社会的養護施設第三者評価結果 検索

大念仏乳児院

【1】第三者評価機関名 (社福)大阪府社会福祉協議会
評価調査者研修修了番号 SK15113
1502C031



【2】種別 乳児院 定員 25名
施設長氏名 杉田 善久 所在地 大阪府
URL http://www.dsw.or.jp/
開設年月日 1971年12月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人 大念仏寺社会事業団
職員数 常勤職員 35名 非常勤職員 8名
専門職員 社会福祉士 2名 保育士 20名
看護師 5名 栄養士 2名
調理師 3名 臨床心理士 2名
施設設備の概要 (ア)居室数 4室 (イ)設備等
(ウ) (エ)
【3】理念・基本方針 理念:一人一人の命を尊重し、25名の小規模施設の特性を生かし、家庭的な情愛のもとに健全育成する。
・家庭に近い環境作りに努める。
・子ども達の人間としての権利を尊重し、個々の成長に応じ心身ともに健やかにその発達を促す支援をする。
・専門的機能を生かし、保護者と子の絆を深め家族との再統合を支援する。
【4】施設の特徴的な取組 ①育ち日記の作成
 子ども一人ひとりのつながりのある育ちを保障するとともに、子どもが自分だけのアルバムを手にすることにより、自分らしさ(自尊心)を実感し、自己肯定感を持って生い立ちの整理(自分語り)が出来る様、養育者が子どものよき理解者として支援する事を目標としている。
 児童養護施設へ措置変更する児へは15歳を迎える児に対し、担当者職員より応援メッセージを残しています。
育ち日記は年度末に保護者へカラーコピーしたものをお渡しし、その際アンケート記入もお願いする事で、乳児院への要望・希望を確認しています。

②職員との個別入浴
 毎日職員1名が担当児中心(1名から2名)に児と一緒にファミリールームのお風呂場にて個別入浴を実施しています。
 職員と入浴する事でより密な愛着関係を築くようにしています。

③虐待防止マニュアルの作成
 全職員を対象に毎年虐待防止マニュアルの見直しが行われ、グループ別に話し合いがあり、不適切行為・誤解を受けやすい行為として新たな気づきを話し合っています。また何時もは問題行為としての自覚がない物でも、本年度入職した新人職員からの新たな目でみてもらう事で、世間とのずれを確認し児の権利擁護を守る様に努めています。
【5】第三者評価の受審状況 2017年07月20日(契約日)~ 2018年03月27日(評価結果確定日)
受審回数 1回 前回の受審時期 平成26年度
【6】総評 ◇施設の概要
 社会福祉法人「大念仏寺社会事業団(昭和33年設立)」により昭和42年7月に前身となる定員9名の「大念仏乳児預かり所」が設立され、昭和46年の名称変更「大念仏乳児院」と定員20名増員を経て、平成17年7月には現在地に法人各施設が入れる地下1階・地上7階の建物に全面建て替えを行い、3階部分を乳児院が使用し、同時に定員を25名に増員し、現在に至っています。養育は家庭的環境の中での個別的・愛着的な関係を重視した「養育担当制と小規模グループケア」が謳われ、併設事業として病後児保育、ショートステイ事業、(育児)相談電話が行われています。なお、法人併設施設である母子生活支援施設、保育所、乳児保育所、夜間保育、放課後児童健全育成、自立援助ホームも同建物内の各階を使用し、地域の児童の福祉拠点となっています。施設は「融通念佛宗総本山 大念佛寺(平安終期1117年開山)」の北側敷地内にあり(借地提供)、周辺は大阪市南東部の寺内町といわれる平野郷らしく、お寺が点在し、明治・大正・昭和の街並みが数多く残っている歴史の香りが高い地域です。なお、この地域は平野郷HOPEゾーンという地元の都市計画で、7階までの高さ制限があり、乳児院の3階からも家屋の街並みが俯瞰でき、採光豊かな南面は子ども達の居室(寝室・保育室・ほふく室・食堂)となっています。また、幹線道路(内環状線)から少しのはずれで静音環境も得られ、700m以内に3公園があり、お散歩コースに利用しています。最寄りの交通機関はJR大和路線平野駅徒歩5分、大阪市営地下鉄谷町線平野駅徒歩10分としています。

