社会的養護施設第三者評価結果 検索

若草寮

第三者評価結果詳細
共通評価基準(45項目)Ⅰ 養育・支援の基本方針と組織 
1 理念・基本方針
(1)理念、基本方針が確立・周知されている。 第三者
評価結果
1 理念、基本方針が明文化され周知が図られている。 b
【コメント】
 施設では、基本方針として、「①児童の権利擁護の視点に立った支援」「②児童の課題に対応した支援計画、社会的自立促進」「③家庭復帰に向けた家庭環境の調整」「④施設運営の質の向上、地域や関係機関との連携」を掲げている。基本方針はパンフレットや年次運営計画に記載され職員に周知されているが、子どもや保護者等へ周知するまでには至っていない。理念、基本方針は施設の支援の基本であり、子どもや保護者等の関係者が知ることで、施設への信頼や安心感にもつながるため、積極的な周知と子どもが理解できるような工夫も期待される。
2 経営状況の把握
(1) 経営環境の変化等に適切に対応している。 第三者
評価結果
2 施設経営をとりまく環境と経営状況が的確に把握・分析されている。 b
【コメント】
 寮長が中心となり、児童養護施設の今後の動向や対象となる子ども像を把握するように努め、職員に情報提供を行っている。このように施設全体で情報は共有されているが、施設の設備や職員体制、人材育成、財務状況等の分析を組織的に行うまでには至っていない。
3 経営課題を明確にし、具体的な取組を進めている。 b
【コメント】
 寮長を中心として、施設の課題に対応すべく、現在及び将来的に施設を利用する子ども像に合わせて、セカンドステップ(人との付き合い方(相互理解、問題の解決)や怒りをどうコントロールするかを学ぶプログラム)等の専門的なプログラムを導入するなど、養護、養育面で対策が講じられている部分も見受けられるが、具体的な施設の課題を明文化して明らかにし組織的な取り組みとするまでには至っていない。把握された施設の課題について、明文化するなどして明らかにして、職員間で解決・改善に向けて検討することが期待される。
3 事業計画の策定
(1) 中・長期的なビジョンと計画が明確にされている。 第三者
評価結果
4 中・長期的なビジョンを明確にした計画が策定されている。 b
【コメント】
 施設は県立施設であり、「新潟県「夢おこし」政策プラン」「新潟県子ども・子育て支援事業支援計画」の中に、児童養護施設の中・長期的な計画が明記されているが、施設の課題の解決に向けた具体的な中・長期計画を策定するまでには至っていない。施設の運営に際して、寮長、次長、指導課長等の幹部職員は、単年度で完結しない取り組みに対して中期的な意思統一をしており、子どもの生活環境の改善等で一部実践事例も確認できる。県立の施設であり、人事や財務等の要件を含む中長期計画の策定は困難であるが、子どもの養育・支援等に関しての計画策定の検討が期待される。
5 中・長期計画を踏まえた単年度の計画が策定されている。 b
【コメント】
 施設の年次計画「運営計画」の内容は、重点項目や職員の役割分担、各種養育支援等について、新人職員でも理解できるように分かりやすく記載されている。しかし、当該年度重点的に取り組む事項について、目標値や目標とする状況や状態等を具体的に明記するまでには至っていない。目標を明確にして計画に明記することで、職員や子どもの目標達成に向けた取り組みや意欲向上につながると考える。
(2) 事業計画が適切に策定されている。
6 事業計画の策定と実施状況の把握や評価・見直しが組織的に行われ、職員が理解している。 b
【コメント】
 「運営計画」について、計画策定の手順書等は作成されていないが、毎年3月に前年度の各担当・係りの職員の意見を参考にして幹部職員が計画案を示し、職員会議において協議して策定している。職員の意見の集約や、子どもの意見の反映に関して実施しているものの、実施時期が年度末であり子どもの行事等が多く重なってしまい、職員が十分に計画の評価や策定に取り組めていない。また、今回の第三者評価における職員の自己評価においても、実施はしているものの十分ではないとの意見が多く、計画の評価と策定の時期や方法等について検討が期待される。
7 事業計画は、子どもや保護者等に周知され、理解を促している。 c
【コメント】
 「運営計画」の中で、行事等の子どもの関心の高い項目については、子どもの棟会議などで職員から説明して周知しているが、運営計画の主だった内容を説明するまでには至っていない。施設が実施する養育、支援等について職員の基本的な考え方や子どもと一緒に実施する行事や訓練等の取り組みのねらいや意味を共有することによって、より成果が期待できることもあるため、計画全てではなくとも必要な箇所について、子どもの年代別に分かりやすい資料等を作成して周知することが期待される。
4 養育・支援の質の向上への組織的・計画的な取組
(1) 質の向上に向けた取組が組織的・計画的に行われている。 第三者
評価結果
8 養育・支援の質の向上に向けた取組が組織的に行われ、機能している。 c
【コメント】
 施設全体の養育・支援については、寮長、指導課長を中心として日常的に質の維持・向上に努めているが、定期的に自己評価を実施して組織的に改善に向けて取り組むまでには至っていない。職員からは、日常の子どもへの支援で手一杯で施設全体について振り返り確認する時間の確保がなかなか困難であるとの意見も見受けられたが、現在の養育、支援等の質を維持、向上させるためにも自己評価を定期的に実施して、養育、支援を組織的に振り返り、課題の改善にむけた取り組みをPDCAサイクルに基づき実施する体制の整備が求められる。
9 評価結果にもとづき施設として取り組むべき課題を明確にし、計画的な改善策を実施している。 c
【コメント】
 朝礼や職員会議等の日常的な機会に寮長、指導課長から職員へ指示・指導を行うことにより、施設の課題等の解決に向けた取り組みが実施されているが、評価結果に基づいて組織的な取り組みを行うまでには至っていない。定期的な自己評価及び第三者評価の結果を活かして子どものニーズを整理し、職員の参画の下で課題解決に向けた取り組みが展開されることを期待したい。
Ⅱ 施設の運営管理
1 施設長の責任とリーダーシップ
(1) 施設長の責任が明確にされている。 第三者
評価結果
10 施設長は、自らの役割と責任を職員に対して表明し理解を図っている。 a
【コメント】
 寮長は、職務分担表や災害時マニュアル等で自らに施設に関する全責任がある旨を明記している。また、朝礼や職員会議時に職員に対して、施設の方針や個別の子どもに対する対応方針、職員の養育、支援等への助言等を行う中で、自らの責任や役割を職員に伝えている。今回の第三者評価における自己評価での職員意見からも、寮長の役割と責任は明確にされているとの意見が多く寄せられていた。
11 遵守すべき法令等を正しく理解するための取組を行っている。 a
【コメント】
 寮長は、国や県の児童養護施設協議会の会議に出席して、最新の児童養護施設の動向について確認している。また、その他の関係法令の改正についても適宜、情報を確認し職員に口頭で説明したり資料を回覧するなどして、法令遵守に向けた組織的な取り組みに努めている。
