社会的養護施設第三者評価結果 検索

静岡県立三方原学園

【1】第三者評価機関名 (一社)静岡県社会福祉士会
評価調査者研修修了番号 SK15102 
静岡県 24-b001



【2】種別 児童自立支援施設 定員 60名
施設長氏名 岡田 重光 所在地 静岡県
URL http://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-830/
開設年月日 1910年02月01日 経営法人・設置主体 静岡県
職員数 常勤職員 36名 非常勤職員 14名
専門職員 児童自立支援専門員 33名 児童生活支援員 3名
栄養士 1名 看護師 1名
児童精神科医 2名 心理判定員 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 寮3棟5寮、25室・本館(延べ床面積)1605.02㎡ (イ)設備等 体育館・給食棟・温室・25mプール・農場・運動場2か所
(ウ) 食堂5室・相談室 (エ) 施設内に三方原古墳群の一部が存在
【3】理念・基本方針 ◆基本理念

(1)児童を人として尊び、その権利を保障する。
(2)児童の情緒の安定を図り、児童が基本的な人間関係を築き、自らを高めることができるように支援する。
(3)児童が自立心を持ち、社会の一員として生活できるように支援する。


◆基本方針

(1)児童の権利・人間性を尊重し、児童一人ひとりにとって最善の利益を確保することに努める。
(2)支援の中心を小舎制による家庭的な雰囲気の中におき、職員との人間関係作りや心の安定を図りながら自己肯定感を育み、健全な社会生活を営むのに必要な人格形成、心身の育成及び自立の支援に努める。
(3)児童の学力向上及びより良き支援のため、分校との連携を図り、情報を共有し、職域にこだわらないチームワークで児童の自立支援にあたる。
(4)第三者評価の結果を生かして客観性のある支援に努めるとともに、児童相談所、市町福祉・教育部門、医療機関、司法機関等との連携・協働を強化し、児童の円滑な地域移行を進める。
【4】施設の特徴的な取組 ・第三者委員会(9月、2月)
・アセスメント会議(児童精神科医、児童相談所、学園)毎月開催
・安心安全生活聞き取り(毎月)児童虐待の防止
・グループ活動  テーマを決めて(自分の気持ちをどう伝えるか)
・生活意識アンケート  年2回同じアンケートで(時系列で変化が分かる)
・プレイルーム整備  年齢が低く言葉で伝えるのが苦手な子どものために・心理療法等
【5】第三者評価の受審状況 2016年06月07日(契約日)~ 2016年12月27日(評価結果確定日)
受審回数 1回 前回の受審時期 平成25年度
【6】総評 ●評価対象Ⅰ 支援の基本方針と組織

【特に評価の高い点】

・経営環境や支援の内容、組織体制や設備の整備、職員体制、人材育成、財務状況等の現状分析は、今までは文章で表現していたものを、数値化し、課題や問題点を明らかにして、管理職・職員間でも理解しやすいものに改善しています。
・事業計画の策定にあたっては、各寮の担当職員が寮内の意見等を集約し、施設の担当職員が5つの寮を集約した書面を配付して職員で全体像を検討して次年度の計画を策定する仕組みができています。また今年度は目標を数値化しています。

【改善を求められる点】

特記なし


●評価対象Ⅱ 施設の運営管理

【特に評価の高い点】

・施設長の指導力のもと、昨年度から今年度にかけて自立支援計画の様式の見直しを行うとともに、評価・分析結果から支援の向上のために、施設内研修や外部研修への参加の機会を増やした事業計画を作成しています。また、今までは運営全般を話し合う場として班長会議を新設し、定例化しました。
・経営改善や業務の実効性については施設長、総務課長、指導課長、班長で組織し、古い組織を自分たちで変えなければならない事を話し合い、公務員の意識に民間企業の感覚を持ち込むことを試みています。
・職員の就業状況の配慮として、施設内相談窓口で「パワハラ・女性よろずサポーター」を設け、所属内で相談できないときは他の所属の担当者に相談できる体制が整っています。
・職員一人ひとりの教育・研修の機会として、施設内にチューター制度を設け、チューター研修を実施した職員を新規採用職員にひとりずつ配置しています。

【改善を求められる点】

・心理判定員が常勤で1名配置されていますが、さまざまな発達障害等を抱えて入所してくる子どもが多く十分な対応ができないため増員を希望しています。また家庭支援専門相談員の常勤化も希望するとともに、設備面でも子どもの居室の個室化等を県に要望していますが実現していません。
・職種は専門性が高く、習得には年数が必要にもかかわらず継続勤務年数が短いため、施設の将来を見据えて取り組む体制が整いにくくなっています。
・職員の人員配置に余裕がないことで、専門性を生かした地域福祉向上のための取り組みや、公益的な事業としての機能の還元やニーズへの要望に応えきれていません。


