社会的養護施設第三者評価結果 検索

原峠保養園

【1】第三者評価機関名 (有)エフワイエル
【2】種別 児童養護施設 定員 30名
施設長氏名 石川 幸 所在地 長野県
URL http://haratouge.jp
【3】実施調査日 2012年11月07日~2013年03月31日
【4】総評  ◇特に評価が高い点
 ○ 人を思いやる心が育つ生活環境
 小児結核療養所として始まった歴史を持つ原峠保養園は、虚弱児施設から平成十年の児童養護施設への移行を経て現在に至っている。そして、「自然の中から自然に子どもを育てる」を理想としている。
 園では山羊・矮鶏の飼育だけでなく、原峠を取り巻く林や畑の中での自然との触れ合いや小動物との遭遇などの機会も多くあり、広い農地での職員との野菜作りを通しての労働・収穫の喜びも経験して、大人を信頼し愛されることの意味を実感できるなど、日常的に他者を思いやる人間らしさを持った自立した子どもが育つ生活環境があることに驚くばかりである。
 また、雪が降れば坂道の雪かきを中高生が行い、その後小学生が登校するという事に長幼の序ならぬ年長者の務めを感じ、忘れられた古き良き原風景をここに実感する。
 そして、多感な子ども達の心を鎮めるとともに、職員が理解・把握・対応できるように俳句ノートを活用してコミュニケーションを高める取り組みが進んでおり、多様な子どもの課題に対応できる基礎がここにあるのだと感心してしまう。
 施設の歴史から、心身の健康を回復・維持するための食育の重要性の意識が高いのであろう、収穫物を最大限活用して話題提供に繋げたり、食事の際の子どもと職員相互の会話も多く、残菜も少なく、食事が済めば食堂の掃除が自然と当番の子ども達で行われていく。さらに、年12回の飯盒炊飯や、子ども達が摘んできた具材を使ってのよもぎ団子作り・芋煮会・まゆ玉作りなど、子ども参加型での季節感の習得や伝統食文化の継承の機会もある。そして、中学生からのお手伝いとして、ご飯・味噌汁・卵料理などの調理の機会があり、高校生になると弁当作りや手作りおやつの機会もあるという。
 このようにして食べることを楽しめる環境を提供していることは、自立へ向けた子供にとっては生きる上での重要な要素であり、療養所・虚弱児施設・児童養護施設へと変遷を経た原峠保養園の独自の養育方針を窺い知ることができる。
 松井鳳平氏が医師であり篤志家であったことにより始まったこの原峠保養園の伝統を受け継いだ現在の関係者が、これからの社会的養護に添う児童養護施設の創造に向かう取り組みが始まるのも間もなくであろう推測する。

 ◇改善が求められる点
 ○ 立地環境についての検証
 四季折々の移ろいを存分に感じることができる環境の下で子ども達は健やかに育ち、施設外へ出かける季節ごとの行事や施設内の環境を活かした行事もあり、子ども達の生活は豊かなものとなっている。そして、中学生が通う分校が隣接しており、多感な子ども達の生活は地域の中学校に通う子ども達と比べて刺激が抑えられている。
「自然の中から自然に子どもを育てる」の理想の下で育った子ども達には、将来の展望や退所の意味を伝え、現実の社会と向き合っていくための支援体制が必要と思われる。
 有害とされがちな雑誌やゲームの排除ではなく、ぶつかり合い助け合い協力し合う職員の専門性を活かした様々な工夫を求めたい。そして、この無菌状態を善しとして完結させるのではなく、メリット・デメリットについての検討を行い、地域の高校・社会へ送り出す際の養育・支援の体制を整備することは必要であろう。
 また、地域のサークル・ボランティア・イベントなどの情報収集・提供を進めて、社会の様々な人とのふれあいの機会を増やすことも期待したいものである。そして、一人ひとりの子どもの人間性の幅を広げ、職業選択の幅・可能性を高めることにより、基本理念に謳う「社会に適応する人間性」の達成がより可能になると思われる。
 さらに、地域資源を活かす取り組みや、学校・地域の活動への積極的な参加を進めることにより、市街地と離れた立地であっても地域との連携が更に深まると感じる。

 ○ 退所に向けての体制整備
 ホームページにおいて卒園生のお便りを載せており、感謝の言葉とともに当時への思いなどがつづられている。しかし、退所前の段階での習得すべき事柄のリスト化などの整備や退所者への担当窓口・担当者の周知など、子どもの拠り所としての原峠保養園の役割が十分に果たせているかというと疑問を感じる。
 行事への参加や同窓会作りなどの呼びかけに工夫を凝らしたり、退所後の相談窓口があることを子ども達に周知したりして、入所している子ども達の自立することへの不安を減らし、安心して進路選択ができる環境を整備・提供する必要があると考える。

 ○ 運営指針に添う体制の整備
 全職員参画の下での勉強会を行い、児童養護施設運営指針の周知度・理解度を上げる取り組みは必要であろう。そして、現状の施設運営の検証を行い、表出した課題に対しての真摯な対応を求めたい。被措置児童等虐待防止対応ガイドラインなどの周知・徹底はその一つといえる
【5】第三者評価結果に
対する施設のコメント

 原峠保養園の全職員が評価結果を真摯に受け止め、評価が高い点、改善が求められる点について、今後更に読み込んでいきたいと思います。
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