社会的養護施設第三者評価結果 検索

くずはの森

【1】第三者評価機関名 (特非)福祉経営ネットワーク
評価調査者研修修了番号 SK15057
SK15059



【2】種別 児童養護施設 定員 35名
施設長氏名 佐藤 昇吾 所在地 山梨県
URL http://kuzuha.or.jp
開設年月日 1947年04月16日 経営法人・設置主体 社会福祉法人 葛葉学園
職員数 常勤職員 19名 非常勤職員 10名
専門職員 社会福祉士 2名 児童指導員 8名
栄養士 1名 保育士 5名
臨床心理士 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 (イ)設備等 ひまわり定員6名・あじさい定員11名
(ウ) あすなろ定員10名・かえで定員8名 (エ)
【3】理念・基本方針 1)理念
社会性の涵養、精神的な安定、健全な身体を養う事で、バランスの取れたより良い状態を図るべく、受容と共感の下、心の傷を癒すに十分な情緒豊かな関係性の営みを通して、安全と安心が確保された生活を提供しながら、最善の利益の実現を目指す。

(2)基本方針
安心、安全を基本とした生活主体の援助の中で心身の健康を育む。援助の方針には「自主・自立(自律)性を育てる」を掲げ、完全な人などはおらず、「出来る事は行い、出来ない事は人に頼り、教えを乞うことが出来る」こととし、大人との関係性の再構築を通して程良い甘え、依存する術を学ぶことが、適応的な社会生活を送る上では大きな力になると考えている。
【4】施設の特徴的な取組 家庭的養護推進計画のもと、子ども達に対して、個別、専門的なケアが行えるように本体施設の定員を下げ、より家庭的な環境での養育を目指しており、平成31年度には地域小規模児童養護施設の開設を目標に掲げている。定期的な第三者評価の受審、内部での自己評価の他にも、家会議や援助会議を設け、子どもの様子と援助内容の共有、児童精神科医によるSVを行う事で、職員個人、各家の孤立を防ぎ、養育を客観視する機会を設けている。また、外部研修に参加する機会を可能な限り設ける事で、個々の養育の質を向上し、研修報告で共有する事により職員の専門性、質の向上と共に援助内容を統一する機会としている。子どもの生活については、最善の利益を追求すべく、自由度の高い生活、選択肢を増やし豊かな生活が送れるように、適宜検討を行い、食育の視点では、以前は調理員がメイン厨房で調理したものを配膳していたが、子どもが食をより身近に感じられるようにと、子どもとの意向を聞きながら献立を作成し、食材購入から調理までの一貫した取り組みや、日常として担当職員が家のキッチンで食事作りを行う機会を、可能な限り設けるようにしている。
 また、職員の退職により養育者が変わる事は望ましくない事であり、永続的に働けるような環境づくりを職員全体で考えていけるように、定期的に職員間で「働きやすい職場づくりアンケート」を実施し、具体的な取り組みを考えている。
【5】第三者評価の受審状況 2017年04月20日(契約日)~ 2017年10月27日(評価結果確定日)
受審回数 1回 前回の受審時期 平成26年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点

○「子どもからの要望や苦情を検討・フィードバックするしくみを整えて透明性を高めており、実際に機能している」
 施設では、入所時に配布する権利ノート「くずはの森の生活」のなかで、何か困ったり悩んだりした時には話しやすい人に相談してほしいことを伝えるとともに、苦情箱を写真入りで掲載し、要望や苦情が施設長に直接届くしくみがあること等を紹介している。投函された意見、要望、苦情等については、改善の取り組みも含めて個別に文書でとりまとめ、2名の第三者委員が必ず閲覧・署名するしくみが定着している。また、匿名のもの以外はフィードバック方法を検討して子どもに必ず伝えるとともに、廊下の掲示板に寄せられた内容一覧表を貼り出して施設以外の訪問者に公表することにより、透明性を高めている。実際に、年間を通して子どもからさまざまな意見や要望が寄せられており、機能している。

○「子どもが生活の中で安全・安心を感じながら大人への信頼を育んでいけるように、「受容」と「共感」を基盤とした養育を心がけている」
 施設は、子どもにとって安全・安心を感じられる「最後の砦」であることを目指しており、小規模で家庭的な佇まいに整えた「家」という生活環境を提供するとともに、「受容」と「共感」を基盤とした養育実践を心がけている。根を下ろして落ち着いた生活を営み、職員との関係を継続、深めていく中で、信頼できる大人の存在を感じながら、子どもが安心して成長していける暮らしの構築に努めている。また、「家」単位での小集団の生活をベースとしながらも個別化を図り、生活における選択肢や自由度を広げることで、子ども一人ひとりの意思や希望に可能な限り応えていく姿勢のもと、子どもが「自立」する力を獲得していく過程を支えている。


◇改善を求められる点
●「グループホーム(地域小規模児童養護施設)の新設や人材育成等、年度を超えて取り組むべき課題を着実に推進していくための中・長期計画を策定していくことが期待される」
 平成31年度までにグループホームを新設することを家庭的養護推進計画に明示して取り組んでいる他、将来的には子どもの食事をすべて各「家」の台所で職員が調理することを目指している。また、年度を超えて取り組むべき課題として、性教育への取り組みや人材育成等がみられる。今のところ、これらの課題を着実に推進していくための実施スケジュールを明確にした中・長期計画の策定にまでは至っていないため、課題領域ごとに数値目標や達成時期を定めて計画立案し、単年度の事業計画書と連動させていくことが期待される。

●「養育の指針を定めた「養護ガイド」に加え、より実践的な観点から、養育とその根拠となる養育観を体系化、明文化した基準書の完成に期待したい」
 養育の指針となる「養護ガイド」には、養護目標、援助方針等、施設の目指している養育に関する基本事項が集約されており、年度当初、全職員へ配布を行い、共通理解を図っている。一方、今目の前の子どもの育ちにとって必要な支援と、ライフステージを見据えた時に必要となる支援では、子どもの最善の利益、ウェルビーイングを考慮した場合、どちらをどう優先するべきか等、職員間で都度話し合い、刷り合わせながら方向性を見い出している現状がある。施設では、「養護ガイド」に加え、「2本目のものさし」として施設の目指す養育の礎となる「養育観」を明確にした基準書の作成を経年の課題と捉え、現在、体系化、明文化の作業を進めている。支援に迷った時等、自分たちは何を大切な価値と捉え、養育にあたっているのか、を職員間で確認し合い、それを基軸とした「個別化」を実践していくための土台として、基準書の完成が期待される。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント 理念に掲げている受容と共感を基盤とした養育や、子どもの生活の様子等、日々意識して取り組んでいる事について評価を得られたことは大きな励みとなり嬉しく思います。改善点として挙げられた項目については、真摯に受け止め、組織的な取り組みにより改善に努め、より良い支援を展開していけるよう努めていきたいと思います。
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