支援センター」と連携し、継続して家庭復帰や復帰後の支援をしている。「消費生活センター」や「警察生活安全センター」から講師を招き、社会生活に必要な講習を行っている。また、毎年決まった日に夏祭りとクリスマス会を行っており、その時に合わせ退所者が多く参加し入所者との交流を図っている。
 今後は、協力事業所や退所者・入所者・職員と交流できる機会をより充実させることが望まれる。
A-2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の基本 第三者
評価結果
A8 子どもを理解し、子どもが表出する感情や言動をしっかり受け止めている。 b
【コメント】
 職員は、日頃より子どもたちの小さな変化やサインを見逃さないよう努めている。子どもの状況を業務日誌や朝のミーティング時に職員間で共有し、対応を検討している。
 今後、利用者アンケートなどでより丁寧に子どもの意向を汲み取る仕組みが望まれる。
A9 基本的欲求の充足が、子どもと共に日常生活を構築することを通してなされるよう養育・支援している。 b
【コメント】
 子どもとの関係性が重要と考え、担当職員以外でも相談や支援ができる体制を作っている。声掛けや話をする機会を日常的に作っている。夜間に不安を訴える子どもには、職員が近くにいられるよう配慮している。
 今後は、利用者アンケートなどで、より積極的に子どもの意向や思いを汲み取り、子どもそれぞれの基本的欲求が満たされるような取組が望まれる。
A10 子どもの力を信じて見守るという姿勢を大切にし、子どもが自ら判断し行動することを保障している。 a
【コメント】
 子どもとの関係性が重要と認識し、話を聞く、見守る、必要時には助言するという姿勢で、日々の支援に当たっている。朝夕の通学時間帯には、通学路の見回りを行うなど、危険防止にも留意している。職員には「行ってらっしゃい」「おかえりなさい」と、必ず声掛けすることを励行している。
A11 発達の状況に応じた学びや遊びの場を保障している。 a
【コメント】
 園には広い園庭やプレイルームがある。年齢に応じた玩具や図書、楽器などが置かれ、自由に利用できる。学習室があり、必要時は学習指導員が指導を行う。園庭では、職員と一緒にサッカーや野球をすることもある。近隣の図書館や児童センターを利用し、地域との交流を図ったり、スポーツ少年団に加入する子どももいる。
A12 生活のいとなみを通して、基本的生活習慣を確立するとともに、社会常識及び社会規範、様々な生活技術が習得できるよう養育・支援している。 b
【コメント】
 家事の経験を年齢に応じて習得できるよう支援している。また、地域行事には積極的に参加して交流できるよう配慮している。園の生活ルールは、入所時に説明し同意を得ている。
 今後、子どもたちが生活の中で感じる不具合を一緒に考え、生活ルールを考える仕組みを作ることで、子どもの社会性を醸成していくことが望まれる。
(2) 食生活
A13 おいしく楽しみながら食事ができるように工夫している。 b
【コメント】
 3食きちんと食べることを大事にし、規則正しい食習慣が身につくよう支援している。食事時間が遅くなる子どもには、冷蔵庫に保存して温め直して食べられるよう配慮している。子どもたちが、お菓子やラーメンを作るなど、調理技術や作る楽しみが得られるよう計画を立てて支援している。
 今後、子どもの嗜好を取り入れたメニューや食堂の設(しつら)えを変えるなど、食べる楽しみやコミュニケーションの場として食事時間が機能するような工夫が望まれる。
(3) 衣生活
A14 衣類が十分に確保され、子どもが衣習慣を習得し、衣服を通じて適切に自己表現できるように支援している。 a
【コメント】
 常に衣服は清潔で、体に合い、季節に合ったものを着用している。新調を希望する子どもは、職員と一緒に出掛けて好みの衣類を買っている。中学生以上の子どもたちには、洗濯やアイロンかけなどが自分たちでできるよう支援している。子どもたちの好みの把握に努め、衣類を選択できるように支援している。
(4) 住生活
A15 居室等施設全体がきれいに整美され、安全、安心を感じる場所となるように子ども一人ひとりの居場所を確保している。 b
【コメント】
 居室や共有スペースは床暖房となっている。自分の身の回りのものは自分で整理整頓できるよう、職員が声掛けをしたり手伝うなど支援をしている。また、子どもにとって居心地の良い安心安全な環境とは何かを考え、職員が日中の時間帯を利用して環境整備を行っている。
 しかし、ところどころに破損した箇所が散見されており、今後、早急な修理や修繕が望まれると共に計画的な環境整備が望まれる。
(5) 健康と安全
A16 医療機関と連携して一人ひとりの子どもに対する心身の健康を管理するとともに、必要がある場合は適切に対応している。 a
【コメント】
