社会的養護施設第三者評価結果 検索

熊本天使園

第三者評価結果詳細
共通評価基準(45項目)Ⅰ 養育・支援の基本方針と組織 
1 理念・基本方針
(1) 理念、基本方針が確立・周知されている。 第三者
評価結果
1 理念、基本方針が明文化され周知が図られている。 a
【コメント】
 基本理念「キリストの教えに根ざして」、基本方針「一人ひとりを大切にする」を中心に、園の「援助指針」では「1.一人ひとりを大切にする。2.一人ひとりの自立を支援する。3.一人ひとりの家族とのかかわりを大切にする。4.一人ひとりは地域社会の中で育まれる。」という4つの考え方が明文化されており、「ホームページ」、「パンフレット」や法人が作成している冊子、『聖嬰会の心』などを通して周知が図られています。『聖嬰会の心』は、「創立者の精神を味わい深めることは、向かうべき使命の指標をしっかりと見極めるために不可欠です。この小冊子(『聖嬰会の心』)が、社会福祉法人『聖嬰会』の施設で働いてくださる方々にとって、大切な道しるべとなることを切に望んでいます。」という趣旨で作成され、基本理念、基本方針、園の援助指針について、丁寧に説明されています。職員への周知として、新任研修で「基本理念について」の講話や職員会議、毎朝の朝礼で部分ごとの読み合わせを実施し共通理解に努めています。子どもや保護者などへの周知については、入所の受け入れ時にパンフレットを用いて説明しています。
2 経営状況の把握
(1) 経営環境の変化等に適切に対応している。 第三者
評価結果
2 施設経営をとりまく環境と経営状況が的確に把握・分析されている。 a
【コメント】
 全国児童養護施設協議会や熊本県養護施設協議会など各種団体の研修会などに参加、国の「新しい社会的養育ビジョン」や令和2年3月に策定された「熊本県社会的養育推進計画」などに基づき、施設経営をとりまく環境と経営状況の把握・分析に努めています。その結果は、「運営の中・長期計画」の策定につながり、さらに、園内研修の2年目研修では、今後の社会的養護の在り方を研修内容にして取組まれ、また、法人の専任公認会計士の会計研修を受講するなど、課題の共有に努めています。
3 経営課題を明確にし、具体的な取組を進めている。 a
【コメント】
 「運営の中・長期計画」は、①家庭的養育の推進、②児童の権利擁護の推進、③施設の高機能化(高度な専門性)と人材育成、④家庭支援の充実と家庭復帰の促進、⑤自立支援の強化、⑥包括的里親支援の実践(フォスタリング機能)、⑦施設の機能強化・多機能化、の7つの柱で構成され、それに基づいて「(単年度の)事業計画」に具体的な課題や問題点、課題の解決・改善に向けた具体的な取組が示されています。経営課題と改善のための具体的な取組は、役員には「(単年度の)事業報告」及び「(単年度の)事業計画」により周知をしています。職員には、「(単年度の)事業計画」を周知し、年に2回事業計画に基づく職員の実施状況と反省を把握するため「事業計画反省」が実施されており、その結果を反映させて次年度の事業計画を策定しています。
3 事業計画の策定
(1) 中・長期的なビジョンと計画が明確にされている。 第三者
評価結果
4 中・長期的なビジョンを明確にした計画が策定されている。 b
【コメント】
 「運営の中・長期計画」は、①家庭的養育の推進、②児童の権利擁護の推進、③施設の高機能化(高度な専門性)と人材育成、④家庭支援の充実と家庭復帰の促進、⑤自立支援の強化、⑥包括的里親支援の実践(フォスタリング機能)、⑦施設の機能強化・多機能化、の7つの柱に沿って策定されています。
今後は、「中・長期の収支計画」の策定、「中・長期計画」についても計画期間、数値目標の明記などにより、実施状況の効果的な評価を行えるような計画内容の検討が期待されます。
5 中・長期計画を踏まえた単年度の計画が策定されている。 a
【コメント】
 「(単年度の)事業計画」に「運営の中・長期計画」の7項目を明記し、項目ごとに単年度の具体的な取組を記載しています。「(単年度の)事業計画」の実施状況の評価を行い「(単年度の)事業報告」に明記しています。
(2) 事業計画が適切に策定されている。
6 事業計画の策定と実施状況の把握や評価・見直しが組織的に行われ、職員が理解している。 a
【コメント】
 事業計画は職員会議で全職員に説明し周知と共通理解に努め、毎年度、「事業計画 中長期反省まとめ」を実施、事業計画の項目ごとに職員がどの程度までできているかの評価と反省を把握し運営管理委員会でその情報を踏まえて事業計画の内容の検討を行い、次年度の事業計画の策定につなげています。
7 事業計画は、子どもや保護者等に周知され、理解を促している。 b
【コメント】
 事業計画は、施設内に掲示しています。子どもたちには、夏休み・冬休みの前に事業計画の主な内容について説明を行っていることがうかがえました。ただし、事業計画の保護者への周知に関しては十分とは言えず、今後は、事業計画の主な内容を分かりやすく説明した配付資料の作成、何らかの機会をとらえた説明の実施、広報誌等による広報・周知の充実など、理解を促すための取組の工夫が期待されます。
4 養育・支援の質の向上への組織的・計画的な取組
(1) 質の向上に向けた取組が組織的・計画的に行われている。 第三者
評価結果
8 養育・支援の質の向上に向けた取組が組織的に行われ、機能している。 a
【コメント】
 養育・支援の質の向上に向けた組織的な取組として、職員会議、園内職員研究会、男子部・女子部会議のほか、運営管理委員会、苦情解決委員会、給食委員会、行事委員会、園内安全管理委員会、ハラスメント対応委員会、「生と性」育み委員会、携帯電話委員会等の各種委員会を設置しています。3年に1度の「福祉サービス第三者評価」の受審、毎年の自己評価、年に2回の全職員による自己評価の実施状況の確認と反省を行っています。
また、本園の重要な取組として、「コモンセンス・ペアレンティング(以下、「CSP」と表記)」に基づく児童援助、家庭支援の推進があげられます。ここで、CSPとは、アメリカで開発された「被虐待児の保護者支援」のペアレンティング・トレーニングのプログラムのことをいいます。暴力や暴言を使わずに子どもを育てる技術を親に伝えることで、虐待の予防や回復を目指すものです。CSPは、児童養護施設等の養育の現場でも、子ども自身が適切な「社会スキル」を多く身に付けることによる「予防的教育法」として活用されています。本園では、「職員の養育実践と専門性の向上」を目的に、職員がCSPの指導者資格を取得し、正規のCSPプログラムに基づき、養育・支援の質の向上に向けた取組を計画的に実施しています。
9 評価結果にもとづき組織として取り組むべき課題を明確にし、計画的な改善策を実施している。 a
