社会的養護施設第三者評価結果 検索

岩内厚生園

【1】第三者評価機関名 (特非)北海道児童福祉施設サービス評価機関
【2】種別 児童養護施設 定員 55名
施設長氏名 高橋 一彦 所在地 北海道
URL
【3】実施調査日 2013年10月23日~2015年03月01日
【4】総評 ◇特に評価が高い点
1.子どもの人権を守る砦としての社会的役割の遂行
 岩内厚生園の活動のあゆみは明治に遡るが、その支援活動を支えてきた施設の精神的想いは、何処にも措置することのできない子どもの最終の受け皿としての役割を果たすことであった。当園においては、子どもを選ばない、可能な限り子どもを受け入れる姿勢を保持している。施設が一体となって養育・支援に携わり、子どもの生命と人権を守る最後の砦としての社会的役割を果たしていることは高く評価される。

2.受入れ困難な病・虚弱児、障がい児に対する支援
 岩内厚生園では病・虚弱児や障がい児などを受け入れる体制を作り、地域の保健・医療等関係機関と連携をとり、職員が一体となって養育・支援に携わっていることは評価される。病・虚弱児および各種の障がいの認定を受けた子ども(疑いのある子どもも含む)は、52名中46名であり、入園児の大部分が何らかの問題を抱える子どもで占められている。IQ69以下が10名である。通院状況は26名で、エーラスダンロス症候群、川崎病、橋本病、ランゲルハンス細胞組織球症、癲癇、乖離障がい、PTSD、ADHDなどの多様な疾患となっている。

3.養育・支援状況の可視化
 入所児への養育・支援は、PDCA的に記録する体制にあり、特に、見直しについては、子ども一人一人の「個別処遇改善状況一覧表」を作成して養育・支援効果を確認しながら実施する体制にある。基本として、半年1回の「自立支援計画書」、「処遇計画書」と日々の育成記録、そして、年3回の個別処遇改善状況一覧表記録を用いて、PDCA的に、子どもの強みや長所も把握されて養育が行われている。困難事例については、週1回のケース会議で合議される体制にある。支援目標を子どもに理解できる目標として「チャレンジシート」を作成し活用されている。

4.施設長のリーダーシップ
 施設長には理念や基本方針の実現に向けて、人事、労務、財務等の視点から検証を行い、支援の質の向上を図るための組織的なリーダーシップが発揮されている。また、北海道児童養護施設協議会長としての活動から、社会的養護の全体状況や支援ニーズを的確に把握し施設運営に取り組まれる努力をされている。

◇改善が求められる点
1.中・長期計画の整備と周知
 理事会において中・長期的なビジョンが示されているが、ビジョンの実現に対して、養護の内容、組織および職員体制、人材育成などの組織的な方向性について、全職員や保護者への理解を促すためにも事業計画に載せるなどの配意し、十分に説明する方策が検討されることを期待したい。また、各施設の家庭的養護推進計画の作成には、委員会を立ち上げ策定されることを望みたい。

2.標準的実施方法の確立と組織的協働の醸成
 子ども一人一人への養育・支援は、プライバシー保護を意識された中でPDCA的に、各スタッフの担当責任により機能的に実施されている。しかし、担当者責任が重視されるがゆえに、多忙な業務の中で、組織的協働面からの標準的な養育・支援手順などの整備がまだ不十分に思われる。プライバシー保護や被措置児童等虐待対応への留意点等を含め、組織的協働を意識した養育・支援の標準的実施方法の確立に向けて、更なる整備と検討を期待したい。

3.社会的養護の地域支援活動の拠点づくり
 施設運営の理念を実現するには、家庭的養護の推進と専門的ケアの向上、社会的養護の地域支援の拠点としての機能充実を図ることが求められている。すでに社会的養護の地域支援機能として、町内のDV家庭児童等の預りを実施している。地域のニーズを把握しながら地域支援の専門的な機能を強化し、地域の子育て支援家庭を含めた総合的な社会的養護の地域支援活動の拠点づくりが望まれる。

4.スーパービジョン体制の整備
 職員一人一人が援助技術を向上させ、施設全体の養育・支援の質を向上させるには、人材育成という視点に基づいた職員の支援体制の確立が必要とされている。施設全体のスーパービジョン体制は整えられていると考えられるが、職員がひとりで問題を抱え込まないように、スーパーバイジーからの積極的な動きが容易になるようなシステム作りが期待される。また、支援に困難を伴う子ども多いことからより良い援助技術向上のために、ピアスーパービジョン、主任制を活用したスーパービジョン、外部のスーパーバイザーを含むスーパービジョン体制を強化し整備されることを期待したい。

5.人事考課制度の検討
 人事考課の目的と役割は人材の能力開発と育成に活用されていること、公正な職員処遇を実現すること、職員個々の意欲を喚起し組織の活性化に役立つこととされている。施設が目標とする事業運営や人材育成をすすめる上で、公正で的確な評価が行われているかどうかは職員の仕事に対する意欲にも大きく影響する。適切な時期と客観的な評価方法による人事考課の導入について検討されることを期待したい。
【5】第三者評価結果に
対する施設のコメント
 この度、第三者評価を受診した事で、児童養護施設岩内厚生園に求められている事、今後の課題や改善を要する事項等の整理が出来たように思います。
 児童養護施設岩内厚生園では次回審査までの3年間に対し、具体的な目標設定ができた上に可視化されました。
 今回の評価を真摯に受け止め、子ども達により良い養育環境の提供とサービス・処遇向上に努めると共に、社会的養護を事業の柱とする中で将来のビジョンをしっかり定め、日々児童福祉の道を進んでまいりたいと思います。
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