社会的養護施設第三者評価結果 検索

新潟県新潟学園

【1】第三者評価機関名 (公社)新潟県社会福祉士会
評価調査者研修修了番号 SK2022015
SK2021018
28005


【2】種別 児童自立支援施設 定員 34名
施設長氏名 加茂 忍 所在地 新潟県
URL https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/niigatagakuen/
開設年月日 1909年05月01日 経営法人・設置主体 新潟県
職員数 常勤職員 26名 非常勤職員 3名
有資格職員 管理栄養士 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 2人部屋(約17㎡) 3人部屋(約22㎡) (イ)設備等 ホール(食堂) 約85㎡
(ウ) 静養室 約9.8㎡ (エ) 自立支援室 約21.6㎡
【3】理念・基本方針 (理念)
児童憲章、子どもの権利条約、児童福祉法等の精神に基づき、入所児童に適切な生活環境を提供しながら児童が抱える混乱状態、不適応状態を改善し、自己統制力や総合的な生活力を身に着け、地域社会で自立できる力を培うことにより、児童の権利擁護を図る。

(基本方針)
自然豊かな開放的な環境のもとで、有害な刺激を遮断しつつ、規則正しい「一定の枠」のある集団生活を送る。また、施設内の分校と連携し、生活と教育を一体化させ、強固な協働関係の中で一貫したチームによる支援を行う。その結果、児童が「自信(自己肯定感・自己有能感)」と「他者への信頼感」を取り戻し、意欲的な生活態度を持ち、自己の行動に見通しと責任ある態度を取ることができる力を身に付けられるよう支援していく。
【4】施設の特徴的な取組 1.日課検討チーム
・新潟学園では、様々なきまりや日課といった外的枠組みがある。これらを時代背景に即したもの、現在の入所児童の状態像にあったものとし支援を向上させるため、令和4年度から日課検討チームを立ち上げ、現在検討を行っている。検討に際しては、児童へのアンケートを実施し、その意見も参考にしながら検討を重ねている。

2.職員研修の充実
・施設内研修はこれまでも実施しているが、外部講師を招き、支援を振り返り・支援について検討する研修を更に実施した。
・児童の権利擁護について学びを深めるため、外部講師を招いての職員研修を実施した。

3.ステップアップ制度
・児童の自己肯定感や自ら変わろうとする意識を醸成し、ケアの個別化も含めた支援となるよう、令和2年度から当制度を実施している。①肯定的評価の積み重ねと客観的な評価・指導の実施、②個別的な課題の設定と指導、③自己評価(児童自身による)と他者評価(職員による)による行動指導を取り入れた内容としている。具体的には、生活実態・態度等全般を簡単にチェックできる3ステップの「生活表」と自立支援計画に連動させた個人の課題である「個人ファイル」で構成し、毎日児童が自己チェックし職員も指導のツールとして使用している。2週に1度「ふりかえりタイム」を開催し、「生活表」と「個人ファイル」を用い、他者から見た自分の確認と成果評価を実感できるための集団指導をあわせて行っている。
・「ステップアップ運営委員会」にて協議を重ね、実施方法については改善や工夫を重ねている。

4.性教育・性指導の実施
・①性加害・被害など、性に関する課題を抱えて入所する児童に対し、性に関する教育・指導等を体系的に行うことにより、性加害・被害の再発防止を図る、②不安定な養育環境で育ったことなどにより、他人との物理的・心理的境界が曖昧な児童が多いことから、全児童に対し、他人との境界線や性に対する正しい知識について教育・指導を行い、性加害・被害などの性に関する問題の発生を予防することを目的に、令和2年度から性チームを中心として性教育・性指導を実施している。
・令和4年度には、女子向け性プログラムの雛形を検討し、枠組みを作成している。

5.子ども達が職員との24時間の生活や日々の課題への取り組みを通して、他者を信頼し、自分で考え実行することの大切さを学ぶ。こうしたことにより、「普通の、規則正しい、健康的な生活」が送れるようにする。

6.施設内にある分校(希望が丘分校)で義務教育を実施している。授業は分校職員を中心に施設職員が補助的に入り、可能な限り複数の指導体制で、児童の習熟度に応じた個別的な指導を行い、学習の楽しさを経験することにより意欲、自信、希望を持ち、学習全般の向上を目指す。

