社会的養護施設第三者評価結果 検索

長野市美和荘

【1】第三者評価機関名 コスモプランニング(有)
評価調査者研修修了番号 S18028
B16021
050482


【2】種別 母子生活支援施設 定員 10世帯
施設長氏名 青柳 與昌 所在地 長野県
URL https://nagano-shajikyo.or.jp/
開設年月日 1938年11月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人長野市社会事業協会
職員数 常勤職員 6名 非常勤職員 1名
有資格職員 保育士 1名 臨床発達心理士 1名
社会福祉士 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 16室 (イ)設備等 一時保護室
(ウ) 相談室 (エ) 集会室
【3】理念・基本方針 ○社会福祉法人長野市社会事業協会基本理念
  長野市事業協会は、利用者の人としての尊厳を大切にし、地域社会でゆとりと潤いのある、その人らしく、いきいきと自立した日常生活が送れるように、利用者本位のニーズに合った福祉サービスの提供に努めます。

○社会福祉法人長野市社会事業協会基本的視点
  ・私たちは、利用者や家族の声を大切にし、利用者と対等な立場で信頼関係を築きます。
  ・私たちは、サービスの質の評価を行い、公正で良質かつ適切なサービスを提供するように努めます。
  ・私たちは、地域やその他の関係機関と連携し、より充実したサービスが受けられるよう努めます。
  ・私たちは、サービス内容の情報提供を行い、個人情報を適正に取り扱い、事業運営の透明性の確保に
   努めます。
  ・私たちは、専門性を高めるため、常に研鑽し、資質の向上に努めます。

【4】施設の特徴的な取組  長野市美和荘は長野市が設置する施設で、その運営を指定管理者制度として民間に委託しており、現在、社会福祉法人長野市社会事業協会が受託し、法人の運営する32事業所、53の福祉事業(平成31年4月1日現在)の1施設として児童福祉法に基づいた母子生活支援事業及びDV被害者等の一時保護委託事業を行っており、長野市により設置されてから81年という長きにわたり、さまざまな事情の母親と子どもに対して、生活の安定のための相談や援助を行いながら、自立を支援している。
 当施設の運営母体である社会福祉法人長野市社会事業協会は現在、障害関係施設(施設入所、生活介護、就労移行、就労継続、居宅介護、短期入所事業)、児童福祉関係施設(障害児通所支援施設、放課後等デイサービス、母子生活支援施設、保育所)、保護施設(救護施設、社会事業授産施設)、高齢者関係施設(特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、通所介護事業)などの福祉サービス施設・事業所を運営しており、ライフステージに応じた一生サポートできる生涯支援を目指している。当施設もそのうちの児童福祉法に基づく1事業所として、長野市を中心に県内外から様々な背景を持つ18歳未満の子どもを養育している母子家庭など、生活上の問題を抱えた母親と子どもを受入れ、子育て支援をするとともに母子の自立に向けた支援も行っている。
当施設は昭和13年に母子保護法に基づき長野市三輪1丁目に開設され、昭和23年に長野市鶴賀に開設された第2美和荘と昭和26年に統合され、児童福祉法に定められた母子寮として三輪8丁目に移転した。その後、現在地に昭和52年に移転改築され、昭和60年4月に長野市より社会福祉法人長野市社会事業協会に運営が委託され、平成10年児童福祉法の改正により「母子寮」から「母子生活支援施設」に改称され、平成18年からは当法人が長野市の市指定管理者として継続運営をしている。
 当施設は長野市中心市街地の住宅街の長野市栗田地区にあり、JR長野駅も栗田地区に当り、それに近いという立地から、当時の国鉄、郵政局、営林局、電々公社等の官舎が建設され、昭和40年代からの高度成長期には、貸家、アパート、マンションが増加し、住宅地として発展した。施設は同じ法人が運営している障害者の就労継続支援B型「栗田園」と隣接しており、火災、地震等非常時に備えて防災訓練等で連携を取り合っている。施設から徒歩で7~8分の所に商業施設や長野オリンピックの会場となった多目的スポーツアリーナがあり、また、長野市若里市民文化ホール、NHK長野放送局、長野県の福祉の拠点ともいえる長野県社会福祉総合センターなどもあり、長野市でも文化的な主要施設が集積した地区となっている。
現在、当施設の利用世帯は5世帯で、母親5名と子ども8名の利用者がおり、安定した生活を送るために生活の基本である衣・食・住が満たされた状態に近づくように支援し、また、母親と子どもの心と体の健康を維持向上するために日常生活に関するさまざまな支援を行っている。支援の実施では、母親と子どもの意向を尊重することは当然であるが、さらに、当施設では母親と子どものQOL(生活の質Quality Of Life)の向上を目指しており、母親と子どもの支援の内容の違いによって母親と子どもを尊重しそれぞれ具体的に留意し母親と子どもを権利の主体として
位置づけ、感情的でない受容的な態度で、常に母親と子どもの最善の利益に配慮した支援を行っている。
 このような流れの中、平成22年度からの10年間の法人としての中長期総合計画が今年度で終了することから、現在、来年度からの次期中長期総合計画の策定に入っており、当施設や当施設の属する児童支援事業部としての方向性を見極めつつ、新しい中長期総合計画の策定に入っている。その前段階としての今年度の当施設の事業計画の運営重点事項として「利用者確保と利用率の向上」「サービス内容の充実」などを掲げ、法人の児童支援事業部の15事業所25サービスと連携し、それぞれに応じた専門的な支援を実施し、また、中長期総合計画の「魅力ある福祉サービスを創造する」というキャッチコピーの通り、事業運営の安定化を図りつつ、一人ひとりの入所者の実状に合わせた「自立促進」のための支援を行い、更に、社会に貢献しようとしている。
【5】第三者評価の受審状況 2019年10月01日(契約日)~ 2020年01月08日(評価結果確定日)
前回の受審時期 平成28年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点