【コメント】
 定期的な評価として、3年に1度の「福祉サービス第三者評価」の受審、毎年の第三者評価の自己評価の実施、毎年2回の事業計画中期長期反省まとめ、園内職員研究会(振り返り)を行っています。それらの結果に基づいて、運営管理委員会や職員会議で改善に組織的に取組んでいることがうかがえました。
Ⅱ 施設の運営管理
1 施設長の責任とリーダーシップ
(1) 施設長の責任が明確にされている。 第三者
評価結果
10 施設長は、自らの役割と責任を職員に対して表明し理解を図っている。 a
【コメント】
 施設長は施設の経営・管理に関する自らの方針と取組について、朝礼や毎月の会議で周知に取組んでいます。職務分掌表に施設長の職務と係分担を明記しています。施設長は新任研修の際に、社会福祉法人「聖嬰会」の基本理念についての講話を行い、こころのケア講座の講師を務めるなど、積極的にその役割を果たしています。
11 遵守すべき法令等を正しく理解するための取組を行っている。 a
【コメント】
 施設長は、社会的養護を担う児童福祉施設長研修会や労務管理研修会、法人の公認会計士が行う会計研修など、遵守すべき法令を十分に理解するために取組まれています。職員会議の場などを活用して、職員に対して遵守すべき法令などを周知し、正しく理解するための取組に努めています。
(2) 施設長のリーダーシップが発揮されている。
12 養育・支援の質の向上に意欲をもちその取組に指導力を発揮している。 a
【コメント】
 施設長は、養育・支援の質の向上のため、新任研修で「聖嬰会の基本理念について」の講師を務め、職員研修では「こころのケア講座」の講師などを務めています。また、本園の重要な取組である、CSPに基づく児童援助、家庭支援の推進のため、職員に指導者資格取得と更新を計画的に実施、CSPプログラムの実施による「職員の養育実践と専門性の向上」に指導力を発揮しています。
13 経営の改善や業務の実効性を高める取組に指導力を発揮している。 a
【コメント】
 経営の改善や業務の実効性の向上に向けて、共通の意識を形成するための取組として、運営管理委員会を設置し、検討と意思決定を行っています。また、その結果を職員会議などで周知し、共通理解の形成に努めています。
2 福祉人材の確保・育成
(1) 福祉人材の確保・育成計画、人事管理の体制が整備されている。 第三者
評価結果
14 必要な福祉人材の確保・定着等に関する具体的な計画が確立し、取組が実施されている。 b
【コメント】
 「(単年度の)事業報告」の中の、「施設の高機能化(高度な専門性)と人材育成」の項目で、「園として園内外の研修の充実を図り、人材育成を強化することで、離職者の減、職員のスキル向上を図り、人材の確保を目指しています。」と明記して取組まれています。計画に基づいた職員の育成として、新任研修、2年目職員研修、心のケア講座、CSP「幼児版」・「学齢期版」研修があります。法人として効果的な福祉人材確保(採用活動等)については、ハローワーク、福祉人材フェアへの参加、オンライン就職説明会など取組まれています。福祉人材の確保が難しい中、必要な人材の確保と定着の取組の工夫が期待されます。
15 総合的な人事管理が行われている。 b
【コメント】
 人事基準は就業規則に明記し、入職時に周知しています。年に2回施設長と個人面談を実施しています。また、一般社団法人日本ボーイズタウンプログラム振興機構が管理する「 ボーイズタウン・プログラム」に基づき、「期待する職員像」が提示されています。職員自らが将来の姿を描くことができるような取組として、人材育成のレベル(Lv)があり、児童養護施設職員の育成レベルとしては、職員経験年数と業務実績などにより、Lv1~6の階層に分け、「Lv1入職前職員」、「Lv2新任職員」、「Lv3中堅職員」、「Lv4上級職員」、「Lv5基幹的職員」、「Lv6施設長」を設定、その各Lvで期待される職員の役割や求められる技術・技法を明文化しています。
 今後は、施設や法人の理念・基本方針に基づく、「期待する職員像」の明文化と職員への周知の取組が期待されます。
(2) 職員の就業状況に配慮がなされている。
16 職員の就業状況や意向を把握し、働きやすい職場づくりに取り組んでいる。 a
【コメント】
 有給休暇の取得状況や時間外労働時間のデータなどは、毎月勤務管理表を提出し、把握しています。リフレッシュ休暇として5日間の連続休暇を推進するほか、定期的な職員との個別面談の機会として、職員が課題を一人で抱え込まないことや目標をもって業務に取り組むよう毎週フィードバック担当者との懇談、年2回の施設長による職員面談を実施しています。毎月、施設の運営に関する協議を運営管理委員会で行っています。特に、新任研修では研修テーマを「振り返り①」とし、「仕事上の悩みなどを個別に聞き取る。新任職員のいいところ探し」を実施して、新任職員の意向や課題の把握に努めています。
(3) 職員の質の向上に向けた体制が確立されている。
17 職員一人ひとりの育成に向けた取組を行っている。 a
【コメント】
 毎年職員が一人ひとり自分の個別の研修テーマを設定し、年に2回の施設長による個別面談の時に進捗状況の確認、個別の研修テーマの振り返りのレポートを作成して目標達成度の確認をしています。
18 職員の教育・研修に関する基本方針や計画が策定され、教育・研修が実施されている。 a
【コメント】
 人材育成について「運営の中長期計画」として、施設の高機能化(高度な専門性)と人材育成、自立支援の強化を明記し、「(単年度の)事業計画」を策定して取組まれています。さらに、園内職員研究会を毎月実施、年度末に園内職員研究会(振り返り)を実施、職員の今年度の職員研究会についての意見、次年度の要望を把握して、次年度の園内職員研究会の改善に反映させています。
19 職員一人ひとりの教育・研修等の機会が確保されている。 a
【コメント】
 年度初め、職員が一人ひとり自己研修テーマを決めて、専門性の向上に取組んでいます。新任研修、2年目職員研修、こころのケア講座、園内研修を実施し、資格の取得、職員の職務や必要とする知識・技術水準に応じた教育・研修を実施しています。外部研修に関する情報提供を適切に行い、一般社団法人日本ボーイズタウンプログラム振興機構が管理する「ボーイズタウン・コモンセンスペアレンティングに関連する指導者育成及び認定事業」に基づき、CSP「幼児版」・「学齢期版」研修への参加を奨励し、CSPプログラムを用いた養育体制を構築するため、職員の資格取得を積極的に推進しています。
(4) 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成が適切に行われている。
