社会的養護施設第三者評価結果 検索

風越寮

【1】第三者評価機関名 (株)中部評価センター
評価調査者研修修了番号 SK18210
SK18133
S2020117


【2】種別 児童養護施設 定員 30名
施設長氏名 伊藤 直明 所在地 長野県
URL http://fuetsu-ryou.com/
開設年月日 1946年02月14日 経営法人・設置主体 社会福祉法人飯田風越福祉会
職員数 常勤職員 23名 非常勤職員 3名
有資格職員 児童指導員 2名 社会福祉士 1名
栄養士・調理員 6名 保育士 11名
家庭支援専門相談員 2名
施設設備の概要 (ア)居室数 17室 (イ)設備等 本体施設
(ウ) 幼児・小規模グループケア棟 (エ) 心理療法室、講堂、地域交流棟
【3】理念・基本方針 ★理念
・子ども一人ひとりの権利を護り、個性や意思を尊重し、それぞれの子どもに沿った自立を支援していく。
・すべての子どもにとって、「温もりと安らぎ」ある環境作りに努める。
・卒業していった子どもたちが、いつでも気軽に立ち寄れ相談できる環境作りに努める。

★基本方針
・個々の特性を理解し、個々に応じた最善の支援に努める。
・子どもたちが常に意見を表明できる環境作りに努める。
・保護者(家族等)とは、連絡を密に取り常に子どもの状況を理解し、共にこの育ちのために最善の努力を怠らない。
・関係機関(学校・児相・病院・子育て支援課・司法等々)連携を密にし、最善の支援に努める。
【4】施設の特徴的な取組 ○子どもの権利擁護の徹底・・・施設内虐待の防止の徹底
 「子どもの最善の利益」の保障・人権に関する理解と、風越寮倫理綱領に基づき子どもの権利擁護に向けての更なる意識向上を図る。全ての子どもたちが、安心して暮らせる温もりある施設であり続ける。
〇チーム制の導入
 ベテラン職員・中堅職員・新人職員でチームを構成し、それぞれの担当児童についてチームとして支援目標等作成していく。自立支援・LSW等も含めチームで検討する。ベテラン・中堅職員からのアドバイスにより新人職員への習熟度アップも目的とし、職員間の連携もスムーズにできるように努める。また、リーダー会議も随時行いチーム間の関係も保てるようにする。
〇自立に向けての自立支援計画の策定と有効活用
 子ども一人ひとりに即し長期的視野に立った自立支援計画を策定し、日常の処遇の手立て指針にしていきたい。アフターケアは、今まで以上に充実していきたい。そのためにも、施設在所中の子どもと職員との心のつながりに向けた適切な関わりを大切にしていく。
○ライフストーリーワーク(以下LSW)の実践
 施設で暮らす子どもたちは、自身の生い立ち・家族関係等十分理解できず生活している場合が多い。乳児院や年少期から入所した子どもは、気がついたら児童養護施設にいた、というケースもある。子どもの出生からを正確に知ることにより、子ども自身の存在感・保護者への思い、自信を持って社会自立できるためにもLSWを実践していく。取り組みをはじめて8年がたつ、今まで以上に充実させていきたい。


