社会的養護施設第三者評価結果 検索

三重県立国児学園

【1】第三者評価機関名 (株)中部評価センター
評価調査者研修修了番号 SK15105
SK16016



【2】種別 児童自立支援施設 定員 60名
施設長氏名 桂田 孝二 所在地 三重県
URL
開設年月日 1908年10月01日 経営法人・設置主体 三重県
職員数 常勤職員 13名 非常勤職員 9名
専門職員 児童自立支援専門員 5名 児童生活支援員 6名
家庭支援専門相談員 1名 被虐待児個別対応職員 1名
心理療法担当職員 1名 業務補助職員 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 (イ)設備等
(ウ) (エ)
【3】理念・基本方針 ★理念
 愛情を持って子どもを受け入れ、心と体の健やかな成長を支援します。

★基本方針
・家庭的なぬくもりを大切に、一人ひとりの自立支援を目指します。
・数組の夫婦が、それぞれ担当する子ども達と家庭的な雰囲気の中で生活します。
・一貫性・継続性のある集団生活から共に学び、お互いに助け合う心を養います。
・規則正しい生活を通して、ルールと思いやりの心を育てます。
【4】施設の特徴的な取組 ・学習指導支援(学力と知識をつけるための環境支援)
・課外・作業指導支援(スポーツ、ランニング、マラソン、太鼓などの文化活動、職業指導、農業、園芸、工作等作品作り)
・家庭支援(関係機関との面接、家族関係再構築支援)
・入所児童への生活支援(生活全般の衣食住に関わる指導・支援、集団生活の秩序、ルール、人間関係と信頼関係作り
【5】第三者評価の受審状況 2016年08月29日(契約日)~ 2017年02月15日(評価結果確定日)
受審回数 1回 前回の受審時期 平成25年度
【6】総評 【特に評価の高い点】

(1)子どもの自立を支える「小舎夫婦制」の維持

 子どもの自立を考える時に、家庭的な環境設定には大きなメリットである。しかし、時代的な背景からして、子どもたちに寄り添って365日の家庭生活を支援する人材がたやすく調達できるとは思えない。そのような中、当該施設はかたくなに小舎夫婦制の維持に努めている。寮長、寮母の後継者育成が急務ではあるが、子ども達との信頼関係を築いて親身になって自立の道を探っている。訪問調査当日には、高校進学で悩む子どもに寄り添って、相談に応じる寮長の姿があった。

(2)改善意識の高さ

 前回(平成25年度)の第三者評価受審時に多くの要改善点を見出した。それらについて可能な限り改善活動を進めてきた。職員主導での理念・基本方針を構築し、子どもの権利擁護に関する職員研修を実施し、子どもへの配布物や掲示物にはルビを振った。安全対策として、校舎のスリッパ使用から靴使用への変更、防災用ヘルメットの配備、安全灯3基の設置、寮単位の防災訓練から全体の防災訓練への変更等々も行った。これらの改善活動が、園長(施設長)と職員が一体となって実施されたことに大きな意義がある。

(3)健全な心身を育む取り組み

 職員主導で作られた理念の一節に「心と体の健やかな成長を・・・」がある。その実践として、心の鍛練として全員参加の「太鼓」があり、地域の祭りで稽古の成果が披露される。文化活動の陶芸作品のいくつかが、敷地内(庭)のモニュメントとして飾ってある。体を鍛えるために、全員が朝のランニングで汗を流している。同業事業所の参加する駅伝競走では、常に優勝候補の筆頭である。人間形成の重要なファクターである粘り強くやりきる力や責任感・協調性の醸成を図っている。畑作業では、体力作りと「食育」に視点を当てて支援が行われている。


【改善を求められる点】

(1)PDCAサイクルの意識を

 様々な改善活動が進行しているが、その改善効果が検証されていなかったり(研修実施後に「復命書」が提出されると、そこで完結してしまい教育効果が検証されていない)、実施された活動の報告がないがしろにされている(改善の記録が残されていない)等、PDCAサイクルの「C」(チェック、評価・検証)のプロセスの欠如しているものが散見された。有効な「A」(アクション、改善)につなげるためにも、PDCAサイクルを意識した活動が望まれる。

(2)苦情解決の仕組みに「公表」のプロセスの追加を

 事業運営の透明性を担保するために、情報の公開を要求される時代となってきた。苦情等に対する体制や内容、改善や対応の状況もその中の一つである。事業の特性から、子どもの個人情報やプライバシーの保護に配慮することは当然ではあるが、「公表できること」と「公表できないこと」を精査し、公表すべきものを適切に公表する仕組みづくりを望みたい。さらに、苦情申し出人に対する配慮や公表することへの同意の確認等を含んだ手順を確立し、関連する規程類の見直し、改訂も考慮されたい。

(3)子どもの生活クオリティーの向上

 寮舎は昭和40年代や50年代に建てられており、内部構造も昨今の住宅事情とかけ離れた部分がある。その一つに「和式トイレ」が挙げられる。子どもへのアンケート調査の結果からも「洋式トイレ」の要望が多く、ここで暮らす子どもの生活クオリティーを向上させるためにも改修の必要性を論じてほしい。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  平成25年度受審以降、当該施設は2度目の受審である。平成25年度の受審結果の指摘にもとづき、施設理念の策定や支援の方向性を明確にしたこと、当施設の特徴である夫婦職員が施設内で起居を共にして子どもの成長を支援する寮舎運営について、支援の質的向上の確保や改善に勤めてきた。下記1の重点課題では、今回受審で高い評価を得ることが出来ました。

(1)平成25年度受審以降の重点課題
 ○子どもの日常記録の管理、職員間連携体制(業務日誌・寮日誌等)
 ○子どもの発達段階に応じた適切な支援、関わり
 ○子ども尊重と愛され大切にされている家庭的雰囲気を重視したアプローチ
 ○職員、子どもともに危機管理意識の向上(機能性、防災学習、避難訓練等)
 ○職員はもちろん、子どもに対し「人権研修」や「性教育」を実施し、暴力、いじめ、差別が生じない働きかけを定期的に実施。

(2)平成28年度受審 今後の重点課題
 ○PDCAサイクルの職員意識の向上(研修、出張の復命方法、業務チェック書類等)
 ○子どもの人格を護るための職員意識の向上(記録、研修、マニュアル作成)
 ○専門職の人材採用、育成にかかるマスタープラン策定への働きかけ
 ○苦情調整委員会の充実、体制整備
 ○施設整備(子どものプライバシー保護空間の確保、子どものニーズに応える設備への改修計画)

 このたびの受審では、施設の役割、機能、子ども・職員理解を含めた施設運営に関する包括的なアプローチとコメントならびに高い評価、指摘をいただきました。
 今後の重点課題における内容精査について次年度以降、職員、関係機関を含めて、反省、検証するワーキンググループを発足させ、検討をすすめながら職員一同、子どもの自立支援に精進して参りたいと思います。
 貴重な外部からのご意見、ご指導を賜り感謝致します。
第三者評価結果はこちら