社会的養護施設第三者評価結果 検索

竜陽園

【1】第三者評価機関名 (株)中部評価センター
評価調査者研修修了番号 SK18210
SK18134



【2】種別 乳児院 定員 20名
施設長氏名 伊藤 貴之 所在地 愛知県
URL https://ryuyouen.com/
開設年月日 1967年06月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人 竜陽会
職員数 常勤職員 36名 非常勤職員 6名
有資格職員 看護師 7名 保育士 23名
栄養士 6名 調理員等 3名
施設設備の概要 (ア)居室数 4室 (イ)設備等 スプリンクラー設備
(ウ) 全室空調設備 (エ)
【3】理念・基本方針 ★理念
 竜陽園では、「子どもの最善の利益」を念頭におき、安全保障および保健衛生管理の基本に基づき丁寧な養育に努めます。

★基本方針
 乳児院は、様々な理由により家庭での養育が困難な乳幼児を、昼夜にわたり養育を行う社会的養育の場である。入園児童においては、心身の発育にとって大切な乳幼児期に家庭を離れて生活することになるので、施設が必要に応じた適切な援助をすること、並びに、人権を擁護することにより、明るく健康に育成し、あわせて退園した児童の相談援助に努める。
 また、保護者や児童相談所および市町村・保健所・病院・警察・NPO虐待機関・家庭裁判所・民生児童委員などとの連携を強化し、円滑な家庭支援と適切な自立支援の実施に努める。さらに、職員の専門性向上および知識や技術等の習得に関する施設の目標として、「愛着形成、事故予防、感染予防、生活の質の向上、発達援助」等を課題にした研修運営に努める。本年度は以下の計画に基づいて乳幼児が、個人の尊厳を保持しつつ、心身ともに健やかに育成されるよう努める。
 ・職員として、その役割に対して創意工夫の向上心をもって努める。
 ・児童虐待への対応のため、関係機関との連携をさらに強化させ、施設機能の充実に努める。
 ・児童福祉施設としての、家庭支援・自立支援等の福祉サービスの向上に努める。
【4】施設の特徴的な取組 1.小規模グループケアについての基本的な考え方
  幼児の養育に対しては、「小規模グループケア」がとても重要であると位置づけ、より一層の「きめ細やかなケア」及び「物語のある豊かな生活体験」を提供できるように努める。
2.自立支援についての基本的な考え方
  子どもが自立するための愛着関係(アタッチメント)形成の重要性を念頭におき、個々の子どもの行動、健康状態などを的確にとらえ適切な援助に努めるとともに、安心・安全感の保障を図る。
3.家庭支援・里親支援についての基本的な考え方
  円滑な家庭復帰に向けて児童相談所および関係機関との密な連携を実施したうえで、個々のニーズにそくした家庭調整に努める。また、厚生労働省の「里親委託ガイドライン」に基づき、里親支援にも努める。
4.権利擁護についての基本的な考え方
  主体者である子どもの自己決定支援を推進することが施設運営の基本として位置づけ、日常生活の中での安心感の保障と丁寧な援助に努める。また、全国乳児福祉協議会の「乳児院倫理綱領」・「より適切なかかわりをするためのチェックポイント-意識しよう 気づこう 子どもたちの思い-」及び愛知県の「被措置児童等虐待防止のために(施設等職員向けハンドブック)」に基づき、日々の業務を振り返ることによりサービスの質の向上に努める。
 その取り組みの一つとして、いわゆる「グレーゾーン(不適切な関わりと疑われる事象)」の根絶を目指すこととし、「瓜田李下」のごとく、「禁止言動等一覧表」を作成し、日常的な関わりの内容について、「見える化」「具体化」に努める。
スタッフ全体で、日常の言動等を振り返り、感覚、印象の個人差はあるものの、不適切であると疑われる事柄と、不適切ではないとされる事柄を洗い出し、意見交換したうえで、「見える化」「具体化」を図る。
5.地域関係についての基本的な考え方
  地域社会福祉協議会との連携を積極的に行うとともに地域学生の体験学習の受け入れおよびボランティア活動希望者に向けた運営要領を定め、安全と個人情報保護に配慮し、計画的に受け入れている。また、乳幼児でも参加が可能な地域の行事において交流を図っている。特に地元の間々原区に対しては、運営状況の報告等密な連携に努めている。
【5】第三者評価の受審状況 2020年06月18日(契約日)~ 2021年01月19日(評価結果確定日)
前回の受審時期 平成29年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
◆職員意識の変革
 従来、「当然やるべきこと」は実践するが、「やった方が良いこと」には消極的な対応をしていた。前回の第三者評価の受審を契機に、「やった方が良いこと」にも積極的にチャレンジする気運が強くなった。まさに、業務に対する職員意識の変革である。上手く食事が摂れない子どもに対し、安易に流動食やミキサー食に切り替えるのではなく、外部の言語聴覚士等の協力を得ながら、6名の栄養士が中心となって「食べる練習」から子どもへの支援を始めた。職員の意識が変わることで、結果も変わってくるという成功事例となった。

