社会的養護施設第三者評価結果 検索

千代田寮

【1】第三者評価機関名 (株)中部評価センター
評価調査者研修修了番号 SK2021148
SK2021159



【2】種別 母子生活支援施設 定員 30世帯
施設長氏名 森 茂雄 所在地 静岡県
URL https://shizu-chiyodaryo.org/
開設年月日 1952年08月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人 静岡福祉事業協会
職員数 常勤職員 10名 非常勤職員 8名
有資格職員 社会福祉士 2名 保育士 8名
幼稚園教諭 2名 臨床心理士 2名
施設設備の概要 (ア)居室数 30室 (イ)設備等 プレイルーム 保育室 面接室
(ウ) 児童自立訓練棟 (エ)
【3】理念・基本方針 ★理念
 利用者の意思と人格を尊重し、その最善の利益を実現するために、より質の高いサービスが提供されるよう、支援体制や環境の充実を図るとともに、安定した事業運営に取り組み、地域に密着した福祉の向上に貢献します。

★基本方針
 児童福祉法の理念のもと、様々な事情を抱えて生活が困難になった母子を受け入れ、丁寧に寄り添いながら、子どもたちが心身ともに健やかに育つよう、また、母が経済的・社会的に自立できるよう、個人の特性や実情に合わせて生活全般にわたり支援し、それぞれのよりよい未来を目指します。
【4】施設の特徴的な取組 (1) 母親への支援
・入所直後から母親に寄り添い、転校や生活保護申請等の手続に同行する。
・母からの家事、子育て、健康などに関するに相談に随時応じ、必要に応じて買い物や病院受診等に付き添う。また、母親がより深刻な生活上の困難を抱えた時には個別面接の場を設定する。
(2) 就労支援
・令和2年度から人材紹介・養成を専門とする企業と連携した就労支援を行っており、カウンセリング等による適性診断や専門研修などを通じて安定した就労につながるよう取り組んでいる。
・障害を抱える母親に対しては、医療機関、相談支援事業所と連携して作業所での就労を進めている。
(3) 障害等のある利用者ヘの支援
・知的、精神的な障害のある方であっても受け入れて、家事援助等の支援を行うとともに、自立に向けて生活スキルの向上や各種の福祉制度の利用が図られるよう取り組んでいる。
(4) 児童に対する支援
・遊びや学習などの機会を通じて子どもたちに寄り添い、心の安定を図るだけでなく、挨拶をする、他児と仲良く過ごすなど円滑な社会生活に必要なスキルが身につくよう指導・支援している。
・日々の生活場面での現れを観察し、子どもに気になる様子が伺えれば、面接を投げかけて行っているほか、子どもからの希望があれば随時面接を行っている。
(5) 学習支援
・中学生、高校生を対象に学力の向上や職員、他児との交流を深めるための学習会を夜間に月2回実施している。
・令和3年度から小学校低学年児に対して、認知機能を強化し、学習の土台となる基礎的な能力を高めるため、「コグトレ」(Cog-Tr)と呼ばれるドリルを実施している。
【5】第三者評価の受審状況 2022年04月27日(契約日)~ 2022年12月01日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和元年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
◆施設長(寮長)の改善・改革の気概
 施設長(寮長)の前職は県の職員であり、長い福祉現場での勤務経験からこの分野では広く深い見識を持つ。母子生活支援施設に関し、1937年に「母子保護法」が制定される以前からの歴史的背景を考察し、1947年の「児童福祉法」の成立から現在に至るまでの変遷を資料としてまとめている。これを基に民生委員児童委員の研修の場や福祉系大学で講演し、社会一般に正しく理解が進んでいない母子生活支援施設の周知や認知に繋げている。施設内においては、自立支援計画の様式を変更して利用者(母親と子ども)と職員の距離を縮め、実効性の高い支援へとつなげている。母親や子どもとの面談時間をルール化したり、非番(休み)の職員へは連絡を入れないルールを設ける等、働きやすい職場づくりのための改善も行っている。

