社会的養護施設第三者評価結果 検索

大阪乳児院

【1】第三者評価機関名 (社福)大阪府社会福祉協議会
評価調査者研修修了番号 S24174
SK15180



【2】種別 乳児院 定員 80名
施設長氏名 末廣 豊 所在地 大阪府
URL http://www.nakatsu.saiseikai.or.jp/nyujiin/
開設年月日 1951年08月01日 経営法人・設置主体 恩賜財団済生会支部大阪府済生会
職員数 常勤職員 76名 非常勤職員 0名
専門職員 保育士 42名 看護師 17名
臨床心理士 1名 栄養士 1名
医師 1名 調理師 4名
施設設備の概要 (ア)居室数 (イ)設備等
(ウ) (エ)
【3】理念・基本方針 【運営理念】
1)子どもの最善の利益を守ります。
2)社会的養護の立場から、地域社会と協力して、子どもとご家族を支援します。

【基本方針】
1)病院併設型の特徴を生かして、小児科・リハビリテーション科など中津病院各科との連携をはかりながら、医療的ケアを必要とする子どもの保育看護に努めます。
2)施設養護のなかで可能な限り、家庭的養護、個別化をめざします。
3)子どもたちにできる限りの愛情を注ぎ、愛着形成に努めます。
 愛着関係や信頼関係を基本にして、生きる力の獲得、健やかな身体的・精神的・社会的発達をめざします。
4)子どもの発育・発達を促す保育をいたします。
 情緒や行動、自己認知・対人認知などに難しさのある子どもたちが、信頼関係や自己肯定感を取り戻せるような養育をめざします。
5)地域社会とのかかわりを大切にする施設運営を図り社会に貢献いたします。
6)事故防止・安全対策に努めます。
7)個人情報の保護に努めます。
【4】施設の特徴的な取組 ①病院併設型乳児院の特徴を生かした養育が可能
1)小児科との連携
 毎日乳児院内で診察が受けられ、血液検査や迅速検査が可能で、必要なら入院も可能である。定期健診、発達テスト、予防接種などが日常的に行われ医療的ケアの必要な児にとってはかなりメリットがある。

2)他科、他病院・施設との連携がスムーズに行える
 リハビリテーション科から毎日乳児院内でのリハビリが可能である(理学療法10名、言語療法3名)ので、頭蓋内出血後遺症も意外なほど予後が改善できている。皮膚科、整形外科、脳外科、形成外科、心臓外来などとの連携もよい。夜間急変時に、北野病院、市立総合医療センターへの搬送、中津病院オンコール医師との連携もスムーズである。これらの養育が可能なのは、大阪乳児院での保育・看護チームの連携プレーとサポート体制が大変円滑に機能しているところが大きい。

②徹底した感染症および事故防止対策
 大阪乳児院では重症疾患を持つ乳児が多く、たびたび流行する感染症により重症化しやすい。対策として、まず周辺での流行状況について情報を得ておいたり、職員の抗体保有状況を把握しておき、必要な場合はセンターの経費で予防接種をする体制が基本的に確立している。
 また、感染症対応マニュアルに基づいた対策(スタンダードプリコーションなど)を迅速に取れる体制づくりが可能である。事故防止委員会(毎月第4月曜)で各部屋の委員からヒヤリハット状況を報告、全体会でもこれをもとに事故防止の勉強会や対策を日頃から実施できている。万が一、事故が発生しても迅速な対応が可能である。

③院長、看護師長をはじめ、看護師や保育士、家庭支援相談員、里親専門支援相談員、心理士、栄養士と、乳児院で働く様々な職種が参加するケース会議を月2回実施し、部門横断的に子ども、及び保護者と子どもとの関係性についてのアセスメントを行い、具体的な養育・支援の方向性について協議している。対象児は、病虚弱児や発達に遅れの認められる特定児童だけでなく、全入所児について行えるように予定表に添って順次実施し、子ども一人一人の生育歴や発達段階、家庭環境を踏まえて、身体の健康や認知面だけでなく、情緒面や対人関係の側面からもサポートを行えるよう配慮している。

④専門性を生かした多職種協同のケース会議の実施
 多職種協同でケース会議を実施している。病虚弱児や発達に遅れのある特定の子どもだけでなく、全入所児を対象に、部門横断的に子ども、及び保護者と子どもとの関係性についてアセスメントを行い、具体的な養育・支援の方向性について協議している。主に、心理士がスーパーバイザー的役割を果たし、“育てにくい子” “気になる行動の多い子” の日常の養育や保育について専門性を生かしたアドバイスをしている。
【5】第三者評価の受審状況 2016年05月20日(契約日)~ 2017年03月07日(評価結果確定日)
受審回数 1回 前回の受審時期 平成25年度
【6】総評 ◇施設の概要
 大阪・梅田ターミナルにほど近く、周囲は高層ビルが林立、鉄道や道路が複雑に交差し、常に多くの人々が行き交う環境に立地しています。同法人が設置運営する総合病院と隣接し、同じ建物内には高齢者施設も設置されています。
 病院併設型施設としての特性を活かし、「他の施設では受け入れの困難な障がい児や病虚弱児を積極的に受け入れる」方針を掲げ、充実した医療・看護ケアを行うとともに、健常児と障がい児・病虚弱児の統合保育を実践しています。
 現在、移転・新築計画が進行中であり、子どもの生活単位を小規模化し、家庭的養護を推進していくことを目指した取り組みが行われようとしています。

