社会的養護施設第三者評価結果 検索

春風寮

【1】第三者評価機関名 (株)第三者評価機構
評価調査者研修修了番号 S18041
S18042
H20-b007号
H28-c002号

【2】種別 児童養護施設 定員 30名
施設長氏名 石川 順 所在地 静岡県
URL https://www.shumpu.or.jp/
開設年月日 1948年12月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人春風寮
職員数 常勤職員 23名 非常勤職員 6名
有資格職員 児童指導員 1名 家庭支援専門相談員  2名
心理療法担当職員 2名 保育士 12名
里親支援専門相談員 1名 栄養士 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 9室(男子)9室(女子) (イ)設備等 居間、プレイルーム、食堂、厨房、学習室、図書室、地域交流室
(ウ) 事務室、面接室、医務室、浴室、洗面所、トイレ、洗濯室 (エ) 多目的広場、グランド
【3】理念・基本方針 理念:
・家庭環境に恵まれない児童や様々な問題を抱える児童には、愛情とよりよい環境を与え、心身ともに健やか
 に成長、発達していくよう見守り支援する。
・児童が、寮に入所後、様々な生活場面を体験していく中で、自分の課題を見つけ、解決を目指すことにより
 自立への道を進んでいくよう支援する。
・児童の安全・安心を確保し、あたりまえの生活を通じて、一人ひとりの児童が、身体的、精神的、社会的に
 成長、発達できるように支援し、人間的成長を総合的に促進する。
・入所してきた子どもたちが、安全に安心した生活を営むことができるよう、子どもの生命と人権を守り育む
 。
・子どもの意思を尊重しつつ、子どもの成長と発達を育み、自己実現と自立のために継続的な援助を保障する
 養育を行い、子どもの最善の利益の実現を目指す。
基本方針:
・子どもの存在そのものを認め、子どもが表出する感情や言動をしっかり受け止め、子どもを理解する。
・基本的欲求の充足が、子どもと共に日常生活を構築することを通してなされるよう養育・支援する。
・子どもの力を信じて見守るという姿勢を大切にし、子どもが自ら判断し行動することを保障する。
・発達段階に応じた学びや遊びの場を保障する。
・秩序ある生活を通して、基本的生活習慣を確立するとともに、社会常識及び社会規範、様々な生活技術が習
 得できるよう養育・支援する。
【4】施設の特徴的な取組 <人的サービス面>
・男女ユニットへ配置する職員を増員し、個別担当職員を分散することで、子どもと個別担当職員との距離が
 より近くなるよう配慮し、今まで以上に細やかな対応による信頼関係の構築を目指している。
・退所児童へのアフターケアについて、児童家庭支援センターと協働し、電話や訪問等事業としての支えと、
 顔を合わせた時に心の内を話せる関係性による支えの両面で支援を行えるよう取り組んでいる。
・リービングケアを含む自立支援については、CCP(キャリアカウンセリングプロジェクト)事業や、別棟
 2階の居住設備を利用した一人暮らし体験等、退所予定の子どもが、将来の社会的自立に向けた知識や経験
 を習得できるよう計画した取組を行っている。
・児童家庭支援センターの里親支援事業と協働し、里親の養成・育成のため、職員が施設児童の表れやその背
 景の捉え方等を講義したり、実際に子どもと関わる体験実習を指導することで、現実の社会的養護について
 の理解と体験を深める取り組みを行っている。
<設備・環境面>
・令和2年度に地域小規模児童養護施設を開設し、地域との繋がりの中で、家庭生活に近い養育を目指してい
 る。
・令和3年度に子どもたちからの希望を受け、居室の畳をフローリングへ改修し、より過ごしやすい生活環境
 へ近づけるための取り組みを行っている。
・コロナ対応の一つとして、増加しているリモートで行われる様々な取り組みへ対応できるよう、Wi-Fi環境
 の整備を行った。
【5】第三者評価の受審状況 2021年07月01日(契約日)~ 2022年02月28日(評価結果確定日)
前回の受審時期 平成29年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
(1)施設長のリーダーシップの下、組織として考え抜き前に踏み出す力があります
今年度より事務処理は事務長が、その他の人事労務・財務・法人業務・施設運営は、施設長が常務理事を兼ねて執りおこなうように組織が変容、業務多忙のなか4名の離職者補充を速やかに進め、各棟6人体制が整ったことは、施設長の指導力を象徴するエピソードです。「養育支援は重要だが、児童養護施設を取り巻く社会の動向にも目を向けてほしい」と会議に議題を持ち込む等、施設長は職員に日々自らの役割と姿勢を言動で示しており、職員もそれに応えています。

(2)「養育・支援の質の現状」と向き合い、スーパバイスを重ねて質を高めています
当施設では「養育・支援の質の現状」について、施設長ではなく統括が中心となって定期的、継続的に評価・分析をおこなっています。指導会議を活用してケース検討を毎月重ね、統括がスーパバイザーの役割を担うとともに多職種での協議としてます。必要な職員には統括が直接時間を設けて養育上の指導をおこない、困難ケースは外部講師を招いたケース検討(年6~8回)の場に上げ、専門的見地からの意見を得ることで現状の課題と対策を明らかにしています。

