社会的養護施設第三者評価結果 検索

宮城県さわらび学園

【1】第三者評価機関名 (株)福祉工房
評価調査者研修修了番号 SK18018
S2020007



【2】種別 児童自立支援施設 定員 28名
施設長氏名 平間 幹夫 所在地 宮城県
URL https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/sawarabi/
開設年月日 1909年05月23日 経営法人・設置主体 宮城県
職員数 常勤職員 28名 非常勤職員 32名
有資格職員 医師 2名 心理士 2名
児童自立支援専門員 10名 家庭支援専門相談員 1名
保育士 3名 管理栄養士 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 男子寮(広瀬寮:5室/青葉寮:5室)、女子寮(すみれ寮:4室) (イ)設備等 本館(事務室,分教室等),給食棟,体育館,プール,作業棟
(ウ) 宿泊訓練棟2棟,職員宿舎 (エ)
【3】理念・基本方針 (運営理念)
1 社会において,非行等の問題行動あるいは環境不適応を起こしている児童を家庭に代わり預かり,特別の保護及び教育あるいは心理的・精神医学的な治療などにより一日も早い社会への復帰を目指す。
2 児童の心を癒し自立を支援するため,職員と児童が共に学び,共に働き,共に汗して生活を共有するとともに「さわらび学園倫理綱領」に基づき児童の権利擁護に努め,「児童の最善の利益」を追求する。
3 児童の自立と健全な社会適応力を高めることに努めるとともに,社会のニーズに応え得る機能を持った施設運営にあたる。
4 さわらび学園長(以下,「園長」という。)は,開かれた学園運営に努めなければならない。
(運営の基本方針)
1 学園は,児童に安全安心な生活環境を提供し,個々の児童の問題点を把握し,児童と職員がともに生活をしながら,指導・援助を行う。
2 学園は,児童の自立のため地域社会,関係機関と連携し支援するとともに,児童と家族との関係の再構築を図るための支援を行う。
3 施設は社会資源の1つであるとの認識に立ち,学園の地域開放及び地域交流を積極的に行う。
4 学園は,職場内会議,研修会を定例的に開催するほか,外部での各種研修会・学会・研究会等へ積極的に参加し,児童処遇の向上及び職員の資質向上に努める。
5 学園は,自ら処遇及び支援の質の点検・評価を行い,常にその向上のための改善に努める。
【4】施設の特徴的な取組 本施設は,仙台市の南西部丘陵の住宅地帯に位置し,隣接する救護施設「太白荘」など周辺には宮城大学(食産業学群)をはじめ,仙台市立小・中学校など公立施設が多く立地しています。本施設の沿革は,感化院法に基づき,明治42年に「感化院」として開設されました。昭和39年現在地に移転,平成10年の改築工事を経て,平成21年に100周年を迎えています。平成10年の児童福祉法改正により「教護院」から「児童自立支援施設」と名称変更し,現在に至っています。定員は,時代により変遷(70名・50名)しましたが,現在28名となっています。
近年,入所児童は非行型から発達障害等の児童が多数となり,被虐待児童数が過半数を占める状況となっています。
従って,児童の社会復帰を目指す本施設の指導・支援活動は,安定した児童集団の構築だけではなく児童の特性に応じた個別支援の充実に重きを置くようになっています。
このように,被虐待児童数等の著しい増加から,本施設においても「児童の権利擁護の推進」を目指していくことが支援の基本となっています。そのため,本施設においては,平成21年に常勤心理職1名を,翌年には家庭支援専門相談員(家族支援担当職員)1名を配置し,更に児童精神科医を兼務させ,全職員28名で日夜対応しています。
代表的な取り組みとしては,①「自立支援プログラム」に基づく個別的指導・支援の充実・強化,②逸脱行動等があった場合の「生活指導委員会」による児童への適切な助言,③児童の苦情・相談を丁寧に受け入れる環境づくりと外部の第三者が入る「自立支援向上委員会」の活発な活動などが挙げられます。園長をはじめ全職員が専門性の向上を図りながら,児童が抱える困難な課題と向き合う職務に携わり,本施設の歴史を継承して日夜奮闘しているところです。
【5】第三者評価の受審状況 2021年09月29日(契約日)~ 2022年03月08日(評価結果確定日)
前回の受審時期 平成30年度
【6】総評 【特に評価の高い点】
〇児童の最善の利益の追求
 学園では運営理念において明確に「児童の最善の利益」の追求を掲げ,「さわらび学園倫理綱領」を始め「さわらび学園児童自立支援方針」,「さわらび学園入所児童権利擁護指針」,「児童の最善の利益を確保するための指針」,「さわらび学園入所児童処遇基準」等,児童の最善の利益や権利擁護を追求する姿勢を明記し,これらをもとにした「児童自立支援プログラム」や「さわらび学園管理運営要綱」など実際の運営に関する基準が策定されている。更に,職員による「自己点検シート」,児童からの「ニコニコ相談シート」や園の第三者監視機関である「自立支援向上委員」と児童との定期面談等の具体的取り組みを通して,方針に沿った支援が確実に行われていることが確認されている。
〇職員の専門性の向上を求めた教育研修の充実
 社会環境の変化や入所児童の状況の変化に伴い,職員に求められるスキルや専門性も変化してきており,これに対応するため職員の専門性の向上等が急務となってきている。この状況に対し,県が主催する従来からの階層別研修等とは別に,園として少年鑑別所職員を招いた事例検討会,弁護士による施設内虐待に関する研修,子ども総合センター職員による発達障害の基礎と対応に関する研修等,外部講師を依頼し専門性の高い知識の習得に積極的に取り組んでいる。
〇児童への性教育の充実
 社会へ復帰した時に陥りやすい,性に関してのトラブルを防ぐために,性に関する教育が積極的に行われている。年齢別,男女別もしくは男女合同で,外部講師を依頼するなど,昨年度は8回にわたる性教育を行い性に関しての正しい知識を児童に教え,トラブルに巻き込まれないような教育が行われている。あわせて,性のトラブルの引き金ともなるSNS等に関しての教育も現在検討されており,具現化することによりさらに効果的となることが期待される。

