社会的養護施設第三者評価結果 検索

睦の家

【1】第三者評価機関名 (社福)大阪府社会福祉協議会
評価調査者研修修了番号 SK15113
SK15180



【2】種別 児童養護施設 定員 30名
施設長氏名 太田 浩之 所在地 兵庫県
URL http://nantanai.hyogo.jp/100/
開設年月日 2013年04月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人 南但愛育会
職員数 常勤職員 18名 非常勤職員 6名
専門職員 社会福祉士 1名 保育士 4名
社会福祉主事 10名 栄養士 2名
調理師 2名 中学校教諭教員免許 6名
施設設備の概要 (ア)居室数 23室 (イ)設備等 幼児ユニット・学童女子ユニット・小学生男子ユニット・中高生男子ユニット
(ウ) プレイルーム・多目的室・相談室・心理室など (エ)
【3】理念・基本方針 【理念】
1.利用者の意向を尊重し、利用者が尊厳を保ちつつ健やかに育成されるよう支援する。
2.良質、適切、総合的な福祉サービスを提供する。
3.地域住民及び福祉関係者と協力し、地域福祉を推進する。
4.サービスの質と経営の透明性を高めると共に、経営基盤の強化を図る。

【子育ての理念・子育て支援規準】
1.私たちは、こどもの権利を保障します。
2.私たちは、こどもの成長・発達を支援します。
3.私たちは、こどもの自立を支援します。
4.私たちは、地域の子育てを支援します。
【4】施設の特徴的な取組 ◇地域・学校・行政との連携
開設当初から地域住民の理解も厚く、要保護児童対策地域協議会ほか会議への参画等を通じて、地域や学校、行政との関係性を着実に育くんでいます。

◇自然環境に恵まれた立地
都会の喧騒を離れた静かな環境の中で、子どもたちはたくさんの自然や生き物に触れながら、のびのびと心豊かな体験を積むことができます。また、なかなか電車やバスを利用できない地理的環境において、登下校の時間などは子どもたちの体力づくりにもつながっています。

◇30人の少人数・ユニット化
学童以上の子どもたちには個室が用意されており、ユニット単位を中心とした生活により、子どもたちは職員のきめ細かなケアのもと、より落ち着いた環境で安心して生活することができます。
【5】第三者評価の受審状況 2015年10月19日(契約日)~ 2016年03月08日(評価結果確定日)
受審回数 - 前回の受審時期 -
【6】総評  児童養護施設「睦の家」(以下「当施設」という。)は、法人2箇所目の児童養護施設で、平成25年4月に開所した児童定員30名の小規模児童養護施設です。道路を挟んで子どもたちが通う小学校があり、施設の周りは自然環境に恵まれたのどかな田園地帯です。そんな中で子どもたちの生活空間は、1階に幼児、学童女児、2階に小学生男児、中高生男児の4つのユニット空間に分かれ、それぞれ6~8名の子どもたちが生活しています。幼児ユニットを除いて学童以上は全て個室が用意され、子どもたちはプライバシーが守られた快適な空間で生活を送っています。現在30名の子どもたちが入所していますが、それらの子どもへの対応や支援に向けて職員が一丸となって取り組んでいます。事業を開始してまだ3年、運営に関する規程類や養育支援に関する各種マニュアル類等には未整備な物もありますが、施設の基盤づくりの確立を目指して着々と進められています。

◆特に評価の高い点
◇家庭的養護を目指した取り組み
 前述のとおり、当施設は、家庭的養護を目指して施設を小規模化し、子どもの生活空間もすべて6~8名の小規模グループケアが営まれる体制となっています。幼児ユニットを除いて学童以上のユニットには全て個室が用意され、それぞれの階のユニットの4名の職員と、アットホームな環境のもと子どもと和やかで密度の濃い関わりを展開しています。こうした生活スタイルにより子どもたちはストレスが少なく、落ち着いた生活を送れ、また、安定感のある場所で、大切にされる体験を得て自己肯定感を高めています。まだまだ取り組むべき課題は存在しますが、施設における家庭的養護のあり方を模索しながら実現可能な部分から漸次取り組んでいこうとする施設の姿勢は大いに評価できます。

◇地域・学校との連携
 当施設の敷地はこれまで学校や保育所が建設されていた場所で、地元の住民も公共性の高い児童養護施設の建設や運営に大変協力的で、そういった土壌のもとで施設と地域の交流や連携は積極的に展開されています。地元の自治振興連絡会を始め市の子ども子育て会議に加入し、講演等で地域に貢献しているほか、市の社会福祉法人連絡協議会の立ち上げに関しそのメンバーの一員として児童問題だけでなく、福祉全般の相談に応じる取り組みに参画しています。また、一方で地元民生委員や更生保護女性会等の人がボランティアとして施設に携わってもらっており、施設と地域の関係は相互交流という形で進められています。また、学校との関係は非常に良好で、施設の子どもの養育・支援に関して大変協力的です。

