社会的養護施設第三者評価結果 検索

聖母愛児園

【1】第三者評価機関名 (特非)ニッポン・アクティブライフ・クラブ ナルク福祉調査センター
評価調査者研修修了番号 SK15063
SK15066
S15024
S15115

【2】種別 児童養護施設 定員 96名(暫定90名)
施設長氏名 佐藤 慎一郎 所在地 神奈川県
URL http://seiboaijien.com
開設年月日 1946年05月31日 経営法人・設置主体 社会福祉法人 キリスト教児童福祉会
職員数 常勤職員 46名 非常勤職員 9名
専門職員 保育士 32名 児童指導員 10名
心理療法士 2名 栄養士 1名
調理師 3名 48名
施設設備の概要 (ア)居室数 42室 (イ)設備等 5LDK+Sのマンション型の生活空間
(ウ) 親子生活訓練室、心理療法室、地域交流ホール、園内保育スペース (エ) プール、リネン室、防災倉庫、職員宿舎
【3】理念・基本方針 家庭的な生活環境(小規模ユニット型)の中で、家庭的な養育を推進し、子ども達と職員が共に育み、互いに愛し、一般的な家族の概念を超えた、神の家族として成長していくことを基本理念とする。
【4】施設の特徴的な取組 社会的養護を必要とする児童に対し、安定した生活環境を整えるとともに、生活指導、学習指導、家庭環境の調整等を行いつつ養育を行い、児童の心身の健やかな成長とその自立を支援する。
【5】第三者評価の受審状況 2017年07月07日(契約日)~ 2018年02月02日(評価結果確定日)
受審回数 2回 前回の受審時期 平成26年度
【6】総評 【施設の概要】
 聖母愛児園は、社会福祉法人キリスト教児童福祉会を設置法人として、昭和21年4月にシスター達が病院内で置き去りにされた子どもたちの養育を始めて9月には乳児院を開設し、昭和25年4月に養護施設の認可を受け、現在に至っています。2010年に家庭的養護を念頭に3階建てのマンション形式の小舎制に改築し、小規模グループケアに取り組んでいます。定員は95名で、グループの単位を「ホーム」呼び、29年7月現在、2歳から18歳までの子どもたち67名が10のホームに分かれて生活しています。小規模支援体制の中で、職員は一人一人の子どもたちの発達を見守り、心身共に健全な社会人の一人として生きていけるよう、日々養育・支援に取り組んでいます。
 また、本園所在地の隣町に「本郷ホーム(6名定員)」を開設し、地域小規模児童養護施設として指定を受けるほか、本園の敷地内に同法人が「児童家庭支援センターみなと」を併設し、地域の子育て家庭のさまざまな困りごとの相談機関として、各種事業を展開しています。
施設周辺にはミッションスクールなどがあり、生徒や保護者をボランティアとして受け入れています。

【特に優れていると思われる点】

1、小規模グループケアによる家庭的養護の推進への努力
 聖母愛児園では、ホームの構成を2歳から18歳までの子どもの6~8名男女混合の年齢縦割りとし、疑似きょうだい・家族として、可能な限り同年代の子どもたちの家庭生活と同様の環境で子どもたちの成長が育まれるように支援しています。高学年児には可能な限り個室を確保するなど子どものプライバシー保護への配慮も行っています。
 ホームでは、生活日課はなく、勉強時間、テレビの予約や入浴などについては子ども同士で話し合い、職員と相談して決めています。ホームごとの外出先も子どもたちと話し合って決め、夏休みには海水浴や温泉旅行、キャンプなど、それぞれのホームで話し合って出かけています。
 地域の住宅を利用したより家庭的な雰囲気を持つ本郷ホームでは、地域に根差した運営を目指しています。制度上、職員配置に限界はありますが、施設としてできる限りの人員確保に努め、子どもたちは疑似家族の中で、職員の支援を受けながら生活しています。 
 職員が50名以上の大規模施設ですが、職員体制は1ホーム3~4名のホーム担当制で分散化されているため、職員が孤立しないように、主任が支援に入るほかホーム会議やフロア会議等で養育支援のあり方を振り返ったり共有しています。