 園の看護師が定期的に身体測定を行い、健康管理をしている。業務日誌での申し送りや朝のミーティング時に子どもの体調を把握し、必要時には医療機関の受診を行っている。医療機関とは日ごろから連携し、意思疎通を図っている。服薬が必要な子どもには、わかりやすく説明し、誤薬や服薬忘れがないよう支援している。感染症や嘔吐処理などの研修を行っている。
(6) 性に関する教育
A17 子どもの年齢・発達の状況に応じて、他者の性を尊重する心を育てるよう、性についての正しい知識を得る機会を設けている。 b
【コメント】
 CAP研修を行うなど、性のことや他者との関り方などを学ぶ機会を作っている。生活の中で、子どもにはプライベートゾーンについて理解を促し、職員は見守りを徹底し、園内に死角ができないよう配慮している。
 今後、子どもの発達段階に応じたプログラムやカリキュラムを用意し、いのちの教育として、性への正しい理解ができる取り組みが望まれる。
(7) 行動上の問題及び問題状況への対応
A18 子どもの暴力・不適応行動などの行動上の問題に対して、適切に対応している。 a
【コメント】
 「危機管理マニュアル」を作成し、その中に「児童間暴力・対人暴力への対応」を文書化して、職員が適切に対応できるよう定め、CAP研修を定期的に受け、被害児童の不安や加害児童の心にも寄り添うよう努力している。職員の無力感やストレスマネジメントは、主任や副園長、園長が受け止めて対応している。事例によっては児童相談所や警察等とも連携し、適切に対応している。
A19 施設内の子ども間の暴力、いじめ、差別などが生じないよう施設全体で取り組んでいる。 a
【コメント】
 日頃から子どもたちの関係性を観察し、把握するよう努めている。業務日誌や朝のミーティングで情報を共有し、職員間で協力して対応できるように配慮している。毎年の部屋割りには関係性も考慮し、グループ分けをしている。施設内での対応が困難な場合は、児童相談所等と連携して対応している。
(8) 心理的ケア
A20 心理的ケアが必要な子どもに対して心理的な支援を行っている。 b
【コメント】
 心理療法担当職員が配置され、心理的ケアが必要な子どもには、自立支援計画に基づき、心理支援プログラムを作成している。担当職員は採用後間がなく、個別の面談も始まったばかりである。今後は子どもたちの心理的ケアや職員のメンタル面でのサポートもできるようにしたいと考えている。
 今後、園として他の職員とも連携した、組織的な心理的支援を行うことが望まれる。
(9) 学習・進学支援、進路支援等
A21 学習環境の整備を行い、学力等に応じた学習支援を行っている。 a
【コメント】
 学習室があり静かに勉強できるスペースを確保している。地域の図書館や、学習塾へ通う子どももいる。学校と連携し、学力が低い子どもには個別指導を行い、学習指導員や担当職員、地域のボランティアが学習を支援する機会を作っている。
A22 「最善の利益」にかなった進路の自己決定ができるよう支援している。 a
【コメント】
 子どもたちの希望を丁寧に聞き取り、家族、学校、児童相談所とも相談し、何度も話し合いながら進路選択ができるよう支援している。進路決定後のフォローアップや失敗した場合に対応する体制ができている。また、迷いのある子どもには、様々な選択肢を提案し、生活のシュミレーションが出来るよう支援している。
A23 職場実習や職場体験、アルバイト等の機会を通して、社会経験の拡大に取り組んでいる。 a
【コメント】
 アルバイトを希望する子どもには、学校と情報交換を行い、施設から依頼文を出し、社会経験ができるよう支援している。退所者の事業主から、職場実習の受け入れなどの情報が寄せられることもある。
(10) 施設と家族との信頼関係づくり
A24 施設は家族との信頼関係づくりに取り組み、家族からの相談に応じる体制を確立している。 b
【コメント】
 家庭支援専門相談員を配置し、児童相談所や児童家庭支援センターと連携し、面会や一時帰宅・外泊などの対応を行い、子どもの小さな変化を見逃さず、不安や寂しさに寄り添うよう取り組んでいる。また、家族の状況を把握し、家庭訪問や行事への参加を呼びかけ、信頼関係の構築を図っている。
 現在、家庭支援専門相談員は兼務となっており、今後は専任での配置が望まれる。
(11) 親子関係の再構築支援
A25 親子関係の再構築等のために家族への支援に積極的に取り組んでいる。 b
【コメント】
 家庭支援専門相談員を中心に、全職員が、子どもそれぞれのバックボーンを把握できるよう情報共有を行い、支援方針を決めている。児童相談所と相談、連携して親子関係の再構築に取り組んでいる。
 今後、園内に親子生活訓練室を設置するなど、より積極的な家族支援の取組が望まれる。
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