20 実習生等の養育・支援に関わる専門職の研修・育成について体制を整備し、積極的な取組をしている。 a
【コメント】
 実習担当者を設置、実習生の受け入れマニュアルを策定、マニュアルには専門職の研修・育成に関する意義について「入居児童にふれあい、施設に入所している児童についての理解を深めるとともに、保育士または社会人となる人材を育成するための実践の場となる。」と明記しています。オリエンテーションでは、「実習生の心得」に基づいて実習中に特に注意・配慮すべきことが説明され、「子どもにとって、実習生の及ぼす影響は極めて大きいものがあります。そこで保育者は、常に人を活かすという仕事という固い信念と周到な心の準備をもって臨まなければなりません。」と、基本姿勢と実習生の心得を明記しています。実習生などの支援に関わる専門職員の研修・育成については、CSP講座、園の各専門職員による講義を実施して、その充実を図っています。
3 運営の透明性の確保
(1) 運営の透明性を確保するための取組が行われている。 第三者
評価結果
21 運営の透明性を確保するための情報公開が行われている。 a
【コメント】
 ホームページに基本理念、基本方針、援助指針、財産目録、事業活動計算書、貸借対照表、第三者評価の受審結果、福祉サービス、職員の声、園の取組を公開しています。地域などに向けて、施設で行っている福祉サービス活動などを情報発信する取組としては、施設のホームページにショートステイ・トワイライトステイ・レスパイトケアなどについて掲載し、在宅で育児や養護等を担っている人に対する支援サービスを紹介しています。また、施設のホームページに「職員の声」として、仕事内容・やりがい・大切にしていることについて記載し、「園の取組」として、職員の資質向上のための研修・園の支援のベースとなるCSPプログラムや自立支援・食育・関係機関との連携・地域貢献について明記しています。
22 公正かつ透明性の高い適正な経営・運営のための取組が行われている。 a
【コメント】
 法人専任の公認会計士の会計研修を受講し、「経理規定」に基づいて経営・運営を行い、法人内部監査を実施するなど、適正な経営・運営のための仕組みを構築しています。また、施設の運営に関する協議のために、運営管理委員会を設置しています。
4 地域との交流、地域貢献
(1) 地域との関係が適切に確保されている。 第三者
評価結果
23 子どもと地域との交流を広げるための取組を行っている。 a
【コメント】
 地域との関わり方については、「聖嬰会の心」の援助指針に、「4.一人ひとりは地域社会の中で育まれる。」という柱を立て、「地域社会と協働して子どもたちを支えます。」と、その基本的な考え方を明文化しています。コロナ禍前までは、施設主催で、どんどや、夜市などの行事を開催し、地域との交流を進めていました。現在は、市の社会福祉協議会の評議員、市の子育て支援会議の委員参加、CSPプログラムの外部講座の開催など、感染予防に留意しながら交流の継続に配慮した取組を行っています。
24 ボランティア等の受入れに対する基本姿勢を明確にし体制を確立している。 a
【コメント】
 ボランティア担当職員を設置し、ボランティア受け入れマニュアルを整備しています。ボランティアに対する同意書やオリエンテーションを実施し、ボランティアに対して子どもとの交流を図る観点での支援に取組まれています。コロナ禍前までは、学習支援、理髪、ピアノ演奏などのボランティアを受け入れていました。
(2) 関係機関との連携が確保されている。
25 施設として必要な社会資源を明確にし、関係機関等との連携が適切に行われている。 a
【コメント】
 園で作成した「暮らしのマニュアル」で関係機関との連携について明記し、施設として必要な社会資源について、職員間での情報の共有化に努めています。具体的には、児童相談所、学校、病院、アフターケア機関などと定期的に連絡会を開催するなど、情報の共有に努めています。
(3) 地域の福祉向上のための取組を行っている。
26 地域の福祉ニーズ等を把握するための取組が行われている。 a
【コメント】
 市役所の子育て支援に関わる各種委員会に出席し、市の社会福祉協議会と評議員プラットホーム会議や地域の各種会合などに参加するなど、地域の福祉ニーズ等の把握に努めています。ショートステイやトワイライト事業を実施し、地域の子育て支援を行っています。
27 地域の福祉ニーズ等にもとづく公益的な事業・活動が行われている。 a
【コメント】
 地域の子育て支援ニーズに基づいて、子育て講座や、その後のフォローアップ研修などを行っています。「子ども110番」受託等、公益的な活動に努め、コロナ禍前までは、園内の交流錬、グラウンドの貸し出し、幼稚園などへの「CSP講座」の出前授業などを行っていました。
Ⅲ 適切な養育・支援の実施
1 子ども本位の養育・支援
(1) 子どもを尊重する姿勢が明示されている。 第三者
評価結果
28 子どもを尊重した養育・支援の実施について共通の理解をもつための取組を行っている。 a
【コメント】
 基本理念の「キリストの教えに根ざして」には、「本法人は援助を必要としている人々の中に幼子イエスを見、『ありのままの一人ひとりを受け入れ、その存在を尊び、愛する心』をすべての援助の原点とする。」という社会的使命を明記して取組んでいます。「(単年度の)事業計画」では、「児童の権利擁護の推進」の項目で、児童の権利についての学習を職員会議の際に取組むと明記、「子どもの権利ノート」に基づき、園内研修、新任研修、2年目研修で子どもの人権や権利擁護、様々なハラスメントについて共通の理解を持つように努めています。
29 子どものプライバシー保護に配慮した養育・支援が行われている。 a
【コメント】
 職員は園内研修などで、子どもの人権についての理解の周知に努め、子どもたちにはホーム会で「子どもの権利ノート」を使った学習を行っています。新任研修においては、児童の年齢に合わせた関わり方として、様々な場面を想定して、プライベートな空間、子どものプライバシーの尊重について理解を深めるように取組んでいます。「援助指針」の生活住環境の項目には、「プライバシーの確保ができるよう、一人になれる場所を用意する。」、「自分の場所であることの自覚ができるように工夫する。」など、具体的な援助内容を明記して、取組んでいます。
(2) 養育・支援の実施に関する説明と同意(自己決定)が適切に行われている。
30 子どもや保護者等に対して養育・支援の利用に必要な情報を積極的に提供している。 b
【コメント】
 児童相談所に園内の写真を提供し、入所する子どもへの説明に利用してもらっています。理念や基本方針、施設の内容や施設の特性などを紹介した資料として、パンフレットやホームページを作成しています。
