社会的養護施設第三者評価結果 検索

旭川育児院

【1】第三者評価機関名 (特非)北海道児童福祉施設サービス評価機関
評価調査者研修修了番号 SK15003
SK15153
S15084


【2】種別 児童養護施設 定員 76名(地域小規模児童養護施設6名を含む)
施設長氏名 多田 伝生 所在地 北海道
URL http://asahikawaikujiin.hjk.ne.jp
開設年月日 1921年10月24日 経営法人・設置主体 社会福祉法人 旭川育児院
職員数 常勤職員 37名 非常勤職員 8名
専門職員 社会福祉士 5名 保育士 14名
施設設備の概要 (ア)居室数 児童居室 22室、幼児室 2他 (イ)設備等 体育館、音楽室、図書館・コーナー他
(ウ) (エ)
【3】理念・基本方針 法人基本理念:
 私たちは、子どもたちのしあわせの実現のために力を惜しまず、地域の人々とともに、よりよい施設づくりに励みます

旭川育児院運営理念:
 ・子どもたちが安心して暮らせる施設
 ・子どもたちの人権と権利が守られる施設
 ・子どもたちの成長と発達が保障される施設
 ・子どもたちの社会的自立を最大限支援する施設
 ・地域に根ざし、地域に開かれた施設
【4】施設の特徴的な取組 1.子どもの権利擁護と最善の利益の追求
 旭川育児院では、「子どもの権利ノート」を活用した子ども一人ひとりとの面接、意見箱の活用、苦情解決窓口の設置などを通して子ども達の意見を汲み上げ、対応することにより子どもの権利擁護に努めています。
 また、子どもの最善の利益の追求の一つとして、当院独自の給付型の奨学金制度を創設し(定款の公益事業に位置づけている)、高校卒業後に大学、短大、専門学校へ進学する子どもの経済的な支援を実施しています。このことにより、経済的な理由で子ども達の未来の選択肢の幅が狭まらないようにしています。

2.多様な体験活動を通した子どもの成長支援
 旭川育児院では、小学生には体力の向上、礼儀作法の習得、豊かな情緒の育成を目的として、剣道の稽古とピアノのレッスンを実施しています。
 また、子ども達は、夏季には2泊3日のキャンプに参加し、虫捕りや魚釣りなど自然に触れる体験をしたり、冬季には1泊2日の温泉旅行で集団行動を学んだりしています。さらに、当院の活動を御理解御支援して下さる地域の方々から、コンサートや演劇、旭川近郊へのドライブなどに招待して頂くことがあり、子ども達の貴重な体験となっています。

3.職員の資質向上への取組
 旭川育児院では、各分野で委員会を組織しており、職員の専門性や養育支援の質の向上に努めています。特に、院内研修委員会では、児童精神科の専門医を招いてのケースカンファレンスを実施したり、性教育委員会では、旭川医科大学の教授を招いての勉強会を実施したりなど、外部講師を活用しての職員育成に力を入れています。

4.関係機関との連携
 旭川育児院では、小学校、中学校との定期的な連絡協議会や随時のケースカンファレンスを実施して、学校と連携した子どもの支援に努めています。
 また、虐待経験などにより心に傷をもった子どもについては、精神科の思春期外来の医師などと連携をしながら対応をしています。他にも、子どもの状況に応じて、市の適応指導教室や児童発達支援事業所を利用するなど地域の社会的資源を活用しています。

5.地域住民との関係づくり
 旭川育児院では、独自の地域交流行事を開催して地域住民の参加を呼び掛けたり、町内会行事や地域の神社祭に子ども達が参加したりして、地域との交流を深めています。また、当院の施設を災害時の緊急避難場所としており、年に一度、実際に地域住民が当院の体育館に避難する災害訓練を実施しています。
【5】第三者評価の受審状況 2016年11月17日(契約日)~ 2017年08月04日(評価結果確定日)
受審回数 1回 前回の受審時期 平成26年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
○地元町内の街づくりに貢献する地域福祉活動
 施設が立地している地区は人口減少が続いている地域であり、地元の各種行事や催事に子ども達の協力や参画は欠かせない状態となっている。施設の体育館などを使用した、地域交流行事(創立記念祭等)を施設が企画し、地域のカルタ大会にも体育館を開放している。職員も地域住民の一員として催事などに協力し関わっている。施設運営理念にある「地域に根ざし、地域に開かれた施設」を目指した地域福祉活動として、地元町内の街づくりに貢献している。
 また、災害時の拠点として地域の防災対策に積極的に取り組み、地域の安全安心を担う地元に根ざした地域活動が行われている。本体施設には災害時の備蓄空間が設けられており、地域の災害避難の拠点としても活用されている。すでに地域関係者と協議を重ね、災害避難所として地域住民に周知し、住民参加の災害訓練として施設の体育館への避難訓練が実施されている。

