社会的養護施設第三者評価結果 検索

札幌育児園

【1】第三者評価機関名 サード・アイ(合)
評価調査者研修修了番号 SK18001
H0013
H0082
B15001
S19001
H0252
【2】種別 児童養護施設 定員 53名
施設長氏名 千葉 徹 所在地 北海道
URL http:/www.ikujien.jp
開設年月日 1906年01月15日 経営法人・設置主体 社会福祉法人 札幌育児園
職員数 常勤職員 25名 非常勤職員 0名
有資格職員 社会福祉士 7名 保育士 11名
臨床心理士 1名 栄養士 2名
調理師 5名
施設設備の概要 (ア)居室数 29室 (イ)設備等 食堂 体育館 フリースペース
(ウ) (エ)
【3】理念・基本方針 理念:子どもの人権を擁護し、子どもの最善の利益を追求する。
基本方針:①子どもの生きる権利、生活する権利、発達する権利、教育を受ける権利を保障し、子どもの自立支援を行うこと。②家族の再統合に向け、親子関係の調整や、家庭環境の改善など家庭環境調整を行うこと。③子育て家庭が持つ子どもの福祉に関する問題について解決への支援を行うこと。
【4】施設の特徴的な取組 子どもの権利擁護。児童自立支援基金。
【5】第三者評価の受審状況 2019年05月20日(契約日)~ 2020年02月29日(評価結果確定日)
前回の受審時期 平成29年度
【6】総評 <評価の高い点>
1、「大切にされる経験を通して」
 相部屋では、ベッドや学習机の配置等を工夫して個人のスペースを作り、個人の所有物を収納する場所からも、お互いの物の大切さを考え合い「自分の物を大切に、相手の物も大切に」というプライバシーの基本を学んでいます。また、居室の個人のスペースは、子どもが自らの感情を落ち着かせるクールダウンのスペースともなっていることから、個人のスペースは大切な場所であることを共有し、無断で立ち入ることのないように支援しています。
 子どもが、要望・意見を出して実現できたという喜びの経験を味わうことを大切にしています。居室集会や居室代表者会議では、子どもが自ら発信できるような仕組みを作り、生活場面での子どもの要望は、連絡日誌に記録して適時生活に反映しています。嗜好調査を実施してリクエストメニューに反映しています。
 学習支援の場を単に学習のサポートという側面だけではなく、子どもの意欲を引き出し、子どもが認められているという自己肯定感を育む機会と捉えています。
 このように施設は、子どもが「自分が大切にされている」ことを実感できる経験の積み重ねを通して自尊感情を高め、子どもが、自分自身を大切にし、他者を大切にする気持ちを育むことを目指しています。

2、「親子関係の再構築と心理的な支援」
 臨床心理士は、家庭支援専門相談員として窓口となり全ケースを把握しています。子どもへの虐待には、親面接を優先して保護者へのカウンセリングが必要な場合があります。保護者が精神疾患の場合や、保護者自身が受けた虐待の連鎖の問題もあります。夫婦間のDVが背景にある等、家族関係の調整が必要な重篤なケースもあり、臨床心理士は、保護者が親子交流に向き合えるまでの段階を心理的に支援してから、担当職員に引き継いでいます。
また臨床心理士は、子どもの心理検査やカウンセリングなどの心理療法を実施しつつ、支援員としても、心理療法の結果を直接臨床の場で活かすことで、担当職員に実践場面で子どもへの対応をスーパーバイズしています。
 親子交流では、段階を踏んで面会・外出等から外泊交流にすすみ、子どもの心理的な負荷を見極めながら評価・見直しをしています。
子どもとの交流を拒絶する保護者に対しては、保護者がどの段階なら受け入れるのかの可能性を探り、保護者のニーズとすり合わせることで、連絡の選択肢を 提案しています。
 このように、親子関係の再構築のためには、子どもの気持ちを優先することを前提としながら、子どもと保護者との両面から心理的な支援を行い、根気よく親子関係の継続・再構築を図る中で、個々の世帯に合わせたゴールを目標としています。

