社会的養護施設第三者評価結果 検索

札幌育児園

【1】第三者評価機関名 サード・アイ(合)
評価調査者研修修了番号 SK2021003
SK2021004
S20210001
H0013
H0152
H0082
【2】種別 児童養護施設 定員 28名
施設長氏名 千葉 徹 所在地 北海道
URL https:/www.ikujien.jp
開設年月日 1906年01月15日 経営法人・設置主体 社会福祉法人札幌育児園
職員数 常勤職員 24名 非常勤職員 0名
有資格職員 社会福祉士  7名 保育士 9名
栄養士 1名 臨床心理士・公認心理士 4名
調理師 3名
施設設備の概要 (ア)居室数 29室 (イ)設備等 食堂・体育館・フリースペース・ショートステイ個室
(ウ) (エ)
【3】理念・基本方針 理念:子どもの人権を擁護し、子どもの最善の利益を追求する。
基本方針:
①子どもの生きる権利、生活する権利、発達する権利、教育を受ける権利を保障し、子どもの自立支援を行うこと。
②家族の再統合に向け、親子関係の調整や、家庭環境の改善など家庭環境調整を行うこと。
③子育て家庭が持つ子どもの福祉に関する問題について解決への支援を行うこと。
【4】施設の特徴的な取組 子どもの権利擁護。児童自立支援基金。
【5】第三者評価の受審状況 2022年04月09日(契約日)~ 2023年01月23日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和元年度
【6】総評 <評価の高い点>
1,「ライフストーリーワークを通して」
 施設では、子どもとともに生い立ちを受け止める重要性を認識して、3年前から「ライフストーリーワーク」を実践しています。子ども自身が出生や生い立ちを知ることは、子どもが自分自身を知り、自分は自分であっても良いという自己形成をするために不可欠だと捉えています。
 保護者との交流が難しい中、自分の生い立ちを知らないことで悩む子どもや、卒園後に、一人で抱え込み苦しむ例がありました。これらを踏まえて、全在園児について、児童相談所等から情報を収集しています。入所前の写真を探したり、近い親族から出生にまつわるエピソードを聴き取ったりすることで、保護者との交流に繋がった例もあります。
 担当職員を中心にして、主任や心理職、家庭支援専門員が関わり、子どものために、今できることを見直しています。子どもの発達状況に応じて、自らの生い立ちや家族との関係を整理し自分を大切にしながら成長していくことを支援しています。

2,「リービングケアとアフターケアの関連性」
 リービングケアは、高校入学時からの3年間を通して、退所後の1人暮らしを想定して行われています。特に家計管理は、1か月間の生活費を具体的に経験できるように全体をシュミレーションしながら練習をしています。
 また、日々の生活で職員と調理をしています。就職が近い子どもは、必ずアルバイトをさせて、仕事を通して自分自身への気付き・理解に繋げています。このように様々な場面から、失敗を繰り返す経験を恐れず、実効性のあるスキルを学んでいます。
 退所児童自立支援担当の配置があり、退所後の不安や戸惑い躓きを受け止め、相談できる拠り所として生活の安定をサポートしています。フードバンクの食材を訪問して届け、遠方の場合には郵送しています。家庭訪問に加えて、電話やライン等で連絡を取り合い、この3年間の退所児童とは、全員に連絡が取れる状態にあります。リービングケアでの気付きがアフターケアとなり、アフターケアでの気付きをリービングケアに反映させています。

3,「生活場面を活かした心理職の役割」
 3名の常勤の心理職は、それぞれにユニットを担当しています。生活場面で子どもと接しながら、担当職員とともに具体的な支援方法を一緒に考えています。心理職が生活場面に入ることで、心理プログラムを受けている子どもだけではなく、心理面接に応じない子どもについても、子どもの様子を生活場面で把握して、全在園児のアセスメントに活かしています。
 コロナ禍では、感染対策に則ったレクレーションの企画を出して、子どものストレス緩和に繋げました。
 また、心理職が現場にいることは、担当職員に対する心理面のコンサルテーションを日常的に行うことが可能になります。状況に応じて心理職が保護者対応を担うことで担当職員の負担軽減ともなっています。
 不登校の事例では、担当職員とともに学校へ赴き、子どもに対する理解を学校と共有することで、学校環境と教師との協力体制を整え、改善に繋げました。
 このように、心理職は、担当職員とともに、生活場面で子どもに関わることの重要性を認識し実践しています。

<質の向上のために求められる点>
1,「プライバシー保護への配慮が反映されたケアマニュアルの作成」
 子どもたちがお互いプライバシーに配慮した生活ができるように、相部屋では家具のレイアウトでプライベートの空間を確保し、着替えが見えないようにするなどの工夫をしています。また、個室への無断入室をしないことや人の物品を勝手に触らないことなどを日常的に伝え、指導しています。
 ケアマニュアルは幼児・小学生・中学生・高校生に分別されており、起床から就寝までの時間に対応して子どもの動き・留意点・職員の動きが細かく記されています。また、身体と生理機能の発達についての解説と具体的な支援方法も添付されています。職員はこのマニュアルを基に、子どもたち個々の課題に向き合い、同年代でも一律ではなく、子どもの能力に即した支援を行っています。
 しかし、支援実践の根幹となるケアマニュアルには、子どものプライバシー保護に関わる基本的な留意点や、排せつや入浴をはじめとする子どものプライバシー保護に関わる支援方法が、盛り込まれていません。
 子どもの日常生活におけるプライバシーの保護は、子どもの人権を尊重した養育・支援において重要な留意点です。職員が、子どものプライバシーとは何かを理解し共有して、日々の支援の中で配慮する必要があります。
 今後、小規模グループケアへ移行するにあたり、子どものプライバシー保護への必要な配慮について見直し、ケアマニュアルに反映することに期待します。

2,「実践の見える化を図る」
 施設長を中心に、全職員が子どもの豊かで充実した生活の保障を目標に養育・支援しています。しかし、都度の口頭伝達による迅速な対応と職員間の引継ぎノートはありますが、実践の記録が文書化されていない部分が散見されます。
 相談・要望の受付から解決に至る経過、自立支援計画と個別援助計画アセスメント等を記録によって示すことは、専門職の社会的責務です。
 また、感染症対策においてはマニュアルが作成され、具体的な訓練が行われています。感染に限らず有事には、施設長による参集体制となっています。施設長の対応が難しい場合には、副施設長・主任へと流れていく代行体制が示されています。施設に感染症対策委員会はありませんが、今後は必要な組織体制です。
これらを踏まえて、更に、札幌育児園のケアワーク・ソーシャルワークが「実践を見える化」することで質を高めるように期待します。

3,「中長期ビジョンと職員意見の反映」
 中・長期計画は、単年度の「児童養護施設札幌育児園 事業計画」の中に短期事業計画と共に上部に記載されています。また、計画は別紙の「小規模かつ地域分散化、高機能化及び多機能化・機能転換」にもより、施設が運営されています。
 但し、中・長期の計画としては、簡易な記載なので計画書だけでは施設運営のビジョンを明確にイメージするのは困難です。このため計画策定後の評価・見直しは、随時変更の都度に職員の理解を待たず進行せざるを得ません。
 職員の日々の支援の積み重ねを包括していくのが計画でもあります。施設が一つの組織として存続するためにも職員の参画を十分に得て、PDCAの展開が可能な立案を期待します。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント 事実誤認による評価コメントが数十カ所あります。それを指摘しても訂正されないのは納得できません。
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