社会的養護施設第三者評価結果 検索

清明寮

【1】第三者評価機関名 (株)中部評価センター
評価調査者研修修了番号 SK2021147
SK2021149



【2】種別 児童養護施設 定員 56名
施設長氏名 野中 利紀 所在地 静岡県
URL http://www.aoikai-sw.or.jp
開設年月日 1952年04月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人葵会
職員数 常勤職員 33名 非常勤職員 15名
有資格職員 社会福祉士 6名 保育士 6名
児童指導員 15名 公認心理師 2名
管理栄養士 1名 調理師 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 本体32室 地域小規模12室 (イ)設備等 食堂、学習室、交流スペース
(ウ) プレイルーム、心理療法室、静養室、浴室 (エ) 調理室
【3】理念・基本方針 ★理念
 養育理念:子ども一人ひとりの今日の幸せ、明日の幸せのために
「今日の幸せ」とは、様々な家庭環境の要因から入所した子どもたちへのインケアであり、職員と子どもが共に生活する中で、安心・安全で快適な生活を保障し、受容・共感し傷ついた心を癒しながら、基本的な生活習慣や学習習慣を習得させることである。
「明日の幸せ」とは、家庭復帰または、進学・就職して施設を退所していく子どもたちが、社会人として自立した生活を送るためのリービングケアであり、様々な体験を通して社会性・協調性・忍耐力等を育て、社会への適応力を高めることである。

★基本方針
 1.子どもの権利を擁護し、意見表明権を尊重し、子どもの意見に向き合い、意見を表明できるようにきめ細かい配慮を行う。
 2.こどもに寄り添い家庭的な養育支援を推し進め、安心してのびのびとした生活が送られるように努める。
 3.チームアプローチを活用し、子ども一人ひとりとの個の関わりを大切にし、心の痛みへの受容共感を通して、情緒の安定や大人への信頼関係を育む。
 4.食を通じて豊かな人間性を育て、健康で生き生きとした生活を送る基盤を培う。
 5.子どものグループでの活動から、協調性や思いやりの心、継続して取り組む力を育てる。
 6.安全な生活を保障するため、健康管理に注意し、事故や災害の防止に努める。
 7.地域行事や関係団体行事に積極的に参加し、地域社会の中での育みを大切にする。
 8.一人ひとりの発達段階やニーズに応じて学習をサポートし、学習意欲を育て、学力向上を図る。
 9.保護者の皆様の状況を正確に把握し、子どもの意向を尊重する中で、関係機関と協力して早期の家庭復帰及び里親に向けて支援をする。
 10.施設退所後の生活に向けて、多くの体験を通して社会性を育み、自立を支援し、併せて退所後の相談に応じる。
【4】施設の特徴的な取組 ・一時保護専用施設(グループケア)を児童相談所一時保護所の補完機能として開設。並行活用として地域の子育て世帯支援としてのショートステイ事業の受託をしている。
・施設の小規模化、地域分散化の取り組みとして本体施設と小中学校同学区内に地域小規模児童養護施設を二か所開設している。
・臨床心理士(大学教授)や児童精神科医と業務委託をし、心理、医療の見地からのスーパーバイズ体制を構築している。
・ダンスクラブの活動として外部講師と業務委託をし、児童の興味や余暇活動の取り組みを充実させている。
・児童の権利擁護、暴力防止、意見表明の一環として清明寮思いやり委員会を導入し、子どもたちのアンケートを実施している。
・人材育成、自分の将来像を描くためのキャリアパスや資質向上を目的としたSDS自己啓発援助制度の取組みをしている。
・職員の研究、児童の処遇改善を目指し学習、性教育、リービングケア等の委員会を組織している。
・公益的取組みとして月一度、地域の子育て世帯支援「すずらん」の取り組みをしている。
・退所児童等アフターケア事業として退所者支援事業所「しいいの木」を浜松市より受託している。
【5】第三者評価の受審状況 2023年05月24日(契約日)~ 2024年03月21日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和3年度
【6】総評 ◇特に評価が高い点
◆施設のインケア力と職員のチームワーク
 施設の運営体制は、施設長と副施設長、統括養育課長の3人による横並びの連携により、それぞれの役割が果たされている。管理職員による現場職員への配慮がチームワークや働きやすさにつながり、インケア力が発揮できている。職員の年齢のバランスが良く、幅広い支援が実現している。現場では助けてくれる上司の存在があり、息抜きができる関係や環境が整っている。高いインケア力と職員のチームワークの良さが、子どもの利益として日々の支援に反映されている。

