社会的養護施設第三者評価結果 検索

横浜市三春学園

【1】第三者評価機関名 (株)R-CORPORATION
評価調査者研修修了番号 SK15157
S24061



【2】種別 児童養護施設 定員 70名
施設長氏名 開地 秀明 所在地 神奈川県
URL
開設年月日 1966年09月01日 経営法人・設置主体 横浜市
職員数 常勤職員 30名 非常勤職員 17名
専門職員 保育士(常勤) 20名 児童福祉司(常勤) 5名
家庭支援相談専門員(常勤) 1名 保育士(非常勤) 4名
心理士(非常勤) 2名 夜間嘱託(非常勤) 10名
施設設備の概要 (ア)居室数 中舎制3ブロックとグループケアユニット3ブロック (イ)設備等
(ウ) (エ)
【3】理念・基本方針 横浜市三春学園の基本理念は子ども一人ひとりが持っている力を最大限発揮できるように援助するとともに、退園後に社会に適応し、自立生活していくことができる力を持たせていきます。また、家庭再統合に向けた最大限の支援を行います。
横浜市三春学園の援助方針は子どもの年齢や生育歴・発達段階に応じて、心身ともに健康で安心して生活できる環境を提供し、自立していく力を育み次の援助方針を決めて実施しています。
①社会常識と生活力を身につけて、退園後の社会に適用できるように支援します。
②自分の大切さも、他人の大切さも等しく理解し思いやることができるよう援助します。
③保護者、地域社会や各種の学校、医療機関、行政機関と連携、協働して援助します。
【4】施設の特徴的な取組 平成29年度の横浜市三春学園の重点課題は子ども一人ひとりが自尊心を育み自信を持つことにより、積極性やコミュニケーション能力を向上させると共に、自立に必要な知識や社会性を獲得し退園後の生活に適応出来るよう、重点的に支援することに置き次の12項目の支援重点ポイントを展開しています。

①子どもについてのアセスメント(CBCLを含む)の実施を重視し、それに基づいた自立支援計画の策定と支援の実施
②権利侵害の防止を目的とした、子ども一人ひとりの発達段階に応じた園内性教育のの実施と外部研修の検討
③子どもの適性・能力に応じmまた卒業・自立を見据え、多様な高校への進学の保障と支援の実施
④一人ひとりの基礎学力向上を目的とした、子どもの年齢や特性に即した学習機会の提供と情報の周知(数検・漢検の積極的活用、学習ボランティア・学習塾利用促進等)
⑤子どもの安全や衛生管理に配慮した生活環境の整備・改善の継続
⑥子どものライフサイクルを見据えた食育の検討及び支援継続
⑦地域のボランティアニーズを学園のニーズとマッチさせることによる、多様な地域のボランティアの受け入れ及び活用
⑧子どもが地域貢献の視点をもって地域と交流する機会の確保。
⑨子どもの安全を守るための施設としての危機管理を重視し、不審者対策等の体制整備と研修・訓練等の実施
⑩小規模グループケアの安定した運営継続(本体との連携や組織的対応の取組みを進める)
⑪各種マニュアルや書式等の見直し・改定による業務効率の改善
⑫効率的かつ継続可能なアフターケア事業の実施

以上により子どもの人権を守り、心身ともにすこやかな成長発達を保障し、退園後の継続支援をしています。
【5】第三者評価の受審状況 2017年06月28日(契約日)~ 2018年02月28日(評価結果確定日)
受審回数 1回 前回の受審時期 平成26年度
【6】総評 【概 要】
横浜市三春学園は、シーサイドライン鳥浜駅から徒歩12分程度のところにあり、横浜市立大学医学部、同附属病院、南部市場など公的な施設が建設されると共に、八景島シーパラダイスや野島公園、金沢海の公園など観光設備も整った地域に位置しています。横浜市三春学園は、南区にあった三春園と富岡にあった富岡学園が昭和41年に合併し、富岡学園所在地に開設された後、平成2年に園舎が改築され現在に至っています。児童養護施設は、保護者の居ない児童や、虐待されている児童等を入所させて養護し、自立のための援助などを行う事を目的としています。(児童福祉法第四十一条)三春園や富岡学園は第2次世界大戦敗戦後の、身寄りの無い浮浪児を収容する目的で設立されていましたが、最近では孤児の収容は少なく、父母の社会的状況(父母の家出、死亡、拘留等)による入所の比率は5%にしかすぎず、親と生活の中で虐待(身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクト等)されての入所が67%を占めています。また、入所する子どもは知的発達障害や、情緒障害の児童が増え、児童養護施設の支援の形態も大きく変わってきています。エネルギーのはけ口を持て余した「暴力的なエネルギーの強い子ども」から、「気力が伴わないエネルギーが弱い子ども」が増えており、児童養護施設の支援の形態を変えざるを得ない状況になっている現状があります。横浜市三春学園は横浜市立の児童養護施設であり、施設長はじめ職員は他の児童養護施設で引き受けられないケースについて、最後の受け皿となる決意を持って児童養護施設の運営に尽力しています。