7.施設内での農業や環境整備等を通し、視野の広がりや働く喜び、役立つことの充実感などを体験的に学ぶ。

8.地域の関係機関や団体をメンバーとする「新潟学園運営連絡協議会」を通じて、幅広く子ども達への支援に参加いただいている。また、多数のボランティアからも様々な形で支援いただいている。
【5】第三者評価の受審状況 2023年06月01日(契約日)~ 2024年03月29日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和2年度
【6】総評 【特に良いと思う点】
〇子どもに対し、一貫性のある支援・指導が行われている。 
 当施設の職員と併設されている「内野小・中学校希望が丘分校」の職員が「チーム学園」として一体となり、「様々な理由で適切な成長・発達が阻害されてきた児童に対して、規則正しくとも優しく温もりの感じられる生活体験を通して成長や発達を促し、仲間や職員との良好な人間関係を通して他者を信頼して尊重し、自尊感情や自己肯定感を高めることで自主的な問題解決能力を育成し、責任を果たすことができる人間性を形成すること」を運営方針として子どもの指導・支援にあたっている。
 生活のベースとなる支援では「生活指導の手引き」として、職員のあるべき姿、子どもへの支援・指導のあり方などが明示されている。信頼関係を築くための「共動」「有言実行」「奉仕」を指導の軸としながら、子どもが職員によって違う指導・支援だと感じることのないように細かく生活上の指導・支援方法が記載され、この「生活指導の手引き」は全職員に配布されている。常時携帯する職員もおり、職員の支援・指導が一貫性をもつための基盤となっている。
 
〇新潟学園の新支援体制「ステップアップ制度」が定着し、子どもの支援の体制が確立している。
 令和2年度に新設された「ステップアップ制度」が運用されて4年目となっており、マニュアルとして「新潟学園の新支援体制 ステップアップ制度 2023年4月1日版」に基づいて支援が展開されている。この支援制度は、当施設の支援の基軸となっており、【①肯定的評価の積み重ねと客観的な評価・指導の実施】【②個別な課題の設定と指導】【③自己評価と他者評価による行動指導】の3つの枠組みで構成されている。令和2年度以前の「事故点制度」の課題を解消し、子どもの自立支援計画と連動し、子ども自身が他者(職員)とともに振り返りながら、自分の目標達成に向けて、日々、スモールステップを積み重ねていけるような仕組みになっている。施設職員だけでなく、分校職員も週単位の「ふりかえりタイム」に参加し、新潟学園全体で子どもの目標を肯定的指導・支援の視点を中心に評価をしている。
 今回の第三者評価に伴い実施した子どものアンケートの項目「施設の大人たちはあなたの良いところをほめてくれますか」に対して「はい」が91%、「施設の大人の人たちは、あなたが成長していくために取り組む目標、あなたのやりたい事や将来について話を聞いてくれますか」に対しても91%の子どもが「はい」を選択しており、この制度の支援・指導が施設全体に定着していることがうかがえた。

【特に今後の取り組みを期待したい点】
〇人材確保が十分に行われ、より充実した支援が実施できることが望まれる。
 福祉人材の確保の評価項目において、令和4年度の職員の自己評価では「十分な人員が確保されていない」「業務負担が大きい」などの意見が複数あがっており、今回の第三者評価における訪問調査の時点でも、十分な人員確保が難しい状況が継続されていることがうかがえた。園長は都度、主管課に現状を報告・相談をして人材の確保に努めているが、職員募集をしても応募がない状況もあり課題となっている。社会的養護施設の人材の確保の難しさは全国的にも喫緊の課題となっており、当施設でも人材確保の課題に対してのさらなる取り組みがなされることが望まれる。
 また、専任の心理療法担当職員の配置がない状況も続いており、令和4年度の職員自己評価でも、多くの職員が専任の心理療法担当職員が不在の状況を課題と感じていることがうかがえた。令和5年度も心理療法担当職員の配置はないが、心理士の資格を所有する職員3名で「心理検討チーム」を構成し、施設内の心理支援の中核を担っている。しかし、生活支援・指導の職員も兼ねての業務となっているため、専任の心理療法担当職員を配置し、十分な心理的支援が実施されることが望まれる。

○中長期計画が施設職員全体に明確にビジョンとして明示され、進捗状況が確認できるような仕組みづくりが期待される。
 中長期計画は「新潟県社会的養育推進計画」との連動性をもち進めている。その上で施設独自に「子どもの規則正しい生活と成長」と「与えられた責任を果たせる人間性の醸成」という2点の具体的な達成目標が示されている。その2点の目標に対し、さらに具体的にどのような内容を、どのような期間で達成していくのかという点の3~5年の中長期的な計画策定と、達成度の確認をするまでには至っていない。人事異動の多い職場ということを鑑み、異動してきた段階でどのような計画のどの段階にいるのかが明確になることで運営支援の継続が実現しやすくなると考えられる。
 また、単年度の運営計画が事実上複数年をかけ実現すべく取り組んでいく目標となっている状況でもあるが、中長期計画については、県の社会的養育推進計画をよりどころにしつつも、施設独自の目標設定とそれに対する具体的な成果や、数値的な成果が年度ごとに明らかにされるような計画となるよう期待したい。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  今回の評価につきまして、「一貫性のある支援・指導」及び当園独自のステップアップ制度について高く評価していただき感謝します。今後、さらに児童の特性や施設の実態に合わせてブラッシュアップし、よりよい支援体制の構築を目指します。また、今後の期待に関しましては、課題の解決に向けて分析・検討を行い、よりよい運営となるよう努めてまいります。
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