 今後はホームページのブログなどを活用して、プライバシーの保護の原則は遵守しつつ、子どもの視点に立って、例えば園の生活の様子など、より一層積極的に情報を提供することが期待されます。
31 養育・支援の開始・過程において子どもや保護者等にわかりやすく説明している。 a
【コメント】
 園で作成した「入所受け入れのガイドライン」に基づいて、入所当日、施設の概要のほか、「CSPというプログラムを用いて『褒めて育てる』ことに取組んでいること」、「子どもたちに将来社会で成功してもらうために『社会スキル』を教えていること」などを説明しています。また、「援助指針」に基づいて、子ども、親や家族に施設生活への安心感を持ってもらうために、入所当日の支援、入所後1か月ごろまでの具体的な援助内容を説明して支援に取組んでいます。入所後は、必要に応じて個別の説明やホーム会で説明をして周知に努めています。
32 養育・支援の内容や措置変更、地域・家庭への移行等にあたり養育・支援の継続性に配慮した対応を行っている。 a
【コメント】
 「家庭復帰マニュアル」に基づいて、家庭復帰の調整や施設変更について対応しています。職業指導員を配置し、子どもたちの自立や退所後についても相談を受け、ともに解決を探るように取組んでいます。他施設の措置変更はその施設の求める情報を書面で提供し、家庭復帰の場合はアフターケア訪問を実施しています。施設を退所した際には、熊本県養護施設協議会と各施設の職業指導員のメンバーが編集した「卒園する君へ」を渡し、その中の相談窓口の項目には「心配事や解決できない問題が発生したらどうしますか? その1 生活した(卒園・卒苑)施設へ連絡をしましょう。」と明記し、県内の施設、困ったときに助けてくれる団体、その他公的機関・相談窓口の名前、電話番号などを明示して、退所後の支援についての配慮がなされています。
(3) 子どもの満足の向上に努めている。 第三者
評価結果
33 子どもの満足の向上を目的とする仕組みを整備し、取組を行っている。 a
【コメント】
 職員との関わりや生活の満足度などに関する調査として、年数回「てんしえんアンケート(利用者調査)」を定期的に実施し、ホーム会を毎月開催して子どもの意見や要望の把握に取組み、その結果は運営管理委員会や職員会議で検討し、改善に取り組んでいます。
(4) 子どもが意見等を述べやすい体制が確保されている。
34 苦情解決の仕組みが確立しており、周知・機能している。 a
【コメント】
 苦情解決の体制については、専任した第三者委員と子どもたちがお互いに顔みしりの関係となるよう、コロナ禍前にはお祝い会やクリスマス会に招待して子どもや職員との接点を設ける取組をしていました。年に2回、8月と3月に「苦情解決第三者委員会」を開催し、第三者の立場から子どもたちの苦情解決に対するアドバイスを得るなどの取組をしています。
35 子どもが相談や意見を述べやすい環境を整備し、子ども等に周知している。 a
【コメント】
 子どもたちが相談や意見を述べやすい環境づくりのために、9月と2月に「てんしえんアンケート(利用者調査)」を実施し、ホーム会を毎月開催しています。担当職員との「一日の振り返りの時間」を設けて、相談できる機会をつくっています。意見を述べる方法は、職員に直接意見を述べる方法、直接職員に話しづらいと思うときには「苦情要望シート」を利用する方法、第三者委員を活用する方法、ホーム会や児童会で意見を表明する方法などがあり、子どもたちに周知しています。第三者委員と子どもたちがお互いに顔を知った関係を構築するために、コロナ禍前にはお祝い会やクリスマス会に招待して子どもや職員との接点や交流の場を設けることを行っていました。「運営の中・長期計画」の中の「児童の権利擁護の推進」について、令和3年度の取組として「日常場面や児童会を通して子どもたちの意見や要望を傾聴し、解決策を共に考えていく。」と明記しています。
36 子どもからの相談や意見に対して、組織的かつ迅速に対応している。 b
【コメント】
 定期的な「利用者アンケート」の実施や子どもたちと担当職員による振り返りの時間を毎日設け、意見箱を設置し苦情要望書は相談者の希望を選べるように工夫しています。苦情に対しては、要望解決フローチャートに基づいて対応し、相談の内容に応じて即時対応や、苦情解決委員会の協議を行い、できる限り迅速な対応に努めています。
ただし、職員の自己評価からは、実際に問題解決にかかるまでの時間と、子どもたちが解決までにかかると思っている時間に差があると感じられるという指摘があり、解決までに時間がかかっても職員が迅速な対応をしていることが子どもたちに伝わるような適切な取組の工夫が期待されます。
(5) 安心・安全な養育・支援の実施のための組織的な取組が行われている。 第三者
評価結果
37 安心・安全な養育・支援の実施を目的とするリスクマネジメント体制が構築されている。 b
【コメント】
 園内安全管理規約、および事件・事故対応マニュアルを策定し、「援助指針」に安全管理と事故防止について明記し取組んでいます。事件・事故対応マニュアルでは、①火災、②交通事故、③水難事故、④転倒・転落事故(施設設備不良による事故を含む)、⑤風水害・地震、⑥無断外泊、⑦不良行為、⑧遊戯中の事故、⑨上記以外の施設外活動中の事故、⑩職員による体罰、⑪住居侵入対策、⑫保護者とのトラブルについて明記し、それに基づいて対応に努めています。園内安全管理委員会を設置し、ヒヤリハット、事故報告書などの事例検討から再発防止に取組んでいます。毎月定例会を行い、必要に応じて職員会議にて周知に取組んでいます。
職員の自己評価からは、子どもの安心と安全を確保するための取組のより一層の強化が望まれていることから、今後はリスクマネジメント体制や研修などの取組の工夫・強化が期待されます。
38 感染症の予防や発生時における子どもの安全確保のための体制を整備し、取組を行っている。 a
【コメント】
 感染症対策について、看護師を中心とした管理体制を整備しています。感染症マニュアルを策定、新型コロナウィルス発生時のマニュアルの作成、コロナの濃厚接触者が出た場合などのロールプレイを実施し、適切、迅速な対応に取組んでいます。
39 災害時における子どもの安全確保のための取組を組織的に行っている。 a
【コメント】
 災害時の対応マニュアルを策定し、「援助指針」に安全管理と事故防止について明記し取組んでいます。災害時の対応マニュアルには火災、水難事故、風水害・地震のそれぞれについて明記し、事業継続計画(BCP)を策定し、毎月避難訓練を実施しています。非常災害時対応マニュアル(給食部門)を策定し、備蓄リストを作成し、非常時3日分の献立、その他必要な備品・食料の確保など、整備に取組んでいます。
