社会的養護施設第三者評価結果 検索

栃木県済生会宇都宮乳児院

【1】第三者評価機関名 (特非)アスク
評価調査者研修修了番号 SK2021051  
T19001
T14001


【2】種別 乳児院 定員 80名
施設長氏名 荻津 守 所在地 栃木県
URL https://sunyuuji.org
開設年月日 1951年03月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人恩賜財団済生会
職員数 常勤職員 68名 非常勤職員 5名
有資格職員 看護師 14名 保育士 34名
児童指導員 4名 社会福祉士 2名
臨床心理士 1名 作業療法士 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 幼児室4、プレイルーム4、幼児室2、ほふく室2 (イ)設備等 広い園庭
(ウ) 屋内外への防犯カメラの設置 (エ)
【3】理念・基本方針 【理念】
 子どもたちの基本的人権を守り、家庭にかわって安定した人間関係の中で、
心身共に健康で心豊かな子どもを育成する

【基本方針】
1 健康な体に育てる
2 豊かな愛情で、情緒の安定をはかり、自主性と思いやりを育てる
3 豊かな生活体験ができる環境を、安全に整える
【4】施設の特徴的な取組 隣接する同一法人の済生会宇都宮病院との連携が出来ることから、県内唯一の医療型乳児院として病・虚弱児、障がい児等の受入れを行っている。また、職員体制として、多くの保育士のほか看護師も手厚く配置していて、児童相談所の要請に速やかに応じられるよう一時保護委託(緊急も含め)の受入れ体制も十分に整えるなど、養育・支援や健康管理等の面で安心・安全の確保に努めている。
また、平成27年4月1日に施設に併設された児童家庭支援センター「にこにこ広場」では、相談支援員(社会福祉士)や臨床心理士等の専門スタッフが、電話相談・来所相談(家族の心配事・子どもに関する悩み・子ども自身の悩み等)、県や児童相談所からの受託による指導、関係機関との連携などを行っている。
【5】第三者評価の受審状況 2023年08月15日(契約日)~ 2024年03月25日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和2年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
1 子どもを尊重した養育・支援の実践及び共通理解のための取組
理念や基本方針、様々な規程やマニュアル、養育・支援の標準的実施方法等には、子どもを尊重した養育・支援の内容が盛り込まれている。全国乳児福祉協議会が策定した倫理綱領に基づき作成された「自己チェック表」を活用して、職員に日常の養育・支援の状況の振り返りをしてもらい、施設の権利擁護委員会(月に1回開催)が集計・分析を行い、その結果を職員に周知して、子どもの権利擁護及び子どもを尊重した養育・支援の質の向上に努めている。令和3年度から「こどもの権利を考える会」という話し合いの場を設け、自己を振り返って「気づきのシート」に自由記入し、経験年数(初・中・上級)によるグループの中で日常の具体的な子どもへの関わり方や悩みを出し、話し合いや経験者からのアドバイス等を行っている。また令和5年10月には、応用心理学の大学教授を講師として招き、「院内における不適切な関わりを防止するための学習会」等も実施している。職員は「意識しよう・気づこう・子どもの思い」という言葉を大切にしていて、子どもの気持ちに寄り添った養育・支援の実践に意欲的に取り組んでいる。

2 地域の福祉ニーズ等を把握する取組
施設では、同一法人内の病院で受託する「宇都宮市つながりサポート女性支援事業」と連携し、保育士・看護師・相談員が施設内で生理用品を渡すことをきっかけに相談支援に繋げる活動を行うと共に、出張相談会へ参加し、生理用品の配布を行い、同時に健康管理や妊娠・育児等の様々な相談を受けてアドバイスや援助・指導等を行う取組を実施している。こうした取組の際に、児童家庭支援センター「にこにこ広場」のパンフレット配布や施設のショートステイ事業案内をする等してPRを行い、その後センターへ電話・来所相談やショートステイの利用につなげたいとしている。また、同時に「ひとりじゃないよ、助けてって言っていいんだよ」「一人で悩まず本気の大人を頼ってもいいんだよ」と声をかけることによって、虐待防止、ヤングケアラーや孤立孤独の支援にもつながることになると考え、地域の福祉ニーズの把握に努めたいと考えている。また、令和5年8月には、地元FMラジオ局の番組に院長が出演し、施設についての情報発信や相談窓口の案内をするなど地域への周知活動も行っている。

