社会的養護施設第三者評価結果 検索

鹿児島自然学園

【1】第三者評価機関名 (公社)鹿児島県社会福祉士会
評価調査者研修修了番号 SK18293
S2019067



【2】種別 児童心理治療施設 定員 入所35名、通所15名
施設長氏名 森満 稔 所在地 鹿児島県
URL http://k-shizengakuen.com.
開設年月日 2002年04月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人くろしお会
職員数 常勤職員 32名 非常勤職員 5名
有資格職員 臨床心理士・公認心理士 10名 公認心理士 6名
看護師 2名 社会福祉士 1名
栄養士 1名 保育士 6名
施設設備の概要 (ア)居室数 個室:男女各1室、2人部屋:男女各2室、4人部屋:男女各3室 (イ)設備等 治療部門:各面接室・集団治療室・通所指導室・地域交流スペース
(ウ) 入所児童生活部門:食堂、談話室、浴室、洗面所、トイレ (エ) 教育部門:郡山小学校分教室、郡山中学校分教室
【3】理念・基本方針  鹿児島自然学園では、子どもたちが、内に秘めて大事にしている命の光を、子どもたち自身の力で自然に輝かせることができるように、「私のいのち、みんなのいのち、自然のいのち」を園訓とし、子どもたちの最善の利益のために、子どもの個性を尊重し、一人ひとりの子どもの心身の発達及び状態に即した治療と指導を行い、社会的な自立を目指し、集団生活の中で健全な人格形成を図っていくことを基本方針とし、地域社会との連携のもとに運営するものとしています。
【4】施設の特徴的な取組  施設全体が治療の場であり、施設内で行っている全ての活動が治療であるという「総合環境療法」の立場をとっています。具体的には①医学・心理学、②生活指導、③学校教育、④家族との治療協力、⑤地域の関係機関との連携を治療の柱とし、医師、看護師、心理士、児童指導員、教員など子どもに関わる職員全員が協力して一人ひとりの子どもの治療を達成できるよう、本人と家族を援助しています。
 心理治療は、精神科医や心理士が週1回程度行っています。症状を軽くするため、薬による治療を行うとともに、絵を描いたり、ゲームなどを通して、子どもの気持ちに寄り添いながら心の中の不安や葛藤を表現させ、それを乗り越えていけるよう手助けします。
 生活指導は、児童指導員に加えて心理士も担当します。子どもたちのほとんどが、仲間づくりや集団にうまく適応していくことが苦手で、自分が皆から認められていないと考えていたり、自信を失っています。このような子どもたちが、日課の中で、友だちや職員との葛藤を繰り返しながらも、学習・遊び・スポーツ・作業などを通して自信を取り戻していきます。子どものどんな小さな努力でも常に認め、励まし、自分で行動することの楽しさを引き出して行くことを大切にしています。また、学校教育は、施設内の分教室で行われています。
【5】第三者評価の受審状況 2021年12月13日(契約日)~ 2022年03月21日(評価結果確定日)
前回の受審時期 平成29年度
【6】総評 ◇特に評価の高い点
・鹿児島自然学園は開設20年を経過する、県内唯一の児童心理治療施設です。心理的困難を抱え生きづらさを感じている子どもに、まずは生きやすいと感じられる生活の場を提供することが重要であるとする使命感から、園全体で幅広く子どもの全てを受容する姿勢に徹することに努めていることが感じとれます。
・人員配置基準を上回る心理職等の専門職員を配置しており、園長のリーダーシップと経験豊富な指導部長、心理部長の適切な助言等により、子どもの治療・支援にあたる職員は、仕事上の悩みや戸惑いについて他職種を交え話し合うなどの機会を作り、相互研鑽する体制の整備に努めています。
・子どもの困りごとや意見・要望を職員に相談しやすい環境の整備に努め、生活指導担当及び心理担当などの職員は、子どもの具体的な生活目標を把握した上で、生活場面を通して、子どもの心身の状況を細かく丁寧にみていくよう心がけており、子ども自身の「生活をみてくれている」という安心感、満足感、信頼感につながっているように感じられます。
・職員は衝動性の強い子どもへの対応として、攻撃性がどこに向いているかを判断したあと、周囲の子どもの安全を図るため、一人部屋での生活を指示するようにしています。職員が交替で関わり、子どもがクールダウンした後は、時間を掛けて話を聞き、振り返りができるよう粘り強く関わっています。
・日常生活のあり方について主体的に考えることが苦手な子どもに対しては、意図的な関わりを通して、子ども自身が自分たちのこととして主体的に考えることができるように丁寧に支援しています。
◇改善を求められる点
・園では、施設開設以来、治療・支援の基本となる方針である「治療支援ガイドライン」をもとに現在も試行錯誤を重ねており、これまで治療・支援にあたってきた職員の経験と知識、技術のノウハウが蓄積されているものと思われます。また、当園を利用している子どもたちの個別の特性に応じて、ケースバイケース、臨機応変に柔軟な対応に努めていることが感じられます。
一方で標準的な治療・支援の方法について文書化されていないと、これまで対応してきた職員にとっての個別の経験にしかならず、施設共有の財産として蓄積されることは困難です。さらなる治療・支援の質の向上を図り、各職員が一定の水準、内容を維持しながら、子どもの個別性に着目した対応が行えるようにするためには、鹿児島自然学園の実態に即したマニュアルなどの整備が求められます。
・中・長期計画及び単年度事業計画は作成されていますが、さらに質の高い治療・支援を提供するため、組織体制や設備、職員体制、経営改善への取組、人材育成等について、改善課題の検討、課題への継続的な取組などを盛り込んだ計画作成が期待されます。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント 近年、全国的に児童心理治療施設への入所児数は微増傾向にあります。そのうち、被虐待児童は概ね8割、自閉症スペクトラムなどの発達障害を抱えた子どもが4割近く(被虐待との重複あり)を占めており、同様の傾向にある当園でも細やかな配慮の下、様々な社会資源も活用しながら子どもたちの治療・支援に努めています。
今回いただきました指導・助言、とりわけ、標準的な治療・支援方法の明文化(マニュアル作成)につきましては、対象が十人十色、百人百様の態様を示す子どもたちであり、日々、検討・改善しながら継続される支援の実際の中で、手法も精神も風土として築かれ脈々と引き継がれていくもの、と考え一顧だにしておりませんでしたが、真摯に受け止め可能な範囲で改善に努めてまいります。
 最後に、今回、望外の高評価をいただきましたが、慢心せずさらなる支援の質の向上に努めてまいります。
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