社会的養護施設第三者評価結果 検索

静岡県立吉原林間学園

【1】第三者評価機関名 (株)第三者評価機構
評価調査者研修修了番号 S18041
S18042
静岡県第H20-b007号
28地福1744-31号
28地福1744-32号
【2】種別 児童心理治療施設 定員 50名
施設長氏名 佐々木 三良 所在地 静岡県
URL http://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-820/
開設年月日 1962年09月01日 経営法人・設置主体 静岡県
職員数 常勤職員 39名 非常勤職員 18名
有資格職員 心理療法担当職員 12名 児童指導員(児童福祉) 18名
医師 4名 保健師 3名
栄養士 1名 家庭支援専門職員 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 50名室 (イ)設備等 体育館
(ウ) (エ)
【3】理念・基本方針 <支援理念>
①児童の権利擁護
子どもの人権を守り、一人ひとりの存在を尊重し、それぞれの成長・発達を支援します。
②家族の尊重
ご家族のお話に耳を傾け、思いを尊重し、協働します。
③総合環境療法による治療
学園の物理的環境、人的環境を含めた全ての環境が子どもの成長発達・回復の助けとなる総合環境療法を実施します。
④受容的関わり
Listen(子どもの訴えをよく聴く)、Accept(体験に寄り添い、受け入れる)、Support(取り組みを支え、手ほどきする)という受容的関わりを基本姿勢とし、一人ひとりの自己決定と意志を尊重し、自立が図られるよう心がけます。
⑤専門性の維持・向上
常に自己研鑽に励み専門性を深めます。⑥地域への還元:地域の社会資源となれるよう運営に努めると共に、外来相談等を通して社会的な役割を積極的に果たすように努めます。

<基本方針> 基本目標 みんなが楽しく
       モットー ・職員は威力よりも魅力 ・子どもが安らぎ満たされワクワクする ・目指す
       のは規制よりも自制
【4】施設の特徴的な取組 (1)当施設は、令和元年7月末、現在地に改築移転されました。新施設の特徴は以下のとおりです。
  ① 快適で落ち着いた生活環境を提供する施設配置
   ・居室の多くを南向きに配置、居室棟を交通量の多い市道から離して配置
  ② 居室を全室個室化し、児童のプライベート空間を確保
   ・定員50名分の居室を全て個室として整備
  ③ 小規模ユニット制による養育環境の改善
   ・1ユニット7~10名とし、少人数ユニットでの養育に変更
  ④ 児童精神科診療所の新設
   ・常勤の児童精神科医師を配置し、入所児童及び外来患者に心理治療を実施
  ⑤ 県産材を活用し、心安らぐ生活空間を提供
   ・体育館を木造で整備、居室や教室等のフローリングに県産材を使用

(2)「被虐待児の特性を踏まえたトラウマ・インフォームドな施設運営」を行うために、トラウマやその対応方法について専門的知識を持ち、愛着とトラウマの問題を抱えた子ども達に安全・安心な生活を提供することにより、生活全般を通じて情緒的成長を図ることができるよう支援しています。

(3)個別性に配慮(様々な個別支援メニューや誕生日食事リクエストなど)し、グループ活動を小規模化したり希望制にしたりして子どもの自主性を尊重した活動とするなどの工夫を行っています。

(4)県立施設として、施設における被虐待児等への支援経験を基に、他施設や関係機関に対する研修や視察の受け入れ、講師の派遣等積極的に行っています。
【5】第三者評価の受審状況 2019年11月14日(契約日)~ 2020年03月19日(評価結果確定日)
前回の受審時期 平成28年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
今回の訪問調査において先ず驚きとともに秀でていると受けとめたのは、次の2点です。①あらゆる情報がデータベース化されており、質問へのレスポンスが早い。②改善点は優先順位をつけて臨み、協議や仕組みが適切に実施されている。以上の2点は多くの福祉系の事業所が苦手とする点かと思うため、それだけでも「評価に値する」反面、残念だったのは新築移転で未だ落ち着かず、本件も腰を入れてとはいかない面がみられたことです。そういった意味では、次回3年後には当種別サービスを牽引する存在としてより有意義な取組みとなるものと期待します。

【長い年月を重ね、基本方針を最大限に反映させる仕組みをつくりあげています】
児童心理治療施設として全国2番目に誕生した事業所です。昭和37年に開設以来60年近く「受容的関わり(子どもの訴えをよく聴く)(体験に寄り添い、受け入れる(取り組みを支え、手ほどきする)」を姿勢の中心に据え、宿直日誌→治療指導課長の赤ペン(職員指導)→日々の申し送り(午後、会議形式、全員参加)と報連相の仕組みを確立させ、前日の検討記録が「申し送り・協議での連絡事項」欄に記載される等の工夫を以てマネジメントサイクルに乗せています。支援で迷うと「これでよかったのか」とスーパーバイズする背景として「受容的関わり(Listen)(Accept)(Support)」がそれぞれの職員の頭に自然に浮かび、基本方針が明確に日々の取組みに形づくられています。