1)母親と子どもの支援に関する自立支援計画の策定と適切な記録
利用者へのサービス提供に関わる事項として当施設事業計画の「運営重点事項」に「サービス内容の充実」と掲げており、自立に向けた支援、心のケア並びに住環境の整備に努め、各家庭の「自立支援計画」の中にその主旨を組み込んで利用者にも説明している。
当施設としての運営方針の一つに「ライフプランを見通した自立支援計画を共に作成し、必要な支援を行う」としており、長野市を中心とした女性相談支援センター、福祉事務所、児童相談所、保育園、学校、警察、病院等と連携し、課題解決に向け協働している。
当施設の自立支援の流れとして「準備(ニーズや課題の発見、初回面接の準備等)」「開始(利用者の話への傾聴と主訴等の把握、施設で提供できる援助・支援についての説明等)」「アセスメント(利用者の生活状況・環境に関する情報収集、利用者のニーズ・課題状況に関する情報収集等)」「援助計画(プランニング)策定(確定したニーズ・課題の再確認と解決すべき優先順位づけ、 優先順位づけしたニーズ・課題に基づいて援助・支援目標の設定、目標ごとの具体的な援助・支援計画を立案等))「計画の実施(活動)(援助・支援計画に沿って援助・支援の実施、利用者自身に焦点を当てたニーズの充足や課題 解決を図ること、モニタリング等)」「評価と終結(様々な評価方法や尺度を用いて、援助・支援の有効性と効率性を検討、 所長や同僚等から援助・支援自体の評価を受ける、評価に基づいて終結を決定、必要に応じて、フォローアップ。ケースによって、終結後の援助・支援を行う他機関・他施設等と連携等)」があり実際機能している。
4名の職員が一世帯ずつ担当し、それぞれ利用者のフェイスシートには利用に到るまでに関係した機関や団体等の記載がありすぐに情報として引き出せるようになっている。また、独自のアセスメントシートがあり適切なアセスメントを実施していることが記録からも確認することができた。更に、自立支援計画については必要に応じて見直しを行う機会を設け、検討会議が月に2回開催され、半年毎に評価・見直しを行い、継続性も確保している。
支援記録については記録内容項目の確認を行い、施設内で記録方法を統一し、実施状況は施設で定めた様式に、自立支援計画に沿って実行された内容が記録され、その後の経過や状態等も経過と共に記録されている。朝会、日誌、回覧等を活用して、常に情報の共有が図られ、検討会議等の会議では多職種がかかわり話し合い意思統一を図っている。

