社会的養護施設第三者評価結果 検索

泗水学園

【1】第三者評価機関名 (特非)アスク
評価調査者研修修了番号 SK18032
SK18035
SK18036


【2】種別 児童養護施設 定員 50名
施設長氏名 長 幸恵 所在地 栃木県
URL http://www.ashikagashakyo.or.jp/shisetsu/shisuigakuen
開設年月日 1957年04月30日 経営法人・設置主体 社会福祉法人足利市社会福祉協議会
職員数 常勤職員 28名 非常勤職員 7名
有資格職員 社会福祉士 1名 精神保健福祉士 1名
保育士 14名 臨床心理士 1名
管理栄養士 1名 調理師 5名
施設設備の概要 (ア)居室数 26室 (イ)設備等
(ウ) (エ)
【3】理念・基本方針 【理 念】
泗水学園の運営は、児童福祉の理念に根ざし、時代の担い手にふさわしい児童の自立・支援をめざして、計画的・組織的・継続的かつ実践的な諸活動を体系的、総合的に展開する活動であって、その具体的な方針は次のとおりです。
1 泗水学園の主体は児童です。この認識のうえに立って児童の自治を尊重し、学園生活のあらゆる機会をとらえ、自立した社会人をめざして、自ら啓発し成長できるよう集団的・個別的な生活指導を通して、援助・支援します。
2 泗水学園の生活は、より良い自立した社会人として巣立っていく基礎力の涵養をめざして、周到かつ綿密な計画のもとに継続的・具体的に実践します。
3 泗水学園の運営は、職員の分業と協業によって能率的に遂行されなければならない。運営の全領域にわたって、絶えず現状分析を行ない、問題点を整理し、解決しなければならない課題に、真摯に取り組む姿勢と現状改善に努める。そして、児童と職員の信頼を育て、学園で生活する意義と誇りを見出していきます。
4 職員は専門職としての自覚をもち、日々の生活支援・個別対応・自立支援・学習指導などにあたるとともに、協調的な分業活動によって、主体的に施設運営に参加していきます。
5 職場は、ゆとりと潤いのある園内生活を背景として、明朗で活気に満ちたものでなければならない。この具現は、相互理解と寛容に基づく和(協調)の精神が基調となる。職員は、良識ある社会人・職業人として職場にいける和(協調)の形成にあたります。
6 地域社会及び各学校等は、泗水学園運営の基盤であり、最も有力な理解者であることを認識し、常に交流を深めながら、児童養護・支援のネットワークを形成し、施設が拠点となるように努めます。
7 養護を必要とする児童を受入れ養育します。児童相談所からの入所依頼について、居室の制限がない限り全ての児童を受入れます。
8 すべての児童に高等学校等への進学を目指すよう支援します。能力応じ、県立学校・私立学校・特別支援学校高等部へ進学し、3年間通学して卒業することを目標とします。その過程を通して自立した社会人となるよう支援します。
9 昭和32年に事業を開始し、長い歳月にわたり努力を積み重ねて構築された伝統を継承していきます。更に時流の変化やニーズに鋭敏に対応した養護理念の具現をめざして、常に創意工夫を凝らすとともに、独自性を発揮しながら、児童福祉の充実に努めます。
【基本方針】
Ⅰ 養育方針
  児童は豊かに伸びる可能性を秘めている。その児童達がより良く生き、望ましい未来を創出できる力の基礎を、学園生活のあらゆる機会を通して涵養します。
  保育士や児童指導員が児童と接触を深めながら、規則正しい生活によって、児童の心身の健全な発達を促進し、人間性豊かな健康で明るい、自立した社会人となるように、集団的・個人的指導に努めます。また、安全で安心して暮らせる施設づくりを常に心がけています。
Ⅱ 養育目標
 1 じょうぶな身体とすなおな心を育てる。
 2 責任を重んじ、だれからも信頼されるようにする。
 3 率先してきまりを守れるようにする。
 4 感謝の気持ちと思いやりのこころを育む。
 5 発達段階に応じた自立を支援していく。
Ⅲ 養育の方法
  職員の言動が児童に及ぼす影響は計り知れないことを自覚し、正しい愛情と知性と技術をもって児童の養育にあたる。この視点から当施設の養育は、次の事項に留意する。(9項目の留意事項は省略)
Ⅳ 具体的な指導の方針
   指導の実効性を確保するために、養育方針・養護目標の構成をもとにして、次にあげる事項に十分留意しながら具体的な指導にあたる。
(13項目の留意事項は省略)
【4】施設の特徴的な取組 泗水学園は、足利市の指定管理制度により足利市社会福祉協議会が受託して運営している施設である。そのため、経営基盤は安定しているものの、管理・運営面での大きな変更や新たな取組については市や法人本部の承諾を得ることが前提となるため、施設独自で物事を進めていきにくい面もある。
施設は、道路拡張工事に伴い平成20年度に現在地に移転している。施設は、移転前から地域住民が施設行事に快く参加や支援を行い、職員や子どもが地域行事に積極的に参加し、小中学校の友達が施設に気軽に遊びに来るなど、地域との良好な関係を築いていた。移転に際しては、地域住民の一部から「同じ学区内に留まって欲しい」との要望もあり、施設建設に適切な用地も確保できたため、現在地に移転したという経緯があり、現在も地域との良好な関係を保っている。
【5】第三者評価の受審状況 2020年07月06日(契約日)~ 2020年11月26日(評価結果確定日)
前回の受審時期 平成29年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
1 地域との良好な関係の構築と盛んな交流
運営理念の中に具体的方針として、「地域や学校は施設の良き理解者であり常に交流を深めていく必要性がある」と謳っている。地元自治会に加入しており、育成会行事・地域のお祭り・町内の廃品回収、地域の社会福祉施設の行事等に、職員と子どもたちが積極的に参加している。また、昨年度市内で大規模な水害があったが、一部の中・高校生が災害ボランティアとして参加するなど、子どもにも地域に住む者としての意識が根付いていることが窺える。毎年園庭で納涼祭を開催し、関係機関・学校・地元住民や学校の友達など沢山の人達を受け入れ、模擬店を出したり子どもたちの出し物を披露するなど、地域と密着した行事運営を行い、昨年度は施設職員・子どもたち・来園者を合わせて約400名が参加し盛況であった。日常的にも、小学生から高校生まで、子ども達の友人が施設に遊びに来たり、友人宅に行ったり、一緒に外出するなどの交流が自然な形で行われている。