(2) 施設長のリーダーシップが発揮されている。
12 養育・支援の質の向上に意欲をもちその取組に指導力を発揮している。 a
【コメント】
 寮長は、施設の課題の解決に向けて、毎朝の朝会や職員会議等で具体的な子どもの養育や関係機関等との連携等について職員に助言、指導している。また、寮長は、自らの児童相談所や児童養護施設等での専門職としての経験に基づいて、望まれる養育・支援や施設のあるべき姿や像をしっかりと描いており、それにより職員集団をリードしている。子どもと職員の1対1の外出行事を設けたり、子どもの進学等の進路選択の幅を広げるなど、寮長のリーダーシップによって前回の第三者評価時にはない取り組みも多数確認することが出来た。
13 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している。 b
【コメント】
 「若草寮」は県立施設であり、人事や財務は予め定められ、寮長は与えられた権限の中で、主に子どもへの養育・支援に対して指導力を発揮している。施設に必要な取り組みは、寮長の強いリーダーシップに導かれ実施されていることが多く、職員集団で自発的に質の向上に向けて検討したり取り組んだりするまでには至っていない。職員一人ひとりの専門性や資質を活かせる体制を施設内に構築するための働きかけが期待される。
2 福祉人材の確保・育成
(1) 福祉人材の確保・育成計画、人事管理の体制が整備されている。 第三者
評価結果
14 必要な福祉人材の確保・定着等に関する具体的な計画が確立し、取組が実施されている。 b
【コメント】
 県の人材育成計画があり、初任者研修や経験、役職に応じた研修も実施されている。施設の人材確保と配置については計画的であり、県で定められた員数、主に福祉職として採用された職員が配置されている。しかし、児童養護施設職員としての専門的な育成に関しては、寮長と指導課長の構想によるところが大きく、計画を策定するまでには至っていない。
15 総合的な人事管理が行われている。 b
【コメント】
 新潟県職員の規定に基づき、県庁の総務監理部人事課が職員一人ひとりに職務や異動等についての「職員調書」の提出を求めて、人材育成型評価結果を基に総合的な人事管理が行われている。現在、県行政職員として望まれる職員像については示されているが、児童養護施設職員としての専門性や必要な知識等をふまえたより詳細な“望まれる職員像”に基づく人材プランの策定が期待される。
(2) 職員の就業状況に配慮がなされている。
16 職員の就業状況や意向を把握し、働きやすい職場づくりに取り組んでいる。 a
【コメント】
 職員の就業状況は庶務課によって把握されており、休暇の取得や超過勤務等について改善が必要な場合は、指導課長を中心に職員の勤務分担の調整等が行われている。また、県の諸規定に従い、「メンタルヘルス職員調書」を使用したり、施設内だけでなく組織内の他の相談窓口も設置しており、充実した福利厚生が実施されている。
(3) 職員の質の向上に向けた体制が確立されている。
17 職員一人ひとりの育成に向けた取組を行っている。 b
【コメント】
 県の人材育成型評価制度の一環として、目標管理が実施されている。年度当初に職員が上司と共同で目標を作成して、中間、期末に評価されている。上司と部下との面接時に、児童養護施設職員としての必要な知識や専門技術等についても話し合いは持たれているが、職員に対してそれらを明示して育成の取り組みを行うまでには至っていない。
18 職員の教育・研修に関する基本方針や計画が策定され、教育・研修が実施されている。 b
【コメント】
 施設の運営計画の中で研修計画が策定され、子どもを養育・支援する上で「豊かな人間性と倫理観を持った職員の育成」を目標に掲げている。しかし、社会的養護施設職員に求められる知識、技術水準、専門資格等を具体的に明示して職員に周知するまでには至っていない。施設の職員は新採用や異動配置等、児童養護施設での勤務経験がない職員も多く、職務を行うにあたって必要な知識や技術水準について明示して教育・研修を実施することによって、より効果的な人材育成につながると考えられる。
19 職員一人ひとりの教育・研修の機会が確保されている。 b
【コメント】
 県職員の人材育成制度として、新任職員研修、中堅、役職等の階級別研修が実施されている。施設の職員研修としては、寮長と指導課長が職員の希望や経験年数等に合わせて外部研修に派遣するなどして職員の資質向上に努めている。また、新人職員に対しては職務に慣れるまで数か月間、教育担当職員を配置して個別的なОJT(On the Job Training/業務を通した指導・育成)も一部行われている。しかし、子どもの養育・支援について職員一人ひとりの現状の知識、技術水準を踏まえた教育・研修を行うまでには至っていない。職員の異動や、勤務期間が定まった職員が配置されることも少なくなく、職員の知識・技術のレベルを踏まえた教育・育成体制の確保が期待される。
(4) 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成が適切に行われている。
20 実習生等の養育・支援に関わる専門職の教育・育成について体制を整備し、積極的な取組をしている。 b
【コメント】
 施設では、児童養護施設への理解をもった福祉人材の育成に向けて、年間で10~20人と実習生を積極的に受け入れている。実習生の指導については担当職員を配置して、施設の受け入れプログラムに基づき、実習生のねらいや目的に合わせて実習を実施している。実習受け入れの流れや職員の役割等については書面で職員に周知されているが、専門教育を実施する上での具体的な方法や目的等を策定して職員間で周知するまでには至っていない。
3 運営の透明性の確保
(1) 運営の透明性を確保するための取組が行われている。 第三者
評価結果
21 運営の透明性を確保するための情報公開が行われている。 b
【コメント】
 ホームページに施設の概要や沿革、基本方針等を明示している。また、新潟県のホームページで財務や監査結果等の情報開示もなされ、誰でも閲覧することが可能である。地域に向けては、「育て わかくさ」と題した広報誌を近隣地区に回覧や配布をして施設の活動や子どもの様子を分かりやすくお知らせしている。しかし、施設のホームページは施設の情報を分かりやすく理解できる内容としては充分ではない。施設の概要や役割、活動等をより分かりやすく工夫して外部に公開することが期待される。
22 公正かつ透明性の高い適正な経営・運営のための取組が行われている。 a
【コメント】
 県の規定に基づいて事務、経理、取引等が実施され、次長や庶務課が中心となり職員に周知もなされている。また、県の内部・外部監査等も実施され適切に経営・運営の管理がされている。
4 地域との交流、地域貢献
(1) 地域との関係が適切に確保されている。 第三者
評価結果