2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の標準的な実施方法が確立している。 第三者
評価結果
40 養育・支援について標準的な実施方法が文書化され養育・支援が実施されている。 a
【コメント】
 園における養育・支援の標準的な実施方法の文書化として、園の「暮らしのマニュアル」、「援助指針」のほか、「提出書類の書き方」、「洋服の買い方」など多様な文書、マニュアルが整備されています。標準的な実施方法について、新任研修を通じて職員の周知に取組み、2年目研修で「暮らしのマニュアル」を用いて日々の業務を振り返るなど行っています。職員の日常の関わりについて「CSPプログラム」の技術を適切に用いることができるように研修や資格取得に取組んでいます。
41 標準的な実施方法について見直しをする仕組みが確立している。 b
【コメント】
 検証・見直しにあたり、職員や子どもなどからの意見や提案が反映されるように、必要に応じて運営管理委員会で見直しを実施しています。
 今後は、標準的な実施方法について、子どもたちが必要とする養育・支援内容の変更や新しい知識・技術等の導入を踏まえ、定期的に現状を検証し、少なくとも1年に1回は必要な見直しの検証を行うため、評価の仕組みづくりが期待されます。
(2) 適切なアセスメントにより自立支援計画が策定されている。
42 アセスメントにもとづく個別的な自立支援計画を適切に策定している。 a
【コメント】
 適切なアセスメントを実施するために「アセスメント ガイドシート」を作成、新任研修では、アセスメントシートについての説明、例題を基にアセスメントシートの作成を行うスキルの習得などに取組んでいます。「アセスメントを作成するにあたって、大切なことは知ることです。」として、「将来の希望職業、現状、強み、弱み」などを確認し、子ども一人ひとりの具体的なニーズの把握に努めています。自立支援計画を策定するためにアセスメント会議を開催し、多職種の職員が協働して策定していることがうかがえました。
43 定期的に自立支援計画の評価・見直しを行っている。 a
【コメント】
 自立支援計画は、4か月ごとに定期的な見直しと立案を行っています。月まとめ記録に、「1.教育法の充足」、「2.今月のねらいと特に良かったところ」、「3.難しく進まないところ」などの観点から記入、管理職からのフィードバックの評価を受けて、自立支援計画どおりに養育・支援が行われていることを確認・検証する仕組みを推進しています。
(3) 養育・支援の実施の記録が適切に行われている。
44 子どもに関する養育・支援の実施状況の記録が適切に行われ、職員間で共有化されている。 a
【コメント】
 実施状況の記録は、パソコン入力によりネットワークで共有できるように整備しています。記録する職員で記録内容や書き方に差異が生じないように、新任研修で「提出書類の書き方」、2年目研修で「記録の書き方」を指導し、標準化を図っています。情報共有を目的とした会議として、職員会議、朝会、ケア会議、ショートカンファレンスなどの取組があります。
45 子どもに関する記録の管理体制が確立している。 b
【コメント】
 個人情報管理責任者は施設長とし、「個人情報管理規定」を策定し、記録の保管・保存、利用目的、情報の提供に関して明文化しています。個人情報の取扱いについては、個人情報保護同意書を用いて、子どもや保護者などに説明をしています。職員には研修で、書類・文書などの扱いについて、機密度に応じて「通常書類」、「重要書類」、「最重要書類」のランクに分けた管理などを周知しています。
 今後は、子どもに関する記録の管理体制について、個人情報保護の観点に一層留意した教育や研修が行われることが期待されます。
内容評価基準(25項目)
A-1 子どもの権利擁護、最善の利益に向けた養育・支援
(1) 子どもの権利擁護 第三者
評価結果
A1 子どもの権利擁護に関する取組が徹底されている。 a
【コメント】
 子どもの権利擁護に関する取組として、全職員に基本理念である「カトリック精神」についての理解を深める機会を持つように努め、職員の経験年数により、新任研修のオリエンテーションで人権について学び、2年目研修の権利擁護で「子どもの権利ノート」に基づき、子どもの人権について学び、こころのケア講座や職員会議の中で権利擁護について学習会などを実施しています。子どもに対して適切に関わるために、CSPの技術の取得に努めています。全職員は年に3回虐待防止に関するチェックを実施し、職員が課題を一人で抱え込まないことや目標をもって業務に取組むために、毎週のフィードバックを実施しています。
(2) 権利について理解を促す取組
A2 子どもに対し、自他の権利について正しい理解を促す取組を実施している。 a
【コメント】
 「援助指針」の中に、「①子どもが『大切にされている』と感じる支援として、相手の気持ちを理解し、共感できるようになるためには、まずは子ども自身が『大切にされている』と実感できることが必要である。一人ひとりの状況に応じた細やかな心配りをする。②生活の中での規範とマナーとして、社会には、お互いが安心して気持ちよく生活するために規範とマナーがある。他人に対して暴力やいじめはしないなどの社会規範と、おもいやりや親切にすることなどマナーの意味を教える。相手の気持ちや立場を理解することが大切である。そのために、職員がモデルとなり、遊びの中でルールと約束を体験できるように支援する。」と明記し、日々の養育の中で、様々な方法で子どもに対し自他の権利について理解を深める支援に取組んでいます。ホーム会で「子どもの権利ノート」を使用して、権利について説明に努めています。
(3) 生い立ちを振り返る取組
A3 子どもの発達状況に応じ、職員と一緒に生い立ちを振り返る取組を行っている。 b
【コメント】
 「援助指針」に、「生い立ちや自分の置かれている状況など、子ども自身に関する情報を適切な時期に適切な方法で伝える。その具体的な援助内容として、生い立ちを知る。ありのままの自分を受け入れるためには、まず自分を知ること。そしてそのために自分の生い立ちを知ることが必要である。職員は、子どもが自分の生い立ちを知るための工夫をする必要がある。但し、伝える情報やタイミングは施設内で充分に検討し、子どもが受け入れやすくなるような工夫が必要になる。」と明記し、子ども自身にとって「生い立ちを振り返る」ことの意義、そして「一緒に振り返る」ために職員に求められている資質・能力について職員同士で共通理解するスタンスが明示されています。また、その具体的な資質・能力の習得を目指して、「ライフストーリーワーク」の外部研修に参加し、園内研修も実施し、自立支援計画の中にライフストーリーワークの計画や反省の欄を設ける取組を行っています。子ども一人ひとりに成長の記録を用意し、記録は日常生活の中の写真を増やすように意識するように努めています。今後は、成長の記録(アルバム)の作成などがより一層充実し、子どもの生い立ちの整理の工夫が期待されます。
