社会的養護施設第三者評価結果 検索

旭川育児院

【1】第三者評価機関名 (特非)北海道児童福祉施設サービス評価機関
【2】種別 児童養護施設 定員 70名
施設長氏名 鹿野 誠一 所在地 北海道
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【3】実施調査日 2013年11月21日~2014年07月19日
【4】総評 特に評価が高い点
1.継承される剣道と音楽の情操教育
 幼少期から剣道と音楽を積極的に奨励し、子どもの体力向上や音楽を通じた感情や情緒を育む支援を展開している。特に、剣道の奨励は初代院長から引き継がれ、男女ともに小学生から指導され各種大会に出場している。また、音楽室や各ユニットにピアノ室を設置し、小学生全員にピアノを習わせている。ピアノの学習にはレッスン講師を週2~3回程度招いて、発表会を定期的に開催している。
2.施設独自の奨学資金制度
 施設運営、とりわけ経済的支援のために発足した「旭川育児院後援会」等の支援を基盤にして、高校進学と高校卒業後の大学・短大あるいは専門学校進学希望者へ「子どもの最善の利益」にかなった進路の自己決定ができるように、施設独自の奨学金制度を創設し経済的な進学支援の仕組みを法人として構築している。
3.社会資源を活用した学習支援の充実と大学等進学
 学習支援の目標を小中高生ごとに設定し、基礎学力の充実に取り組んでいる。学習支援のための人材確保として地元の学生ボランティアを積極的に導入し、子ども達の学習の機会を保障していく努力を行っている。特に、中学生については学生ボランティアによる学習指導が週2回の頻度で計画的に行われている。地域の社会資源を最大限に活用した支援体制の整備により、国立大学を含めた大学・短大あるいは専門学校への進学者が増えてきている。
4.地元に根ざした地域活動
 施設が立地している台場地区は人口減少が続いている地域であり、地元の各種行事に子ども達の参画は欠かせない存在となっている。職員も地域住民の一員として催事に関わり、施設運営理念にある「地域に根ざし、地域に開かれた」施設を目指し活動していることは評価できる。また、新築された本体施設には災害時の備蓄空間が設けられており、地域の災害拠点として活用されるよう地域関係者と協議を重ねている。災害時の拠点として地域の防災対策に積極的に取り組み、地域の安全安心を担う地元に根ざした地域活動が行われている。

改善が求められる点
1.アフターケア体制の構築
 退所後の卒園生がどのような生活を営んでいるかは施設の心配事である。アフターケアの対応については入所中から子どもの自立生活を営む力を育むことが大切であり、退所後も連続的な支援と安定した生活を築くまでの支援体制づくりが求められる。アフターケア体制は退所時の担当職員が継続してその子どもの対応をするように分担されているが、具体的な業務内容の検討はされていない。アフターケアの機能が発揮できる組織体制を整え、児童相談所などと連携した一貫性のある支援体制の構築を期待したい。
2.性に関する教育の充実
 性に関する教育については、職員が生活場面で子どもに性についての正しい知識を伝え、看護職が中心となり生命の大切さや男性・女性であることの役割を子どもに伝えるなどの対症療法的な対応となっている。今一度、子どもの年齢・発達段階に応じた異性を尊重し思いやりの心を育てるよう、正しい知識を得る機会としての計画的な教育体制の構築を望みたい。
3.専門処遇部門の独立性を考慮した養育・支援体制の検討
 養育・支援体制は、組織上、直接処遇部門と専門処遇部門の体制になっているが、専門処遇部門にて心理療法担当職員、個別対応職員、家庭支援専門相談員が兼務体制になっている。しかし、直接処遇部門の職員配置基準による慢性的な人手不足の課題もあるが、社会的変化に対応した社会的養護のあり方として児童養護施設の機能の高度化と地域支援が問われている状況から、体制の兼務的な各部門の独立性について専門性を確立する観点から検討されることを望みたい。
4.中長期計画の策定と周知
 懸案の施設整備後ではあるが、施設運営の理念の実現のため、引き続き家庭的養護の推進と専門的ケアの向上、社会的養護の地域支援の拠点としての機能充実を図ることが求められており、その中長期計画の策定を進められるよう努められたい。また、各計画を職員に配布し周知されることを望みたい。
5.人事考課の検討
 人事考課の目的と役割は、人材の能力開発と育成に活用されること、公正な職員処遇を実現すること、個々の意欲を喚起し組織活性化に役立つこととされている。施設が目標とする事業運営や人材育成をすすめる上で、公正で的確な評価が行われているかどうかは職員の仕事に対する意欲にも大きく影響する。適切な時期と客観的な評価方法による人事考課の導入について検討されることを期待したい。
【5】第三者評価結果に
対する施設のコメント
人の仕事を、客観性をもって正当に評価することはとても難しい作業だと思う。今回、初めて第三者評価を受審したが、みなさん熱心に私たちの施設や仕事の評価できる点、不十分な点を、予断を排し、的確に評価していただいたと感じている。
なかなか目に見えなかったり、形として残らない私たちの仕事は、とかく自己満足的になったりマンネリ化しがちだが、自分たちでは気付かない点を良くも悪くも“発掘”していただいたような気がする。
今回の評価を謙虚に受け止め、今後の運営や処遇の向上に活用し、取り込んでいきたいと考えている。
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