2)母親や子どもの主体性を尊重した自立に向けた支援母子生活支援施設における支援は、母親と子どもの安定した生活の実現と、個別の母親と子どもそれぞれの自立を促すものであると言われている。その取り組みの主体はあくまで利用者母子であり、その意思や意向を尊重して行うことが何よりも大切で、また、あるべき姿に導こうとするのではなく、その母親と子どもが抱える、その時々の個別のニーズや課題を充足、解決することを目指すものとされている。
当施設では、様々な支援が提供されており、特に生活支援については思いつきやその場限りの支援をするのではなく、その支援の流れの中での個別の支援の意味を十分理解したうえで実践し、また、ケースごとの考え方を施設職員全体で共有している。
当施設は住宅街にあり、母親の就業や子どもの学校に近く生活しやすい環境にある。施設での生活では、家事や職場、学校、親子・家族関係、余暇、健康、住環境の整備などが重視されており、厳しい生活を経験してきた母親と子どもが、安心して生活し、育つことができる環境を整備し、そこで日々生活し、楽しみ、学び、時にはつまずき、職員に守られる体験をしている。こうしたことが、自立生活の基盤となっているものと思われる。
当施設では母親と子どもの満足の向上のため、母親懇談会の開催、子ども会活動等を定期的に開催し、母親と子どもの意見を聴く機会を設け支援の中に反映している。各年度5回実施される母親懇談会の初回でも「施設利用について」説明するとともに、法人の基本理念・基本的視点・母子生活支援施設協議会倫理綱領、事業計画等についても話し理解を促している。また、母親懇談会では、施設利用アンケートもとり、希望に沿い親子バス遠足や外出等にも出掛けている。子ども会では、子ども達の主体性を尊重して年間行事を立て、職員も協力して親子行事や花火大会等を行っている。当施設として実施される親子バス遠足などの具体的な行事についても、定例的に実施される母親懇談会や子ども会、施設内の掲示板で告知し、参加を促し余暇支援の充実も図っている。
日常生活支援はともすれば、職員側の管理的指導になってしまう可能性があるが当施設では母子との関係を築き、母子のニーズや思いを適確にとらえ対応している。母親の思いとニーズ、子どもの思いとニーズをよく理解し、どちらの思いやニーズも達成できるような支援を展開し、また、時間をかけて繰り返し、粘り強く支援している。

3)職員のチームワークの良さ
現在、当施設は施設長1名、母子支援員2名、少年指導員2名、心理士1名の6名の職員体制で、夜間は外部の機関に管理を委託している。職員のシフトは早番・日勤・遅番になっており法人本部と連絡を取りながら、職員の仕事と生活の両立という面で休暇取得の促進、時間外労働の削減などに取り組んでいることから、育児や介護、療養などの状況に応じて休暇が取得できるようになっている。
母親と子どもへの支援はチームで行なわなければならないとされており、また、個人的力量で対応したり、経験や勘のみに頼ったりすることは、独りよがりで誤った支援に陥るおそれがあると言われている。当施設ではチームでの支援をシステムとして構築し、質の高いチームづくりをしており、職員は、利用者のさまざまなニーズに対応する適切な支援を保障し、「支援の質」の向上を意識し実践している。そのために職員が専門職として成長するための、スーパービジョンの体制として施設長がその役割を担っている。
基本的に職員は一世帯ずつ担当し、法人の異動で初めて当施設での業務に就いた職員には当施設での経験が長い職員がペアとして指導しており、ケース検討会議も月に2回開催されることから自ら担当する世帯・利用者だけでなく垣根を超えた母子への対応、支援体制がフレキシブルに行えるようになっており、職員間の密な連携へとつながっている。また、心理士の配置で母親の自尊心の回復に向けた支援や面談を行っており、子どもの心理療法や面談で他職種との連携も図っている。
当施設ではチームワークを大切に、利用者の状況やニーズ、支援に関する情報を共有し、チームとして全体支援を意識し実践している。また、職員はチームの一員として、その支援の中で自分の役割を明確に理解している。そのためのケースカンファレンスとして月1回職員会議を開催しており、多職種、多機関によるチームを組む機会もあり、その場合にも、カンファレンス等を活用し、母子生活支援施設の支援の専門性と役割をよく理解しチームとして機能している。

