社会的養護施設第三者評価結果 検索

旭川育児院

【1】第三者評価機関名 (特非)北海道児童福祉施設サービス評価機関
評価調査者研修修了番号 北海道第0142
SK2021018
SK2021009


【2】種別 児童養護施設 定員 76名 (うち地域小規模児童養護施設 6名)
施設長氏名 多田 傳生 所在地 北海道
URL http://asahikawaikujiin.hjk.ne.jp/
開設年月日 1921年10月24日 経営法人・設置主体 社会福祉法人 旭川育児院
職員数 常勤職員 53名(うち地域小規模児童養護施設 5名) 非常勤職員 17名(うち地域小規模児童養護施設 8名)
有資格職員 社会福祉士 7名 保育士 28名
精神保健福祉士 5名 公認心理士 2名
看護師 1名 栄養士 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 「ユニット4棟、2人部屋28室、幼児部屋2室」「小規模グループケア2棟、1人部屋14室」「予備室、1人部屋4室」 (イ)設備等 体育館、親子生活訓練室、心理療法室、プレイルーム、音楽室、図書スペース、、会議室、相談室1、相談室2、医務室、個別対応指導員室、厨房、食堂、事務室
(ウ) (地域小規模児童養護施設:居室数)2人部屋3室 (エ)
【3】理念・基本方針 【法人基本理念】
私たちは、子どものしあわせの実現のために力を惜しまず、地域の人々とともに、よりよい施設づくりに励みます。
【旭川育児院運営理念】
私たちは、次のことに努力してよりよい施設となることを目指します。
・子どもたちが安心して暮らせる施設
・子どもたちの人権と権利が守られる施設
・子どもたちの成長と発達が保障される施設
・子どもたちの社会的自立を最大限支援する施設
・地域に根ざし、地域に開かれた施設
【4】施設の特徴的な取組 1 子どもの人権擁護と最善の利益の追求
  新入所児童オリエンテーションにおいて「子どもの権利ノート」「被措置児童虐待の防止」「体罰の防止」等についてそれぞれのパンフレットに基づき院長が説明し、施設生活における子どもの安全・安心を守ること、日々の子どもと職員の振り返りの時間、「暴力等に関する全児童聞き取り調査実施要綱」に基づく年3回の子どもからの意見聴取、意見箱の活用、苦情解決窓口の設置などにより子どもの意見をくみ取る仕組みを整えています。
  また、平成28年に当法人独自の給付型奨学金制度を創設し、大学,短大、専門学校及び就職者等に対し必要な経済的支援を行うことにより、子どもの進路の選択肢を広げるとともに社会的自立に向けた支援を行うなど常に子どもの最善の利益を追求しています。
2 多様な活動を通した子どもの発達支援
  当院では小学生は、毎週剣道の稽古とピアノレッスン、全児童を対象とする季節ごとに実施するサマーキャンプや温泉旅行等生活にメリハリをつけるための諸行事を積極的に行っています。
  また、地域の方々からコンサートや旭川近郊へのドライブ招待、当院駐車場での花火師による花火見学など様々な体験を通した発達支援を行っています。
3 地域の人々とともに地域に開かれた施設づくり
  当院では、独自の地域交流行事の開催等により地域住民と積極的に交流を深めています。
  また、当院のグランド、図書スペース等を地域の子どもたちに開放したり、災害時においては、当院の体育館を緊急避難場所に開放する等地域に開かれた施設づくりに心掛けています。
4 職員の確保、専門性の向上、定着化を目指して
  平成30年に職員の労働環境を大幅に改善(4週6休から4週8休へ、1週間のリフレッシュ休暇の付与、職員の増員、勤務態様の改善、給与制度の改正、職員の健康診断の改善等)し、3年後位から退職する職員が大幅に減少し定着化が図られつつあります。
  また、定期的・計画的な内部研修の実施及び外部の研修会へ職員を積極的に参加させることにより職員の専門性の向上に努めています。
5 地域における公益的な取組
  当法人の給付型奨学金制度「社会福祉法人旭川育児院自立支援資金給付事業」を定款の公益を目的とする事業に位置付けていること、北海道社会福祉協議が実施している災害時に置ける職員の派遣事業への加盟、著名な児童精神科を招いての講演会や処遇困難事例のケースカンファレンスに当院職員に加え、地域の福祉、教育、医療、保健等関係機関に案内し被虐待児や発達障害の特性を持つ子どもの的確な見立てと適切な対応等について共に学ぶ機会を提供しています。
6 地域の社会的養育を支える専門的な拠点を目指して
  平成28年の児童福祉法の改正、翌年の「新しい社会的養育ビジョン」を受け、これからの児童養護施設に求められている「地域の社会的養育を支える専門的な拠点」を目指し、平成30年度に内部の組織として「地域・自立支援部」を設置し6名の専任職員を配置しました。
  具体的な業務内容は、多機能化、機能転換、高機能化に示されている24時間365日の子育て相談、フォスタリング機関の役割、ショートステイ、トワイライトステイ、児童相談所からの一時保護委託の積極的な受入れ、可能な限り医療的ケアを要する子どもの受け入れ等も行っています。
  特に、ケアリーバーの社会的自立に力を入れ社会的養護自立支援事業を積極的に活用し、要支援者の要望等に対し即時、即応を基本とするきめ細やかな生活相談や、国、民間団体の給付型奨学金制度と当法人の給付型奨学金制度を融合させ、要支援者が経済的に心配をすることなく社会的自立に向けて取り組むことができるよう一貫性のある継続的、長期的支援を行っています。
【5】第三者評価の受審状況 2022年07月28日(契約日)~ 2023年03月31日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和元年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
1 地域との関係を大切にした施設運営
 「子どもの幸せのために地域の人々と共に励む」という「法人基本理念」を具現化するために、施設として稀有な「地域・自立支援部」が創設されて、退所した児童のアフターケアのみならず様々な取組をしている。市内関係機関や身近な町内会との日常的な連携や地域住民と子どもたちとの交流が積極的に行われている。子育て短期支援事業にとどまらず、施設独自の子育て相談事業として「子育てお悩み相談室」を開設し、専用電話を設置して24時間の対応がなされている。
2 中・小舎等の各種施設空間を活用した養育・支援
 本館の中舎4ユニットと敷地内の小舎小規模グループケア棟2ユニット、地域小規模児童養護施設等の各施設を活用して、性別や年齢別等、子どもの成長や特性等に即した生活空間を提供し養育・支援に取り組んでいる。特に幼児のいる生活空間では、幼い子どもに対し年長の子どもが配慮の気持ちを考える対人関係の育ちを意識した養育・支援に取り組んでいる。また敷地に隣接する戸建て家屋を取得して、リービングケアや新型コロナ感染者発生時のゾーニング対応等に使用するなど、施設空間を多目的に活用し子どもに適した養育・支援に取り組んでいる。
3 実際的なリービングケア
 施設を退所する子どもが実際の社会で生活するために、予想される困難を想定してシミュレーションする支援を重要と考えている。「地域・自立支援部」が計画的なリービングケアを考え、不動産屋での体験や栄養士による食材の支援など実際的なリービングケアを実施して、退所する子どもができるだけスムーズに社会で生活できるような取組を行っている。