3 院長の施設運営への取組
院長の役割で大切なことは乳児院自体を一人でも多くの人に知ってもらうことと、企画・立案及び現況把握である。院長は就任以来、地域への情報発信としてタウン誌への掲載、地元FMラジオでのPR、「宇都宮市つながりサポート女性支援事業」との連携、施設見学者等への新たな資料作成など、乳児院の存在を積極的にアピールする新たな取組を行っている。また、職員の意識啓発に向けて「キャリアラダー制度(※)」を創設し、業界では初の試みである作業療法士(OT)を採用して養育・支援に結び付けるなど発想の柔軟さが窺われる。今後、乳児院に求められる時代に即応した諸機能への対応に関しても、即座に「将来のあり方検討会」を立ち上げて今後に備えるなど期待値は高い。
※キャリアラダー制度:(キャリア:経歴  ラダー:はしご)
    仕事の内容を難易度や賃金に応じて細分化し、職務の内容やスキルを明確にして、
ステップを踏むことができるよう、能力開発の機会を提供する仕組み


◇改善を求められる点
1 養育・支援の標準的実施方法の周知徹底及び見直しの取組
養育・支援の標準的実施方法として「宇都宮乳児院養育指針・保育マニュアル」が作成されているほか、養育・支援に関する様々なマニュアルや文書が作成されている。こうしたマニュアルや文書等は、職員は必要に応じて閲覧・確認して日常の養育・支援場面に活かしているほか、職員の理解を深めるため研修や学習会を実施している。しかし、職員アンケートの「標準的実施方法が周知徹底されているか」の項目では、4割弱の職員が「十分でない」と回答していることもあり、今後更なる周知徹底の取組が望まれる。
様々な標準的な実施方法については、各種会議や各委員会の会議で意見交換や検討を行い、権利擁護委員会がまとめて必要に応じて見直しをしてマニュアル等に反映し適正化を図っている。しかし、現在の保育マニュアルは、実施方法が細部にわたり記述され充実した内容となっているものの、かなりのページ数があり、内容も文章が羅列してある形式であることから、職員が十分理解し習得しやすいかという点が懸念される。今後、施設の役割や運営内容が大きく変わっていくことが見込まれるので、この機会に養育指針・保育マニュアルをはじめ養育・支援に関する様々なマニュアルや書面等について全面的な見直しを検討し、例えばイラストや画像・動画等を取り入れる、「保育マニュアル概要版(仮称)」等を作成して活用を図る等の工夫を行い、職員が理解し習得して実践につなげやすい内容にすることが期待される。

2 組織としての一体感を醸成する取組
 前回実施の第三者評価で「コミュニケーションの向上に向けての積極的な取組」が改善事項として指摘されている。今回実施した同評価からも、職員アンケートやヒアリングなどの情報を整理すると、同じ項目を継続課題として捉えざるを得ない。現場運営でどうしても必要になってくるものの一つに、組織間の情報の共有が挙げられ、スタッフ間のコミュケーションを円滑にすることが情報の共有には不可欠で、業務のスムーズな遂行につながる。一つの提案として、施設内には「グループウェア(※)」があり、スタッフ用の掲示板を活用して、意見・提案など誰でも自由に提言でき、議論できる場を有効活用することで、あらゆる階級・部署の視点で議論に参加することが可能になる。多種多様な意見・提案を通じて議論を重ねることが、風通しの良い職場環境とコミュニケーション作りに一役買うことに期待したい。
 ※グループウェア:組織内のコミュニケーションを円滑にし、情報共有や業務の効率化に役立つ
複数のアプリケーションが備わるITツール  
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント 今回で5回目の受審になります。感染症対策が継続されている時期での受審になりましたが、評価者の先生方には、時間をかけた熱心な対応と評価をいただきありがとうございます。今回の特に評価の高い点と評価された項目は、前回の指摘を受けた項目等でしたが、積極的に取り組み改善を図ったことを評価して頂けました。しかし、情報の共有や周知徹底については改善が不十分であり、ご指摘をいただいた点等を真摯に受け止め、グループウェアの活用等も含め取り組むとともに、職員の意識改革にも努めてまいりますので、よろしくお願いいたします。
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