社会的養護施設第三者評価結果 検索

新潟市立乳児院

【1】第三者評価機関名 (公社)新潟県社会福祉士会
評価調査者研修修了番号 SK18104
SK18100
28007


【2】種別 乳児院 定員 10名
施設長氏名 一ノ瀬 里絵子 所在地 新潟県
URL http://www.atago.or.jp/
開設年月日 2015年04月01日 経営法人・設置主体 公設民営(指定管理)/設置:新潟市、運営:社会福祉法人愛宕福祉会
職員数 常勤職員 26名 非常勤職員 3名
有資格職員 社会福祉士 5名 精神保健福祉士 1名
保育士 17名 医師 1名
看護師 4名 公認心理師 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 寝室2ヶ所、ほふく室2ヶ所 (イ)設備等 家庭浴槽2ヶ所、沐浴槽2ヶ所、子ども用トイレ2ヶ所
(ウ) キッチン2ヶ所、多目的室(観察室)2ヶ所、共有ラウンジ (エ) 親子生活訓練室、心理療法室
【3】理念・基本方針 ■理念
子どもの幸せを第一に考え、一人ひとりをかけがえのない存在としてその尊厳や権利を守り、家庭的であたたかな環境のもと日々大切に育み家庭等へ繋いでいきます。
すべての子どもの幸福を願い家庭や地域への支援に積極的に取り組み、子どもの最善の利益のために尽くします。

■基本方針
1.子ども一人ひとりの尊厳と権利を守ります
2.子ども一人ひとりを愛情を持って大切に育み成長を繋いでいきます
3. 家庭復帰の可能性を第一に考慮し、取り組みを進めていきます
4.地域社会お一員として、地域の子育て支援に取り組みます
5.子ども一人ひとりの幸福のため、職員は自己研鑚に励みさらなる専門性の向上を目指します
【4】施設の特徴的な取組 〇ヒヤリハットの収集による事故防止の取り組み
 開設以来、子どもの安心安全を守るために、ヒヤリハットの収集、分析、検討を重ねています。年間のヒヤリハットの枚数は900件~1000件を超えるときもあり、些細なことでも、一人ひとりが意識を高く持って情報共有をしています。ヒヤリハットの分類には「不適切なかかわり」という分類もあり、不適切なかかわりのヒヤリハットも子どもの安全を守るものとして位置づけています。

〇マイドールの取り組み
 入所児には、可能な限り、保護者に「マイドール」を作成していただき、子どもが「世界にたったひとつのママがつくってくれたお人形」とともにはるかぜでの生活を過ごせるようにしています。マイドールは、不安なとき、遊ぶとき、眠るとき等子どもの心の拠りどころとしていつも子どものそばにいます。職員もマイドールを保護者がつくってくださった宝物として大切に扱うことで、いつもそばにいなくてもママを大切に思う子どもの気持ちに寄り添います。

〇育ちのつなぎとアフターフォロー
 施設から家庭へ、または措置変更の場合でも、子どもに「お引越し」(場所がかわるので)をその子なりにわかるような方法で子どもに伝えます。お引越しまでの間の期間、育ちのアルバムを養育者と一緒にみて思いで話しをしたり、持っていきたい自分の物を職員と一緒に準備をしたりします。また、家庭訪問や措置変更のアフターフォローも必要に応じて実施します。送り出したあとは、将来施設をおとずれるかもしれないその時のために、その子に手紙を書いて永久保存とし、将来を見据えた支援を行っています。
【5】第三者評価の受審状況 2019年07月01日(契約日)~ 2020年03月04日(評価結果確定日)
前回の受審時期 平成28年度
【6】総評 【特に良いと思う点】
■リフレクション(内省)による個人と組織の資質向上に努めている。
 施設ではヒヤリハット報告書として、事故に至らなかった子どもの養育・支援についてのインシデント報告とあわせて、職員自身の行動や感情についても報告してもらい、自らと職員全体で内省し見つめ直し、気づきを得て、新たな行動へとつなげることを大切にしている。ヒヤリハット報告が提出されると、先輩職員や上司からの励ましやアドバイスが報告者に寄せられる。
 提出される報告書は年間数百枚にのぼっており、記載している職員自身にインタビューしてみたところ、負担よりも、心情面を仲間に打ち明け、分かりあえる効果が上回っている旨の発言が目立っていた。報告書の目的である「事故防止」の効果も確認できたが、それ以上に職員の振り返りや教育・育成についても高い効果があり、職員同士で高め合う施設風土が感じられた。

