社会的養護施設第三者評価結果 検索

札幌育児園

【1】第三者評価機関名 サード・アイ(合)
【2】種別 児童養護施設 定員 90名
施設長氏名 千葉 徹 所在地 北海道
URL http://www.ikujien.jp/
【3】実施調査日 2014年02月18日~2014年03月01日
【4】総評 ○特に評価の高い点
1、「専門性に裏付けされたアセスメントと支援」
施設は、エコロジカル・アプローチを重視し、『職員心得』において「児童養護施設の援助は、子どもと環境との間に生じている問題の解決を援助すること、子どもの自立(発達)を援助することであり、これらを社会福祉の援助技術と隣接領域の技術を用いて援助するところに児童養護施設の専門性がある。社会福祉は科学であり、援助はソーシャルワークのモデル・アプローチを基に実践すること」と明記して手法を徹底しています。
また、「子どもへの援助は、問題の連鎖を防止する視点を持たなければならない。事後処理を繰り返すような仕事に専門性はない。」として、専門職としての視点も掲げています。
幼児においては、乳幼児精神発達診断検査(津守式)を用いて発達段階を確認し、支援に繋げています。専門職としての視点に立ったアセスメントを通して、子どもを取り巻く様々な環境から情報収集し、環境要因を分析して、援助方針と具体的援助方法を組み立てています。
職員は、そのための理論的思考とその手法、技術を教育され、全職員が毎週水曜日に参加する会議では、子どものケースを構造化して、すみやかに全職員が課題を共有できるようにしています。
このように、組織として職員が一丸となって実践を積み重ね、専門性の向上に繋げています。

2、「アフターケアとして意義の大きい児童自立支援基金」
児童福祉施設である児童養護施設は、原則的には18歳までの利用ですが、必要に応じて20歳までの措置延長が認められるようになりました。この18歳から20歳までの間は、未成年である子どもたちにとって、社会的な存在として空白期間になりがちです。
施設では、子どもの現状に応じて、できうる限り公平な社会へのスタートが切れるように支援しています。その柱となっているのが、法人独自で設立している『児童自立支援基金』です。児童養護施設の理解を広め寄付金を募ることで、経済的な支援の基礎としています。特に、高校卒業後の進学を希望する子どもにとって、措置延長の利用による支援の継続という基盤に加え、各種の奨学金受給の可能性だけではなく、この『児童自立支援基金』からの援助が可能となることは、大きな励みとなっています。
また、知的・精神等の障がいを持っている子どもには、関係機関・行政と連携して、障がい年金受給が可能となる20歳までの間、生活保護の受給に繋げることで、福祉施設・サービス利用に繋げています。
施設は、措置終了後までに、子どもたちが自立生活に必要な力をつけられるように自活トレーニングを実施しつつ、同時に、退所後の支援(アフターケア)として相談窓口を設置し、さらに法人独自の『児童自立支援基金』を設置して、子どもの将来を支援する取り組みをしています。

3、「代々受け継がれる時代を先行する施設長のリーダーシップ」
当該受審施設は、平成7年に児童養護施設としては全国に先駆けて、独自に不服申し立て制度を導入しました。そして、平成10年には、苦情申し立て制度を設けて第三者委員による苦情解決の仕組みを構築しました。
現任の施設長は、園の指針と根幹となる「理念」「基本方針」及び「職員の心得」を策定しました。その実現に向けて、人事、労務、財務等の多岐にわたる視点から、経営や業務の効率化と改善に向け日々、職員とともに活動されています。児童養護施設にかかわる施策や動向等については、全国児童養護施設協議会等の関係機関の会議へ出席することで情報収集に努めています。
また、協議委員を務めた人的ネットワークを通じて児童養護施設の動向を迅速に把握して運営に反映させています。
こうして、先代の施設長から受け継いだ、子どもの最善の利益を保証しようとする熱意を基幹職員等と共有しながら強いリーダーシップを発揮し施設運営を牽引しています。

○改善が求められる点
1、「人材育成としての人事考課」
人事考課の目的・役割は、賃金・処遇に差をつけることではありません。職員のやる気や職場の活性化に資することで健全な組織運営となります。
当該受審施設では、人材が人財であることを認識して、OJTを中心とした人材育成がなされています。育成した人財の職場定着と流出防止の為に、人事考課制度やキャリアパス等の仕組みの確立が望まれます。また、欠員した場合の職員を獲得するためにも、新人、中堅を問わず、職員自身の成長の方向性や将来性が展望できるようにすることが期待されます。

2、「子どもの成長の記録の整備」
当該受審施設では、全職員がすべての子どもの状況を把握するための全体会議が行われ、更に職員間の相談や連携が行われています。自立支援計画や個別援助計画も高い専門性からアセスメントを行い、臨床心理士等とのチームケアを展開しています。しかし会議の内容や実践についての記録が少ないことと、記録物全体の統一性がないために、支援の客観的評価や実践の証拠としては不十分と言えます。今後は会議禄や支援過程の記載方法など、第三者が見てもわかりやすい記録方法が望まれます。

3、「インシデント(ヒヤリハット)の積極的な取り組み」
危機管理マニュアルには、「洗濯機に落ちた時」「階段を踏み外した時」等、子どもが施設で起こりそうな様々な事故を想定して対応が記述されています。実際に日常生活で子どもが遭遇する事柄には、職員は適切に指導しています。
また、25年度からは「施設環境点検シート」を使い、椅子の棘やグラつきを早期に直すといった子どもたちの安全にも配慮しています。
近年入所している子どもたちの中には、被虐待児を含めた発達障がいなど治療を必要とする割合が増えています。一般的な事故による怪我だけではなく、よりデリケートな支援が必要な子どもに対するリスクも把握することが望まれます。
その為にはインシデントを細かく取り、リスクが高まる要因を早期に把握することで支援の標準化を行い、その子の特性によっては個別援助計画に記載していくことが期待されます。
【5】第三者評価結果に
対する施設のコメント
今回の評価を通じ力不足を感じています。今後も職員一丸となり、より一層のサービス向上に努めてまいりたいと思います。
ありがとうございました。
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