【特に評価が高い点】
1.子ども一人ひとりの個性の尊重
子どもは本来ならば健全な親子関係に育まれて育つ権利があるのですが、親子関係が崩れ、家庭が崩壊し、精神的に大きなダメージを受けた子どもに対し、どんなケアが必要かを考えた時、施設での信頼関係を築いていく為には一朝一夕では難しいことを十分認識し、時間をかけて、根気よく信頼関係を築いていく必要があります。三春学園の子どもたちの共通した傾向は、自己肯定感の低さ、エネルギーの弱さにあり、養護の方針を、自己肯定感に据え、個別に自信の持てる「何か」を見つけ出し、個別対応を心がけ、一人ひとりに合った最適な方針を定め、心理士のサポートも加えながら「自己肯定感醸成」に力を注ぎ、個々の子どもの自立を援助しています。

2.子ども一人ひとりの話の丁寧な傾聴
個別に子どもの自信につながるものの発見や、最適な方針の選択をする為に、子ども一人ひとりの話を丁寧に傾聴することが大切と心得、傾聴を根気よく続け、少しずつ距離を縮め、閉ざした子どもの心が開いていくよう支援に努めています。日頃から個別対応を心がけ、日々子どもの話を親身に傾聴し、継続することにより職員と子どもとの信頼関係の構築を目指し、職員は日夜、支援に取り組んでいます。

3.子どもが安心して生活できる環境作りの取り組み
横浜市三春学園は、平成2年に現在の園舎が建設されて以来、既に28年が経過しました。先ず、施設で生活している子どもたちにとっては、現有の設備の中で、快適に安心して生活できる環境作りが大切と考えます。現在、施設は寮として6ブロック(A・B・C・K・L・Y)あり、中舎制3ブロック(A・B・Cブロック)に幼稚園児から高校生までの15名位が居住し、グループケアユニット3ブロック(小学生専用のKブロック6名、女子専用のLブロック6名、男子専用のYブロック6名)に分け、各ブロックには居間、居室、浴室、トイレ、洗面所があり、幅広い年齢の子どもが一緒に生活しています。現在は小舎制が望ましいと言われていますが、中舎制の良さもあり、現在の住環境の中でメリット、デメリットを検証しつつ、現住環境の中で子どもたちが最も安心して生活できる方法を模索し、取り組んでいます。

【工夫が必要な点】
1.職員のさらなる質の向上
横浜市三春学園は、横浜市で唯一の市立児童養護施設です。職員は、横浜市の福祉職員として採用を受けた市の職員であり、公務員として異動は必ずあり、数年後の異動があります。職種は福祉全般となるため、必ずしも社会的養護関係施設のみというわけではありません。そのため、長年にわたり、児童養護施設での業務のみに精通する機会は少ないと思われますが、児童養護施設の質のレベル維持のためには、長年の従事者が施設の基盤を担える体制を維持し、業務のマニュアル化を図り、効率化を進め、1日も早く業務に慣れる体制を構築することにあると思います。その上で更に、一番大切な支援での「丁寧な傾聴」を継続し、子どもとの信頼関係を作ることです。いずれも継続が要ですが、横浜市三春学園の風土を維持するため、一層の研鑽を期待しています。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント 施設長 開地 秀明

<評価に取り組んだ感想>
 児童支援において、職員が丁寧な傾聴と個別対応に心がけ、信頼関係の構築や自己肯定感の醸成に努力していることを評価していただけたことは、職員にとって大変励みになります。
 また、平成26年度から3年間かけて中舎制ユニットの居室を一部個室化する工事を行い、児童の生活環境を改善しましたが、引き続き児童が安心して生活できる環境改善に取り組んでいきます。
 今後も、公立施設として求められる役割や期待に応えられるよう、児童の人権を守り、個々のニーズに配慮しながら、チーム一丸となって自立に向けた支援を行ってまいります。

<評価後取り組んだ事として>
 前述のとおり、中舎制ユニットについては個室化工事に伴い、児童のプライバシーに配慮した生活環境改善に取り組みました。
 退園児童へのアフターケアについては、専任職員も定着し、生活ユニットの職員との連携や役割分担に係る支援計画書を作成する等の取り組みを進めました。
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