【1】第三者評価機関名 | (有)エフワイエル |
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評価調査者研修修了番号 | SK18110 SK18203 S18029 |
【2】種別 | 児童養護施設 | 定員 | 40名 | |
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施設長氏名 | 竹村 潤 | 所在地 | 長野県 | |
URL | http://www.go.tvm.ne.jp/~matuji/ | |||
開設年月日 | 1950年06月01日 | 経営法人・設置主体 | 社会福祉法人松本市児童養護協会 | |
職員数 | 常勤職員 | 32名 | 非常勤職員 | 3名 |
有資格職員 | 社会福祉士 | 2名 | 保育士 | 14名 |
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児童指導員 | 11名 | 臨床心理士 | 1名 | |
栄養士 | 2名 | 調理師 | 2名 |
施設設備の概要 | (ア)居室数 | 35室。小学生、未就学児童は2人部屋、中学生以上は個室でのユニット単位での生活。 | (イ)設備等 | 事務室、集会室、調理室、心理室、娯楽室、畑(約100平米)、自転車置き場(3か所) |
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(ウ) | 鉄棒、滑り台、登り棒、砂場、複合遊具、屋外バスケットボード | (エ) | ||
【3】理念・基本方針 | 「私たちは、社会的養護を担う援助者としての自覚を持ち、児童の権利を擁護し、自立の支援に努めます」の施設理念のもとに、以下の基本方針を定めている。 ・家庭的生活環境による「当たり前の生活」の保障 ・自主性の育成 ・学力の向上 ・家庭支援と自立支援 ・民生委員・児童委員との連携 ・施設の社会科 ・運営基盤の強化 |
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【4】施設の特徴的な取組 | ・生活単位の小規模化、家庭的養育環境下での養育の推進 生活単位を6~8名の児童による5つのグループに分け、その3つを家庭的環境の整備に努め、家庭生活の体験と常に職員がいる安心・安全な生活を提供している。 ・中学を卒業する者全員の高校進学と、施設独自のあずさ基金による、高校卒業後の進学支援の充実に努めている。 ・様々な社会的ニーズに応える施設経営 入所児童の養護にとどまらず、一時保護、子育て支援ショートステイ、里親支援レスパイトケアなどの受け入れによる多機能化による児童の幅広い権利擁護。 ・里親委託と支援の推進 里親支援専門相談員を配置して、里親開拓や支度の推進、入所児童の里親委託への移行など、法3条の2に沿った「家庭と同様の養育環境」の提供、それが適当でない場合は「できるだけ良好な家庭的環境」作りなどの支援を行っている。 |
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【5】第三者評価の受審状況 | 2020年05月18日(契約日)~ 2021年04月28日(評価結果確定日) | |||
前回の受審時期 | 平成29年度 | |||
【6】総評 | ◇特に評価の高い点 〇 生計、身計、家計の支援 松本児童園は北アルプスの美しい景観が眺望できる梓川のほとりにあり、あずさ運動公園、島内体育館に隣接し、広々とした落ち着いた環境にある。 また、自由に出入りできる敷地で、大舎制であった施設を上手に改修して小規模グループ化することで、より家庭的生活環境となり、基本方針である「あたりまえの生活」での養育・支援に努めている。 その松本児童園は民生委員・児童委員協議会が主体の社会福祉法人松本市児童養護協会が運営している全国的にも珍しい施設である。 そして、地域の委員から処遇検討委員会の役員や評議員になってもらい、施設全体についての意見や助言を得て運営に反映させている。 また、定期的な環境整備、大掃除、子どもとの関わりなどのボランティア活動、あずさ基金に繋がる賛同の寄付等、密着した関係もできていて、子どもの最善の利益を提供する環境も整っている。 松本児童園の子ども達は社会的自立に向けてHow Toマニュアルを基に、新生活全般について、必要な生活用品・ごみの出し方・金銭について・応援レシピ等々、細かな内容が習得できる。 