社会的養護施設第三者評価結果 検索

神戸少年の町

【1】第三者評価機関名 (社福)大阪府社会福祉協議会
評価調査者研修修了番号 SK15113
SK15186



【2】種別 児童養護施設 定員 70名
施設長氏名 谷口 剛義 所在地 兵庫県
URL http://boystown.jp/
開設年月日 1948年02月21日 経営法人・設置主体 神戸少年の町
職員数 常勤職員 30名 非常勤職員 7名
専門職員 社会福祉主事 15名 保育士 14名
幼稚園教諭免許 6名 社会福祉士 4名
臨床心理士 3名 管理栄養士 2名
施設設備の概要 (ア)居室数 32室 (イ)設備等
(ウ) (エ)
【3】理念・基本方針 キリスト教精神に則り、生命の誕生を祝福し、家族に代わって、また家族と共に、児童の健やかな生育を見守り支ていく。「ありがとう、みんななかよく、社会のためになるように」を念頭に置き、自立した社会人を育てていく。
【4】施設の特徴的な取組 (1)個別外出、職員宅への外泊を積極的に行っている。今までは誕生日の際に個別外出をする程度であったが、学校の代休などを利用し、職員と共に施設外に出る機会を多く持つようなっている。また、帰省の少ない児童や里親の利用許可が保護者からいただけない児童については、職員宅への外泊を利用し家庭体験をできるよう配慮している。

(2)「KBTサミット」という名前の自立支援プログラムを行っている。高校3年間を通して自分たちの自立を考え学ぶ場になっている。お金のこと(収入・家賃・生活費について)、役所で扱う書類について学んだり、調理実習を行ったり、OBOGに来てもらい実際の生活体験を話してもらう場を設けている。また、少年のサポートセンターの協力を得て、携帯電話を購入する前には情報モラル研修を行ったり、外部講師を呼び、社会人のマナーやメイクについても学んでいる。部活などで参加が難しい児童には、後日補講という形でフォロー体制も整っている。

(3)公費負担となる前から、中学生には学習塾へ通わせている。元々2か所の学習塾からどちらかを子どもに選択させていたが、現在では、子どもが希望する学習塾へ通うことができるよう自由選択となった。また、サッカーやバレーボールなど地域の方との交流を大切し、積極的な参加をさせている。習字やピアノなど、スポーツ以外の習い事も子どもの希望に沿うよう支援している。
【5】第三者評価の受審状況 2016年06月16日(契約日)~ 2017年01月10日(評価結果確定日)
受審回数 1回 前回の受審時期 平成25年度
【6】総評 【概要】

 児童養護施設「神戸少年の町」(以後「当施設」という)は、戦後の混沌とした状況の中で苦しむ孤児たちの保護救済に向けて、アメリカの「少年の町」を創設したフラナガン神父の勧めでつくられた施設です。小高い丘陵地帯に位置し、自然に恵まれた環境の中で定員70名のところ45名の子どもたちが6つのユニットと敷地外のグループホームに分かれて生活しています。広大な敷地内には乳児院もあり、乳児院からの入所に際しては十分な連携のもと丁寧な引継ぎがなされ、一貫養育に努められています。当施設は2年前に施設長の交代があり、事業の見直しを含め新たな方針のもと、事業の展開に向けて取り組みが進められています。


【特に評価の高い点】

(1)家庭的養護に向けた取り組みへの挑戦

 当施設の建物は、およそ15年前に建設されましたが、木材をふんだんに使った暖かさをコンセプトとしたもので、家庭のもつ暖かさを十分に取り入れたものになっています。今日、児童養護施設等に求められている家庭的養護の推進の一つとして子どもの生活単位を小規模化して、より家庭的な生活を営むことができるよう、当施設ではその建物を工夫しながら6つの生活空間に分け、6~8人の子どもたちの家庭づくりに早くから取り組んでいます。また、施設の敷地から少し離れた所に民家を借入れた分園型のグループホームも展開しています。6つのユニットは既存建物の改修したものであり、建物の構造的な部分で課題も見られますが、定期的に設備を改修するなどの整備がなされ、子どもたちの安心と安全、自立に向かって取り組む施設の挑戦的な姿勢が高く評価されます。