○職員研修の充実・・・職員資質の向上
 入所児童の多様化、特には被虐待児や様々な課題を伴った児童の割合が増加しているなか、嘱託医を含め医学的心理学的立場の専門的研修会を実施し、知識と援助技術を習得し、より適切な支援ができるよう、職員資質の向上を図っていく。
○児童相談所はじめ関係機関との連携
 子どもの入所から退所・社会自立に至るまで児童相談所との日常的な緊密な連携の重要性は言うまでもなく、児童相談所の持つ機能を大いに活用できるよう常に連絡を取り合っている、また、市町村への児童相談窓口の一部移行、子育て短期支援事業(飯田市・阿南町・高森町・阿智村)の実施に伴い、市町村担当者との連携も大切にしている。
その他、法的判断を必要とする困難ケースも増えており、顧問弁護士の有効活用とともに司法との連携も重視していく。
○学校との連携
 この四十数年にわたり学校との連携は、円滑で強固な関係にあると自負するところである。
年度当初実施している、「新任学校職員の寮訪問説明会」「学校・児相・寮6者連絡会」の他「学校・寮職員との交流会」「寮訪問学習指導」「子どもとの交流会」等を通じて、職員相互の連携は勿論のこと、子どもへの理解を深める機会としている。新規入所児童については、事前に学校と綿密な連絡をとり学校寮双方での受入体制を整えていく。
○家庭保護者との連携
 家庭との関係は切り離して考えられないものであり円滑な親子関係の構築に向け、調整を図っていく。子どものため親を支えることも大事であり、様々な機会を通し支援するとともに、定期的に子どもの成長状況を伝える手立てもとっていく。学校行事等々にも積極的に参加を促し、児童を理解してもらう機会をつくる。LSWについて理解を求め協力を依頼していく。
○地域との連携
 地域にある施設として、地域の一員としての施設としての役割を積極的に果たしていく。
具体的には、公民館活動への職員・子どもの参加の他、日常の地域の方々との関わりを大切にし施設の正しい理解を深めていく。災害時には地域からの支援は不可欠であり、自治会等と協定を結ぶ。
○危機管理
 施設運営および児童処遇の検証風越寮としての防犯体制を整備していく。地震火災をはじめとした自然災害をはじめ子どもに起因する事故事件に至る様々なリスクを抱えている、その際の的確な対応ができるための各種マニュアルの作成整備をするとともに、その対応マニュアルを使っての訓練を行い、いざという場合に的確な行動対応ができるよう備えていく。
〇住環境の整備
 現在の寮舎は、昭和48年に建設された。すでに48年が経過しようとしている。数年前より、移転改築の話題があり、具体的に令和3年度・4年度事業として計画を進めることとなった。子どもたちにとっても快適で職員にとっても今以上に働き易い職場となるよう努めていきたい。
【5】第三者評価の受審状況 2020年09月15日(契約日)~ 2022年02月03日(評価結果確定日)
前回の受審時期 平成29年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
◆施設長の責任感
 数年来の最大の経営課題は老朽化した施設の新築移転であるが、コロナ禍による建築資材の調達難と建設費の大幅なアップにより、当初の計画を見直さざるを得ない状況となっている。この難局にあたり、施設長が全責任を負って対応している。現在、助成を行う行政庁との調整を済ませ、設計図に手直し(施設規模の縮小)を加え、約2年遅れでの着工となる予定である。この道一筋(当施設の生え抜き)の経験豊富な施設長が、率先垂範して職員集団を牽引している。

◆固定観念の打破
 職員の安定的な雇用関係が維持されており、働きやすい職場環境が実現している。一方で、改善や改革が滞る施設運営の硬直化が懸念されている。その懸念材料を払拭するため、施設長が「固定観念を捨てる」ことを職員に要求し、職員会議では毎回職員1名が順番にスピーチを行う等、発言しやすい雰囲気づくりに努めている。その成果が表れ、現場支援のチーム化への移行や日課の見直し等の改善・改革が急ピッチで進んでいる。

◆「子どもの最善の利益」を追求する支援
 子どもの人権を擁護することを「基本理念」や「基本方針」、「倫理綱領」に謳うだけでなく、毎年職員全員が「人権擁護のチェックリスト」を使ってセルフチェックを行っている。その結果を施設長が集計・分析し、施設としての課題の抽出を行っている。その人権擁護の精神が全職員に行き渡っており、「子どもの最善の利益」を追求する支援が施設全体で実践されている。

◇改善を求められる点
◆効果的な研修とするために
 体系的な目標管理の制度が導入されていないこともあり、人材育成を職員の自己啓発と研修受講に頼っている。研修の履修後には「復命書」が提出され、「研修報告」欄には「施設で役立てたいこと」を記述させている。その内容からは、職員の意識の変化や業務に対する前向きな姿勢が読み取れる。その決意や奮起の気持ちが現場の支援に反映されたか否かの「研修効果の検証」を実施することが望ましい。また、新任職員へはOJTが効果的な研修手段として実施されているが、高いレベルの支援を均一に実施するためにも、OJTに関するマニュアルやカリキュラムを整備することを期待したい。

◆生活ルールのマニュアル化
 近年増加傾向にある発達障害の子どもに対しては、施設生活でのルールを職員が分かりやすく説明している。チーム制への移行や日課の見直し等によって、様々な生活上のルールの変更が生じているが、基本的なルールをマニュアル化して子どもに配付することを期待したい。配付する文書は、子どもの年齢や理解力等に配慮し、平易な文章や絵、イラスト等の工夫を望みたい。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  今回コロナウイルス感染症の影響により1年遅れの4回目の受審となりました。今回は、中部評価センターさんにお願いしました。今回の受審でも、様々な面でアドバイスいただき参考になった事が多々ありました。内容については、職員全員に周知し、引き続き前向きに子どもたちへの支援に努め、子どもたちが安らぎ温もりを感じながらすくすくと明るく成長し自立していくことができるよう、一人ひとりの人権を尊重し、最善の利益のため職員一致団結し取り組んで参ります。また、風越寮にとって近々の課題は、子どもたちの安全確保のための寮舎の移転改築事業です。諸事情により2年後の計画となりましたが、子どもたちは安堵感をもち、職員にとっても働き易い環境となるよう再度努力していきたいと考えております。
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