社会的養護施設第三者評価結果 検索

乳児院静岡恵明学園

【1】第三者評価機関名 (株)中部評価センター
評価調査者研修修了番号 SK2021147
SK2021149



【2】種別 乳児院 定員 20名
施設長氏名 杉村 伸一 所在地 静岡県
URL http://www.s-keimei.or.jp
開設年月日 1970年07月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人 静岡恵明学園
職員数 常勤職員 29名 非常勤職員 1名
有資格職員 児童指導員 2名 家庭支援専門相談員 1名
看護師 3名 保育士 14名
栄養士 1名 嘱託医 2名
施設設備の概要 (ア)居室数 2室 (イ)設備等 事務室、園長室、医務室、静養室
(ウ) 相談室、ほふく室、乳児室、寝室、観察室 (エ) 浴室、給食室、洗濯室、地域交流室、休憩室、調理室
【3】理念・基本方針 ★理念
 子どもとともに


★基本方針
 ・入園されたお子さんの安全と健康を最優先に考えます
 ・1人ひとりの子どもの世界を大切にした生活を積み重ねていきます
 ・子どものすべてを受け入れ、その子の発達を保証します
 ・児童相談所とともに保護者をサポートし、家族の再統合を応援します
 ・「子どもが活き活きと育つ明るい地域づくり」を目指し、地域の子育て家庭を応援します
【4】施設の特徴的な取組  児童指導員・看護師・保育士をお姉さんと呼び、優しいお姉さんによる家庭的で子ども主体の養育が行われている。創設者杉村伸平・茂登子夫妻の薫陶を受けた乳児院創設からのメンバーである60代の主任を始め、職員は20代、30代、40代、50代がいて、平均勤続年数は16年を超える。若い者は先輩を見習い、静岡恵明学園の療育の理念・手法が伝承されている。子どもと一緒に同じものを大人も食べ、共に遊び、一緒にお風呂に入って同じ布団で眠る。子どもは安定した日々の生活から安心感と大人への信頼感を獲得して、身心ともに健全な成長を果たしていく。大人は子どもに学び、子どもから教えられて養育者として、人間として成長していく。子どもとともに生活する中で大人も子どもも学び合い成長していくのである。
本園の養育の特徴は緩さにある。もちろん集団で生活する以上、ルールや決まり、基本的な生活時間はあるが、それは絶対ではなく、その日の子ども達の希望で柔軟に大人が変えていく。散歩に行く先、食事を食べるテーブルとそのメンバー、着る服・帽子、子どもの希望をできるだけ叶える。子どもに根気強く対応し、ありのままの姿を受け入れる度量と雰囲気が職員達の中にあるということである。だからこそどんな子どもも受け入れることができるのである。
 また、本園の担当制も特筆すべきである。大人と子どもを機械的に担当者を決めるのではなく、生活する中で子どもが大人を選ぶのである。どんな小さな子どもでも好みがあり、好きなタイプの養育者がいる。その想いを大切にしたいのである。緩い養育、緩い担当制を可能にするのは職員間のきめ細やかな情報共有である。その子の昨夜、今日、ここ1週間の生活状況、身体状況、通院、面会状況、すべての情報がすべての職員に入手可能であり、担当職員だけでなくすべての職員が知っている。すべての職員には給食職員も含まれていて、離乳食・アレルギー食・病児食に関する療育の現場の要望に献身的に応えて給食を作っている。近年、嚥下や咀嚼に障害があって入所してくる子どももある。何が好きかどのくらいの量をどの程度の形状で提供するか、日々、養育現場の食事風景をのぞき、職員と相談しながら子どもの美味しい!を励みに頑張っている。
 また本園に併設する乳児保育所・子育て支援センター・児童家庭支援センターと緊密に連携して地域の子育て家庭を支援している。家庭引き取り後の子ども、里親委託された子どもが保育所に入園して毎日通ってくる。子育て支援センター・児童家庭支援センターに遊びに来てくれる。退所後の子ども・保護者のアフターケアがいながらにして継続的に行えるのである。保護者が保育所・子育て支援センター・児童家庭支援センターの職員へ伝えた不安、疑問、SOS等に本園として即座に対応することができる。これまでにも里親のリクルート・養成・委託後の支援には力を入れてきた。本園の元職員、現場職員を含め6名が里親登録をして委託を受けている県より里親施設実習事業を受けて里親を育成し、委託後の里親子のフォローを駿東地区里親会と共催で里親サロンを年4回本園で行っている。乳児院を中心として、恵明保育園・子育て支援センター・児童家庭支援センターが一丸となり、里親も含めた地域の子育てをするすべての親に親業訓練を行う事業を行いたいと園長は考えている。
【5】第三者評価の受審状況 2022年04月27日(契約日)~ 2023年02月07日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和元年度
【6】総評 【特に評価が高い点】
◆子どもの自我の芽生えと自己肯定感
 女性職員を「優しいお姉さん」と呼び、園の期待する職員像としている。子どもの潜在意識を大人が塗り替えることがないように、「好きな職員」を担当にして思い切り甘えられる環境に拘っている。好きな職員と関わる中で、自分の存在に気づき、わがままを言って、泣いて、怒って、自分を抑え、やがて自分を主張し始める自我が芽生えてくる。「怒ってもいいんだ!」、「泣いてもいいんだ!」と、自己肯定感を持つようになるなど、徐々に子どもらしく成長していく過程を大事に支援している。