○施設の伝統的文化の継承
 剣道と音楽については幼少期から子ども達に積極的に奨励し、体力の向上や音楽を通じた感情や情操を育む支援を積極的に展開している。伝統とされている剣道は創設期の初代院長から引き継がれ、希望者には男女ともに小学生から指導を受けることが可能であり、各種の大会にも出場している。また、独立した音楽室の設置や各ユニットにピアノ室を設置し、小学生全員にピアノを習わせる情操教育を奨励している。ピアノの学習にはレッスン講師を毎週招いて、発表の機会を定期的に確保している。

○大学等進学への奨励と奨学資金制度の充実
 地元の学生ボランティア等を活用しながら、子ども達の学習の機会を保障するとともに、国立大学を含めた大学・短大あるいは専門学校等への進学者を送り出している。また、後援会等の組織を基盤にした施設独自の奨学金制度を創設し、経済的側面から進学者を支援する仕組みを法人として構築し充実させている。

◇改善を求められる点
◆中・長期計画の策定
 中・長期計画(中・長期の事業計画と収支計画)の早期の策定が望まれる。法人・施設の理念や基本方針の実現には長い時間と多くの課題を抱えることになる。効率良く段階的に課題を解決していくためには組織的な取り組みが必要になる。中・長期計画の策定とPDCAサイクルに基づいた取り組みを可能にする組織のあり方が望まれる。また、各計画を職員に配布し周知されることを望みたい。

◆職員一人ひとりの育成計画の策定
 社会的養護分野の職員養成は喫緊の課題となっている。職員の教育・研修に関する計画にもとづき、個々の教育・研修の機会を確保し育成することが必要とされている。職員一人ひとりが自らの目標を設定し、進捗状況と達成度の確認を行う体制を構築して自らの存在意義と働きがいを見いだせるような育成計画に取り組むことが望まれる。

◆スーパービジョン体制の整備
 職員一人一人が援助技術を向上させ、施設全体の養育・支援の質の向上を目指すには、人材教育の視点に基づいた施設のスーパービジョン体制の確立が重要である。施設内でのスーパービジョン体制には、スーパービジョンを実施できる人材確保が必要とされる。機能的なスーパービジョン体制には職員がひとりで問題を抱え込まないよう、スーパーバイジー自身が積極的に活用できるシステムが求められる。また、ピアスーパービジョンや外部のスーパーバイザーの活用を含むスーパービジョン体制の構築について検討されることを期待したい。

◆アフターケア体制の充実
 退所した子どものアフターケアは、家庭復帰、単独自立、措置変更ケースともに重要な支援の一つである。そのため一定期間は生活状況を把握したり、細やかな相談に乗るなどし、その記録を整備しておくことが望まれる。アフターケアが入所時に関係の深かった職員による個人的な責任対応にならないよう、相談対応の窓口を明確にし、個人情報保護等へ配慮をしながら、児童相談所などと連携した一貫性のある支援体制の構築が望まれる。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  社会的養護関係施設の第三者評価事業報告書の総評欄に記載されている特に評価の高い点については、今後も引き続き充実・強化に努めます。
 また、改善を求められる点について、速やかに改善できる事項については、改善に着手するとともに、それ以外の点については次年度の事業計画の重点項目に位置づけ、具体的な取組み方針を策定し改善に取組みます。
 今回の受診結果を真摯に受け止め、子どもの権利擁護と子どもの最善の利益の実現のため、常に福祉サービスを受ける子どもの立場にたって良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう職員一丸となって努力いたします。
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