社会的養護施設第三者評価結果 検索

徳島赤十字乳児院

【1】第三者評価機関名 (社福)徳島県社会福祉協議会
評価調査者研修修了番号 SK15129
S16051
S15059


【2】種別 乳児院 定員 45名
施設長氏名 横田 修二 所在地 徳島県
URL http://t-nyuji.main.jp/
開設年月日 1953年08月01日 経営法人・設置主体 日本赤十字社徳島県支部
職員数 常勤職員 41名 非常勤職員 1名
専門職員 保育士 24名 看護師 6名
准看護師 1名 管理栄養士 1名
調理師 4名 臨床心理士 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 寝室・保育室:8病室・観察室:2 (イ)設備等 生活体験室:家庭復帰や里親委託の準備のための専用スペース
(ウ) ログハウス:平時は憩いの場であり、災害時は一時避難場所として院庭に設置 (エ) 医療・福祉・教育に関わる施設との連携を可能にする立地
【3】理念・基本方針 理念
私たちは、こどもたちが児童憲章のもと、
その人権を重んじ、幸せになることを願い、
よりよい養育環境の提供に努めます。

基本方針
1 こどもたち一人ひとりの思いを汲み取り、安心して生活できる環境を提供します。
2 こどもたちとのふれあいを深め、豊かな愛着関係を築きます。
3 こどもたちの体調の変化に留意し、健康管理に努めます。
4 こどもたちが家庭に戻り、安定した生活を送れるように支援します。
5 ボランティアや地域と連携し、養育の専門性を活かした子育て支援に努めます。
6 職員は、専門職としてのより深い知識と確かな技術を身につけます。
【4】施設の特徴的な取組 ・職員へのコスト意識の徹底
・入所児へのサービスの質の向上(小規模グループでの養育体制の充実)
・地域子育て支援および里親支援事業の推進
・児童と保護者への心理的支援
・病虚弱児の受入体制の充実
・機能強化のための専門職員の配置
・広報活動の強化
【5】第三者評価の受審状況 2016年04月22日(契約日)~ 2017年05月30日(評価結果確定日)
受審回数 2回 前回の受審時期 平成25年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点

理念の実現に向けた中・長期計画等の策定と継続的な実践
理念・基本方針を具現化する中・長期計画、事業計画等を策定し、入所児童の養育体制の強化や子育て支援関係機関との連携強化、ボランティア活動の活性化などからなる7項目を柱とした重点方針と重点事項を掲げ、組織的に取り組んでいる。乳児院としての使命を達成するために、平成28年度からの中・長期計画には措置児童数の増加対応や障がい児や病・虚弱児の受け入れ拡大をさらに図るための施設機能の充実と人員の確保、人材育成のための教育・研修の推進など大きな目標に向かって組織全体の目指す方向性を示している。これらを踏まえた年次事業計画を策定しており、その年次事業計画には、前年度の事業報告等から抽出した課題などを明確にし反映している。とくに、養育・支援の質の向上に向けて、院長等を中心として養育・支援の質に関する課題や問題点を把握し、その課題等を明らかにしたうえで組織的に改善活動を進めていく体制を構築していることは評価できる。

養育・支援の標準化に向けたマニュアル等の整備
施設では、子どものプライバシー保護のほか、施設の運営に必要な各種マニュアルを整備している。特に、職員が共通の認識をもって養育・支援を行うことができるよう、標準的な実施方法の確立を目的として、従前のマニュアルを検討・見直し、新たに“徳島赤十字乳児院養育マニュアル”を作成している。作成した養育マニュアルは、養育・支援について細部まで網羅したものとなっており、職員の養育・支援のハンドブックとなっている。また、記録についても、“徳島赤十字乳児院養育記録基本マニュアル”を作成するなどして、記録方法の統一化を図っている。マニュアルは定期的に見直しを行っているが、子どもの状況に変化が生じた場合のほか、保護者や職員から意見や提案が出されたときには、職員会議で検討して改善するようにしている。文書化が難しい支援の内容については、職員会議の際にロールプレイを行うなどして職員のスキルの向上と共通認識化に向けて取り組んでいる。新任職員の育成に向けてプリセプター制を導入するなど、人材育成にも力を入れている。さらに、災害時における子どもの安全確保のため、事業継続の考え方に基づいて“災害対応計画書”を作成している。文書化されたマニュアルは職員に配布し、養育・支援を標準化しつつ、取り組んでいる。このようにして、施設全体で支援の質を向上させるための養育・支援の標準化や各種マニュアルの整備に取り組んでいることは評価できる。