◆日々の養育にあたる職員の姿勢
 養育理念「子どもとともに」の下に「基本方針」が掲げられており、入所している子ども一人ひとりの世界観を尊重した日々の養育が実践されている。このことは養育環境、笑顔満面の子どもの写真及び作品等の掲示による環境構成、また養育記録、会議録等から子どもの成長と共に職員育成につなげていることが理解できる。子どもとの出会いに「感謝」をもって日々の養育にあたる職員の姿勢を高く評価したい。

◆地域子育て支援における継続的な取り組み
 児童相談所等の関係機関との連携を密にし、一時保護受入れや罹病児受入れ等、子どもの安全確保を優先した受入れ態勢をとっている。園に併設されている地域子育て支援センターによる育児相談や健康教室等が実施され、地域子育て支援に深くかかわって継続的に取り組んでいる。

◆園長の牽引力
 理事長や園長という存在に対してのイメージは、「怖くて話しかけづらい、近寄りがたい人」という印象を持つのが一般的である。訪問調査当日、園長は調査員よりも先に「優しく」話しかけ、場を和ませてくれた。新人研修にも同行し、自ら距離感を縮めて話しやすい空間を作っている。日常においても、昼夜問わず現場に出向き、子どもの様子や職員の支援内容について会話を通して把握している。コミュニケーションを取りながら、観察も怠らずに必要な情報収集を行って分析している。園内に統一した意識を形成するために、園長自ら率先垂範を心がけ、組織(職員)を牽引している。

【改善を求められる点】
◆事業計画の在り方
 事業計画書を単年度事業計画と位置付けているが、どちらかといえば支援マニュアルに近い内容となっている。事業計画書では現状における課題と取り組むべき事柄を明確に示し、当事者である保護者(子ども)や職員全員にとって「今の状況」を身近に感じる内容であることが望ましい。近年における入所児童の減少により、中・長期計画として策定するに値する計画はまだ明確にしていないが、今回の第三者評価が事業展開や事業改革に関して何らかのきっかけとなり、計画が浮上してくることを期待したい。




◆先を見据えた職員育成
 園の特徴である「緩く守備範囲が広い」は、スーパーバイザーである副園長と主任児童指導員の存在により現状においては長所となっている。訪問調査当日、園長の思いと副園長からの聞き取り、またベテラン職員へのヒアリング内容から、園は養育支援サイドを中心に置き、経営サイドが周囲から大きく包み込んでいることが理解できた。相互の強い信頼関係を保つためのパイプ役がベテラン職員の存在であり、「緩く」の基準となっている。ベテラン職員の去就により、今後の支援体制や質の向上に向けた取組みも大きな転換期を迎えることが予想される。その懸念を払拭するためにも、先を見据えた職員の育成が期待される。

◆「優しさ」を学ぶ
 園では期待する職員像を「優しいお姉さん」としており、職員全員が万人に対して「優しさ」をもって接することを目指している。基本方針に沿った支援には、園の求めている「優しいお姉さん」が必要不可欠である。「優しさ」は学ぶことができるスキルであり、職員の育成計画などに「優しさ」を学ぶ教育や研修を含むことが望ましい。ホームページやパンフレット、恵明新聞(広報誌)においても、キーワードである「優しいお姉さん」や支援の基本である「優しさ」について強調していくことが期待される。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  静岡恵明学園の第三者評価をしていただき、ありがとうございました。
日々の職員の子ども達に対する姿勢と頑張りと高く評価していただき、深く感謝いたします。
これからも子ども達が安心して生活し、自己肯定感を育むことができる毎日を積み重ねていきたいと思います。
ご指摘いただいた課題についてはできるところから改善をして頂きたいと思います。
今後ともご指導をよろしくお願いいたします。
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