(4) 被措置児童等虐待の防止等
A4 子どもに対する不適切なかかわりの防止と早期発見に取り組んでいる。 a
【コメント】
 子どもに対しての不適切な関わりを防止するために、CSPプログラムの学びと実践を通して共通の認識と価値観、具体的な関わりの技術を職員全体で共有し、意識的に対応できるように取組んでいます。「援助指針」、「暮らしのマニュアル」、「不適切な関わり防止マニュアル」などの策定を通じ、様々な課題への対応を明文化しています。また、年に3回虐待防止におけるチェックを実施、職員が課題を一人で抱え込まないように毎週担当者とのフィードバックを実施して、子どもに対して適切な関わりで対応するように取組んでいます。子どもの権利擁護の取組として、子どもたちが自分の権利を理解できるように、ホーム会で子どもの権利ノートを使用して説明、就寝前に1日の振り返りの時間を設けてその日あったことなどを聞くようにし、ホーム会や児童会で意見表明の機会を保障しています。
(5) 子どもの意向や主体性への配慮
A5 職員と子どもが共生の意識を持ち、生活全般について共に考え、快適な生活に向けて子ども自身が主体的に取り組んでいる。 a
【コメント】
 子どもが主体的に選択し決定する機会を日常的に確保するために、「援助指針」では「社会生活における自己判断と自己決定」の項目で、「施設生活の中で、子どもが選択し決定できるような場面を多く用意して、自己選択を促し、その結果としての行動を尊重していく。失敗体験をていねいに取り扱うことが大切である。②施設の日常生活の中で積んださまざまな体験をもとに、社会生活の中で状況に応じた判断ができるように支援する。」と明記して取組まれています。子どもの状況に応じて小遣い帳を使用しています。生活全般のルールについては、子どもが納得するように話し合い、ホーム会で子どもの意見を把握し、生活全般に反映するように努めています。
(6) 支援の継続性とアフターケア
A6 子どものそれまでの生活とのつながりを重視し、不安の軽減を図りながら移行期の支援を行っている。 a
【コメント】
 「(単年度の)事業報告書」の「援助指針」、「入所」の項目では、「施設での生活が始まるということは、子どもにとっても大きな不安と混乱があることを前提とした支援を心掛けることを意識した。」と課題を明示し、その年の取組と改善内容を明記して、現状の把握と改善に取組んでいます。「援助指針」に、「入所前の準備として、自分の居場所があると思えるように、居室や生活用品の準備をする。入所後一か月の主な支援として、子ども、親や家族に施設生活への安心感を持ってもらう。子どものペースに配慮する。子どもを知り、理解する期間として活用する。」と明記している。具体的には、事前に尋ねておいた入所児童の好きな食べ物を提供する「ウェルカムメニュー」の実施や好みに合った生活用品の準備、入所当日から入所後1か月ごろまでの支援のポイントを踏まえた支援を行うように努めています。
A7 子どもが安定した社会生活を送ることができるようリービングケアと退所後の支援に積極的に取り組んでいる。 a
【コメント】
 退所した子どもが安定した社会生活を送ることができるように、職業指導員を配置し、「援助指針」の「退所に向けて」の中に、リービングケアとアフターケアの施設の支援体制と内容を明記し、自立支援計画に基づいて取組んでいます。熊本県養護施設協議会が作成した冊子「卒園する君へ」を配付し、そこに施設が退所者の相談に応じることは特別な配慮ではなくて施設の業務であること、施設以外の相談できる場所を明記しています。小さな問題でも気軽に相談できるように、退所者が集まれる機会を設けるために、年末に「卒園者の集い」を開催しています。
A-2 養育・支援の質の確保
(1) 養育・支援の基本 第三者
評価結果
A8 子どもを理解し、子どもが表出する感情や言動をしっかり受け止めている。 b
【コメント】
 子どもを理解し、子どもが表出する感情や言動をしっかりと受け止めるために、新任研修、2年目研修、心のケア、園内研修や、CSPの学びと実践を通して共通の認識と価値観、具体的な関わりの技術を職員全体で共有できるよう意識的に取組んでいます。職員が一人で抱え込まないように、担当職員と週に1回のフィードバックを実施しています。
 職員の自己評価からは、「より一層しっかりと受け止めたい。」という、自らの課題を見つめ、今後の専門性の習得に向けた意見があるため、ここでは「より一層の取組の強化が期待されます。」という評価とします。
A9 基本的欲求の充足が、子どもと共に日常生活を構築することを通してなされるよう養育・支援している。 a
【コメント】
 CSPの技術(教育法)を用いながら、子どもたちの良い行動やできている行動に焦点をあて、効果的に褒めることを意識し、日常の関わりの中で子ども自身が大切にされているという実感が得られるような支援を行えるように取組んでいます。「援助指針」には、食事について、睡眠・夜間の支援、排せつに関することといった生理的欲求と、所属と愛情承認といった心理的欲求について、項目ごとに具体的な援助内容を明記し、子どもと共に日常生活をいとなむことを通して、子ども一人ひとりの基本的欲求が満たされるように努めています。基本的な信頼関係を構築するために、職員と子どもが就寝前に一日の振りかえりを行う時間を設け、その日あったことなどを聞き、次の日の目標を一緒に考えるように努めています。子どもにとって身近な職員が一定の裁量権を有し、子どもと話し合い、子どもの成長に必要なことで可能なことについては個々の子どもの状況に応じて対応するようにしています。
A10 子どもの力を信じて見守るという姿勢を大切にし、子どもが自ら判断し行動することを保障している。 a
【コメント】
 子どもを見守りながら状況を的確に把握し、称賛、励まし、感謝、支持、注意などの声掛けを適切に行うために、職員に初任者研修、2年目研修、心のケア研修を実施し、職員にCSPの技術を学ぶことを奨励しています。援助指針」の「自己理解から自己形成、自己決定力の育成へ」において、「身近な目標を設定し、その達成を繰り返すことで、将来についての肯定的なイメージが持てるように支援する。多くの体験の機会を用意し、失敗体験については丁寧に取扱う。何かを選択する際には、職員が主導しすぎることなく、子どもが自分で選択し決定できるように支援する。」と明記し、具体的な援助内容として、自己選択の体験機会を増やす支援、意欲を引き出す支援、社会生活における自己判断と自己決定ができるような支援に取組んでいます。子どもの力を信じるとともに子どもの安全を確保するために、例えば「援助指針」の「遊びや余暇活動」の項目には、「子どもだけで遊ぶ際にも、職員は見守りを行う。」、「ルールを守り楽しく遊ぶことができるよう支援する。」と明記して取組んでいます。