23 子どもと地域との交流を広げるための取組を行っている。 b
【コメント】
 地域行事の「葛塚まつり」の子ども神輿や自治会のイベント、奉仕活動等に子どもが参加できるように、職員が付き添い参加している。施設が昭和55年に現住所に移転してからの歴史も長く、地域の一員として施設と子どもたちも認知されている。子どもの友達や地域の子どもが施設に遊びに来ることは、施設設備等から困難であり実施されていない。
24 ボランティア等の受入れに対する基本姿勢を明確にし体制を確立している。 b
【コメント】
 施設では、ボランティアと子どもの活動が子どもの社会性の向上につながるとの考えのもと、ボランティアを積極的に受け入れている。ボランティアは個人や企業、団体等であり、活動内容は子どもと一緒に行う木工工作やバーベキュー、読み聞かせ、餅つき、環境清掃、様々であり、子どもたちもボランティアとの活動を楽しみにしている。ボランティアの活動の前には、職員からボランティアへ子どもの個人情報保護についてや留意点が説明されている。今後は、より子どもとの交流を図るためのボランティアへの研修の検討が期待される。
(2) 関係機関との連携が確保されている。
25 施設として必要な社会資源を明確にし、関係機関等との連携が適切に行われている。 b
【コメント】
 連携する関係機関としては、小中学校、高校、児童相談所、医療機関、ハローワーク等があり、子どもの担当職員を中心として日常的な連絡調整が行われている。また、施設で2ヶ月に1度実施されている「安全委員会」と題した子どもの権利擁護に向けた会議には、児童相談所や顧問として学識経験者、小中学校等の関係者が出席しており、施設や子どもの課題等について意見交換が行われ、機関同士の連携の場にもなっている。関係機関については寮長や指導課長から口頭で職員に説明、周知されているが、リストや機関に関する資料、連携の留意点等を整理した資料を作成して職員が活用できるようにするまでには至っていない。
(3) 地域の福祉向上のための取組を行っている。
26 施設が有する機能を地域に還元している。 b
【コメント】
 施設が地域の災害時の避難所に指定されていたり、施設の体育館を地域の障がい者のレクレーションの場として貸し出すなどしている。また、寮長と指導課長を中心に、児童養護施設や子育て等について、地域の民生・児童委員の研修会等の講師を担っている。施設の今日までの様々な子どもの養育・支援の実践を踏まえて、職員の専門性を活かした地域福祉の向上のためのさらなる活動が期待される。
27 地域の福祉ニーズにもとづく公益的な事業・活動が行われている。 b
【コメント】
 施設では、地域から求められる福祉ニーズは、健常な子どもだけでなく、障がい児や虐待を受けた経験がある子どもを受け入れ、しっかりと養育・支援することであると認識している。施設機能を活かした公益的な活動については、具体的な計画等はないが、小中学校との連携は強いので、今後はそのつながりも活かしながら、地域の児童福祉の向上のために職員の持つ専門性を活用した活動の検討が期待される。
Ⅲ 適切な養育・支援の実施
1 子ども本位の養育・支援
(1) 子どもを尊重する姿勢が明示されている。 第三者
評価結果
28 子どもを尊重した養育・支援の実施について共通の理解をもつための取組を行っている。 b
【コメント】
 施設内での暴力をなくし、子どもたちが安心して生活できるよう、平成19年から「若草寮安全委員会」を設置している。安全委員会の構成メンバーは児童相談所、小中学校など若草寮に関わる関係機関及び若草寮職員とされており、2ヶ月に1度定期的に委員会が開催され、子どもの暴力・不適応行動などの問題行動への対応、暴力など職員の不適切な関わりの防止、子どもの権利擁護等について協議されている。また、安全委員会の取り組みとして毎月、暴力を受けたり嫌な思いをしていないか、子ども一人ひとりへの聞き取り調査を実施している。
 現在、施設では、暴力を受けないこと、嫌な思いをしないことを中心とした子どもの権利擁護、権利保障への方針を持ち、職員もその重要性を認識しながら取り組んでいるところである。安心・安全を確保したうえで、今後は、さらに次なる段階の子どもの尊厳や基本的人権(例えば、子どもの権利条約における「育つ権利」や「参加する権利」など)への配慮に向けたさらなる取り組みが期待される。
29 子どものプライバシー保護等の権利擁護に配慮した養育・支援の実施が行われている。 b
【コメント】
 施設職員の子どもに対する姿勢やかかわり方については、日常の支援場面で先輩職員が後輩にОJT(業務を通した指導・育成)で指導したり、職員会議や「安全委員会」において話し合うことで考えを深めている。プライバシーについては、施設が昭和55年に建設された建物である関係で、4人部屋又は2人部屋であり、カーテン等で工夫しているが、子どもが自身のプライベートやプライバシーを感じることが難しい状況である。施設の構造的にやむを得ないところもあるが、できる範囲で子どものプライバシー保護について、職員間や子どもと話し合う機会を持つなどしてさらなる改善が期待される。
(2) 養育・支援の実施に関する説明と同意(自己決定)が適切に行われている。
30 子どもや保護者等に対して養育・支援の利用に必要な情報を積極的に提供している。 b
【コメント】
 施設を利用する前には、見学の機会を設け子どもと保護者に対し十分に職員が説明を行っている。施設を紹介する資料としてはパンフレットとホームページがあり、分かりやすい内容となっているが、小学校低学年や障害のある子ども等が理解できるように工夫するまでには至っていない。児童養護施設の利用が必要となる子どもや保護者等が施設の情報を正しく分かりやすく理解できるように、ホームページやパンフレット等の内容についてさらなる工夫が期待される。
31 養育・支援の開始・過程において子どもや保護者等にわかりやすく説明している。 b
【コメント】
 子どもが入所する際には、担当職員が子どもにほぼマンツーマンで付いて施設の生活やルールを説明するとともに、就学や生活の準備のために、日常用品や学用品等の買い物にも2人で出かけている。このようにして、入所間もない子どもの不安を和らげ、担当職員との信頼関係が築けるように努めている。また、入所後1か月は、毎週、施設生活や学校等で嫌な思いをしていないかなど、職員が聞き取りを行っている。
 施設利用時の留意点や決まりなどについて、年代別で理解できる資料があればより分かりやすくなると思われるため、以前は子どもへの説明に使用していた「入所のしおり」等の説明資料の必要性についての検討が期待される。
32 措置変更や地域・家庭への移行等にあたり養育・支援の継続性に配慮した対応を行っている。 b
【コメント】
 子どもが家庭に戻ったり他施設等へ移行する際には、児童相談所や移行先の施設担当者に口頭で申し送りをするとともに、必要に応じて書面でも子どもの状況や支援等の留意点を伝えている。子どもの退所や措置変更等にあたり、支援の継続性のために必要な手順や文書、方法等を定めることが期待される。