4)研修の充実と人材育成
法人の中長期総合計画や年度事業計画、事業部年度事業計画、当施設年度事業計画には法人や事業所内外の研修等に出席し、支援に関するスキル等の専門性の向上や利用者本位のサービスの提供、人権意識の高揚など、職員の資質向上に取り組むことが掲げられ、実施されている。
法人として職員一人ひとりの知識、技術水準、専門資格の取得状況等については把握しており、各施設や事業所の人員配置に活かされている。職員は法人の階層別研修、業種別・諸種別の専門部会研修等に参加し、また、外部研修等についても参加し、復命書の回覧や伝達研修等で職員間での共有も図っている。
施設の運営方針の「職員の専門性を高めるため研修等に積極的に参加し支援力の向上に努める」にも前向きに取り組んでいる。支援員や指導員、心理士としての専門性を高めるための内部研修や市としての研修、復命での外部研修についても職員同士お互い融通し合い日程を調整し、職員一人ひとりが課題を持って主体的に学ぶための研究会への自主参加についても互いに支援・協力し合っており、職員同士の信頼関係を築くとともに、共に学び合う環境を醸成することで当施設の活性化を図っている。
職員の自己啓発についての意欲も高く、法人や施設から提供された情報などを選び、自分の時間を使い研修等に参加している。法人の基本理念や基本的視点を踏まえた「職員基本方針(求められる職員像)」から、期待される職員像を読み取ることができ、体系的な教育・研修により育成を図り、より高みを目指し職員の一体感を培っている。

◇改善を求められる点

1)更なる地域社会への参加・交流の促進
当施設の年度の事業計画の運営重点事項では「地域の福祉ニーズの把握に努めるとともに、施設の専門性を地域に還元できるよう取り組む」と掲げており、当施設が主体となって毎年度、法人の各施設や事業所の協力を得ながらその専門性を活かし、芹田地区住民自治協議会の健康福祉部会と協働し子育て講座等を開催している。また、法人として外部委員による「運営協議会」を開催し、意見・助言等を運営に活かしている。法人としての「苦情解決に関する規程」に沿い、法人としの第三者委員も選任されており、苦情や相談内容に基づき継続的に地域の福祉ニーズや生活課題等の把握にも努めている。
また、利用者の地域生活へ向けての相談及び手続きの支援に努めている。利用者は当施設と連絡を取りつつ、それぞれのホームを起点に自由に外出し、買い物を楽しむなど、余暇支援の充実も図られている。また、施設としてバス遠足や親子遠足なども実施しており、施設の南側の公園で地域の人々に告知し、毎年花火大会を行い交流している。更に、子どもたちが学校の友人等が施設へ遊びに来やすい環境づくりとして集会室を開放している。
基本的に一人ひとりの利用者が地域社会の中で自立しようとしており、母親と子どもが地域の人々と交流をもち良好な関係を築くことは母親と子どもの活動範囲を広げるための大切なプロセスではないかと思われ、施設としての特性に配慮しながら地域との関わり方について明文化され、母親と子どもが地域の人々と交流を持ち更に良好な関係を築いていけるよう支援されていくことを期待したい。

2)ボランティアの受け入れについて
ボランティアの受け入れについては法人の業種別の高齢者施設・保育園では実施されているが、母子生活支援施設という特性上、夜間あるいは休日を主とした生活を施設で営んでいることから日中のボランティアの受け入れが難しくなっている。
当施設として、学習ボランティアの導入を検討して久しいということもあり、対象は学生ボランティアとなるものと思われ、事前の研修や説明が必須になるものと思われる。
今後は利用者の、休日の余暇支援などにボランティアの協力を得られるかどうか検討され、受け入れについての基本姿勢や登録手続き、事前説明等についても法人あるいは当施設として明確化にされることが望まれる。また、利用者への理解を深めるためとボランティアの定着化を目指し、母子生活支援施設という特性等に関わる研修や学習会などを定期的に実施されていくことも期待したい。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  第三者評価を受審し改善すべき点についてご指摘を受けました。ご指摘いただいた点の、地域社会との交流促進やボランティアの受け入れなどは施設の特性上改善にはかなり困難を伴う事項でもありますが、現在より利用者サービスがより向上する形で改善に取り組みます。
 また、よい評価をいただいた事項については現状に満足せずより一層取り組みを充実させ利用者満足度が高まるよう努力いたします。
第三者評価結果はこちら