◆働きやすい職場の実現
 主任、副主任を中心に職場のまとまりがよく、安定した職員雇用が継続している。正規職員26名の内10名は8年以上の勤続年数であり、平均勤続年数は8年を超える。職員同士が調整して有給休暇を取得しており、職種・職階による有給休暇の取りづらさは感じられない。時間外労働は10分単位の申告制となっており、「残業申告簿」で職員ごとに管理されている。育児短時間勤務によってワーク・ライフ・バランスにも配慮し、現在育児休業中の職員が職場に戻った際にも適用を考えている。

◆積極的な地域との係わり
 事業の性格上、地域との交流・連携には一定の制限が課せられることは必定である。そのような環境下ではあるが、家庭から離れて暮らす子どもが心身ともに健康に育っていくためには、あるいは社会性を身につけていくためには、地域の力が必要であるとして積極的な取組みをしている。事業の報告書を、区長を通して地域に公開している。地域には理解者が多く、理髪店主は地域の不要なタオルを集めてくれる。神社の総代から、お供えのお菓子や余り物が届く。子どもと一緒に買物に出れば、お店の店員から子どもにプレゼントがある。交流する高齢者施設のお年寄りからもプレゼントが届く。

◆高い意識での「食」の取組み
 給食に携わる6名の職員が栄養士資格を持ち、高い意識を持って子どもの食事を支えている。月1回の会議で、子ども一人ひとりの咀嚼・嚥下・健康状態・発達状況などの情報交換をしたり、調理方法を工夫したりと、子ども一人ひとりにより適した食事の提供を心掛けている。人気があったメニュー、残食の多いメニューを把握し、栄養面を配慮したうえで献立に反映させたり、調理方法を工夫するなどして、子どもたちが喜んで食事ができるよう配慮している。

◇改善を求められる点
◆体系的な研修体制の構築
 体系的な研修体制がなく、事業計画においても研修の方向性や方針、具体的な研修計画は明確になっていない。外部研修の履修後には「復命書」の提出を求めているが、受講した職員の「所感」が記載されておらず、研修レポート(報告書)としての体裁を有していない。キャリアパスによって「期待される職員像」を明確にし、各階層や職種別に体系的な研修体制を構築することが求められる。

◆事業継続計画(BCP)の策定
 大規模災害時には、東海北陸の18の乳児院間で相互に協力し合う体制をとっている。施設内では、防災委員会を立ち上げ、発災時の対応や連絡体制等必要な内容を定めている。月1回、様々な災害を想定した避難訓練を行っている。今後は、大規模災害に備えた事業継続計画(BCP)の策定を期待したい。今回のコロナ禍を振り返り、「感染症BCP」の検討も必要と思われる。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  前回の第三者評価受審の折に、評価者から当竜陽園のレベルに応じた効果的なアドバイスを受けたことと、自己評価における「適合性」「有効性」「妥当性」の評価手法を学んだことで、今回の第三者評価に向けた事前の自己評価についても、スタッフがグループ編成をして効果的に行うことができました。
 受審ヒアリングのときに、評価基準の各項目について、当竜陽園の取り組みの現状をスタッフが説明した折に、福祉サービス現場の評価経験が豊富な評価者が、的確に理解をしたうえで、「評価の高い点」及び「改善を求められる点」について、その都度具体的な助言をいただきました。
 「評価の高い点」に対する的確な理解とコメントは、日常業務に追われているスタッフのモチベーションの向上につながりました。
 「改善を求められる点」の各項目については、全体的に「PDCA」を意識したうえでレベルアップを図って参ります。特に「体系的な研修体制の構築」と「事業継続計画の策定」については、重点的な取り組み事項として、改善に努めて参ります。
第三者評価結果はこちら