◆事業の透明性を確保するホームページの活用(情報公開)
 ホームページを充実させ、様々な情報を公開することによって事業運営の透明性を確保している。法人のホームページ上に、経営理念や基本方針、法人の沿革、事業報告、決算報告等々が公開され、各事業所(千代田寮、千代田保育園)のホームページも充実している。ホームページには、苦情処理の実績報告も載せている。処理した案件ごとに受付日時、申出者、対応者、苦情内容、処理過程、解決結果等が理路整然と記されている。第三者評価の受審結果もすべて公開しており、事業運営の透明性を確保しようとの精神が顕著に見て取れる。

◆母親と子どもに寄り添った支援
 入所時のアセスメントを詳細に行い、母親と子どもに寄り添った支援を実践している。各種の申請や変更の届け出、母親への就労支援や生活上の支援、子どもの学習支援や進路の相談等々、職員は常に「利用者の最善の利益」を頭において支援にあたっている。母親や子どもに関する個別の課題への対応は、様式を改めた自立支援計画の中で明確にし、職員全員が共有している。知的障害がある母親に対して、ルールや決め事を伝える際には、イラストを加えたりルビを振ったりして、少しでも理解が進むように工夫している。

◇改善が求められる点
◆PDCAサイクルを意識した取組みの必要性
 事業計画をはじめ研修計画や行事計画等が綿密に作成され、中にはコロナ禍によって中止や縮小等はあるものの、概ね計画に沿った取組みが行われている。しかし、体制の整備を求められる取組みのいくつかには、PDCAサイクルの「C」(チェック)や「A」(アクション)のプロセスが欠落しているものが散見された。職員研修の取組みでは、研修効果の測定・評価(C)の仕組みがなく、アクションプラン(A)へと展開されていなかった。実習生の受入れに関しても、終了時の反省会において「実習受入マニュアル」に記されている意義や目的への言及(C)がなく、記録として残されていなかった。常に、PDCAサイクルを意識した取組みの実践を期待したい。

◆母親のコミュニケーション能力
 コミュニケーション能力に問題がある母親もおり、母親同士の集い(自治会活動や母親対象行事等)は実施されていない。母親へのアンケートでも、他の母親を非難したり攻撃する意見が寄せられている。対人面(コミュニケーション能力)に課題がある母親に対しては、職員との良好な関係を作ることから始め、様々な活動への参画意識を醸成させる取組みに期待したい。対人面での課題を克服したその延長線上に、社会への適合や一般就労がある。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  評価者が、様々な社会的養護施設に対する評価実績を積まれ、また、社会的養護施設の経営及び処遇の現場に携わっている方々であり、施設の特色や実情をよく理解され、私たちの話をよく聞いてくださった上で、情報交換的なやりとりも交えながら的確な評価・助言をしてくださったことに感謝申し上げます。
 今回は施設長として初めて受審した評価でした。評価項目は運営指針の内容を反映させて構成されていることがわかりましたが、受審にあたり事前にすべての評価項目に対する施設としての取り組みを、過去の評価結果を参照しながら点検しました。施設として一層の強化を図る必要のある項目が明らかになった一方で、施設の特色や実情から取り組みが難しい、又は取り組むことが適当でないと感じる項目があったこともあえて指摘させていただきます。
 私たちにとって、施設運営を持続させることが至上命題であります。私たちは良い支援を行って、定員いっぱいの入居者を確保し、入居者からも措置機関からも信頼されることを目指しており、そのために日々努力しております。そうしなければ、生き残れないという切実な危機感を常に持っております。
 この努力を行っていれば、第三者評価で良い評価が得られるのか。また、第三者評価で良い評価が得られればこのことが達成できるのか。今回の受審は、評価と経営の関係について、考えさせられるよい機会でもありました。
 今後、3年ごとに評価に臨むわけですが、私たちとしましては、評価のための評価となることのないよう、業務に対する意識を高め、良い支援、健全な経営を心がけていきたいと考えております。
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