◆養育・支援における高機能化・多機能化
 子どもの表出する感情や言動を受け止めて対応する養育・支援について、関係機関からの情報や施設内の心理士との面接結果等により、チームとして分析・検討をしている。さらには、元児童相談所ケースワーカなどの専門的なスーパバイズもあり、子どもが表出している言動を分析して処遇方針を検討し、処遇に反映させている。このことは、施設の高機能化への実践につながり、社会的養護のモデルとなることが期待される。さらには、地域子育て支援についての事業展開も進められ、一時保護グループケア「やまもも」の事業運営や子育てイベントの共催等、地域との信頼関係の構築に努めている。事業の高機能化・多機能化に積極的に取り組んでいる。

◆子どもの自己肯定感を育む学習支援体制
 子どもの主体性を尊重した上で、学習環境を整備して学習意欲向上から達成感、自己肯定感の確立へとつなげている。学習環境として公文式学習を導入しており、子ども一人ひとりのレベルに応じた学習が行われている。職員が見守ることで自信がつき、学習意欲の向上につながっている。このことが自己肯定感につながり、人格形成にも好影響を及ぼしている。

◇改善が期待される点
◆子どもの意見や要望の把握
 子どもの本音やニーズを聞き取って支援に反映させることが、子どもの利益に直結することは言うまでもない。日常の会話の中で思いや考えを聞き取り、定期的にアンケートを実施しているが、子どもからは「アンケートが多い」との声が寄せられている。子ども全員に同じ設問を繰り返すのではなく、現状に即した「タイムリーな設問」や「学力や発達の程度に合わせた設問」を組み込むなど、子どもに寄り添った内容のアンケートの実施が期待される。

◆児童記録の記載方法
 子どもへの支援の記録は、児童記録管理システム「すこやか日誌」を活用し、適切に管理・運用され、職員間での情報共有が的確に行われている。但し、子どもの生活状況の記録については、主観や客観的事実の記載方法に職員による個人差が見られる。可能な限り統一できるよう、「記録要領」を再検討することが望ましい。                                     

◆専門職の業務量と有給休暇の取得
 親子関係の再構築等、家庭支援専門相談員が担うべき役割を、養育担当の職員が兼務している。また心療法担当の職員も、心理的ケアを行いながら養育業務に関わっている。これらの専門分野(家庭支援、心理的ケア等)と一般の養育分野を兼務する職員については、その業務量に大きな負荷がかかっている。業務内容と量について分析し、見直しを行うなど体制の改善を検討されたい。また、職員によっては、十分に有給休暇が取得できていない。理由や原因を分析し、職員全員が偏りなく休暇を取得することができる職場環境を構築し、働きやすい職場づくりを推進されたい。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い児童の日常生活や施設運営が取り戻されつつある中での受審となりました。
都道府県社会的養育推進計画の見直しや改正児童福祉法の施行に伴い施設機能の変化や具体化が求められる中、養育の専門性の向上、養育単位の小規模化・地域化における養育支援の質の確保や人材育成が必須であり、当施設では改善が必要となっています。
また、毎年度、子どもへのアンケートを実施してはいるが、今回の評価機関のアンケートでも意見や要望の少なさが目立ち、「声にならない意見」を「自分の意見」にと変えられるような取り組みが必要であると感じました。
子ども自身が最善の利益を追求できるような施設運営をしていきたいと思います。そして、施設全体で「一人の子ども」を支援することを意識し、法人の基本理念である「子ども一人ひとりの今日の幸せ、明日の幸せのため」を実現できるよう取り組んでいきます。
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