(3) 子どもの満足の向上に努めている。 第三者
評価結果
33 子どもの満足の向上を目的とする仕組みを整備し、取組を行っている。 b
【コメント】
 女子棟では棟全体での子どもたちの会議があり、職員も交えて生活全般について、子どもたちの希望や意見を聞く機会を設けている。男子棟では、現在の子どもの状況から「会議」という形での設定はしていないが、食事や学習時の小グループでの雑談、個別の子どもからの意見や相談の際に子どもの満足度を聞き取っている。また、「安全委員会」の取り組みとして、毎月、暴力を受けたり嫌な思いをしていないか、子ども一人ひとりの調査を実施しており、その際に子どもの意向を聞き取ることも少なくない。しかし、施設の養育や子どもの進路、自立支援等についての子どもの満足度や意見を分析・検討して具体的な取り組みにつなげるまでには至っていない。
(4) 子どもが意見等を述べやすい体制が確保されている。
34 苦情解決の仕組みが確立しており、周知・機能している。 b
【コメント】
 施設では苦情解決の体制が整備され、第三者委員会等も設置されている。子どもには、児童相談所から「子どもの権利ノート」(守られるべき子どもの権利や社会的養護において保障されるべき権利、権利が奪われそうになった時の権利擁護の仕組みなどを伝える冊子)が配布されており、直接児童相談所に苦情や意見を伝えることもできる。しかし、苦情の窓口等について掲示等がなく、子どもや保護者からの申し出がしにくい状況であるため、苦情の掲示や申し出方法等の説明が期待される。
35 子どもが相談や意見を述べやすい環境を整備し、子ども等に周知している。 b
【コメント】
 子どもの一人ひとりに担当職員が配置され、子どもは担当職員に相談することが多いが、日常的にどの職員にでも相談や意見を申し出て良いことを子どもには伝えている。職員は相談室等だけでなく、夜間の宿直室や日常生活の中で、子どもからの相談や意見を聞き取るように努めている。また、担当職員と子ども2人で、女子は一緒に食事を調理して食べたり、男子は外食、外泊や外出する機会を年に数回設けることで、職員との信頼関係を構築できるように努めている。今後は、職員の役職や専門性に応じて、どの職員にはどのような相談かできるかについて子どもに向けて掲示するなどして、より子どもが相談しやすい取り組みの検討が期待される。
36 子どもからの相談や意見に対して、組織的かつ迅速に対応している。 b
【コメント】
 子どもからの相談等が寄せられた際には、相談内容を朝礼時に申し送るとともに、日誌と生活記録に記載して、職員間で共有している。子どもの相談内容に応じて、すぐ対応できるものは迅速に対応し、対応に検討が必要な場合は、その旨を子どもに説明している。対応の手順や方法は職員間で確認されているが、手順書やマニュアル等を整備するまでには至っていない。基本的な手順や方法について、対応する職員によって差異が生じたり、交代や異動等によって子どもへの対応の水準が低下することのないよう、マニュアル等を活用して担保することが望まれる。
(5) 安心・安全な養育・支援の実施のための組織的な取組が行われている。 第三者
評価結果
37 安心・安全な養育・支援の実施を目的とするリスクマネジメント体制が構築されている。 b
【コメント】
 職員は、子どもとの生活の中で設備の危険個所に気が付いた場合は、その都度修繕等を実施している。また、施設外でも、子どもが外出時の交通ルールを理解できるまで登下校等に同行するなどして子どもの安全確保に努めている。子どもにケガ等の事故が生じた際には、適切に医療機関に受診するなどし、その後に職員間で協議して事故の再発防止策を講じているが、事故事例やインシデント等を集計して分析したり、定期的に設備等の安全確認をするまでには至っていない。組織的として担当者を定めて安全確認等を実施するなど、事故の予防と再発防止に向けたさらなる組織的な取り組みが期待される。
38 感染症の予防や発生時における子どもの安全確保のための体制を整備し、取組を行っている。 b
【コメント】
 施設では感染症対応マニュアルが整備され、子どもが感染症に罹患した際は、静養室で静養することで他の子どもが感染しないように対策が講じられている。また、手洗い・うがいの励行や、トイレの手拭きをペーパータオルとするなど設備も工夫している。その甲斐あって、近年では感染症の蔓延を避けることができている。今後は子どもの嘔吐物の処理等、感染症の蔓延防止対策について職員の訓練や研修の機会を持つことが期待される。
39 災害時における子どもの安全確保のための取組を組織的に行っている。 a
【コメント】
 施設の立地から考えられる災害リスクの主なものとして、火災、地震、津波を想定し、日中や夜間、災害ごとの避難訓練を毎月、様々な時間帯を想定して実践的に実施している。また、施設は地域の避難所としても指定されており、地域防災組織との連携も図られている。
2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の標準的な実施方法が確立している。 第三者
評価結果
40 養育・支援について標準的な実施方法が文書化され養育・支援が実施されている。 b
【コメント】
 運営計画の中に、各養育・支援の基本的な方針が記載されており、実施方法等は先輩職員から後輩職員にОJT(業務を通した指導・育成)を基本として実施されている。今年度から標準的な実施方法の作成のための担当者を定めて検討が進められている。今後は、養育・支援の標準的な実施方法の作成について職員間で話し合う機会を持ち、何の標準的実施方法が現場に求められているかについて検討するなどして、標準的実施方法を文書化し、職員間で共有・活用して養育・支援の水準を確保する仕組みづくりが期待される。
41 標準的な実施方法について見直しをする仕組みが確立している。 b
【コメント】
 年度末に標準的な実施方法や各種業務内容等の見直しを実施して、新年度までに改正する決まりが定められているが、実施は担当職員に任せられており、必要な改正が行えていないことが課題となっている。年度末に全ての見直しを実施するのではなく、日常的に改正が必要なところを確認したり、各標準的な実施方法の改正点について職員会議等で確認する機会を持つなどして組織的に取り組むことが期待される。
(2) 適切なアセスメントにより自立支援計画が策定されている。
42 アセスメントにもとづく個別的な自立支援計画を適切に策定している。 b
【コメント】
 子どもの自立支援計画は、担当職員が子どもの意向や生活記録、通知表、健診等の様々な情報からアセスメントを行い原案を策定して、他職員の意見や指導課長、寮長の確認を経て策定されている。アセスメントや自立支援計画策定のプロセスについては、職員間で共通認識が持たれているが、実施方法等の手順書を作成するまでには至っていない。アセスメントはどのような情報を用いて、どう分析するか、必要な資料の管理方法等、担当職員が異動等で交代しても円滑に子どもの情報を引き継ぎアセスメントや自立支援計画が策定できる仕組みの構築が期待される。