●評価対象Ⅲ 適切な支援の実施

【特に評価の高い点】

・支援の質の向上のために、各種書類の見直しを行って内容の充実と効率化を図り、標準的な実施方法としてチームケアマニュアル等を活用するなど、様々な工夫と研修を実施して、職員が統一した対応をしています。
・アセスメントは多職種で多角的に行われ、支援実施状況の記録はパソコン内の統一書式に入力され、様々な会議録が共有されています。
・平成27年度に、特別支援日課における「無断外出時」のマニュアルと捜索方法と、「子どもの暴力・不適応行動などへの対応」についてはマニュアルを策定して、リスクマネジメントに取り組み、伝達研修を実施しています。
・第三者委員会を設置の他、今年度、子どもの苦情を直接受け付ける専門の委員を設けています。

【改善を求められる点】

・子どもや保護者へのプライバシーの保護の工夫や配慮はされていますが、子どものプライバシー保護に関しては、個人情報を保護することは明記していますが、その他の規程はありません。また、子どもの安全を優先するため、子どものプライバシー保護について職員に必ずしも周知がされているとは言えず、研修等の記録がありません。
・特別な事情があり地元に帰れない子どもには次の生活の場への配慮をしていますが、相談方法については口頭で伝えているのみで書面がありません。


●内容評価基準(41項目)

【特に評価の高い点】

・月に一度、子ども全員から自身の状態や要望を聞き取るための時間が設けられています。自立支援計画では子どもが自己決定ができ自立性を高める取り組みや、職場実習や環境整備、農作業を通じた自然体験等の環境保全活動を通して、子どもの情操形成を推し進めています。
・1寮10名程度の小集団で養育が行われ、決まった職員が継続的に子どもに関わる仕組みになっています。子どもの様子については、毎日の寮日誌のほかに週1回のスタッフ会議で取り上げています。また、支援が困難になりそうなケースは「寮日誌」・「スタッフ会議録」に記載して情報を共有し、「支援困難場面初期対応マニュアル」に基づいて対応しています。さらに、行動上問題がある子どもの対応については、職員が感情的にならずに対応できる体制が整備されています。
・施設が閉鎖的にならない方策として、第三者委員会を設け、定期的に施設の状況を第三者がチェックする体制を整えています。
・建物構造についてはモニターや鏡の活用をして死角を作らない工夫や、寮内でも行き先を職員に逐一伝えるなど、子どもの所在確認を徹底しています。
・子どもが抱える性の問題への取り組み強化のために、今年度から性教育委員会を立ち上げ、職員教育や子どもへの対応について検討しています。

【改善を求められる点】

・生活寮は小舎制ですが、2人以上の相部屋のためプライバシーへの配慮や、落ち着いてひとりになることが難しくなっています。また受験生が個別で勉強するスペースは少なく、集中して学習に取り組んだり、くつろげる空間と言う意味では十分とはいえません。
・子ども自身の出生や生い立ちなどを伝えた後のフォローについては指導員が担当していますが、心理面に対する組織的な対応方法や説明方針は明確な定めまでには至っていません。
・退所後も希望があれば相談に応じられることを記した書面は用意していません。
・年齢に応じたカリキュラムの作成や、性に対して寮内である程度オープンに取り扱う事については、性暴力で入所している子どもも在籍するため、非常にデリケートで画一的な対応が取れない状態にあります。
・不適切なかかわりについては、「チームケアマニュアル」に子どもと関わる際の心構えや注意点などは記載されていますが、具体例を示して職員に徹底するまでには至っていません。また、子ども間のいじめ等に対するマニュアルや、保護者等からの強引な引取りに対するマニュアルは整備されていません。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  前回平成25年度の第三者評価で改善が求められた点について、児童の最善の利益を追求しながら工夫を重ねて取り組んできました。現状分析や目標を数値化し、課題や問題点を明らかにしたことは、支援の目標と結果を分かりやすくするために効果があったとよい評価をいただきました。また、性の問題を抱える児童が多い点を踏まえ、性教育委員会を立ち上げ、職員への研修も充実させたことは大きな改善でした。

 今後は指摘があったとおり、小舎交代制の運営で支援の質を高めていくためにより具体的なマニュアルが必要であり、また透明性、社会への説明責任を果たす上でも各種マニュアルの整備や書面による説明をさらに進め、子どもたちの支援に活かせるよう努力していきたいと考えています。
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