A11 発達の状況に応じた学びや遊びの場を保障している。 a
【コメント】
 子どもの発達段階に応じた図書室を設置し、玩具、遊具を整備しています。「援助指針」では「遊びや余暇活動」、「学習と学校生活」の中で、具体的な援助内容として、心身の発達と遊び、一人遊びと集団遊びなどが指摘されており、また、将来のことを見通して学習意欲を持たせ基礎学力をつけるため、ホーム担当と学習指導員が連携し、学習スタッフの導入や学習塾、副教材の活用を明記して取組んでいます。
A12 生活のいとなみを通して、基本的生活習慣を確立するとともに、社会常識及び社会規範、様々な生活技術が習得できるよう養育・支援している。 a
【コメント】
 自立訓練や、社会規範とマナーを身に着けるため、生活の中での規範やマナーの意味を教えたり、日常生活の中で職員がモデルとなり社会規範とマナーを伝えたりするように取組んでいます。「援助指針」では中項目「基本的生活習慣」の中で明記し、「身体の健康」、「食事について」、「排せつに関すること」、「衣類」、「身体の清潔」、「睡眠」、「夜間の支援」、「遊びや余暇活動」、「生活住環境」などの小項目ごとに、具体的な援助内容として、子どもが社会生活をいとなむ上での必要な知識や技術を日常的に伝え、子どもがそれらを取得できるように支援しています。携帯電話委員会を設置し、子どもたちの携帯電話使用状況、および生活態度の確認と指導を行い、「援助指針」の「通信・情報」では、「パソコン・インターネットについて、情報を正しく取り扱うことができる能力が必要である。」という観点から、コンピューターやインターネットに触れる機会を増やすように取組み、子どもたちが生活技術を適切に利用できるよう支援に取組んでいます。
(2) 食生活
A13 おいしく楽しみながら食事ができるように工夫している。 a
【コメント】
 楽しい食事にするための支援として、「援助指針」では「食事について」の中で、「日常の食生活に、ほんの少し工夫をもたらすことにより、食事が楽しく豊かなものとなる。また、嗜好調査を実施して子どもの意見を取り入れる。好き嫌いを減らす工夫として、好き嫌いを減らすには、時間がかかるという前提で根気よく取り掛かる。子どもが食べてみようと思えるような職員からの働きかけが重要である。また、旬の食材を使用したり、盛り付けや調理の工夫をしたり、まずは食事に関心が持てるように支援する。食生活の自立について、健康を維持するために自分にあった食事量を知ることや、調理済み商品の購入、外食の際の栄養の摂り方などを教える。また様々な料理や1食分の調理など学年に応じて調理実習を行う。お弁当詰めも実習の一環となる。」と明記し、栄養士が中心となって食育の実践に取組んでいます。子どもたちにとって、園の生活の中で「おいしい食事」は一番の楽しみです。「暖かいものは暖かく、冷たいものは冷たく」という食事の適温提供に十分配慮し、また、各ホームに電子レンジやトースター・炊飯器を設置して、自分たちで調理する機会を作るように取組んでいます。
(3) 衣生活
A14 衣類が十分に確保され、子どもが衣習慣を習得し、衣服を通じて適切に自己表現できるように支援している。 a
【コメント】
 新任研修で子どもの身の回り(洋服・髪型・買い物)について周知し、「援助指針」では「衣類」の中で、「個性を尊重する。自分で衣服を選ぶ自己決定の機会を保障する。季節や場面にあった服装ができるようにする。自己管理ができるように支援する。子どもも職員も清潔で交換のもてる服装を心掛ける。」と明記しています。具体的な援助内容として、子どもが自分でほしい服を購入できるように職員と一緒に買い物に行く機会や、インターネットを活用して子ども自身が欲しい洋服を選ぶ機会を作るように取組んでいます。
(4) 住生活
A15 居室等施設全体がきれいに整美され、安全、安心を感じる場所となるように子ども一人ひとりの居場所を確保している。 b
【コメント】
 新任研修では、掃除のポイントについての周知と実際にホーム内の掃除を行い、掃除方法や留意点を確認します。「暮らしのマニュアル」には、ホームの整備について明記されており、これに基づいて取組んでいます。「援助指針」では、「生活住環境」の中で、「プライバシーが確保できるよう、一人になれる場所を用意する。自分たちの生活の場であることを認識できるよう、掃除や整理整頓を通じて実感を促す。みんなで集まれる場所(リビングスペース)のきまりごとやルールを子どもたちと一緒に決め、安心して楽しく過ごし、居心地のよい場所になるように配慮する。安全に生活できるように危険防止策を講じ、設備に配慮する。」と明記し、具体的な援助に取組んでいます。
 共有スペースの清掃や子どもの状況に応じた掃除などの生活上の課題に関して、その習得や定着が十分とはいえないという職員の声がありますので、園全体のスタンスとして、子どもたちが「掃除する」という習慣が持つ社会的な意義について理解できるよう、より一層の働きかけが期待されます。
(5) 健康と安全
A16 医療機関と連携して一人ひとりの子どもに対する心身の健康を管理するとともに、必要がある場合は適切に対応している。 a
【コメント】
 心身の健康に課題を持つ子どももいることから、看護師が中心となり、通院の同行、感染予防、薬品の管理などを行い、子どもの健康管理に努めています。園内研修で、医療的ケア、障がいについて、こころのケア講座などを実施し、知識と共通理解を深めるように努めています。
(6) 性に関する教育
A17 子どもの年齢・発達の状況に応じて、他者の性を尊重する心を育てるよう、性についての正しい知識を得る機会を設けている。 a
【コメント】
 「生と性」育み委員会を設置し、子どもたちへの性教育の計画、プログラム開発、性教育の実施報告について協議して、自立訓練や日常生活を通して、子どもの年齢・発達の状況に応じて、性についての正しい知識を得る機会を設け取組んでいます。新任研修で年齢に合わせた関わりについて、2年目研修では性教育の在り方と職員の対応について学習し、「援助指針」では、「生と性」の育みを支えるという視点から、「組織としての対応」、「『生』と『性』を考える」、「性のモラル」、「性的問題と性被害」について具体的な援助内容を明記し取組んでいます。
(7) 行動上の問題及び問題状況への対応
A18 子どもの暴力・不適応行動などの行動上の問題に対して、適切に対応している。 a
【コメント】