43 定期的に自立支援計画の評価・見直しを行っている。 b
【コメント】
 自立支援計画は、子どもと職員で目標を共有して、子どもの意見も聞き取り6ヶ月に1度モニタリングを行い、年度末の評価を経て再作成されている。今後は、自立支援計画の見直し時に、どのように職員全体に周知するかなどの手順を明確にすることが期待される。
(3) 養育・支援の実施の記録が適切に行われている。
44 子どもに関する養育・支援の実施状況の記録が適切に行われ、職員間で共有化さている。 a
【コメント】
 子どもの生活記録はパソコンで管理され、一度入力すると、個人の生活記録と業務日誌の2ヶ所に転記されるように工夫されている。日々の生活記録を記載する際には、記録のタイトルをつけて内容が分かりやすいようにし、自立支援計画の実施状況や子どもの留意点を理解しやすいように配慮している。記載方法に関するマニュアル等はないが、指導課長や寮長から指導することで職員によって差異が出ないように努めている。
45 子どもに関する記録の管理体制が確立している。 a
【コメント】
 県の個人情報の取り扱い規定等に則して、職員以外がパソコンや子どもの情報に触れることができないように、鍵のかかる書庫や部屋等に保管するなどして適切に管理されている。

内容評価基準(41項目)A-1 子ども本位の養育・支援
(1) 子どもの尊重と最善の利益の考慮 第三者
評価結果
A1 社会的養護が子どもの最善の利益を目指して行われることを職員が共通して理解し、日々の養育・支援において実践している。 b
【コメント】
 児童の支援について職員間で協議する機会として、日々の朝会やミーティング、指導課会議(児童の支援全般、自立支援について協議する場)、棟会議(男女棟児童への支援、棟運営などについて協議する場)がある。それらの場において職員が寮長、指導課長からのスーパービジョンを受けることもでき、最善の利益を目指して支援が行われるよう施設全体で取り組んでいる。寮長は子どもの療育について、より日常的に職員間での主体的・積極的な闊達な議論ができるような職員集団となるように期待しており、今後も指導を続けていく予定である。
A2 子どもの発達段階に応じて、子ども自身の出生や生い立ち、家族の状況について、子どもに適切に知らせている。 a
【コメント】
 施設では、子どもの自立や自己形成の視点から、自らの生い立ちを知ることは重要なことと捉え支援している。施設が子どもの生い立ちや家族等の状況について知らせる必要があると判断した場合は、児童相談所と十分に協議して、子どもの心理状況に合わせて丁寧に対応している。また、子どもと向き合う中で、子どもが自身の生い立ちを知ることが必要と感じるタイミングを見逃さないよう配慮している。伝えた後は子どもの言動を注視し、全職員が共通の理解と対応が出来るよう、朝会などで情報の共有を十分に図って支援している。
(2) 権利についての説明
A3 子どもに対し、権利について正しく理解できるよう、わかりやすく説明している。 b
【コメント】
 施設では、子どもの安全が守られていることは基本的な権利擁護の基盤であるとの考えから、2ヶ月に1度実施している「安全委員会」の活動の一環として、暴力等の権利侵害の有無についての子どもへの聞き取り調査を行っている。この取り組みによって、子どもが自らの権利について気付く良い機会ともなっている。また、平成29年度は「CAP(Child Assault Prevention)プログラム」(子どもへの暴力防止のための予防教育プログラム)の職員ワークショップを受けたりと、職員が子どもの権利擁護について高い意識で取り組んでいる。今後は暴力やハラスメントだけでなく、子どもが持ちうる権利について子ども自身にも分かりやすく説明等する機会の検討が期待される。
(3) 他者の尊重
A4 様々な生活体験や多くの人たちとのふれあいを通して、他者への心づかいや他者の立場に配慮する心が育まれるよう支援している。 b
【コメント】
 寮長は、子ども自身が大切にされているという経験を多く積み重ねることで、他者の尊重や権利の理解につなげてほしいとの考えから、子どもと担当職員と2人での外食会や旅行等の活動機会を持つことに取り組んでいる。特に、一泊旅行では行先選定から子どもと一緒に行い、子どもが主体的に取り組み、担当職員との信頼関係を深めることで、他者への思いやりの心を醸成できるように努めている。また、人付き合いが苦手な子どもには「セカンドステップ(人との付き合い方(相互理解、問題の解決)や怒りをどうコントロールするかを学ぶプログラム)」を実施して他者への心づかいや他者の立場に配慮する心が育まれるよう支援している。
(4) 被措置児童等虐待対応
A5 いかなる場合においても体罰や子どもの人格を辱めるような行為を行わないよう徹底している。 a
【コメント】
 『平成29年度運営計画』の重点事項に「安全で安心できる生活」を掲げ、子どもの生活の安全や安心を確保することを目的に「安全委員会」の取り組みを積極的に実施している。安全委員会で定期的に子どもの意向調査を実施することで、職員間でも子どもの権利を守るとの意識が高くなり、その上での支援が行われている。しかし、寮長は、施設の体制や職員の支援技術等について十分ではなく、工夫や改善が引き続き必要であると感じている。
A6 子どもに対する不適切なかかわりの防止と早期発見に取り組んでいる。 b
【コメント】
 施設では、2ヶ月に1回行われる「安全委員会」の活動の一環として聞き取り調査を行い職員が子どもの意見を聞き取ったり、日常の様子観察から、職員による子どもへの不適切なかかわりの予防と早期発見に努めている。また、安全委員会では、子どもの課題等について外部の専門家や学校関係者と協同で対応策や方針等を状況を検討し、子どもを支援している。今後は子どもが自分自身を守るための知識や具体的な方法について学ぶ機会の検討が期待される。
A7 被措置児童等虐待の届出・通告に対する対応を整備し、迅速かつ誠実に対応している。 a
【コメント】
 施設として、「新潟県被措置児童等虐待対応要領」(平成22年4月1日施行)に基づき被措置児童等虐待対応体制が整えられている。「安全委員会」の取り組みの中で子どもの権利擁護について繰り返し職員の理解を深める取り組みも行われている。子どもの言動を注視するとともに、子どもに対して届出・通告制度についても説明している。
(5) 思想や信教の自由の保障
A8 子どもや保護者等の思想や信教の自由を保障している。 a
【コメント】
 施設では、思想や信教については自由を保障した支援を行っている。
(6) こどもの意向や主体性への配慮
A9 子どものそれまでの生活とのつながりを重視し、そこから分離されることに伴う不安を理解し受けとめ、不安の解消を図っている。 b
【コメント】