◇改善を求められる点
1 さらなる職員参画の方策の検討を
 コロナ禍にあって全職員による「職員会議」の開催が困難な状況で、事業計画と総括がトップダウンで管理層による「運営会議」を経て、それぞれのユニットで開かれる「ユニット会議」に伝達されている。事業計画の達成には、意見のボトムアップと事業計画を職員が理解することが、大切な要件と考えられる。職員の参画を念頭に、事業計画の策定と総括を行う時期や手順を明確にし、組織的・計画的に行うことができるように、体制を整備することが期待される。
2 養育・支援力向上のための標準的な実施方法の見直し
 職員個人の資質向上を目指すキャリアアップと同様に、施設の養育・支援力を向上させるため、100年以上にわたって築き上げてきた施設のノウハウを基に、養育・支援に関する新たな知識・技術、発達理論や障がいに関する様々な科学的知見等を活かし、標準的な実施方法の見直しに取り組むことが期待される。見直しに当たっては、各職員の専門的知見の実践対応を制限することなく、職員間の養育・支援の差異をなくし、一定の水準の共有化が図られるよう、柔軟性を持った内容として、実施方法を明文化することが期待される。
3 家庭支援専門相談員の機能充実
 家庭支援専門相談員が養護部と地域・自立支援部にそれぞれ配置されているが、その機能と役割が施設全体で共有されていない。親子関係の再構築や子どもの早期家庭復帰に向けて、施設全体で一体的にアセスメントをして、各家庭支援専門相談員がそれぞれの配置先に応じた役割を担うことで、今後の家族への相談・支援機能の充実に期待したい。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  総評欄に記載されている特に評価の高い点については、今後も引き続き充実・強化に努めます。
 また、改善を求められる点については、次年度の事業計画の重点項目に位置づけ、子どもたちの人権を守り常に最善の利益を優先した養育支援の実現に向け、職員一丸となって努力を積み重ねます。
 なお、今回指摘のあった各評価項目の「第三者評価共通評価基準」の判断基準、評価の着眼点、評価基準の考え方と評価の留意点に着目し、更なる養育支援の向上と施設の健全経営に努めます。
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