また、退園半年前から自炊のできる部屋で、食材の買い物から調理、掃除など、随時ではあるが自立生活体験を通して習得する子どももいる。 大学や専門学校への進学を希望する子どもには、園独自のあずさ基金から奨学金を給付し、経済面での援助で学業に励めるように応援している。そして、就労していても事情で生活に困った時は貸与金としてあずさ基金を使い、生活の安定が図られるようにしている。 未来の安心・安全が期待できる、役所での住民票・印鑑証明の手続きや住民税の仕組み、健康保険や年金の加入手続き、電気・ガス等の契約手続き、住居の探し方や契約の仕方など、習得させる生計の内容も幅を持ち、支援の更なる充実もまもなくと期待できる。 家庭復帰や社会的自立後の子どもに対して、家庭支援専門相談員を複数配置することで、よりきめ細かな支援もある。 退園後の本人の気持ちに寄り添いながら、電話での会話、家庭、学校、職場への訪問など、いつでも相談や話ができる環境は、本人の安心を支えるアタッチメント機能を果たしている。 さらに、気軽に来園できる雰囲気で、盆、正月には定期的に泊まりに来る子どもなど、この施設が居場所や拠り所となっていることも分かる。 また、退園児サロンの開催が果たす役割も大である。 年8回程、定期的に開催することで来園者も多く、退園した子どもや親となった退園者が集まり、お茶を飲みながら話に花を咲かせたり、困り事の相談に応じてもらえるなど、気分転換や不安軽減の場として本人とその家庭を継続的な関係で支えている。 そして、この機会を通して、職員の振り返りも可能となっている。 健康管理だけでなく、ライフスキルの1つといえる生と性についても、子ども達にはCAPを通して自分を大切に、他者を大切にする気持ちを育てるとともに、保健師による年齢別の性教育で正しい知識や理解を持てるようにしている。 生活の場でも必要に応じて話をしたり、社会的自立を目指す子どもには特に念を入れている。 また、新たにマニュアルを作成し、予防ガイドラインでは過去における性的問題の発生状況、死角になりやすい場所と時間帯、予防のための取り組みについて、性的問題初期対応ガイドラインでは目撃、被害児・加害児への面接、進行、記録について等、これらのマニュアルを基にした研修の実施で、子どもへの効果も進むと思われる。 職員は、性的虐待防止のための点検事項の各自の自己評価で、振り返りの機会としている。 年齢に合わせた生と性についての分かりやすい教科書を作成中との事で、その完成と活用が待ち望まれる。 こうした子ども、職員共に、性被害者、性加害者とならないための、新たな取り組みへの発展で、人権意識も更に高まっていくと思われる。 人生の五計のうちの3つにおいての支援の充実で、希望を持って踏み出す子どもが想像できる。 ◇改善を求められる点 〇 状況の捉え方 現在の入所理由を考えれば、大勢の子どものなかには共生がむずかしい子ども、職員との関りを渋る子ども、決まりや約束を守れない子どもがいることは推測できる。 生活を共に過ごすなかで、社会に適応できる子どもに育つことは職員の願いであろう。 なぜなら、この状態で家庭復帰しても親とスムーズな関係は難しく、また、社会に出ても社会に適応できず、本人が一番困惑することが想像できるからである。 今までの発達過程を考えると、子どもが直ぐに身に付けられる課題ではなく先を見通しながら段階的に習得することが必要で、園だからできる事であり園でしかできない事でもある。 人間は自分が大事にされていなければ、他者を大事に思いやることはできないものである。 また、正常なアタッチメントがなければ、信頼関係の深まりは困難である。 子どもをどう育てるかばかりにとらわれ、子どもがどう育つかの視点を持ちたいものである。 養育する職員が主体になると全ては職員次第、養育に真剣に取り組まないと、子どもの育つ力を奪ってしまい、逆に、こんなふうに育てたいと熱くなりすぎれば、養育は職員の自己表現、自己実現の場となってしまう。 だが、育つ側の視点で考えれば、職員が抱く不満は当然の子どもらしさで、職員の勝手な願望に合わせて育てと言われても、子どもは困り、反発するのは当然となり、子どもに教える、与える、やらせるなどの主体は職員になってしまう。 そのため、職員は受容と迎合の違いを肝とし、問題行動にどのように対応するかが大切である。 権利の主体は子どもであり、養育とは子どもの育つ力を支え、見守り、伸ばすものであろう。 