 子どもの入所時には、担当職員と子どもとが2人でこれからの生活に必要な物品の買い出しに行ったり、就学に向けての準備を行うことで、子どもの不安を軽減するように努めている。また、入所後1ヶ月程度は、毎週、子どもが施設の生活に不都合を感じていないか聞き取りを実施し、子どもの様子を朝会等で職員に周知して共有している。入所時の受け入れ体制、手順は職員間で周知されているが、入所の手順を定期的に見直しするまでは至っていない。入所前後は子どもと保護者にとって生活の変化や分離に伴い特に大きな不安を生じている時期であることを考慮し、現在の体制や手順の実施状況や、子ども・保護者にとっての有効性などを定期的に確認し、支援の向上を図っていくことを期待したい。
A10 職員と子どもが共生の意識を持ち、子どもの意向を尊重しながら生活全般について共に考え、生活改善に向けて積極的に取り組んでいる。 b
【コメント】
 女子棟では小学生、中高生に分かれて「棟集会」が開催され、職員からの連絡事項や子どもから生活について話し合いが定期的に行われている。また、毎年1回実施されている旅行についても、行き先などを棟集会で子どもたちと職員が話し合い企画されている。今後は、男子棟においても、同様の取り組みが実施できるような検討と働きかけが期待される。
(7) 主体性、自律性を尊重した日常生活
A11 日々の暮らしや、余暇の過ごし方など健全な生活のあり方について、子ども自身が主体的に考え生活できるよう支援している。 b
【コメント】
 子どもの希望を聞き、地域の吹奏楽クラブ、「葛塚まつり」のこども神輿などに参加できるよう職員の付き添い体制等を整え支援している。また、進学に向けて塾に通ったり、部活動の参加などで学校生活を充実させることができるような働きかけをしている。しかし、子どもが余暇の過ごし方等を選択できるよう選択肢を提供する支援までには至っていない。地域の社会資源等を再確認したり、施設の取り組み等を引き続き把握し、子ども一人ひとりが主体的に考え選択できる生活支援への検討・工夫が期待される。
A12 子どもの発達段階に応じて、金銭の管理や使い方など経済観念が身につくよう支援している。 b
【コメント】
 施設の金銭管理のトレーニングとして、小学生に対しては職員が付き添い買い物を行い、帰寮後小遣帳の記入を支援している。中学生は、子どもが担当職員に申し出て子どもだけで買い物し帰寮後に小遣帳を記入をすることで経済観念が身につくように支援している。しかし、子どもの将来の自立生活に向けた支援プログラムまでは作成されていない。今後、退所後の子どもの自立生活に向けてのプログラムの検討が期待される。
(8) 継続性とアフターケア
A13 家庭復帰にあたって、子どもが家庭で安定した生活が送ることができるよう復帰後の支援を行っている。 b
【コメント】
 施設の子どもの家庭復帰支援は、退所後の生活について子どもと保護者、児童相談所と十分に相談して実施されている。家庭復帰後は、担当職員が電話をしたり、児童相談所職員と共に家庭訪問を行うなどして、退所後の相談支援を行なっている。家庭復帰前後の施設の支援等については職員間で周知されているが、担当職員が主に対応するため、交代勤務や職員異動に伴う、支援の継続性の担保が課題となっている。専任のファミリーソーシャルワーカーの配置等、担当職員だけでなく組織的に取り組みができるような体制の構築が期待される。
A14 できる限り公平な社会へのスタートが切れるように、措置継続や措置延長を積極的に利用して継続して支援している。 b
【コメント】
 高校を中退して就職・退所となる子どもに対しては、職場の確保や生活基盤の準備が整うまでは、措置継続を基本として対応している。子どもの状況等により、今後も多様な措置継続や措置延長の配慮が期待される。
A15 子どもが安定した社会生活を送ることができるようリービングケアと退所後の支援に積極的に取り組んでいる。 b
【コメント】
 担当職員は子どもの退所に向けて、掃除の仕方や裁縫、アイロンのかけ方など必要に応じて指導している。食事作りについてはボランティア室を利用した調理実習を時折、実施している。リービングケア(就職などによる社会的自立を前にした子どもへの自立前の支援)を行う部屋がないこともあり積極的に行えない現状であるが、子どもの自立生活や家庭復帰を見据えて、何が子どもに必要か考え、日常の生活の中で生活スキルを高めるための支援・取り組みの検討が期待される。
A-2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の基本 第三者
評価結果
A16 子どもを理解し、子どもが表出する感情や言動をしっかり受け止めている。 b
【コメント】
 「安全委員会」の活動として定期的に子どもへの聞き取り調査を行ったり、日々の支援の中で子どもの意見を聞く機会を持つように努めている。担当職員が中心となって子どもの支援を行う中で子どもの思いや感情の変化を捉えられるように努めている。また、子どもの希望や感情について朝会等で職員間で共有し、必要があれば協議をすることで、チームとして関われるよう努めている。
A17 基本的欲求の充足が、子どもと共に日常生活を構築することを通してなされるよう養育・支援している。 b
【コメント】
 職員は、「基本的欲求の充足を通して子どもの問題行動等に目が行きがちだが、その行動の背景を探り、良いところを褒めたり、認めたりすることが大切である」と考え支援にあたっている。就学前の子ども、低学年の子どもは寝付くまで添い寝をするなど安心して睡眠がとれるよう配慮しているものの、大舎制であり、20時15分~9時30分の間は職員が手薄(各棟1名)になることで十分に子どもが望むように対応できていないことを課題と感じている。
A18 子どもの力を信じて見守るという姿勢を大切にし、子どもが自ら判断し行動することを保障している。 b
【コメント】
 施設では、子ども自身の成長を職員が認め自己肯定感を高めると同時に、成長へ向けて子どもを信じることを大切にしている。今回の第三者評価の訪問調査日は小学校でマラソン大会が行われており、夕食時、応援に行った職員から、成績ではなく子どもの頑張りを称え、認める言葉掛けが行われていた。
A19 発達段階に応じた学びや遊びの場を保障している。 b
【コメント】
 就学前の子どもは近隣の認定こども園に就園しており、余暇活動を支援するため週に1回保育士が勤務している。子どもの希望により購入した絵本や雑誌を宿直室の本棚に設置し、自由に読むことができるようになっている。プレイルームには幼児や小学生等が遊べる玩具が設置してあり、本棚には図鑑から漫画などの多様な本が設置してある。しかし、安全管理上の問題から子どもたちが時間を問わずプレイルームを自由に利用できない状況もあり、それぞれの年齢・発達に応じた遊びの環境の検討が望まれる。
A20 秩序ある生活を通して、基本的生活習慣を確立するとともに、社会常識及び社会規範、様々な生活技術が習得できるよう養育・支援している。 b
【コメント】
 職員は自らの立ち振る舞いが子どもの規範になるように努めている。今回の第三者評価の訪問調査時にも、職員自身が明るく挨拶をしたり、子どもには優しく挨拶を促す様子がうかがえた。