2 退所した後も卒園生に頼りにされる充実したアフターケア
アフターケア担当職員を配置し、就職して自立する子どもには、とちぎユースアフターケア事業協同組合の事業に参加させ、卒園時や卒園後に必要な情報や知識、問題解決能力が得られるように支援している。また、親子生活訓練室を利用した独り暮らしの生活訓練などのリービングケアを実施するとともに、卒園の一月前には個人用の銀行カードを作って利用方法などを教えている。卒園時には支度金を用意したり、引っ越しや諸手続を手伝ったり、アパートの下見に同行したりして、自立に向けた後押しをしている。施設に長く勤務している職員もいることから、退所後、施設を訪れる卒園生が多く、時にはお金を貸したり、転職や引っ越しの手伝いをしたりもしている。アフターケア記録には、裁判への付き添いや警察と連携した記述もあり、施設が卒園生の心の拠り所となり、退所した後もきめ細かな支援をしている様子が窺える。

◇改善を求められる点
1 養育・支援の標準的な実施方法の確立
施設は、標準的実施方法として、「基本方針に具体的な指導方針を記載」「快適に生活をするために(入所時説明資料)」を挙げているが、内容的に養育・支援の標準的な実施方法には該当せず、文書化されているとは言えない。標準的実施方法とは、職員が子どもの養育・支援を行う際の最も基本的な事柄であり、例えば生活場面における具体的な相談・援助技術・留意事項・業務手順・職員の協力体制、また入所時から退所後までのあらゆる場面における支援方法・体制等の、施設が提供する養育・支援のすべてを網羅したものである。現在、そうした養育・支援の軸となるものがないため、職員が一体感を持ち自信をもって子どもに関われていない状況が窺える。今後、施設長と職員が一体となって標準的な実施方法を早急に作成し、職員全員に周知徹底を図って、養育・支援の質の向上に取り組むことが必要である。

2 リスクマネジメント体制の確立
「事件・事故対応マニュアル」「無断外出・行方不明事故対応マニュアル」「送迎車・交通事故対応マニュアル」は作成されていて、職員の対応等は明示されているが、どのマニュアルにも子どもへの関わりについての記述が見当たらない。また、大きな事件・事故等は法人本部に報告する仕組みはあるものの、子どもの日常生活上の事故や怪我等の把握と対応を記録するヒヤリハットの様式は、利用されていない。現状では、組織として子どもの安全・安心な養育・支援の実施を目的とするリスクマネジメント体制が作られているとは言えない。今後、子どもの養育・支援に視点を置いた各種マニュアルの整備と職員への周知を徹底してリスクマネジメント体制の構築を図り、子どもの安全確保と事故防止に取り組むことが必要である。

3 中・長期計画を踏まえた単年度の事業計画の策定
令和元年度に小規模化・地域分散化を図るための中・長期計画(事業計画と収支計画)が策定されており、職員の育成や分園の設置場所その他について関係機関と協議を進めつつ、計画内容の更なる検討をしている。単年度の事業計画は、市との管理運営に関する年度協定に基づき、市の審査基準項目の各々に対応した事業実施の方針や考え方を記述する内容であるため、必ずしも中・長期計画に基づいた単年度計画とはなっていない。施設では小規模化・地域分散化に向けた取組は既に始めているので、中・長期計画を踏まえた施設全体としての取組や年間目標、各ユニットの年間の取組テーマ等をまとめた職員向けの事業計画を別途策定し、共有することが望まれる。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント 今回の第三者評価結果から多くの改善・見直し・整備が必要な点が明らかになりました。早急に取り組む内容として、養育・支援の軸となる標準的実施方法の作成と職員全員への周知徹底を図り、養育・支援の質の向上に取り組むことが挙げられます。また、子どもの安全確保と事故防止に取り組むために各種マニュアルを整備していますが、子どもの養育・支援に視点を置いた内容への見直し・整備が必要となりました。
 中・長期計画については、年間計画を作成するなど具体的に進められるように市や法人本部と協議しながら進めて行きたいと思います。また、施設全体の取組みや年間目標、各ユニットの年間の取組テーマ等をまとめた職員向けの事業計画作成も進めて行きたいと思います。
第三者評価結果はこちら