【1】第三者評価機関名 | (公社)新潟県社会福祉士会 |
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評価調査者研修修了番号 | SK18103 SK18105 26006 |
【2】種別 | 児童自立支援施設 | 定員 | 34名 | |
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施設長氏名 | 石橋 一 | 所在地 | 新潟県 | |
URL | https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/niigatagakuen/ | |||
開設年月日 | 1909年05月01日 | 経営法人・設置主体 | 新潟県 | |
職員数 | 常勤職員 | 26名 | 非常勤職員 | 4名 |
有資格職員 | 管理栄養士 | 1名 | 心理療法担当職員 | 1名 |
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施設設備の概要 | (ア)居室数 | 2人部屋(約17㎡)、3人部屋(約22㎡)あり | (イ)設備等 | ホール(食堂)約85㎡ |
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(ウ) | 静養室 約9.8㎡ | (エ) | 自立支援室 約21.6㎡ | |
【3】理念・基本方針 | (1)理念 児童憲章、子どもの権利条約、児童福祉法等の精神に基づき、入所児童に適切な生活環境を提供しんがら、児童が抱える混乱状態、不適応状態を改善し、自己統制力や総合的な生活力を身につけ、地域社会で自立できる力を培うことにより、児童の権利擁護を図る。 (2)基本方針 自然豊かな開放的な環境のもとで、有害な刺激を遮断しつつ、規則正しい「一定の枠」のある集団生活を送る。また施設内の分校と連携し、生活と教育を一体化させ、強固な協働関係の中で一貫したチームによる支援を行う。その結果、児童が「自信(自己肯定感・自己有能感)」と「他者への信頼感」を取り戻し、意欲的な生活態度を持ち、自己の行動に見通しと責任ある態度がとれる力を身につけられるよう支援していく。 |
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【4】施設の特徴的な取組 | 1.ステップアップ制度の導入 これまで、きまりを破ると「事故」点・善い行いをすると「善行」点とし、行動を点数化して悪い評価を積み重ねて「行動に対する指導」をしてきた。しかし、児童にとってわかりやすい反面、児童の自己肯定感や自ら変わろうとする意識を醸成することができにくかった。この反省から、新たな支援制度に変更し、さらにケアの個別化をねらったもの。生活実態・態度等全般を簡単にチェックできる3ステップの「生活表」と自立支援計画に連動させた個人の課題である「個人ファイル」で構成、児童がセルフチェックし、職員も指導のツールとして使用している。なお、2週に1度ふりかえりタイムを開催し、「生活表」と「個人ファイル」を用い、他者から見た自分の確認と成果評価を実感させるための集団指導をあわせて行っている。「振り返りタイム」では、児童一人につき、複数の職員が児童の振り返りを肯定的に励ますことを旨として行っている。また、この司会を交代制で行うことで職員の様々なスキル向上をもねらいとしている。 2.性指導チームによるアプローチ 生と性について教えるべきを教え、過去の加害・被害に子どもとともに向き合い、性に関する問題発生の予防を目指して支援システムとした。マニュアル化している。具体的には、 ①性に関するアンケートを実施し、性に関する知識経験課題の状況を確認し、 ②「守ろう!安心・安全」という指導を行い、一緒に生活するみんなの安心・安全を守るためのグラウンド・ルールであるプライベートゾーンや境界線・男女の違いなどに関して説明・教育を行う。 ③性教育プログラムの実施。ステップ1:全員に対し、基礎知識を伝える。ステップ2:応用編の必要性と理解可能児童に対し、チームで内容・回数・進度を検討しながら実施(評価)する。 ※ただし、更なる進化と継続が必要と考えている。 3.