 施設内外での社会生活やルールについても折を見て子どもに教えているが、施設生活について子どもに説明する資料等を整備するまでには至っていない、施設内の秩序やルールは口頭で説明されているが、書面等にして子どもと職員で共有して、子どもが習得しやすく工夫することが期待される。
(2) 食生活
A21 食事は、団らんの場でもあり、おいしく楽しみながら食事ができるよう工夫している。 a
【コメント】
 食堂で、子どもと職員とが年代別に分かれて4人程度でテーブルを囲んで食事をしている。食堂は厨房と隣接しており、調理員と子どものコミュニケーションが図られ身近な存在となっている。また、ご飯とみそ汁は温かい物が食べれるよう直前に盛り付けがされ、食器は年齢や発達段階に応じたサイズやデザインのものを使用している。今回の第三者評価の訪問調査時も、子どもと職員が食卓を囲み和やかな雰囲気でその日にあった出来事を話しながら食事をしていた。アルバイトで遅くなる場合など子どもの事情に応じて食事の時間が異なる場合は、電子レンジを使用するなど、可能な限り適温で提供できるよう配慮している。
A22 子どもの嗜好や健康状態に配慮した食事を提供している。 a
【コメント】
 施設の献立は、勤務している管理栄養士が、子どもの成長に必要な栄養や残食状況、子どもの希望を聞き取り作成している。また、体調不良による静養時の食事やアレルギーに関する食事、どうしても食べられない物に関しては代替品を提供するなど、子どもの体調や嗜好に応じた配慮がなされている。誕生会や誕生月には女子棟で調理実習を取り入れたり、子どもが楽しめる行事食等の提供にも管理栄養士や調理員、支援員等が協力して取り組んでいる。
A23 子どもの発達段階に応じて食習慣を身につけることができるよう食育を推進している。 b
【コメント】
 食事の主食と汁物の盛り付けや食器の配膳、テーブル拭きは、子どもと職員で行っている。職員も一緒にテーブルを囲んで食事をしながら、箸の持ち方や簡単なテーブルマナー等について、子どもに教えている。しかし、厨房には衛生面から子どもが立ち入ることが出来ず、調理について子どもが体験できる機会は少ない。退所後の子どもの自立生活に備えて、定期的な栄養指導や食事の買い物や準備、後片付け等の食習慣が習得できるような支援が期待される。
(3) 衣生活
A24 衣類が十分に確保され、子どもが衣習慣を習得し、衣服を通じて適切に自己表現できるように支援している。 b
【コメント】
 施設では子ども一人当たり、被服費として年間2万円程度を確保している。高校生は自分で買い物に行って購入し、小学生、中学生は職員と一緒に買い物に行き、好みに合わせた衣類を購入している。また、中学生、高校生になると制服等のアイロンがけを自分で行うことができるように職員が指導している。小学校の高学年からは、洗濯を自分で行えるように洗濯機の使い方や衣類の干し方、たたみ方を教えている。
(4) 住生活
A25 居室等施設全体がきれいに整美されている。 b
【コメント】
 施設の『平成29年度運営計画』の重点目標として、「寮内外の整備を児童・職員共に行い、潤いのある住みよい環境づくりを目指す」と掲げ、それに基づき居室の畳の入れ替えや壁の塗装等が行われている。施設等の清掃は、平日は職員が行い、学校が休みの日は子どもと職員が一緒に行っている。施設外の環境については、草刈りボランティアに除草を依頼したり、玄関前の花壇の整備をしている。しかし、昭和55年建設の建物のため居室や共有スペース等は老朽化した箇所が多く、子どもの生活の場として温かみがある家庭的な環境として十分とは言えない。今後もできる範囲で、修繕や配置する家具等を工夫するなどして、施設全体の環境整備が期待される。
A26 子ども一人ひとりの居場所が確保され、安全、安心を感じる場所となるようにしている。 b
【コメント】
 子どもの居室は4人部屋と2人部屋があり、中学生以上についてはなるべく2人部屋に入所できるように配慮している。女子棟については個室が確保できないときにはカーテンで仕切ることができるようになっているが、男子棟については安全の為、カーテンを設置しておらず、個人の空間を確保することが難しい。施設設備の構造から限界もあるが、子ども一人ひとりがプライベートスペースをより認識できるような工夫が期待される。
(5) 健康と安全
A27 発達段階に応じ、身体の健康(清潔、病気、事故等)について自己管理ができるよう支援している。 a
【コメント】
 単年度の運営計画の重点事項として「健康に対する認識を深め、より健康な生活がおくれるように、また、清潔に対する意識を深る」と掲げ、子どもの体調や衛生管理のために必要な年間計画が策定されている。年間計画の内容は清潔、安全、運動、病気の予防など多岐にわたり、3月に評価・見直しが行われている。また、施設内の危険個所については改修や注意喚起の貼り紙をしたり、交通事故防止のために登校時、慣れない子どもには職員が付き添い支援するなど、子どもの安全確保に努めている。 
A28 医療機関と連携して一人ひとりの子どもに対する心身の健康を管理するとともに、必要がある場合は適切に対応している。 b
【コメント】
 嘱託医師を定め、毎月1回嘱託医による健康相談・健康診断を行っている。持病がありかかりつけの医療機関がある子どもに対しては、定期受診の支援や医師等との連携を図っている。また、子どもの健康状態を注意深く観察し、発熱等により通院が必要な場合は、近隣の医療機関に早期に受診している。インフルエンザ予防接種は全員に実施し、その他必要な予防接種は記録に残し計画的に接種して子どもの健康管理を行っている。職員間でケースに応じて子どもの疾病等について知識を深めているが、まだ不十分と感じている職員もいることから、さらなる取り組みが求められる。
(6) 性に関する教育
A29 子どもの年齢・発達段階に応じて、他者の性を尊重する心を育てるよう、性についての正しい知識を得る機会を設けている。 b
【コメント】
 子どもへの性教育については、子どもの年齢や必要に応じて、担当職員等から個別に面談したり日常会話の中で異性との付き合い方などを話す機会を設けている。しかし、施設でプログラムを組んで組織的に取り組むまでには至っていない。寮長は性教育について課題と捉え、対策を現在検討中である。
(7) 自己領域の確保
A30 でき得る限り他児との共有の物をなくし、個人所有とするようにしている。 b
【コメント】
 子ども一人ひとりに洗面所の棚、居室の勉強机など個人の収納スペースを用意し、入所当初から自己の所有物を区別できるようにしている。小学生はシャンプー、歯磨き粉は共用であるが、中学生以上の子どもは子どもの要望に応じて購入している。しかし、集団での生活の中で紛失や貸し借りなどのトラブルもあり、その都度、職員が説明するなどの支援を行っている。
A31 成長の記録(アルバム等)が整理され、成長の過程を振り返ることができるようにしている。 b
【コメント】
 職員は、数年前と現在とを比較して子ども自身の成長について日常的な会話の中で話をしたり、旅行や行事の写真を手渡し楽しかった思い出を振り返ったりすることはあるが、施設として成長の記録(アルバム等)を用意・活用して振り返るような機会は設けてない。子どもと職員が共に、若草寮での成長の記録を整理し、成長の過程を振り返る機会が増えるような今後の取り組みに期待したい。