2、他機関の協力のもとでの、自立支援に向けた取り組み
 自立サポート委員会を組織し、子どもたちの自立を目指した、インケア・リービングケア・アフターケアに取り組んでいます。
自立に向けて、小・中学生対象に、パソコン教室や社会体験ツアー、プロ料理人による食に関する知識や技術を学ぶ「ど根性料理塾」を開催し、子どもの将来への視野の幅を広げています。
 また、進路決定の参考となるよう、企業セミナー、ジョブ体験、オフィス見学なども企画しています。民間企業の協力のもと、子どもの個別の希望に応じて就労支援を行い、適性検査や会社見学、在学校との相談、就職試験と順序立てた支援が就職につながっています。
 高校3年生と卒園生、退職職員参加の「聖母にあつまろう会」を開催し、その中で子ども達は自立して生活している先輩の話を聞き、自分の将来像を描き、希望を持ってスタートを切ることにつながっています。
 職員の子どもの自立支援への意識を高めるために、アフターケア勉強会に主任が参加して情報収集し、園内研修などを通して職員に伝え、園でのフォロー体制の構築を目指して取り組んでいます。

3、地域交流の中での子どもの育ち
 施設の70年に及ぶ歴史の中で、地域に開かれた施設として近隣との良好な関係が構築されています。継続したボランティア活動として、周辺お世話になっておりますミッションスクールの生徒や保護者、パソコン教室講師、床屋さんグループ、衣類裁縫を主に行う水曜ボランティアグループなど、さまざまな人々とのつながりがあります。
 毎年開催するバザーには多くのボランティアの参加や来場者があり、子どもたちも模擬店を手伝ったり買い物をしたりゲームに参加しています。茶道コーナーでは、ボランティアに定期的に指導を受けている数人の子どもたちが、着物を着て、畳の部屋でお点前を披露したり茶菓を振舞うなど、日頃の成果を披露しています。子どもの興味や趣味に合わせて、地域の野球チームに参加したり地区の運動会、地域の盆踊りへの参加、太鼓クラブの地域の運動会での披露など、地域との交流も盛んで、子どもたちは、日々、学校の友達と庭で一緒に遊んだり友達の家に遊びに行ったり、地域の商店街に買い物に出かけ、地域の一員として育っています。

【特に改善や工夫などを期待したい点】

1、人材育成計画の整備と人材確保
 子どもへのより手厚い処遇に応えるため、法定配置基準職員数は雇用していますが、基準以上の雇用を目指しています。社会的な人材不足のため、必要な人材の確保が困難な現状があり、計画的な人材確保や育成もできない状況にあります。そのような中、施設のホームページに求人案内を掲載し、「福祉の仕事フェア」への出展や、養成大学等と連携して実習事前学習で説明するなど、仕事内容ややりがいなどを伝え、人材確保につながるよう努力しています。給与水準の見直しなども行っています。
 制度の中での運営は財政的な決まりごともあり、施設単独での方策には限界がありますが、施設として最善の努力を継続して人材を確保し、現在休止しているホームの再開が待たれます。

2、職員研修の充実による職員の質の向上
 新任研修は計画的に実施していますが、2年目以上の職員の体系的な研修は実施されていません。主任はホームの支援に入り、職員に生活環境の中で養育・支援のスキルを伝えていますが、ホーム体制で職員配置が不十分のため、適切にOJTが行われる体制にありません。外部研修においても、職員が必要な研修が受けられる体制は整っていません。スーパービジョン体制のシステム化も今年度の課題となっています。人員体制を整えて、園内外の必要な研修に参加できる体制を整備し、職員の質の向上に取り組むことが望まれます。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  今回の第三者評価で実施した利用者アンケートの中の「この施設は、暮らしやすく、安心して生活できますか?」の問いに、否定的な「いいえ」の回答は全学年とも低い結果でした。聖母愛児園では、子どもたちの安心安全な生活を守ることを第一に考え日々の支援を行っていますが、それが「いいえ」の数字として評価されました。
 2007年度、2014年度、そして今回の2017年度で3回目の第三者評価となります。第三者評価未実施の年度は、自己評価を行っていますが、やはり、第三者の客観的視点における評価が、真実に近いと感じます。
 良い評価は、福祉施設として当然成すべきことを行っている結果ですが、大切な事は、課題点を指摘していただき、今後の支援に生かしていくことです。
 幾つかの課題点をご指摘いただく中で、「子どもたちの声を聞く機会を作り子どもの満足度の向上に努めるように」との指摘があり、真摯に受け止め改善に向け準備を始めました。
 今後もサービスの向上に努め、子どもたちの安心安全な生活を守っていきたいと思っています。
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