中学卒業後の支援の導入 一定期間、高校等に進学後もその生活が安定するまで生活支援を行うもの。これまで高校等入学の時に家庭復帰や施設への措置変更を行ってきたが、その後不適応を起こしやすいという反省をもとに変更した支援。 4.子ども達が職員との24時間の生活や日々の課題への取り組みを通して、他者を信頼し、自分で考え行動することの大切さを学ぶ。こうしたことにより、「普通の、規則正しい、健康的な生活」が送れるように支援している。 5.施設内にある分校(希望が丘分校)で義務教育を実施している。授業は分校教員を中心に施設職員が補助的に入り、可能な限り複数の指導体制で、児童の習熟度に応じた個別的な指導を行い、学習の楽しさを経験することにより意欲、自信、希望をもち、学習全般の向上をめざす。 6.施設内での農芸や環境整備、施設外でのボランティア活動等をとおし、視野の拡がりや、働く喜び、社会で役立つことの充実感などを体験的に学ぶ。 7.地域の関係機関や団体をメンバーとする「新潟学園運営連絡協議会」を通じて、幅広く子どもの達への支援に参加いただいている。また多数のボランティアからさまざまなかたちで支援いただいている。 |
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【5】第三者評価の受審状況 | 2020年09月01日(契約日)~ 2021年03月04日(評価結果確定日) | |||
前回の受審時期 | 平成29年度 | |||
【6】総評 | 【特に良いと思う点】 〇子どもへの支援の水準、内容を常に実現できるように、園独自の支援制度を確立して実施している。 子どもへの支援の水準を図るための方法として、新支援体制「新潟学園ステップアップ制度」を令和2年度より本格的に導入している。児童自立支援施設をめぐる社会的変遷に対応する中で、支援方法として根付いていた前指導制度の在り方が園の課題となっていたため、県外への研修や支援見直しチームが検討を進めて本制度の実現に至っている。本制度は、子どもへの日常生活の支援において「職員が子どもに対しての肯定的評価の積み重ねと客観的な評価・指導の実施」、「個別的な課題の設定と指導」、「自己評価(子ども自身による)と他者評価(職員による)行動指導」を取り入れた園独自の支援体制である。本制度の中には「評価基準」等が記載されており、職員が交代制勤務の中でも、ある程度同じ基準で子どもへの支援や客観的評価・指導を行なう事ができるように構築されている。 内容には、子どもが自分の成長を体感して肯定的評価ができるようになることを目指していること、また、子ども一人ひとりの課題が「児童自立支援計画票」に連動するように配慮していること、子ども自身が他者から見られた自分についても考える機会が設けられていること等、本制度の支援方法の中に個別的な支援が実践されるよう策定されている。子どもと職員が双方で意見を交わしながら目標を前向きに設定したり、職員が子どもの成長している部分や良かった部分に着目してコメントしたりする本制度は、子どもの自己肯定感の育みや職員の支援の質の向上につながることもねらいとして有効に機能している。 〇性に対する教育・指導プログラムを策定し、入所児童への体系的な教育・指導体制を整え実践している。 平成26年度の第三者評価受審時より、性に関する教育の実施について検討を重ねてきた。他施設への研修、施設内での定期的な検討会を重ねながら新潟学園として「性に関する教育・指導プログラム」を策定し、支援に取り組み始めた。プログラム内容は『性に関するアンケート』『「守ろう!安全・安心」指導』『性教育プログラム及び性指導プログラム』により構成されている。プログラム等の流れを図でフローも作成し、どの時点でどの職員が関わるのかなど含めてわかりやすく示しており、チーム一丸となって実施する仕組みを整えていることがうかがえる。また、実際に施設内での入所児童同士での性加害・被害があった際の対応についての手順も策定している。実施状況については性に関する支援のチームが定期的に課題等の検証を実施することとしている。 〇子どもの最善の利益のために、自主性、柔軟性のある支援を行っている。 当施設は、施設種別の特性上難しいこともあると感じつつではあるが、子どもの話しをよく聴き、子どもの希望や意見を取り入れるなど子どもの主体性に配慮した支援をおこなっている。