社会的養護施設第三者評価結果 検索

ふれんど

【1】第三者評価機関名 (株)IMSジャパン
評価調査者研修修了番号 SK2021080
SK2021090
SK2021091


【2】種別 児童養護施設 定員 50名
施設長氏名 武藤 裕之 所在地 埼玉県
URL http://friend-san.jp/
開設年月日 2006年09月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人羽生福祉会
職員数 常勤職員 29名 非常勤職員 14名
有資格職員 社会福祉士 1名 保育士 12名
児童指導員 15名 心理士 2名
栄養士 3名 調理師 3名
施設設備の概要 (ア)居室数 本園居住棟6棟(居室数36室)地域小規模児童養護施設1棟(居室数4室) (イ)設備等 各棟に、リビング、ダイニング、キッチン、トイレ、浴室、更衣室、居室
(ウ) 本園に、事務室、地域交流スペース、図書室、心理室、昼間保育プレイルーム、親子生活訓練棟、厨房、宿直室、静養室 (エ) 園庭、グラウンド
【3】理念・基本方針 児童の最善の利益のために、安心安全な生活環境と「あたりまえの生活」が送れるように支援すると共に、養育者との信頼関係を築き、大切にされる体験を重ねることで、健全な心身の発達や社会的な自立、家族の再構築を支援していく。
【4】施設の特徴的な取組 【施設について】
・今年度で開設17年目の県内で2番目に新しい施設である。
・小規模ユニットケアで、家庭的な雰囲気を大切にしている。
・高齢者施設や乳児院が併設されているので、多世代間の交流をしている。
・子ども達一人ひとりの個性を大切にし、退所後の自律した生活を目指し、子どもに寄り添う支援をしている。
【職員について】
・比較的若い職員が多く、直接処遇職員の平均年齢は29.0歳です。
・活気があり、職員同士のコミュニケーションは良好です。
【5】第三者評価の受審状況 2023年07月19日(契約日)~ 2024年03月13日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和2年度
【6】総評 【特に評価できる点】

[1] 子どもが意見を表明する機会を多く設定し、子どもの意見を真摯に受け止めるとともに可能な限りその実現に努めており、そのことが子どもからの信頼を高めることにつながっているものと思われます

 施設では子どもが意見を述べる手段として、子ども会議、子ども会議ボックス、意見箱、苦情受付担当者への苦情申出、自立支援計画作成に伴う個別面談、随時の個別相談等を設定しています。そのうち最も多く利用される子ども会議は、各学期に1回棟ごとに行っています。議題は棟のルール、部屋替え、棟の旅行、職員からの提案等さまざまな内容で、話し合いの結果を尊重した棟の運営を行っています。棟で解決できない場合は、全棟会議や役付会議で検討します。最近例えば昼食代の値上げ、ネットショッピングができる範囲の拡大、高校生の帰園時間の延長等を行った事例があります。また、子ども会議では言えない、プライベートな内容、職員のミス等を訴える内容等は、意見箱や子ども会議ボックスに投函されたりします。それらを含め正式な苦情として取り扱うものは全て施設長が直接申出者と話し合い、該当部署に調査や改善を指示したり、申出者と時間をかけて話し合ったりしています。子どもが意見を表明する機会を多く設定し、子どもの意見を真摯に受け止めるとともに可能な限りその実現に努めており、そのことが子どもからの信頼を高めることにつながっているものと思われます。
 

[2] 自己と他者の両方を尊重しながら成長することを目標に、施設全体で生(性)教育に取り組んでいます

 生(性)教育検討委員会「わかば」が発足して10年を迎えました。自己と他者の両方を尊重しながら子どもたちがより良く生きていけるように年間計画を作成し、年齢に合わせた生(性)教育の機会を継続的に提供しています。
 小学生以下の子どもたちには「わかばの会」を年3回程度開催し、距離感やプライベートゾーンなどをテーマにした寸劇や絵本、スライドなどで学んでいます。自分たちでも寸劇を行い子ども同士で話し合う時間も設けています。中学生以上の子どもたちには「つぼみの会」を年3回程度開催し、コミュニケーションや性的同意などについて考える機会を提供しています。会で取り上げたテーマを手作りのポスターにして、年2~3回発行しています。トイレに掲示することで、プライベートな空間で振り返りをしやすくしています。さらに、年2回「わかばウィーク」という強化週間を設けています。幼児用から高校生用、職員用まで5種類のシートを用意し、一人ずつ専用ファイルに綴じて、それを見ながら、子どもと職員が一対一でゆったりと振り返っています。幼児期から、自分を大切にしながら他者を思いやることを一緒に考え、子どもがより良く生きていけるように施設全体で取り組んでいます。