◇特に評価の高い点
高い専門性に裏打ちされた施設長のリーダーシップ
 大阪乳児院は、特に医療ニーズの高い乳児への養育・支援に応えることで社会的養護にに多大な貢献をされてきたことが伺えます。その中で施設長は医療における高い専門性を発揮して、大阪乳児院への期待にさらに高い次元で応えていくために尽力していると認められます。加えて、社会的養護に求められている諸機能や役割も自覚し、養育・支援の質の向上、職員の就業環境の改善など、施設の適切な運営に多角的な観点から取り組み、リーダーシップを発揮しています。

職員一人ひとりの育成に向けた取り組みと研修機会の確保
 職員教育について要綱を策定し、経験年数に応じて職員に求めるスキルや目標を設定しています。それらをふまえつつ、職員一人ひとりが定期的に自己の業務や達成度を振り返り、フィードバックがなされる体制が整備され、人事考課とリンクして機能しています。また、特に新任職員に配慮したOJTシステム、専門性を高めるための勉強会など、内部研修も充実しています。さらに外部研修にも積極的に参加できる体制と配慮がなされ、養育・支援の質の向上が図られています。

子どもを尊重した養育・支援のための共通理解とその実践に向けた取り組み
 理念や基本方針をはじめとする概念や種々の文書から、子どもを尊重した養育・支援を実施する姿勢が一貫して伺えます。また、それらについて共通理解を図るための取り組みがなされており、職員が個々の取り組みをチェックして把握・評価することも高い頻度で行われており、高い意識とそれに伴う実践が認められます。

健康管理、感染症対策、アレルギー対策を含む医療ケアの充実
 医療機関と併設しているため、月齢の低い乳児や病児や障がい児の入所ニーズが高いことが特徴なため、看護師を多く配置し、診察は院長と嘱託医が感染予防の視点から院内で診察を行う等配慮が見られます。夜勤の看護師を増員し夜間の健康管理がさらに充実しています。新たに感染症リンクナースを配置し、感染症の予防対策、蔓延防止対策、研修に努めるほか、病児と障がい児の専門居室を設置して看護師を24時間配置し、健康管理はさらに充実しています。リハビリは医療機関から毎日理学療法士等が来院し、生活の中でのきめ細かい訓練が実施されています。アレルギー対策は、4名の小児アレルギーエドゥケイターを配置して、誤食防止の取り組みやアレルギー食物負荷スケジュール表の作成等質の高い取り組みが行われており、医療ケアはさらに充実しており乳児院のモデルとなる取り組みと評価できます。

自立支援計画作成のプロセスの確立
 全ての子どもについて、入所1か月後の自立支援計画の作成から、年2回のアセスメントシートの作成→ケース会議→自立支援計画を見直すという手順が確立しています。ケース会議には心理士や栄養士を含めた多くの職員が横断的に参加して丁寧な話し合いが行われ、情報の共有が図られています。
 アセスメント手法についても、様式を作成して、入所の背景や医療ニーズ、発達状況、保護者の意向等幅広い内容が網羅されています。短期間でプロセスが確立できていることは評価できます。

◇改善が求められる点
中・長期計画の具体化とそれらを反映した各種計画の策定
 中・長期計画は、家庭的養護の推進に関する事項以外は抽象的、概念的な段階です。現在進行中の移転計画が具体化されるに従って、具体性に富んだ中・長期計画の策定が待たれます。
 また、事業計画においても、中・長期計画の具体化に従ってそれを反映した単年度計画として、より具体性の高い計画としていくと同時に、各種計画へ関連づけていくことが望まれます。事業計画の策定や評価のプロセス、方法については現在見直しを図り、全職員が計画の推進、目標の達成に主体的に取り組めるよう改善がされていく見通しが立っていますので、その成果が期待されます。

親子関係の再構築支援、ソーシャルワーク機能の強化
 今年度は家庭支援専門相談員を2名に増員し、保護者へ子どもの情報提供や養育のアドバイスを積極的に行うほか、外出に同行する等親子関係の再構築支援を図っています。大阪乳児院の特色として大阪府内全域から医療ケアの必要な乳幼児が入所するため、地域の関係機関との連携に難しさがあります。現状としては、保育園面接への同行や療育センターの紹介、地域のケース会議に参加する等ソーシャルワーク機能の強化に努めていますが、まだ地域は限定されており、家庭訪問は困難な状況が続いています。家庭支援の体制強化を契機に、生活の場に出向いて家庭の状況を具体的に把握し、地域の子育てサービスの情報収集を行う等、親子関係の再構築支援・アフターケアの強化が望まれます。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  大社協による、第三者評価最終結果については、施設内会議(ビジョン会議・管理会議)で話し合いを行い了解をいたしました。
 委員の先生方には、大阪乳児院のことを本当によく知ってくださっており、当方からのすでに取り組んでいる点、今後改善する点などを詳細にご理解いただき、こころより感謝申し上げます。大阪乳児院は、約5年先に移転が決まっております。新しい乳児院にむけてすでに色々な計画に着手しております。
 今回の第三者評価の結果を平成29年度事業計画に反映させる予定です。本格的な移転までにもう一回今の乳児院で第三者評価を受ける事になるかもしれません。自己評価を含め、その時にはまたよろしくお願いいたします。
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