余暇活動では、子どもの希望をできるだけ取り入れボードゲームやカードゲーム、トレーニンググッズなどの購入をしたり、今後はギターの購入も検討するなど余暇の充実に取り組んでいる。施設のきまりなども、職員自身が子どもにきちんと根拠を示せないものに関しては変更を検討したり、部活動にバドミントン部を創設したり、子どもの生活の充実のために、職員が子どもの目線に立って柔軟な対応をとっている。寮内に置いてある流行漫画なども、規制をいれるのではなく、家庭に帰ったら手に取る機会がある必然性に意味づけしながら、感想を聞いたり話し合ったり、家庭内で行うような配慮を行っている。きまりや規則のある暮らしの中にも、自主性や柔軟性をもたせながら子どもの最善の利益を考えた支援を行っている。 【特に改善が求められる点】 ○児童自立支援施設職員として求められる職員像の策定を期待したい。 施設の職員研修計画が策定され評価・見直しがされているが、児童自立支援施設職員に求められる知識、技術水準、専門資格等を具体的に明示して職員に周知するまでには至っていない。これらは新採用や異動等、児童自立支援施設での勤務経験がない職員が勤務する際に、職務を行うにあたって必要な知識や技術水準について明示してあるものであり、これらを念頭において教育・研修を実施することによって、より効果的な人材育成につながると考える。現在、施設として新人職員、異動職員に対する研修を重点的に取り組んでいるところであるが、県の福祉行政職としてのキャリアアップのための職種別キャリアラダー、研修プログラムの構築が進められていることから、これらとの関連性を持ちながらの取り組みが期待される。 ○施設としての中長期計画の策定が期待される。 施設運営の上位計画として、平成22年から平成32年までの「新潟県子ども・子育てプラン(新潟県次世代育成支援行動計画)」が策定されている。計画の内容としては、施設機能の強化や家庭的養護の推進、地域で社会的養護を支える相談援助体制の強化、子どもの権利擁護の強化などが挙げられている。前掲の上位計画を基にした施設の中長期計画は策定されていない中で単年度の事業計画においては、園長は年度初めに施設の課題や使命、達成目標が記載された「所属方針設定シート」を全職員に説明している。 今後は単年度の事業計画策定や「所属方針設定シート」の作成にあたっては、施設として単年度の事業計画の他に中期的な計画を織り込むなど計画に基づいた組織的な課題解決への取り組みが期待される。 ○子どもの権利擁護に関することや職員の支援スキルに関しての規定等の策定が望まれる。 施設の運営方針は、運営計画に記載のとおり児童憲章、子どもの権利条約、児童福祉法の精神に基づき、入所児童に適切な生活環境を提供しながら、児童が抱える混乱状態、不適応状態を改善し、自己統制力や総合的な生活力を身に着け、地域社会で自立できる力を培うことにより、児童の権利擁護を図るものとしている。園長は運営方針のもと、職員に対し職員会議等で暴力の禁止や職員の子どもへの関わり方の具体例などを示している。しかし、職員が日々子どもと関わるにあたり、不適切な関わりの具体が示されたものや、虐待に至らないが職員がしてはいけない不適切な行為とはどのような行為なのかなどを示したり規定したマニュアル等の策定には至っていない。異動の多い職場環境を鑑み、園長からの講和や指導、寮での対応会議、新任研修などで経験として積むにとどまらず、新潟学園の歴史の中で培われた支援の基本や、当然のことかもしれないが、子どもの権利擁護についての理解を促し共有していくための規定やマニュアル等の策定を期待したい。 |
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【7】第三者評価結果に対する施設のコメント | 今回の評価で、当園独自の支援制度の試みと、性に関する指導の実践、並びに児童の最善の利益を念頭とした支援のあり方について、良い点として職員の頑張りを取り上げ、評価していただいたことに心から感謝いたします。 一方で、改善を求められる点としてご助言いただいた三点をはじめ、自己評価で新たに気づきを与えられた点につきましては、分析・検討を行い、課題解決に向けた取組を行い、より質の高い支援と施設運営となるよう努めてまいります。 |