【新築移転の結果、快適な生活環境を提供する施設に生まれ変わっています】
令和元年7月末、現在地に新築移転され、これまで不便とされた点は概ね改善しています。特に以前の「吹き抜け構造」は死角を増やすことにつながり子どもの見守りが難儀でしたが、大舎制から小規模ユニットに変更された際、解消されています。個室(4段チェスト、クローゼット、机、椅子など配備)、リビング、ダイニングと生活スペースが分かれ、1ユニット7~10名の少人数の生活は、食事のテーブルにつく様子やリビングで寛ぐ子どもの姿からも、家庭に近い環境がつくれていることが覗えます。実際、移転前後の問題行動は男女ともに減少、「良い表れ」は男女ともに向上しています。

【明確なゴールを推進する仕組みがあり、多職種で関わることができています】
「家族支援(家族再統合、アフターケア)」「心理(全体的な治療計画と調整、トラウマ治療、心理査定)」「医療(健康管理、予防、健康教育、医学的診断)」「教育(学習習慣の確立、基礎的な学力の獲得)」の4点が充実することで生活、生活習慣の獲得や適応的な対人スキルが養われ、その子の基盤となる「生活」がつくられるとする『総合環境療法』は様々な取組みにより、ゴールに向かっています。最も力強い推進力となっているのが、「申し送り(全職員参加の情報共有)」「3担当(心理・生活指導・学校)」「ケース検討(複数職種)」の3つの取組みで、多職種で子どもに関わることが推進されています。特に今回の新築移転では児童精神科診療所が設置されたことは大きく、子どもだけでなく職員にとっても大きな安心となっています。

【単独事業所ではなく、静岡県、児童心理治療施設全体としての姿勢があります】
児童心理治療施設としては全国で2番目との歴史をもち、51か所ある施設の中で公設公営は当事業所を含み5か所のみとの自負から、全体をみる意識と行動力があります。例えば職員不足は大きな課題であり、事業所としても自らの問題を超えて静岡県全体のこととして考えていますが、そのような中、施設長の発案から心理・福祉を学ぶ大学生等を対象とした「静岡県の心理職・児童福祉職 職場見学会」が実施され、現在は全県的な取組みに広がっています。また本年度だけでも6月~2月で小学校教諭などを対象とした研修会のオファー27件に快く応じ、中には要請に応え他県にまで出向いた例もあります。4月~2月の期間には社会福祉協議会をはじめとする34件の見学会を受入れ、こちらも海外からの視察も含まれており、「公益的な取組を実施する責務」を果たすことができています。

◇改善を求められる点
(1)新築移転間もないため、仕方ないとはいえ定員に満たない
家庭や里親、他施設での養育が困難な子どもの受け皿にならなければならない」との構えではいますが、現状は新築移転したばかりのため定員50名のところ39名の受入れに留まっています。

(2) 家族側に理由があるとはいえ、家族との関係づくりの機会が少ない
「保護者の家族懇談会等への参加が少ない」という課題は現在優先順位が低くなっていますが「家族支援(家庭再統合、アフターケア)」が子どもの基盤をつくる環境の一つであると掲げていますので、常勤の専任担当職員があってもいいかと是正を期待します。

(3)「外出の機会が少ない」「職員が主になっている場面もある」
1日の流れから時間的な制約があったり、衛生面などの問題から配膳を子どもと一緒にできないことは察しますが、第三者からは違和感がありました。また買い物など子どもの社会性を培う機会も多いとはいえないため、地域に送り出すことを念頭に置いた取組みが増えることを期待します。

(4)BCPの整備が遅れている
「危機管理(服薬手順の見直し、ヒヤリハット、アレルギー、防犯、災害等)全般の整備については準備段階としています。特に災害時における子どもの安全確保について、BCPの策定が進むよう望みます。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント ・3年前の第三者評価で指摘を受けた点について、改善に向けて十分検討が行われていないところがありました。今回御指摘のあった点については、施設全体で検討して、できるところから改善に向けて取り組んでいきたいと思います。
・今年度、新しい施設に移転して、運営体制など大きな変更があり、現在多くの課題に取り組んでいる最中です。これから様々な面で整備していかなければならない状況にある中で、旧施設のときから続けている、より質の高い支援を目指す姿勢・体制について評価していただいたことは大変嬉しく思います。
・一方、御指摘いただいた危機管理やアフターケア等の課題については、真摯に受け止め、改善に向けて検討していきたいと考えています。
・新築された建物により、子ども達に快適な生活を提供できるようになったことも評価していただきましたが、ハード面だけでなく、ソフト面においても、新施設が子ども・家族・地域に対して真によりよい支援が行われる施設となるよう、今後も努めていきたいと考えています。
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