社会的養護施設第三者評価結果 検索

乳児院静岡恵明学園

【1】第三者評価機関名 (株)中部評価センター
評価調査者研修修了番号 SK18210
SK18134



【2】種別 乳児院 定員 20名
施設長氏名 杉村 伸一 所在地 静岡県
URL http://www.s-keimei.or.jp
開設年月日 1970年07月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人 静岡恵明学園
職員数 常勤職員 27名 非常勤職員 3名
有資格職員 児童指導員 1名 家庭支援専門相談員 1名
看護師 3名 個別対応職員 1名
保育士 14名 栄養士 2名
施設設備の概要 (ア)居室数 2室 (イ)設備等 事務室、園長室、医務室、静養室
(ウ) 相談室、ほふく室、乳児室、寝室、観察室、調乳室、 (エ) 浴室、給食室、洗濯室、地域交流室、休憩室
【3】理念・基本方針 ★理念
 子どもとともに

★基本方針
・入園されたお子さんの安全と健康を最優先に考えます
・1人ひとりの子どもの世界を大切にした生活を積み重ねていきます
・子どものすべてを受け入れ、その子の発達を保証します
・児童相談所とともに保護者をサポートし、家族の再統合を応援します
・「子供が活き活き育つ明るい地域づくり」を目指し、地域の子育て家庭を応援します

【4】施設の特徴的な取組  児童指導員・看護師・保育士をお姉さんと呼び、優しいお姉さんによる家庭的で子ども主体の養育が行われている。創始者杉村伸平・茂登子夫妻の薫陶を受けた乳児部創設からのメンバーである60代の主任を始め、職員は20代、30代、40代、50代がいて、平均勤続年数は15年を超える。若い者は先輩を見習い、静岡恵明学園の養育の理念・手法が伝承されている。子どもと一緒に同じものを大人も食べ、共に遊び、一緒にお風呂に入って同じ布団で眠る。子どもは安定した日々の生活から安心感と大人への信頼感を獲得して、心身ともに健全な成長を果たしていく。大人は子どもに学び、子どもから教えられて養育者として、人間として成長していく。子どもとともに生活する中で大人も子どもも学び合い成長していくのである。
 本園の養育の特徴は緩さにある。もちろん集団で生活する以上、ルールや決まり基本的な生活時間はあるが、それは絶対ではなく、その日の子ども達の希望で柔軟に大人が変えていく。散歩に行く先、食事を食べるテーブル、メンバー、着る服・帽子、子どもの希望をできるだけ叶える。子どもに根気強く対応し、ありのままの姿を受け入れる度量と雰囲気が職員達の中にあるということである。だからこそどんな子どもも受け入れることができるのである。また、本園の担当制も特筆すべきである。大人と子どもを機械的に担当者を決めるのではなく、生活する中で子どもが大人を選ぶのである。どんな小さな子どもでも好みがあり、好きなタイプの養育者がいる。その想いを大切にしたいのである。緩い養育、緩い担当制を可能にするのは職員間のきめ細かな情報共有である。その子のその日、昨夜、ここ1週間の生活状況、身体状況、通院・面会状況、すべての情報がすべての職員に入手可能であり、担当職員だけでなくすべての職員が知っている。すべての職員には給食職員も含まれていて、離乳食・アレルギー食・病児食に関する養育の現場の要望に献身的に応えて給食を作っている。近年、嚥下や咀嚼に障害があって入所してくる子どももいる。何が好きか、どれくらいの量をどの程度の形状で提供するか。日々、養育現場の食事風景を覗き、職員と相談しながらこどもの美味しい!を励みに頑張っている。
 また、本園は併設する乳児保育所・子育て支援センターと緊密に連携して地域の子育て家庭を支援している。家庭引き取り後の子ども、里親委託された子どもが保育所に入園して毎日通ってくる。子育て支援センターに遊びに来てくれる。退所後の子ども・保護者のアフターケアがいながらにして継続的に行えるのである。保護者が保育所・子育て支援センターの職員へ伝えた不安、疑問、SOS等に本園として即座に対応することができる。これまでにも里親のリクルート・養成・委託後の支援には力を入れてきた。本園の元職員、現職員を含め6名が里親登録をして委託を受けている。県より里親施設実習事業を受けて里親を育成し、委託後の里親子のフォローを駿東地区里親会と共催で里親サロンを年4回本園で行っている。今年度中に法人内の児童家庭支援センターが乳児部敷地内へ移動してくる。児童家庭支援センターと協働し、里親も含めた地域の子育てをするすべての親に親業訓練を行う事業を行いたいと園長は考えている。
【5】第三者評価の受審状況 2019年05月30日(契約日)~ 2020年02月29日(評価結果確定日)
前回の受審時期 平成28年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
◆高い改善意識
 園長、副園長の改善意識の高さが職員にまで浸透し、毎年の自己評価や3年ごとの第三者評価の受審の中から様々な改善の気づきを得て、改善活動につなげている。一例として、前回の第三者評価では、マニュアルの未整備が課題として挙がった。それを受けて、職員が園の養育・支援に必要なマニュアルの洗い出しを行い、最優先に「虐待防止マニュアル」の作成が論じられた。職員からの作成依頼を受け、副園長が職員意見の反映された「虐待防止マニュアル」をまとめ上げた。