[3] 毎日の朝礼や棟間の連携、ケースカンファレンスを通じて、現場職員が一人で抱え込まないように取り組んでいます

 現場職員が、子どものケースを抱え込まないように、棟をまたいでフォローする良好な人間関係を築いています。職員からは、職場の風通しの良さや、職員間・上下間の関係の良さを高く評価する意見が複数出ています。
 毎日の朝礼では、最新の子どもの状況を施設全体で共有するとともに、子どもが不安定になりそうな時には早めに情報を共有し、トラブルを未然に防ぐ対応を検討しています。不適応行動が発生した際には、隣の棟や内線を使い管理棟に連絡をして、職員が一人で抱え込まないように対応しています。ケースカンファレンスでは、子どもの心に何が起っているのか理解を深め、心理的な背景や対応方法について、スーパーバイザーや心理職、上司などから助言を受けています。職員の年齢層が比較的若いため、児童養護施設や児童自立支援施設、児童心理治療施設の専門的知識が豊富なスーパーバイザーを複数配置して、現場職員をサポートする体制を築いています。


【今後の課題と思われる点】

[1] 事業計画について、まずは施設の重点目標などを定め、PDCAサイクルを意識した進め方の型をつくっていくところから始めるとよいように感じられます
 
 施設では、中・長期計画を立てた上で単年度の事業計画も立てていて、計画的に事業を進めているように見受けられます。しかしながら、中・長期計画も年度の事業計画も、方針を示す段階に留まっており、具体的な達成目標を示すまでには至っていないように見受けます。
 毎年同じことを繰り返すのであれば、方針のみで対応することも一定の意義があります。しかし、社会や国の動向は常に変化しており、子どもたちも着実に成長し、施設内の状況も年々変化しています。このような変化に柔軟に対応し、より良い施設として存続していくために、施設自体も変化や進化を続ける必要があると考えられます。
 そのためには具体的な目標を掲げ、それを達成するための計画を立て一歩一歩前に進めて行く必要あるでしょう。例えば年度の事業計画では、1年後までに達成したい施設全体の重点目標をいくつか決めて、それを達成するための手段を考え実行し、適宜振り返りを行い取り組み方法が適切であるか否かを確認していくとよいように思われます。


[2] アフターケアの取り組みを、より組織的に、できるところから進めていくことが期待されます

 現在、副主任3名が退所者の相談窓口となり、専用のSNSを設けています。一方で、退所者は元担当職員と個人的なつながりを求めているという事情もあり、入所時に担当していた職員が個別的につながっている状況もあるようです。職員個々で把握した情報を共有していますが、現状のアフターケアが組織的な取り組みとなっていないことを施設では課題としています。まずは、退所者が集まる機会や、入所中の子どもとの交流する機会を設けてみるなどできるところから検討してみてもよいでしょう。例えば、「つぼみの会」で退所者に自立後の実体験について話をしてもらうなどの方法があります。今ある行事について退所者のホームカミングデーを兼ねる方法も一案です。さらに、上級学校に進学した退所者のアフターケアとして、奨学金について定期的に確認する機会を設けることで、関わっていく方法などもあります。


[3] 地域交流・地域貢献活動について、今後課題を克服しながら可能なことから一歩ずつ拡充し、目標とする開かれた施設づくりや地域における子育て支援の実現へと進展していくことに期待します

 施設では地域交流として、地域の運動会やかるた大会への参加、保育補助、学習支援等のボランティアの受け入れ等を行っていますが、総じて施設の地域交流はあまり活発とは言えないのが実情です。職員自己評価では複数の職員から、地域社会との交流が少ないとの意見があげられています。また、中長期計画において地域における子育て支援を目標に掲げ、その一環として地域住民のニーズがある相談支援の取り組みが必要であると認識していますが、マンパワーの課題もあり未実施となっています。地域交流・地域貢献活動は、地域の人々に施設を理解してもらい、子どもたちが地域の一員として楽しく安心して生活する上でも、防災、地域分散化、進路支援等地域で円滑に事業活動する上でも重要であると思われます。一方地域住民にとっても、気軽に相談できる地域の施設へのニーズは小さくありません。今後課題を克服しながら、施設の地域への開放、行事への招待、講習会の開催等可能なことから一歩ずつ拡充し、目標とする開かれた施設づくりや地域における子育て支援の実現へと進展していくことに期待します。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  今回の調査では、当施設の取り組みや課題を客観的に評価し、わかりやすく整理したいただきありがとうございました。特に、長年取り組んできた「生(性)教育」に関して高く評価を頂いたことは、職員にとって自信を持ってこれからも取り組んでいく励みになりました。また訪問調査では、丁寧にこども・職員に聞き取りしていただき、短い時間でしたが棟での生活や食事を共にしていただくことで、こども達のより良い生活へのアドバイスをいただくことができました。一方で、当施設の課題についても率直にご指摘を頂くことができました。課題と感じつつも着手できていないものばかりですので、これを機に課題をリストアップし、職員で話し合いながら改善に向けての取り組みをいたします。
 総合的に、多くの気づきを頂けた調査であったことに、重ねてお礼申し上げます。
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