3、「子どもの社会性を伸ばすボランティアの活用」
 ボランティア受け入れの基本姿勢を明文化し体制を組んで、多くのボランティアを積極的に活用しています。
特に、余暇・行事ボランティアを多岐にわたり受け入れて、各種遊びのボランティアや、英会話講師によるボランティア等を活用しています。また、招待観戦行事も多く、窓口となっている職員が子どもに周知して、野球やサッカー、バスケット、コンサート等に出かけています。さらに、育児園祭では、子どもとボランティアが共同して祭りを企画しています。
 学習ボランティアとしては、札幌市スタディメイト派遣事業を活用して、子どもとのマッチングをした上で受け入れています。受験対策では、育児園独自で学習ボランティアを発掘しています。子ども一人ひとりのペースに合わせた個別な対応から、子ども自身が認められているという気持ちを育むように活かしています。
 施設がボランティアを積極的に受け入れている目的は、社会資源を活かしたボランティアの受け入れ・活用を、子どもの社会性を伸ばす機会として捉えているためです。子どもの経験値を増やすこと以外に、施設以外の方々と関わることを通して、挨拶を交わす、協力し合う、譲り合う、考えを伝える等、子どもが社会性を伸ばす機会として捉え、子ども同士のグループワークとしても意図的に活用しています。

<質の向上のために求められる点>
1、「アフターケアの必要性」
 現在、施設として取り組んでいるアフターケアは、退所後の子ども一人ひとりに、フードバンクを利用して連絡を取る方法です。食料の提供という連絡方法は、子どもに自然に受け入れられています。フードバンクの利用状況の記録には、利用した子どもの名前と日付はありますが、聞き取った子どもの近況は記録されていません。
 また、アフターケアの実態として、子どものスマホの所持により、退所後はラインで担当職員に連絡をする場合が多く、連絡を取り合うことのハードルは下がっていますが、担当職員との個別な対応に止まっている現状があります。
 施設では、子どもの退所後の生活を想定した様々なリービングケアに取り組んでいますが、退所後、子どもが生活に不安感を抱き、居場所を見つけられずにつまずくことが多いことは、退所者からの声としても明らかになっています。
 施設が組織として子どもの退所後の課題に対応するために、アフターケアの担当者を明確にし、退所者の要望や困り事等を記録して、今後に活用することに期待します。また近年、退所者が中心となって支援活動を組織化している動きもあり、退所者同士の繋がりを支援する取り組みにも期待します。

2、「記録による情報共有の強化」
 連絡日誌で、施設全体の日々の情報を共有しています。育成記録は、個別援助計画・自立支援計画の基となっていますが、子ども一人ひとりの個別的な記録としては、3~4日に1回程度が多く、場合によっては、月に2回(前期・後期)という総括的な内容になっています。記録の書き方としても、統一性は充分ではありません。情報共有は、パソコン内の記録や印刷物を、適時確認できるようになっていますが、日常業務では口頭での引継ぎも多くあります。
 また、専門性の向上に繋がる職員会議や施設内研修は、全職員の参加を目指して、子どものいない時間帯・施設が公休日にならない水曜日に開催した上で、参加できない職員がいる場合には、資料を配布しています。但し、情報の共有という点からは、内容を把握したかを確認するチェック体制が充分ではありません。今後は、記録による職員間の情報の共有を強化する取り組みに期待します。

3、「選任スーパーバイザー教育課程と第三者評価のコラボレーション」
 第三者評価基準を使用した自己評価は、項目の多くができているという前向きなものです。一方、選任スーパーバイザーが実施した職員アンケートには、個々の課題が表出しています。選任スーパーバイザーは、職員の養育・支援技術の向上を目的にして2019年秋より配置されました。
 第三者評価の自己評価は改善に結びつけるために行われます。職員アンケートは個々の職員の質向上のために行われます。両者ともに目的は同じですが、職員アンケートは非開示による率直性があらわれています。
 毎年度の自己評価と3年に一度の評価の受審という意味では、PDCAの循環が判然としません。選任スーパーバイザーの教育課程は始まったばかりですが、今後は第三者評価の自己評価と帆走することが期待されます。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント 評価を受け課題が明らかになりました。今後は課題を考察し、サービスの質の向上を図っていきたいと思います。評価をしていただきありがとうございました。
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