◆地域における子育て支援の活動拠点として
 昭和45年の乳児院開設に始まり、昭和6年の赤ちゃんセンターの開業によって、乳児院、保育所(0~2歳児)、子育て支援センターと、地域の子育て世代を支援するためのラインナップが整ってきた。さらに、今年度中に、里親支援を担当する児童家庭支援センターが敷地内に移設される。これらを統括する形で「赤ちゃんセンター」が運営され、地域に向けての公益的な活動拠点となっている。定期的な活動としては、1年を通じて毎週開催される「音楽オジさんのリズム教室」や「子育て支援遊びの広場」がある。児童家庭支援センターと連携して、里親サロンを年間4回開催し、会場を提供して職員が相談にも乗っている。毎回20名程の里親が集まって参加者同士が懇親を深めており、レスパイト機能も十分に発揮されている。理念に謳う「子どもとともに」の精神の下、地域と連携して子どもの健全な生育に取り組んでいる。地域の行事に積極的に参加し、子どもたちが桜祭りの見物に出かければ、地域住民から挨拶とともに励ましの声がかかる。

◆子どもが職員を選ぶ担当制
 養育・支援の場では担当制を敷き、きめ細かに対応している。この担当制は、園や職員の都合で一方的に担当職員が決定されるのではなく、子どもが職員を選ぶ独自の担当制を執っている。どんなに小さな子どもにも、好きな、相性が良い職員がいる。その子どもの気持ちを担当職員がしっかり受け止めて養育し、愛着関係の醸成にも役立てている。特に行事等で外出する時は、担当職員と1対1の係わりの時間を多く持つようにしている。周りの大人(職員)が極力変わらないこと、全ての職員がその子を知っていることを大切にして養育している。

◇改善が求められる点
◆事業計画と事業報告の相関性
 事業計画は職員意見を反映して策定されており、年齢ごとに「年間目標」と「留意すること」、「1日の生活の流れ」等の具体的な内容を記述している。期中での評価・見直しはケース会議で行われ、最終評価は年度終了時に実施されている。しかし、その最終評価の結果が事業報告書に反映されていない。事業計画として掲げた「年間目標」に対し、どのような取り組みを行って、その結果がどうなったのかを事業報告書に詳細に記述することが求められる。また、「年間目標」が達成されたか否かの評価を曖昧にしないためにも、「年間目標」には可能な限り数値目標や具体的な到達点を設定することが望ましい。

◆物質的環境の整備
 食事については、養育部門と調理部門が連絡を密にし、子ども一人ひとりにあった安全で美味しい食事を提供している。子どもに無理強いすることなく、「楽しく、美味しく」をモットーに支援している。子どもが、一緒に食べたい職員を選んで席を決め、発達に応じてスプーンやフォーク、箸を使って職員と一緒に食事をしている。椅子については、2段階のサイズはあるが、もう少し種類を増やし、子どもに合ったサイズの椅子を提供したいとの声がある。子どもが遊ぶ玩具についても、玩具の数や職員配置などで、子どものリクエストに応えきれていない部分があり、課題を残している。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  身に余る評価をいただき、光栄に思います。
改善が求められる点につきましては、真摯に受け止めて早急に対応させていただきます。日頃の職員の子ども達に対する深い愛情と業務に対する努力を認めていただき、心より感謝しております。有難うございました。
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