◇特に評価の高い点
養育・支援等の質の向上に向けた組織的な取り組み
 定められた評価基準に基づいて毎年、組織的に自己評価が実施され、第三者評価も定期的に受審しています。自己評価は、3つのグループに分かれて全職員で行い、主任、副主任等幹部職員がそれらをまとめています。まとめられた評価結果は分析された上、取り組むべき課題が明確にされ、改善計画に示されています。前年度の自己評価の結果から今年度の取り組み課題として、実習生指導研修の実施、感染症予防研修の実施、子どもの遊びの充実が事業計画に反映されています。こうした一連の取り組みは、施設の養育・支援の質をより高めるための取り組みとして大いに評価できます。

地域支援事業への取り組み
 法人・施設のコンセプトは「社会奉仕」であり、法人の運営するそれぞれの事業所において地域交流や地域貢献に関する様々な活動がなされています。当乳児院においても病後児保育事業、ショートステイ事業、電話相談事業等の地域支援事業や地域交流室における地域住民を対象とした講演会や設備の開放等の活動、また、災害に向けての防火水槽や簡易ポンプの設置や救助用資材の保管等を地域に周知、開放するなど、地域と一体となった取り組みは高く評価されます。

養育・支援の標準的な実施方法の文書化とその見直しの仕組み
 子どもの尊重や権利擁護が謳われた保育マニュアルを整備し、職員がマニュアルに基づいた標準的な養育・支援を共有化できる研修や新人指導体制が組まれています。また、個々の子どもについて年2回ケース会議を実施し、養育・支援についての見直しが行われ、自立支援計画にも反映されています。

発達段階に応じて乳幼児が楽しく遊べるような工夫
 「遊びの充実を図る」というテーマで保育士を中心に遊びの種類を増やす工夫がなされ、「遊びの充実ノート」に、子ども達の遊びを観察・記録し、遊び方の考案も提案されています。子ども同士の遊びでは、時計マークを利用し、順番意識の育成に努めています。個別収納も年齢に応じて設けられ、また年齢・発達に応じた玩具の分類・収納も図られています。

◇改善が求められる点
具体的な成果が設定された実施状況の評価ができる中・長期計画の策定
 現在の職場課題の一つである「家庭的養護推進計画」を柱に中・長期計画は策定されており、平成25年4月から3期に分けて小規模グループケアの取り組み計画が立案されていますが、付帯的な取り組み計画である「小規模化に向けての人材育成・人材確保の検討」「本体施設の機能強化について」等の計画は、目標段階の表示に留まり、具体的に実施状況の評価を行える内容になっていないので、これを改善するとともに事業遂行に向けた財務計画の策定に向けて取り組むことが求められます。

養育・支援の実施状況等の記録のネットワーク化
 施設が定めた統一書式(アセスメントシート等)によって子どもの状態像が把握・記録され、その結果は自立支援計画にも反映され、各種会議や回覧によって全職員での共有がなされていますが、今後の課題としてパソコンネットワーク化が望まれます。

個人情報の取扱いについての保護者への説明
「記録の管理について」に基づき記録の保管・廃棄等の個人情報保護が行われ、研修も行われていますが、保護者への説明・周知が不十分ですので、改善が望まれます。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  それぞれの評価項目で指摘された課題をまとめ、改善策を打ち出し、全体会議で話し合いを行い、全職員へ周知、共有することができました。
 また、29年度に力を入れた、実習生指導研修、感染症予防研修の実施、子どもの遊びの充実が高く評価されたことは、養育支援の質の向上につながり、今後も継続して取り組んでいきたいと思います。
 評価結果を踏まえて、社会的養育の充実と共に、理想とされる家庭的養育の理念に基づき、日々努力していきたいと思います。
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