【4】総評 |
◇特に評価が高い点
○小規模ケアと縦割り保育による乳幼児の発達の支援
定員20名と小規模の乳児院ですが、幼児には2か所の小規模ケアを導入し、各クラスが3~5人の小集団で養育が行われています。
また幼児クラスは家庭的養護を目指して、1歳半から4歳までの縦割りの小集団で構成されています。年長児は年少児に優しく接し、年少児は年長児の行動を模倣して刺激を受ける等、家庭的な雰囲気で生活ができています。
理学療法士による発達相談と隣接する支援センターの言語療法士にも発達相談ができる体制を整える等、子どもの発達を支援する環境が充実しています。
○幼稚園・院内保育園への通園
国の改訂に伴い、就学前の年齢までを受け入れています。
4歳児は私立幼稚園に通園し、就園前の3歳児は別建物の院内保育(あじさい園)に平日の日中は通っています。3歳、4歳は乳児院内だけの生活ではどうしても刺激不足になりがちですが、幼稚園・院内保育園に通うことで地域の子どもや児童養護施設の子どもとの交流があり、大人のかかわりも広がり、発達保障の点からも有効な取り組みです。
○児童記録への情報管理システムの導入
24年度に併設の児童養護施設に続き、PCを活用した情報管理システムを導入しています。全員がPCシステムを活用して保育記録、看護記録、面会等記録を毎日入力しており、施設長はじめ職員全員が翌日にはPCで各情報が共有できる仕組みになっています。健康日誌以外、自立支援計画や面会の可否判断までの多くの内容がシステム化されています。
情報管理システムの活用は記録業務の省力化に非常に有効であり、記録の記入技術の習得を含め大きな効果があがっています。これらは他施設のモデルとなる高く評価できる取り組みです。
○子育て支援事業
神戸市の委託を受けて乳児院内でリフレッシュ事業(日帰り預かりのデイサービスと短期宿泊のショートステイ)を実施しています。当該事業は神戸市の子育て支援事業として、乳児院のハード面(施設設備)と養育の専門ノウハウを活用して、地域の子育て中の親のニーズに対応して実施するもので利用が増えています。
また乳児院を退所した子どもの保護者にも当該事業の利用を積極的に勧めて、子どもを短期間預かることで退所後の保護者のレスパイト(一時休息)や子どもの状況把握、育児の相談支援などを行っています。退所後の親子の利用は増えており、大きな成果を上げています。
○職員の資質向上
全国乳児福祉協議会の示す研修に関するポイント制を取り入れ、経験年数と個人の希望する研修を加味して年間個別研修計画を作成し、経時的に取り組んでいます。施設長の資質の向上に対する意識の高さが全職員に浸透し、研修が業務として完全に定着しているのは望ましい限りです。
〇自立支援計画
子どもの状況を身体的側面・心理的側面・関係性の側面に分けて丁寧にアセスメントが行われています。自立支援計画の見直し時期は1歳半までは毎月、3歳までは3か月ごと、3歳以上は半年ごとときめ細かい期間設定がなされ高く評価ができます。
◇改善が求められる点
○保護者の意向への配慮と面会の工夫
保護者の相談内容に応じて応接室で施設長やFSW(家庭支援専門相談員)、心理士が対応するなど相談スペースや対応する職員に配慮がなされています。保護者には院内の相談相手の説明はありますが、院外の相談窓口(第三者委員、児童相談所担当など)の情報提供が不十分ですので検討が期待されます。
また、意見聴取については、意見箱と記入用紙を親子面会室に置く、苦情の窓口や意見への回答をわかりやすく大きく掲示する等の工夫が望まれます。
乳幼児では食事や遊びなど職員の子どもへのかかわり方を保護者に見ていただくことも重要な支援方法ですので、必要に応じて居室内での面会実施を検討されてはいかがでしょうか。
○プライバシー保護マニュアルの整備
プライバシー保護のマニュアルは未整備です。保護者、子どもともにプライバシー保護の取り組みは、保護者の個人情報の流出を防ぐ、子どものフルネームを戸外では呼ばない、トイレや入浴におけるプライバシー保護など、適切に行われていますので、現行のルールを文書化するなど「プライバシー保護に関するマニュアル」の作成が求められます。
○事故防止と安全対策
玄関が公道に連なっていることから、死角をなくす備え、事件遭遇時の対応方法など、早急な取組が求められます。(死角箇所への防犯カメラの設置を検討中ですので、速やかな対応が望まれます。) |