 子どもの行動上の問題があった場合に備え、施設では色々なケースを想定した「対応マニュアル」を作成し、それに基づいて職員は「被害児童」・「加害児童」・「周囲の子ども」への対応をするように努められています。問題行動を予防し、正す教育法を職員が実践できるように、職員のCSP技術の習得を奨励し、園内研修を実施しています。ケア困難児童については、毎週のフィードバックや園内でカンファレンスを行い、園全体で対応するように努めています。必要に応じて、関係機関と協議を重ね、事態改善の方策を見つけ出そうと努力しています。
A19 施設内の子ども間の暴力、いじめ、差別などが生じないよう施設全体で取り組んでいる。 a
【コメント】
 園内研修で子どもの権利について理解を深めるように取組み、入所間もない子どもの場合は特別な配慮が必要となることから、「援助指針」に入所当日、入所後1か月ごろまでの支援の具体的な援助内容について明記し取組んでいます。大人(職員)相互の信頼関係が保たれ、子どもがそれを感じ取れるようにCSPの技術を用いた支援、「援助指針」には、「自己形成・対人関係・社会生活(施設における人格形成)。コミュニケーションと自己表現。共感する心、協力できる関係、配慮するやさしさの育ち。社会規範とマナーを身につける。『生と性』育みを支える。」などについて、具体的な援助内容を明記して取組んでいます。子ども間で暴力やいじめが発覚した場合には、職員会議などを通じて、全職員が一体となって対応できるような体制をとり、必要に応じて警察や児童相談所と連携をして対応しています。
(8) 心理的ケア
A20 心理的ケアが必要な子どもに対して心理的な支援を行っている。 a
【コメント】
 専門性を持つ心理担当職員を配置し、園内に心理療法を実施するスぺースを確保して、心理療法を実施しています。「援助指針」には、施設全体で、子どもたちが基本的な安心感、信頼感を感じられるような心理的支援が行えるように、具体的な援助内容を明記したり、新任研修、2年目研修、心のケア研修、園内研修の中で理解を進め、CSPの技術の向上を奨励することで、専門職だけでなく全職員に心理的ケアが必要な子どもに関わる知識と適切な対応についての理解を深めるように取組んでいます。また、児童を支える職員を孤立させない取組として、スーパービジョン・フィードバック体制を構築して、職員は週に1回はフィードバック担当者と話し合う時間を設け、業務の悩みなどを定期的に相談して、具体的な解決方法を一緒に考えられるように取組んでいます。
(9) 学習・進学支援、進路支援等
A21 学習環境の整備を行い、学力等に応じた学習支援を行っている。 a
【コメント】
 「援助指針」には、「学習と学校生活」について、「安定した通学ができるように支援する。ホーム担当と学習支援員が連携し、学習意欲と基礎学力の向上に努める。学習塾を活用する。」と明記し、具体的な援助内容に基づいて支援を行っています。学習支援員を配置し、学校との連携を通して児童の現在の学力等を把握し、子どもに応じた支援を実施しています。希望者は園の図書室での学習や、公文や学習塾(コロナ禍のためオンラインでの塾の受講を含む)を利用できるように支援しています。
A22 「最善の利益」にかなった進路の自己決定ができるよう支援している。 a
【コメント】
 アセスメントの中で、「子どもの将来の夢やなりたい職業」を把握することに加え、具体的な進路選択の時期として、大きくは中学卒業後、高校卒業後の段階が重要と考え、まずは、具体的に将来どのような職種に就きたいのか、またそのために、高校卒業後にどのような進路を選ぶ必要があるのかを、児童とともに早い時期から話し合って具体的にイメージができるようにしようと努めています。最善の利益にかなった進路の自己決定ができるように、自立支援のセミナーへの参加や自立訓練など、自分自身の進路に向き合い考える機会の提供を増やすように取組んでいます。本人の希望と本人の能力や実現性を検討して、自立支援計画に反映させて取組んでいます。職業指導員を配置し、自立訓練の実施や、進路決定のための経済的な援助の仕組み等についての情報提供をしています。「援助指針」に進路選択支援の取組みについて明記し、進学への支援、就労への支援のそれぞれについて、具体的な援助内容に基づいて支援をしています。
A23 職場実習や職場体験、アルバイト等の機会を通して、社会経験の拡大に取り組んでいる。 a
【コメント】
 高校生になったら、在学する高校の規則を守りながら、アルバイトを行い、様々な社会体験ができるように支援を行っています。資格を取ることで自己肯定感が身につくようにと、パソコン(PC)検定試験や簿記検定、漢字検定、英語検定、料理検定など就労に際し必要となる資格の取得やスキルの獲得を職員が支援し、運転免許など時間を要するものは計画的に取得できるように支援しています。
(10) 施設と家族との信頼関係づくり
A24 施設は家族との信頼関係づくりに取り組み、家族からの相談に応じる体制を確立している。 a
【コメント】
 家庭支援専門相談員が配置され、園で作成した「保護者の方へ」を基に、児童の担当者名と家族の担当者名の説明、園の概要と園からのお願いなどを説明しています。入所時に施設の支援方針について、CSPという技術を用いて「褒めて育てる」ことを職員で取り組んでいること、子どもたちに将来社会で成功してもらうために、「社会スキル」を教えることについて説明しています。施設全体で支援するため「援助指針」には、「家族支援」、「家族関係復活の支援」について、具体的な援助内容を明記して取組んでいます。面会、外出、一時帰宅など家族との継続的な関係作りに積極的に取組んでいますが、コロナ禍のため、感染のリスクレベルに応じて、家族交流などを調整せざるを得ない事態になっており、今後も新型コロナウィルスへのさらなる対応を想定して、保護者、家族への情報提供と説明を行うため、リスクレベルに応じた対応の明文化に取組んでいます。
(11) 親子関係の再構築支援
A25 親子関係の再構築等のために家族への支援に積極的に取り組んでいる。 a
【コメント】
 家庭支援専門相談員を中心として、園では「家族のあり方」は多様であることを認識して、園は保護者や家族と丁寧な話し合いを行い、必要に応じて児童相談所と協働して、それぞれの家族の課題に適切に対応した支援に努めています。「家庭復帰マニュアル」を策定し、家庭復帰を目指すケースに関しては親子間交流が段階的に進むように取組んでいます。保護者に対しては、園の家庭支援専門相談員や担当職員がCSPプログラムに基づく「ペアレントトレーニング」に取組み、親子関係の再構築等に向けた家族への支援に取組んでいます。
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