子どももまた支援者を育てるはずで、子どもが育つことで支援者も育ち、互いに成長できる。 どう子どもを育てるかだけでなく、どうすれば子どもは幸せに育つか、つまり、最善の利益の追求である。 子どもが子どもらしく育つために職員は何ができるのか、子どもと職員自身の成長の見通しが立てられる質の高い養育・支援の提供を各専門職には求めたい。 相手を先に変えようとするのではなく、自己理解、他者理解、相互理解、その場にふさわしい方法で自分の気持ちを表現するアンガーマネジメントや、子どもの心理状態を理解しようとする姿勢と対応するスキルを学ぶことで、適切な養育・支援がより可能と思われる。 〇 何を蒔くか 目標や意思がなくても、子ども達は生きていくことはできるが、意味のあることをしてもしなくても年月は過ぎていく。また、私たちは蒔いたものしか刈り取ることができず、何も蒔かなければ、当然ながら何も刈り取ることはできない。 では、いったい何の種を蒔いて、3年後5年後の自分の未来につながる何かに取り組むべきか、何の種を蒔くかは誰も教えてくれない。 もちろん期限もないし、催促されることもなく、自分で探し、選び、決断し、実践していくしかない一方で、何も蒔かなくてもしなければならない事は次々と出てきて、それらをこなすだけでも1日は過ぎていく。 意味のあることをしても、意味のないことをしても、等しく1日24時間は過ぎていき、努力した人の5年間もしなかった人の5年間も、同じ5年間ではあるが、でもそれが人の人生を決めていくので、今どんな種を蒔くべきかを考えるのが管理者の務めでもあろう。 理念を目指す構想を実現するためには計画力が重要で、どのように計画するかという思考力と、その計画を遂行する実行力を総合した力がいる。 ところが、便利で安心して暮らせる社会は、人間が人間として生きるために受け継いできた、この計画的思考を退化させてしまい、まさに、禍福は糾える縄の如しといえる。 仕事のできる人というのは、この計画力のある人といっても過言ではないであろう。 子どもの支援計画、職員の育成計画においても、緩急と遠近を意識した同様の計画が必要である。 計画が頓挫する理由として立案段階での、計画の目的・目標がはっきりしていない、頭の中だけで組み立てた計画になっている、状況判断を誤って計画している、目先の問題解決を積み重ねただけの計画になっている、複数の計画案のなかから選び抜かれていない。 また、計画の実行段階での理由には、計画通り実行する熱意に欠けている、計画実行の要をはずしている、終わりからの逆算ができていない、計画の適切なフォローアップができていないなどが挙げられる。 目的・目標を扱う3つのポイントには、計画の目的・目標を明確にする、目的・目標と手段を取り違えない、目標に期限を設定するが挙げられる。 人間は意識のどこかに目的・目標があると、自然に目的志向的な行動をとるものなのだが、脳は無限の選択肢がある場合には、一定の方向性を与えないと、有効な選択ができないという。 職員が組織としての目標をはっきりと自覚しているときには活力があるが、目標がはっきりしないと、そのエネルギーは仲間同士の葛藤や中傷に向けられ、組織は急速に精彩を失ってしまう。 したがって、管理者がまずやるべきことは、組織が目指す方向や目標をはっきりさせて、全職員に目的意識を持たせることである。 また、目標に期限をつけることで計画はより具体的になり、実現の可能性は更に高くなる。 哲人プラトン曰く、よく計画されたものは半分成功したと同じことである。 |
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【7】第三者評価結果に対する施設のコメント | 第三者評価の結果を受けて、高く評価していただけた点についてはとても嬉しく、更に良いものとなるよう取り組んでいきます。 改善点ではいくつかの課題がみつかりました。日々、子ども達と接している私達は精一杯のことを行っているつもりでも、まだ不十分だと気付かされます。 子ども一人ひとりを理解し、目的を持った計画をする思考力とそれを遂行する実行力は、支援する者として必須であり、それが職員主体でなく子ども主体のものであること。 職員全員がそれを理解し実行して行くには、どう職員に意識付けていければいいのか。 まずはそこを計画し、実行し、職員全員のレベルを上げ、子ども達の未来が明るくなる支援ができるよう、日々努力していきたいと思います。 最後に、第三者評価機関の皆様には大変丁寧に対応いただき感謝いたします。ありがとうございました。 |