(8) 行動上の問題及び問題状況への対応
A32 子どもの暴力・不適応行動などの行動上の問題に対して、適切に対応している。 b
【コメント】
 施設の運営方針の基本事項に「児童が安全で安心できる生活の保障に努めるとともに、児童の権利擁護の視点に立った支援を行います」と掲げ、その実現に向けて、暴力問題に対応する「安全委員会」方式を採用している。「安全委員会」は、子どもからの聞き取り調査を行ったり、関係機関や学識経験者等が課題を持つ子どもへの対応について検討協議する委員会であり、この取り組みも10年目を迎えシステムとして確立してきているが、子どもの行動上の問題に対応する中でまだ課題はあると寮長は認識している。また、今回の第三者評価における職員の自己評価からも、行動上の問題のある子どもへの対応に不安等を感じている職員がいることも読み取れることから、委員会や研修、職員協議等さらなる取り組みが期待される。
A33 施設内の子ども間の暴力、いじめ、差別などが生じないよう施設全体で取り組んでいる。 b
【コメント】
 「安全委員会」による聞き取り調査が月に1度、全ての子どもを対象に行われている。調査では、職員から子どもへの暴力や不適切な関わり、また、子ども間での暴力やいじめなどについて顕在的・潜在的なものがないか把握するように努めている。また、安全委員会の聞き取りに限らず、職員は日々の支援の中で子どもの変化に気を配り、問題の早期発見に心がけている。しかし、寮長は、子ども同士の人間関係や大舎制の施設構造から、問題を発見しきれない場合もあることを課題と認識している。今後も子どもの安心と安全を保障するために、引き続き施設の構造、職員配置や勤務形態等の工夫や検討が求められる。
A34 虐待を受けた子ども等、保護者等からの強引な引取りの可能性がある場合、子どもの安全が確保されるよう努めている。 a
【コメント】
 保護者等からの強引な引き取りの可能性が考えられるケースは、職員間で対応方法等を周知・共有して有事に備えている。施設の玄関ホール(3ヶ所)には、不審者の侵入に対しては警察に通報する旨のお知らせボードが設置されている。また、学校、こども園、警察とも日頃から密に連携しており、緊急時に対応できるような体制を整えている。
(9) 心理的ケア
A35 心理的ケアが必要な子どもに対して心理的な支援を行っている。 b
【コメント】
 心理担当職員は、今年度14名の子どもの心理的支援を行っている。心理療法室はないが、医務室やボランティア室などを使用して個別面接を行い、その内容を支援記録に記載して他職員と情報共有している。平成27年度より「セカンドステップ(人との付き合い方(相互理解、問題の解決)や怒りをどうコントロールするかを学ぶプログラム)コース1」(4歳~8歳対象)のプログラムを活用・実施し、今年度はプログラム実施3年目であり、子ども自身が怒りをコントロールしたり、気持ちを言葉で伝える姿が見られ効果が確認されてきている。しかし、心理支援プログラムで把握された子どもの課題等に対する支援場面での対応等について、職員間で検討・協議するまでには至っていない。今後は心理ケアと生活支援場面との、連携強化が期待される。
(10) 学習・進学支援、進路支援等
A36 学習環境の整備を行い、学力等に応じた学習支援を行っている。 b
【コメント】
 施設の構造上、専用の学習スペースの確保が難しいが、各棟の静養室、医務室等を活用するなど工夫している。職員は子どもにも見えるように、ホワイトボードに小学生の宿題内容やめあてを記載して、宿題や忘れ物がないか子どもと一緒に日々確認している。高校生に対しては進路選択のために寮長面接を実施して、進学や就職への意欲が高まるように努めている。しかし、施設では学習する場所の確保や、学習支援が課題であると感じており、今後も子どもと職員とで協議して学習環境の改善や学力の向上に向けた学習支援に取り組むことが期待される。
A37 「最善の利益」にかなった進路の自己決定ができるよう支援している。 b
【コメント】
 子どもの進路決定に際しては、子どもとの話し合いの中で自己決定に資する情報提供を行っている。子どもの意欲や努力を引き出すため、クラブ活動や私立高校進学等幅広く進路決定が可能な旨を子どもに伝えている。職員からは子どもの進学等についての社会資源や制度、奨学金等について学ぶ機会が必要との意見もあり、子どもの可能性を広げるための情報収集と職員間での周知が期待される。
A38 職場実習や職場体験、アルバイト等の機会を通して、社会経験の拡大に取り組んでいる。 b
【コメント】
 施設では、社会経験としてアルバイトは大切な機会であると捉え推奨しており、生活ルールを守り学業を優先に実施することなどの条件付きで許可している。職場体験については、施設として特に取り組んではいない。施設で生活している子どもたちは、多様な仕事をしている大人との接点が少なく、働くことや職業についての認識が持ちにくいことも推測されるため、将来の自立に向けて働くことや就業の認識を深めるためのより積極的な取り組みが期待される。
(11) 施設と家族との信頼関係づくり
A39 施設は家族との信頼関係づくりに取り組み、家族からの相談に応じる体制を確立している。 b
【コメント】
 家庭支援相談員は兼務での配置となっており、ファミリーソーシャルワークは担当職員が中心に行っているが、変則勤務の中で通常業務と合わせて実施しているため、十分に実践できていないと感じている職員が多い。親子の関係調整においては、専門的な見識や関係機関との連絡調整により支援方針を明確にし、専門的な支援が求められる。そのため、家庭支援相談員等の専任の職員を配置するなど、より組織的な家族支援が期待される。
(12) 親子関係の再構築支援
A40 親子関係の再構築等のために家族への支援に積極的に取り組んでいる。 b
【コメント】
 親子関係の再構築に向けての支援は、児童相談所と担当職員が主に連携して対応している。親子関係の再構築については計画的に実施できるケースと突発的に対応が必要となるケースがあり、かつ、専門的な知識や技術が求められることから、施設では、よりしっかりとした体制が必要と感じている。専任の家庭支援相談員等の人的体制と、家族支援室(親子生活訓練室)等の設置・整備についての検討が期待される。
(13) スーパービジョン体制
A41 スーパービジョンの体制を確立し、職員の専門性や施設の組織力の向上に取り組んでいる。 b
【コメント】
 職員へのスーパービジョンは寮長、指導課長が行っている。支援について職員が問題を抱え込まないよう、朝会や指導課会議(月1回開催)、棟会議(月1回)などの機会を通し助言を行っている。今後は職員相互で意見を出し合い、助言し合うピア・スーパービジョン推進の取り組みも期待される。
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