※リフレクション…人材育成の分野において「自分自身の仕事や業務から一度離れてみて、仕事の流れや考え方・行動などを客観的に振り返ること。失敗したこと・成功したこともすべて含めて見つめ直し、気づきを得て、新たな行動へとつなげる未来志向の方法論。

■子どもの最善の利益に配慮し未来を見通した養育支援に全職員で研鑽し取り組んでいる。
 「赤ちゃんだからわからない」ではなく、子どもや保護者との一期一会の出会いを大切にし、子どもの最善の利益を考え職員が信念をもって仕事に取り組む姿勢を大切にしている。このことは、施設で発行している通信の内容や、今回の第三者評価の訪問調査における施設長、職員ヒアリングで確認できた。2つのユニット内での養育の場面や環境においても、職員が常に自己を振り返り、子どもにとって最善は何かという視点で改善をしてきたことが確認できた。
 また、自分を大切にするという子どもの気持ちを育めるよう、自分自身のアルバムを常に手にすることが出来る環境づくりや、保護者との写真を居室に掲示し育ちのつなぎとしているなど、様々な配慮がうかがえる。健康管理等においては、専門性を持った養育管理による発達の保障と、家庭に近づけ愛情を感じられるような養育者との関係性の構築を目指し、研鑽していることが、自立支援計画や養育日誌、ヒヤリハット記録などから読み取れる。
 さらに優れた取り組みとして、子どもの何十年後の将来を見据えて、子どもが自分の人生を振り返り「自分探し」をすることがあった時に自己肯定感を持つことができるように、愛されてきた証しとなる写真や手紙を永久保存して耐火金庫に保管していることがあげられる。

■施設組織の経営に職員が主体的に取り組んでいる。
 施設では、法人の経営方針と新潟市の方針を受けて中長期計画を策定している。それを基に年次の事業計画が策定され、各委員会、係の年間の役割も明記されている。職員は職務分担や委員会等の役割に応じて、自主的に事業を推進し運営している。また、各種会議においては、検討内容と結論がしっかりと議事録に明記され、予定や進捗状況、反省等を読み取ることができる。施設長等の幹部職員が進捗状況の管理を行い、定期的と随時に計画の見直しを実施し職員への説明や周知に努めている。年次計画を現状に合わせて変更したり次年度の計画に反映させており、組織力を活かした施設運営が展開されている。

【特に改善が求められる点】
■職員の経験年数や力量に応じた、段階的な専門性の獲得に向けた支援が期待される。
 施設開設当初から勤務している職員は、これまでの経緯や業務の中で高い専門性を身につけている。また、他施設等での経験がある職員についてもミーティング、各種報告書などを通じて子どもの養育・支援についてリフレクション(内省)する機会を意図的に作り出し、高い知識や専門性を会得することが出来ているように推察できる。一方で、新人職員や経験の浅い職員には、それらの先輩の高い専門性をうまく理解につなげられない局面もある様子が今回の職員自己評価などから読み取れた。今後は、職員の経験年数や力量に応じた、段階的な専門性の獲得に向けた支援が期待される。

■子どもに関する情報の精査と業務負担軽減への取り組みが期待される。
 保護者や子どもに関する養育支援のために必要な情報が「自立支援計画」、「養育日誌/経過記録」、「ケース会議録」等に詳細に記録され、適切に管理されている。しかし、このたびの職員自己評価における記述や訪問調査時のヒヤリングにおいても、子どもの詳細な情報の記入のための業務負担と共有が課題として挙げられており、「日勤/夜勤チェックリスト」で記録された様々な個別の情報が、「養育日誌/経過記録」の健康の記録にも同じ内容で記録されている状況なども見受けられる。情報を精査しIT化させるなど業務の軽減と効率化が期待される。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  開設5年目にして2回目の受審となりました。丸1年経過したところでの受審の際と5年目の受審の自己評価を比較すると、「できていたと思っていたことが、実はできていなかった、まだまだ浅い考えだった」「職員がかわったことで、理念方針に基づいた養育が涵養されていないところもある」などの課題がみえてきました。また「新しく入職した職員と開設からいる職員の間に理解の開きがあることや業務整理がうまくいっていないことがある」など自己評価からみえるものと第三者からみえるものの差があまりなかったようにも感じましたが、客観的な目からの施設運営を確認できたことは5年の区切りとなったように思います。自分たちでは、まだまだ足りていないと思っている養育の部分についても、評価調査者のみなさんができていることを丁寧にコメントに拾って書いてくださり、職員のモチベーションのアップにつながりました。全体的にはクリアできていない課題も多くありますので、課題解決やさらなる質の向上に向けて、また少しずつ進んでいきたいと思っています。
 ありがとうございました。
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