子どもや保護者等への一貫した養育・支援に関する環境や体制整備への取り組み
施設では、基本的に入所から退所までを一貫して担当する養育制を取り入れており、職員はいつも子どもの心に寄り添って愛着関係を育むことができるよう努めている。子どもの発達状況や成長段階に応じた養育プログラムを準備し、成長を促す支援をしている。また、保育士や家庭支援専門相談員、心理療法担当職員を置き、看護師の配置を多くして、病・虚弱児、障がい児、被虐待児等を積極的に受け入れている。専門性を活用した自立支援計画と養育計画を策定し、子どものエンパワメントを高める支援に取り組んでいる。ハード面の設備では、年長幼児の小規模グループ活動は、日中活動の保育スペースと夜間に生活するスペースを分け、生活リズムの切り替えができる環境を提供している。また、里親育成・支援の拠点として、里親支援専門相談員を配置し、措置児童の里親委託を推進している。里親が決まれば、子どもと里親が個別に交流できる生活体験室を設置しており、家庭生活に近づけた環境の部屋で生活体験する設備も整備している。施設内は情緒が安定するような環境整備に配慮しており、子どもがのびのびと生活することのできる環境となっている。子どもの最善の利益を目指した理念や基本方針に沿って、子どもの育みを大切にしながら、適切な養育環境の中で一人ひとりが安心して暮らし続けることができるように配慮した養育・支援を推進していることは評価できる。

関係機関との協働による地域の福祉ニーズの把握と子育て支援機能の拡充
施設の主催する市町村との連携会議や要保護児童対策地域協議会の代表者会議や実務者会議、個別ケース検討会議において地域の福祉ニーズを把握し、“子育て短期支援事業”“病児保育事業”を実施している。施設独自の取り組みとして、子育て中の方を対象に、“子育てスペースにこにこほっぺ”を毎月開催し、親子の仲間づくりや悩み相談の場を設けている。同じく、平成28年度から、子育て食育講座として、離乳食の作り方やアレルギー対応を実習形式で学習する“ハローベビーすくすく”の機会を設定している。さらには地域の子どもの安心・安全に関する知識や技術を普及するため、赤十字幼児安全法指導員を県内各地に派遣し、幼児安全法の普及に努めている。このように、育児に不安や課題を抱える家族への支援を積極的に進めており、施設の有する専門的機能を地域社会で発揮している。また、子どもが大人と関わるなかで豊かな人間関係を培い、心の成長や人格を形成することができるよう、積極的にボランティアや実習生を受け入れている。継続的な活動が可能なボランティアには、保護者等との面会が望めない子どもに対する“心のケア”を目的とした“面会ボランティア”への協力を依頼している。ボランティアの受け入れや養成に関するマニュアルとプログラムも準備している。施設では、家庭的養護をともに担ってもらえる人材や退所後の子どもを支える人材や里親等の養育協力者の育成にも積極的に取り組んでいる。このようにして、様々な関係機関との協働による地域福祉ニーズの把握に努め、施設の有する子育て支援機能を広く発揮していることは評価できる。


◇改善を求められる点

療育・支援の質の向上に向けた組織的な取り組みの充実
施設では、虐待を受けた子どもや障がいのある子ども、病・虚弱児の増加、またDV被害や心身の状態により配慮が必要な保護者等への支援が喫緊の課題と捉えており、事業計画に小規模グループでの養育体制の充実、病・虚弱児への看護機能の向上、機能強化のための専門職員の配置(家庭支援専門相談員、心理療法担当職員、里親支援専門相談員)などに取り組んでいる。効果的な事業運営を目指すために、チームワークを大切にしているが、職員一人ひとりに課せられる業務についての分掌を明確にするまでには至っていない。全職員の業務分担を文書化して周知を図りつつ、職員が自らの責任・役割と存在意義を認識することができるよう、組織体制の強化に取り組まれたい。なお、管理会議や給食委員会、リーダー会等を実施し、その他の議案は職員会で活発に協議している。しかし、会議や委員会のあり方、目的を明確に明示するまでには至っていないことなどもあって、委員会が十分機能しているとはいえない。また、外部委員等で構成するサービス改善向上委員会等において話し合いを重ねているが、意見や助言等を得るなどといった活用は十分とはいえない。業務の効率化や部門間の連携、迅速な課題解決等に向けた組織体制の再構築、養育・支援の質の向上を図るための組織的な取り組みの充実に期待する。