◇子どもの権利擁護と子どもへの権利の説明
 年1回権利ノート「あなたの未来をひらくノート」を職員と子どもが読み合わせを行うほか、入所時にはリーフレットでプライバシー保護を説明する等、自己と他者の権利について理解を深める説明が丁寧に行われています。管理規程には“子どもの権利”について具体的な記載があり、職員は毎日のミーティングで「すべてのこどもに安心安全な生活を」を用いて養育の振り返りを行っています。また、全国児童養護施設協議会の「人権チェックリスト」を取り入れている等、ケアの基本として子どもの権利擁護を重視している取り組みは高く評価できます。

◇幅広い経験のある職員とのチームワーク
 新設施設で職員の経験は全体に浅いので、施設の基盤作りに長年の教育現場で経験のある職員が3名非常勤職員として役割を果たしています。小学校の校長経験のある職員は教育機関や地域社会との連携や職員への支援の役割を、学校心理士経験がある職員は若い心理職員のスーパーバイザー的な役割を、特別支援教育の経験がある職員は特別指導(スポーツ・創作活動・芸術活動等)の役割を担い、すべての職員から厚い信頼を獲得しています。その結果、福祉的視点と教育的視点の両方から子どもを理解していく体制ができており、施設のチームワーク作りに大きな役割を果たしています。

◇配慮のこもった食事
 食事は彩りよい変化に富んだ献立で、夕食はユニットごとで炊飯し出来立てのごはんを提供しています。また週3回の職員手作りのおやつ、子ども一人一人の好みに合わせた手作りの誕生日のデコレーションケーキ等、手間暇をかけ心のこもった献立内容を提供しています。子どもの嗜好調査結果を献立に十分に反映しており、子どもの満足度も非常に高く、食事の取り組みは高く評価できます。

◆改善が求められる点
◇各種マニュアル類の整備と実践の文章化
 施設開設以来入所児童の養育・支援について職員間のチームワークのもと熱心に取り組んでいますが、その取り組みの根拠ともなる「業務標準マニュアル」を始め施設運営における必要な規程やマニュアル類に未整備な部分が見られます。マニュアル作成の意義や目的について職員全員が再確認するとともに、現在実施していることの文章化から始め、組織的に規程やマニュアル類を作成し、それに基づいた取り組みが求められます。

◇事業計画の入所児童等への周知
 毎年度、事業計画は策定していますが、子ども等に周知すべき事柄が周知されていません。事業計画書にある「事業計画に基づく取り組み」は、施設での生活に関するその年度の重点目標と具体的な取り組みを明文化しているので、子どもの年齢や発達等に応じ、ユニット毎で説明するとともに掲示するなりして、子どもや保護者に対して周知に向けた取り組みが求められます。

◇スーパービジョンの体制
 スーパーバイザーについては実態として施設長、施設長補佐、フロアリーダーがその役割を担い、心理士には学校心理士経験のある職員が役割を担って、職員からの相談への対応や助言を行っていますが、施設としてのスーパービジョン体制は確立されていません。基幹的職員は配置されていますがスーパーバイザーとしての役割は不明確ですので、施設全体としてスーパーバイズ体制を確立し、組織力をさらに向上させることが望まれます。

◇施設生活のルールの作成
 入所の際に保護者と子どもに配布される「お知らせ」に施設生活のルールについて5項目の記載があり、説明が行われていますが、「お知らせ」は保護者向けの文書で漢字や抽象的な表現が多く子どもにはわかりにくい内容です。生活のルールや約束事等について子どもとの話合いを踏まえて確認し、わかりやすい具体的な内容を掲示することや、子ども用の「生活のしおり」等の作成、配布が望まれます。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  今回の評価結果については、事前説明・受審準備・訪問調査・評価結果の報告まで、綿密な計画の基に進めていただきました。そのため、こちらが準備すべきこともよく理解でき、評価に必要な職員の共通理解もしっかりと図ることができました。
 評価を受けた内容についても、職員でよく検討を行い、伸長すべき項目については工夫・改善を重ねながら継続することを確認できました。また、本施設で課題となる項目については、早急に準備すべきマニュアル作成や組織体制確立に向けた取り組みを開始しております。
 そして、平成28年度の事業計画等に盛り込み、評価を生かせる取り組みを開始することで、本施設の理念である「子どもの権利の保障・子どもの健全な成長と発達の支援・子どもの自立に向けた支援・地域の子育ての支援」を実現すべく、全職員で継続的なサービス向上に取り組んでいきたいと考えています。
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