(2)地元地域への連携と新たな支援体制

 施設の持つ機能を地域に貢献する事業として「児童家庭支援センター」を展開してきましたが、場所の立地的な条件もあり平成27年度末にこれを廃止し、事業の一部について乳児院と共同して「おひさま広場」として子育て支援活動を定期的に実施しています。しかし、交通の不便な小高い場所という建物の立地的な面もあり、地域活動についての視点を「施設に来所してもらう」から「地域に出向く」スタイルにシフトし、地元区の社会福祉法人連絡協議会等に参加し、法人間の情報交換を行ったり、地元のふれあいの町づくり協議会などに参加し、コンサートを開催したり、児童館の夏まつり等に協賛参加するなどの活動を展開しています。また、区の子育て支援ネットワーク会議の「子育てアドバイザー養成研修」に職員を派遣するなど、アウトリーチ型の地域支援活動に積極的に取り組んでいます。

(3)職員を支える職員体制

 現場経験豊かな施設長はじめ基幹的職員が中心となって、経験の浅い職員を支え、育成する仕組みがしっかりと整備されています。特に、小単位のグループケアに伴い担当職員の養育・支援の力量を確保するため、各グループには主任が配置され、子どもの安心安全に目を行き届かせるとともに、養育・支援の質の向上に取り組んでいます。経験の浅い職員に、主任は日々の業務遂行の力強いモデルとなる役割を果たしています。また、ファミリーケースワーカーと個別対応職員を専任配置し、指導する立場にある基幹的職員や主任とともに、外部からスーパーバイザーを招へいして週1回の定例会への積極的な参加を通して力量を高める努力をしています。


【改善が求められる点】

(1)中・長期計画の策定

 事業計画書に、「乳児院との一貫養育、里親を含めた地域支援、新しい養護体系での取り組み」の3つの項目が「中長期の目標」として掲載されていますが、その実現に向けての具体的な計画は未策定です。また、経営課題として認識されている養育・支援に関する取り組みや小規模グループケアの充実、あるいは地域小規模児童養護施設への取り組みや児童入所定員減に向けた取り組みなどについて、中・長期計画の中に落とし込み、具体的かつ計画的に実現に向けて取り組むことが求められます。

(2)子どもや保護者等に向けた情報提供及び経営の透明化への取り組み

 施設に入所する子どもやその保護者に対して、施設入所に関する情報や理念・基本方針、主な事業計画の内容や自立支援計画の内容等、子どもや保護者等が当然知っていなければならない情報を適切に伝えることが求められます。そのためにも「入所のしおり」やパンフレット等を整備し、口頭での説明だけでなく文書の配布などを行い確認することが望まれます。また、事業の財務に関する情報は、公費による事業を実施する主体としての説明責任を果たし、施設の経営の透明化を図る取り組みとして公開することが求められます。あわせて、子どもや保護者、地域の理解を深めるためにも、第三者評価の受審に関する事項や施設に寄せられた苦情・相談内容等を公表することが求められます。

(3)施設機能の開示の取り組み

 子どもの安心安全を基調とした適切な養育・支援が、現場で職員間で共有されてチーム力として実践されています。
 一方、安心・安全な養育支援について、その実施方法の具体的な取り組み内容について関係機関・団体・地域が認知し共有する手立ては見当たりません。長年蓄積された子育てのノウハウを、社会が身近に感じ活用できるように、また、施設利用者や関係機関が、施設の数々の機能を的確に把握できるとともに生かせる情報を可視化し広く提供する取り組みが望まれます。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  ヒアリングの中で指摘された内容を書き出し、すぐに職員間で共有しました。取り組む内容には優先順位をつけ、取り組めるものから着手しています。また、現場職員で取り組む課題、主任者や施設長で取り組む課題、理事会で取り組む課題など、具体的に分類し明確化を図りました。ご指摘いただいた課題は多く、年単位の取り組みを必要とするものもあります。今までは分かっていても、どこか目をつぶって過ごしてきたものを一つ一つご指摘いただいたことで、施設として、法人として取り組んでいかなければならないという体制になっているのは事実です。誰がどのように取り組んでいくのか、という点が現在の課題です。来年度に向けて具体的に取り組んでいく体制作りをしていきたいと考えています。
 「利用者アンケート」など、普段子どもたちから聞かない声を聞くことができる機会もいただきました。利用者である子どもたち一人ひとりの生活の質の向上、安心安全な暮らしの保障のため、職員全体で取り組んで参ります。
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