総合相談の機能と役割を発揮するための人材確保・育成
施設では、入所時から退所時まで一貫した担当制をとるようにしており、職員は日頃の子どもへの養育・支援等を通じて、愛着の深まりから基盤形成を図ることができるよう支援することで、担当する子どもの家庭復帰の一助を担っている。また、家庭支援専門相談員は保護者等の相談にも応じている。しかし、子どもが家庭復帰するためには、地域住民の理解に加え、民生委員・児童委員やボランティア、NPO、関係団体等の協力、見守り支援等が必要不可欠であり、また、今後は子どもの抱える課題の多様化も予測されるため、社会福祉全般の知識を有する職員の配置と体制整備に取り組むなどして総合相談機能を発揮することが望まれる。看護師や保育士、家庭支援専門相談員、里親支援専門相談員、臨床心理士の専門職を配置しているが、関係機関との調整やスーパーバイズ機能を充実させるためには、社会福祉士等の資格取得や専門職の育成にも取り組むよう期待する。

子どもの発達を保障する食育の拡充
乳児の発達に欠かせない離乳食は、子どもの発達状況を踏まえたうえで一人ひとりの心身の状態に応じた取り組みを行うことが重要といえる。そのためには、乳児の発達過程と一人ひとりの状態の確認や嚥下・口の動かし方などを把握し、養育担当者と栄養・調理担当との話し合いによる十分な情報共有を行ったうえで、自立支援計画に沿った支援を進める必要がある。管理栄養士が管理者部会に参加するなどして、子どもたちの情報共有に努めているが、養育担当者がどのような手順や方法で子どもへと離乳食を提供しているか、また子どもたちがどのように食事をしているかなどを実際に確認するまでには至っていないため、子どもに関わる様々な職種の職員が、支援現場で連携を行うことができるような工夫に期待する。なお、栄養・調理担当者が中心となって、年長児には日々の献立を写真で掲示し、食事への興味や期待感をもつことができるよう取り組んでいる。月5回、子どもと職員で料理作りを行っており、料理を作る喜びや食材、食器に触れる感触、調理の過程を経験するなど、食事に対する興味やマナーの育成、食事への意欲にも繋がっている。今後は、小規模制の利点を活用したクッキングや日常的な食育に取り組んだり、行事食や季節感あふれる食材を豊富に取り入れたりすることができるよう、職員間で話し合われたい。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント 今回は、前回の受審時に指摘いただいたポイントを重点的に改善するよう取り組みました。特に、支援の質を向上させるための養育・支援、記録方法の標準化やマニュアルの整備については、職員全員の意見を取り入れるべく、定期的に見直しと検討を行い、常に最善の状態を維持するよう努めました。また、関係機関との連携強化と地域の子育て 支援強化を目的とした連携会議や食育講座の実施、ボランティア受入れの充実を進めました。これらの重点事項を取り組みの課程を含む細部に亘り拾い上げ、高く評価いただけたことは職員のモチベーション向上につながりました。3回目の受審となりましたが、毎回改善に向けての協議が職員間で活発に行われることで、日常的に日々の業務に精査し、改善を目指す視点と職場風土が養われたものと思われます。これからも高い評価をいただいた点はさらに発展させ、一方で、専門性の充実のための人材育成や組織体制の再構築、説明責任の確立と情報共有の徹底については、今後も継続した検討ときめ細かな取り組みを進め、入所児童をはじめ、ご家族や地域の皆様の利益向上のため、より一層サービスの質の充実を職員一丸となって目指してまいります。
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