社会的養護施設第三者評価結果 検索

宮城県さわらび学園

【1】第三者評価機関名 (株)福祉工房
評価調査者研修修了番号 SK15011
S-24-13



【2】種別 児童自立支援施設 定員 50名
施設長氏名 鈴木 年信 所在地 宮城県
URL http://www.pref.miyagi.jp/soshiki/sawarabi/
開設年月日 1909年05月23日 経営法人・設置主体 宮城県
職員数 常勤職員 26名 非常勤職員 27名
専門職員 児童自立支援専門員 10名 保育士 8名
臨床心理士 1名 社会福祉士 3名
栄養士 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 広瀬寮:5室、青葉寮:5室、すみれ寮:4室 (イ)設備等
(ウ) (エ)
【3】理念・基本方針 宮城県さわらび学園管理運営要綱

(運営理念)
第3条 社会において、非行等の問題行動あるいは環境不適応を起こしている児童を家庭に代わり預かり、特別の保護及び教育あるいは心理的・精神医学的な治療などにより一日も早い社会への復帰を目指す。
2 児童の心を癒し自立を支援するため、職員と児童が共に学び、共に働き、共に汗して生活を共有するとともに「さわらび学園倫理綱領」に基づき児童の権利擁護に努め、「児童の最善の利益」を追求する。
3 児童の自立と健全な社会適応力を高めることに努めるとともに、社会のニーズに応え得る機能を持った施設運営にあたる。
4 さわらび学園長(以下、「園長」という。)は、開かれた学園運営に努めなければならない。

(運営の基本方針)
第4条 学園は、児童に安全安心な生活環境を提供し、個々の児童の問題点を把握し、児童と職員がともに生活をしながら、指導・援助を行う。
2 学園は、児童の自立のため地域社会、関係機関と連携し支援するとともに、児童と家族との関係の再構築を図るための支援を行う。
3 施設は社会資源の1つであるとの認識に立ち、学園の地域開放及び地域交流を積極的に行う。
4 学園は、職場内会議、研修会を定例的に開催するほか、外部での各種研修会・学会・研究会等へ積極的に参加し、児童処遇の向上及び職員の資質向上に努める。
5 学園は、自ら処遇及び支援の質の点検・評価を行い、常にその向上のための改善に努める。
【4】施設の特徴的な取組 ①  児童の権利擁護
学園入所児童権利擁護指針に基づき、苦情解決制度の適切な運用を図り、第三者機関である「自立支援向上委員」による学園運営の外部チェックを確実に行う。また、「第三者評価(自己評価を含む)」や「自己点検シート」の結果を基にしながら、より良い児童処遇及び支援の質(特に生活の質)の向上を目指すとともに、入所児童の権利擁護に努め、生活指導委員会安全部会により園内での暴力防止を推進し、入所児童が安心して生活できる学園を作りに努める。
②  集団生活の安定性の確保と個別支援の充実
入所児童が学園で様々な活動の経験を通して安定した児童集団を構築し、暴言・暴力に訴えることなく言語化することや適切な感情表現ができるように対処法を児童本人と共有しながら健全な成長を育む。
暴力的行動については、全職員が毅然とした対応を取り、ルールや規律を守ることを徹底する。
良質な集団を構築した中で、児童の特性を尊重し、おのおのが自分自身を大切にし、自分らしく生きる力や他者を尊重して協力する力、さらには、情感豊かなこころを身につけることができるような個別支援の充実を図る。そのためにも、分教室との連携を強化し、児童が安定して生活できるような環境作りに努める。
③ 児童の退園に向けた家族支援及び事後指導の充実
家族支援担当者が中心となって入所児童の家族関係の再構築に向けた家族支援を早期に開始し、退所後の安定した生活の定着を目指すとともに、児童の退所に向けたリービングケアを確実に行う。退所児童に対しては、学園とのつながりを維持しながら、学校、職場、関係機関との連携強化を図りショートスティ等を活用した継続的なアフターケアを行い安定した生活の定着を図る。