【特に改善を要する点】
〇児童と地域との交流
 「さわらび学園児童自立支援方針」に学園の地域開放および地域交流がうたわれ,運動場や体育館の地域への開放が行われている(現在はコロナ感染症の影響により,体育館の開放は中断中)。また,地域の民生委員協議会や,支援学校などの団体への講演活動等が行われているが,児童と地域社会との交流はあまり活発には行われていない。毎月の買物や,理・美容室への外出など限定的な関りにとどまっている。児童の社会へ復帰後の社会生活を営むためにも社会資源の利用等より積極的な交流の検討が期待される。
〇設備面の老朽化対応
 全体的な設備面での老朽化が進んでおり,児童の生活の場面でも快適な暮らしが営める状態でなくなっている部分が一部発生している。職員も修繕の必要個所については認識しているが,県における予算上の問題もあり,十分に対応しきれていない現状がある。トイレや浴室のドアが閉まりづらい等,児童のプライバシーに関するところでもあり,優先順位を考慮しながら,修繕の工夫を行っていくことが期待される。
〇中・長期計画の策定と公表
 県の中・長期計画でもある「宮城県社会的養育推進計画」が示されているが,乳児院,児童養護施設が主体であり,児童自立支援施設に関しては触れられていない。学園としては自ら,暫定的な計画を立案し県の主務課への提示を行っているが,現状では公表には至っていない。社会環境が大きく変わってきている中で,乳児院,児童養護施設と同様に児童自立支援施設も計画性をもって変革していく必要があり,県との協議を更に進め,早急に中・長期計画を策定していくことが望まれる。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント これまで学園では,児童の権利を守り,児童の最善の利益の追求に重きを置いて支援をしてまいりました。今回,この点について良い評価をいただきました。これからも,児童の支援に万全を尽くしてまいります。最近は,障害特性や過去に虐待を受けた経験を持つ児童など集団指導になじめない,個人の特性に応じた個別指導を必要とする児童が増えています。職員に求められるスキルや専門性も変化してきていますので,引き続き,職員の専門性の向上に努めてまいります。
 一方,改善を要する点につきましては,学園だけでは解決できない部分もありますので,関係機関と情報を交換し,連携しながら改善に向けた取り組みを行ってまいります。
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