(3)静岡県社会的養育推進計画に則り、計画的に成すべき責務に取組んでいます
児童養護施設には「小規模化」「地域分散化」「高機能化・機能転換及び多機能化」が求められており、当施設では令和2年4月に地域小規模児童養護施設「さくらの家」を開設したところです。同年12月には社会的養育推進計画に関するヒアリングを静岡県より受け、これからの施設整備について検討をおこない、令和3年度の『事業計画』に掲載しています。昨年度は、一時保護やショートスティの取組を通じて関係機関と連携した子育て支援に協力ができ、一時保護は15名の児童を延べ272日間受け入れるに至り、児童養護施設の専門機能を活かしています。

(4)法人内の各事業所がもつ専門性を連携により高め、相乗効果を産みだしています
法人内の『児童家庭支援センターはるかぜ(以下、はるかぜ)』は県受託事業として『社会的養護自立支援事業』を推進していて、令和2年度は14名について支援コーディネーターが関与しており、当施設においても6名が支援を受けています。また同年にはさらに、はるかぜにおいて推進する、CCP(キャリア・カウンセリング・プログラム)のグループ・ワーキングを8回実施することが叶っています。

(5)「子どもの最善の利益」の土台づくりとして働きやすい環境整備を推進しています
新人職員4名には、仕事だけでなく良き相談役として日頃わからないことを聞けるようにと先輩職員を相談役としてつけ、メンター制度に準じた取組を図るほか、児童支援記録システム「すこやか日誌」やWi-Fi整備等ICTの導入で効率的な事務処理につなげており、「すぐ質問できて安心」「パソコン業務が減った」と、職員が実感できる向上成果となってます。『職員勤務評価表』では面談を通じて日常の困りごとを確認、システム上の掲示板にアップで共有するとともに、施設長の号令・発信が速やかに執りおこなわれて、快適な休憩室が誕生するに至っています。

(6)実習生の受け入れは「職員確保」と「職員育成」のほか、文化醸成に結ばれています
毎日夜21時より開始する職員の打合せに同席するよう実習生に促し、「その日のうちに疑問を解消し次の日に残さない」として質問をおこなえる時間を設けています。時間学生にも「遠慮なく何でも言ってほしい」と伝えており、職員側も学生と話すことで自らの支援の振り返りとなり、「理論的にどう説明したらいいか」が訓練され、学びに実っています。指導職員のうち5年以上勤務している職員は3割弱、5年未満の職員が4割を占め、この層が中堅職員に値するという状況にあるため、実習生の受け入れは職員育ての一翼を担う一方で、直近5年間において2名の採用に結び付いていることは、職員同士が高め合える土壌があることも示しています。

◇改善を求められる点
(1)権利擁護
毎月「子ども会議」を実施するほか意見箱は5箇所の設置があり、子どもの意見や要望を聞き取る機会を設けており、人権擁護チェックリストを以て職員自身の自己評価にも取組んでいますが、「プライバシー保護に係る権利養護についてのマニュアル作成の未達(「1日の流れ」の作成で一部補完はされています)」と「権利擁護についての内部研修は計画途中」の状況は早期にクリアするとともに、さらなる向上として次の2点も併せて検討していくことを期待します。「意見を表現するのが困難な子どもが適切な第三者(アドボケーター)による支援を受けることができる」「(子ども自身が子どもの権利を理解する、という視点で)子どもの権利ノートの活用を掘り起こす」

(2)家庭との連携
月毎の事業や行事をはじめ子どもに関係する行事予定を、施設、学校関係、地域・関係団体の別に整理のうえ一覧にまとめ、年度ごとに『年間事業・行事計画』として保護者に書面郵送することをこれまでは励行してきましたが、令和3年度は電話説明となっています。また担当者交代で保護者への通信も休止しています。早期に再開させるとともに、『事業計画』は子どもや保護者へわかりやすく伝えるに留まらず、「参加したい」「参加できなくても様子を写真などで見てみたい」との想いが膨らむよう、写真やイラスト挿入などの工夫も併せておこない、保護者との連携に努めることで子どもの適切な養育につながることを望むとともに、家族からの相談に応じる体制(ファミリーソーシャルワーク機能)が整うことも期待します。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  今回で3回目の第三者評価受審となりましたが、改めて前回評価を活かした取り組みの不十分さを痛感する機会ともなりました。“日々の子ども達への支援を一生懸命に取り組んでいる”…ことは、確かに自己評価でしかないという事を改めて意識し、それをどう示し、どう伝えていくのか、どう理解してもらうのか、そのための仕組みや根拠について、今後改めて職員全員で考えていきたいと感じています。
そして、その根拠を徹底すること、共有し、理解を得る事がはじめて、“子ども達への最善の利益に向かう支援を一生懸命に取り組んでいる”と言えること、評価されることへ繋がっていくのだと思います。3年後の受審に向け、職員一丸となり、職員の意識を高め取り組みを進めていきます。
 ありがとうございました。
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