④ 職員の専門性向上による支援力の強化
重篤な虐待経験を有する児童や発達障害を抱える児童の入所が増加傾向にあり、それらに対応するため養育・処遇技術の向上に努める。また、支援者としての認識を深め学園倫理要綱等を遵守するとともに、児童の参画を得た具体的・実践的な自立支援計画を策定の上、支援チームとしてこれを実践する。
⑤ 関係機関との連携強化
種々の分野の機関と連携を図るとともに、児童相談所、家庭裁判所、少年鑑別所、原籍校、市町村要保護児童地域対策協議会などの地域での支援に係るネットワークを構築するとともに、学園が情報発信することで、関係機関に児童の理解を深め、地域社会に定着しやすい環境作りを促す。
大学等の研究者との連携や共同研究への積極的な参画を進める。
【5】第三者評価の受審状況 2015年07月23日(契約日)~ 2016年02月29日(評価結果確定日)
受審回数 1回 前回の受審時期 平成24年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
 児童の心理面における発展を促す取組として、各寮で毎週行われるグループワークや毎月の「いじめグループワーク」が取り入れられ、毎月定期的に児童と職員を含めた話し合いが行われており、さまざまな議題に対する話し合いの中から、他者の尊重、他者へのいたわり、自分自身の大切さ等を児童自身が理解し、自覚していく取組が行われており、児童の精神面での成長を促す活動が行われている。又、同時に野球やバトミントン等スポーツを通した具体的な活動の中での他者との協調性等の必要性を実感させる取組も行われている。
 児童の権利擁護への取組と職員の資質の向上が積極的に行われており、職員は日常の支援を振り返るための「児童処遇自己点検シート」や「施設内虐待自己点検シート」等を利用し自らの支援の内容を確認し改善していく取組が行われている。又、児童からは苦情解決制度に基づく「ニコニコ相談シート」等による苦情の受付、児童間でのいじめに対する定期的なアンケートの実施等の取組により、児童が施設内で安心した生活が送れるような仕組みが構築されている。
 児童の退所後のフォローと家族再統合への取組として、児童が入所段階から入所中、退所後までを一貫して同一の家族支援担当者が行い、児童や家族との信頼関係を構築し、これを基とした支援が行われている。退所後のショートステイや1年間のフォロー、又期間を過ぎての相談受付等により、退所後のケアが実践され、退所後の児童や家族のよりどころとなっている。

◇改善を求められる点
 園と地域社会とのふれあいに関して、運営の基本方針にも、「児童の自立のための地域社会との連携」、「社会資源としての地域交流の積極的推進」がうたわれているが、現状は地域社会との関わりは児童のプライバシー保護の観点から希薄となっている。地域における社会資源としての施設の役割、地域社会との関係を通じた児童の社会適応力の向上といった面に関しての検討が望まれる。地域の高齢者や障害者施設への訪問、ボランティアとしての地域活動への参加等々、児童のプライバシーに考慮しつつ、地域との連携を通して児童の社会適応力を高めるためにどのような地域との連携が行えるか園として検討していくことが期待される。又、同時に社会への適応といった面からも現在教育の一環として行われている漢字検定資格等の取得以外に、より現状の社会環境に合わせたPC等の資格や教育、あるいはメールやSNSといった現在、社会で一般的となっているシステムに対しての正しい使い方やルールを教えていく等の現在の社会にマッチした支援を行っていくことも期待される。
 予算や県の方針が中期的に明確となっていない面もあり、現在、園としての中長期計画の策定はされていないが、現在園として解決すべき課題や、取組みを予定している施策などに関しての目標やスケジュール等を中長期的な観点から計画していくことが期待される。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  児童の権利擁護への取組と職員の資質向上、児童からの苦情受付や児童間のいじめに対する取組が高く評価されたことは、本施設の基本方針「安全・安心」な生活環境の提供が実現されていることを示している。
 一方、社会資源としての地域交流や現状の社会環境に合わせたSNS教育等の支援が不十分であることが指摘されており、運営理念の実現に向け時代に即した中長期的視点に立った支援を進めていきたい。
 今回の第三者評価結果を基に、可能なものから積極的に取り組みよりよい施設環境を提供していきたい。
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